勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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やっと進むか?


真夜中の使者たち➂愉快な昼

ダイ達がレオナに辞去をしてティファとチウの所に行ってみれば、なんとティファがモンスター達に乗っかられているのにニヘラ~とした緩んだ顔をしていた。

 

スライムちゃんたちぷにぷにほっぺですりすりしてくれてる、モグラたち毛が固いけどお腹周りぷにぷにでここはもう天国だ~。

フライキャットちゃんの子たちもみ~んな可愛いよと、ほっこりまったりしまくっていたりする。

「おいティファ、出掛けんだろう?」

「はりゃ~ポップ兄、そろそろ行く時間?」

 

も少しのんびりしたかっったけど残念だ。

「皆、困った事あったらいつでも言いに来てね~。ここにいる人達も良い人だから、匂い覚えておいても損はないよ。」

モンスターの嗅覚は一様に良く、覚えた匂いは大概忘れない。

手当てをしてくれたティファ達は勿論、後から来たダイ達の匂いもクンカクンカと嗅ぎまくり、当然ダイ達は真っ赤になる。

ダイも慣れているとはいえ、知り合いでもないモンスターにかがれるのは矢張り恥ずかしいらしく、真っ赤になって狼狽えた。

 

「もういいでしょう!行こうよティファ!!」

 

さっさと行こうと言いながらも、さりげなくティファの腰に手を回し妹を確保するあたりが流石である。

妹を守るお兄ちゃん特権である。

 

「でもランカークスまでどう行くの?」

「へっへん!」

 

ティファの問いにポップは鼻の下を人差し指で撫でながら得意気である。

なんとなれば俺はもうルーラをマスターしたと言っても過言ではない!

 

・・・ちょっと待って、確かポップ兄のルーラって・・

「着地大丈夫なの?」思わず素で聞いちゃった。

「あ!疑うのかよティファ!」

「一応私で実験してみて。」

 

こん畜生!可愛い妹の言い分であってもこれは捨てておけねぇ!!

 

師匠の地獄の特訓の中に、じゃかすかとメラだイオだギラだヒャドだの初級呪文撃たれる中を、トベルーラで逃げ回れっつう無茶修行があったが、かすりこそすれ直撃は受けず、トベルーラで逃げ回れればルーラの速度も上がっているはずだとのお墨付きを、あの鬼師匠から貰ってんだぞ!

着地もそこそこ良くなったはずだ!

「ルーラ!!」俺の精度のいいルーラに驚ろ・・「いっやあああああ!!」はぁ?

 

「おいティファ!!」

「来ないでポップ兄!もうヤダ!ティファそれヤダ!!!ガルーダ!!」

 

ルーラの目的地を最も近いパプニカ城に設定してとんできたポップは呆然とした。

ルーラ発動して早々に悲鳴を上げられ、着地と同時にもがくように自分の腕から降りたティファは怯えて半泣きまでしてる!

そして愛鳥(?)のガルーダを大声で呼び寄せ、来たところをさっさか背に乗りダイ達の居る所へと戻ってしまった。

後に残されたのは訳が分からないと呆然としたポップと、悲鳴を聞きつけてきたパプニカ城の門番だけであった。

 

「あの・・ポップ殿?」

「なんすか?」

「その・・一体何事が・・」

 

この門番も度々城に来る一行の顔を覚えており、ポップに対して丁寧な対応をしてくれる。

冒険譚の勇者一行の話しに憧れ兵士を目指した二十歳前の若者は、若狭特有のきらきらした瞳でいつも応対をしてくれているのだが、流石に今回は困惑気味である。

無理もない。幼女の悲鳴を聞きつけて来てみれば、いたのは勇者一行の魔法使い殿しかいなかったのだから。

この場合、若者の心中は察して余りあるものがあるだろう。

だがしかし!ポップにだって言い分がある!

「俺だってわっかんねぇよ。」

自信のあったルーラだけに、可愛い妹からあんな反応された日には地獄だ。

 

「ふぇぇ~ダイ兄~」

「よしよし、あ!ポップ・・」

「よぅ・・」

 

ティファの言った先はダイ達の所だろうと帰ってきてみれば、ダイの腕の中でえぐえぐと泣いているティファがいた。

なんとここでティファの意外な弱点が露呈した!それは

 

「私もうルーラしない!アレ気持ち悪いからやだ!!もう空飛ぶ靴かガルーダでないと移動しない!!」

 

ルーラ恐怖症

 

聞いていたガルーダは、愛し子が自分を頼ってくれていると単純に喜び嘴でティファの頭をよしよしと撫でているがここで一行全員に疑問が湧いた。

 

ガルーダ乗ってる方がおっかないのでは

 

速度も動きも旋回の仕方も神獣ガルーダに比べれば、人のルーラなぞ可愛いものだと思うのだが。

 

「だっていきなりぐにゃんとした感覚で動くんだもん!気持ち悪いし怖い!!

そんなヘンテコとガルーダの颯爽とした飛び方と比べないてよ!」

 

余程怖かったのかいつもの料理人の口調がかなり崩れてしまいガルーダの足にひっしりと縋りつくティファだが、一行全員はその事よりもティファの言い分にがっくりとしてそれどころではなかった。

ルーラと言えば、使える者は限られているそこそこレア魔法の一つに入ってもいいくらいなものなのだが。

それをヘンテコと言い切ってしまうティファの方が十分ヘンテコであると。

魔法の使えないヒュンケルも、ルーラ初のマァム・メルル・チウもルーラを怖がらなかったのだが。

そんな半べそティファからのお願い事が来た。

 

「ふゅぅ~、ポップ兄たち先ルーラで飛んでって。後からガルーダが付いてくから。」

 

神獣ガルーダにとっては訳ないことであり、こうして一行は困惑をしながらもようやく出掛けることが出来た。

早くしないと日が暮れる。いつになったら昼食が食べられるのだか、長い一日になりそうだ。




筆者も和みが欲しいのです!

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