すったもんだがあったとさ、山あり谷あり急な下り坂があったありましたが何とかランカークスには辿りついたから私の勝ちだ!
何が勝ちなのか突っ込まれたら負けな気がするから表には言わないもんね。
けれどもだ!根本的に合わない人にあっちゃうわ、過去のほじくり返されたくないことを炭鉱掘るが如くザックザクにほじくり返されるわ、落ち着いてきた気持ちをどん底にされても、引きこもりしないできちんと恩ある人たちにお礼をしに来た私は褒められても良い気がする!
ゲフンゲフン。つまりだ、何が言いたいかと言うと人生生きてりゃどん底が津波の如く襲ってきても狼狽えてはいかんという事だが、長閑な田舎村に来たら幾分か落ち着いたからまぁ良しとしよう。
ポップの生まれ故郷ランカークスは本当に長閑な村だった。
モンスターの襲撃がないとか、大戦の魔の手が及んでいないという事を差し引いても矢張り平和だ。
「よぅポップ!ま~た帰ってきたのか。魔法使いゴッコは相変わらずかよ。ジャンクさんたちの心配考えろよ。」
「あんたはもっと頻繁に帰ってきてジャンクさんたちの手伝いしなさいよ。」
「うるっせえ!その親父たちの所に行くんだから邪魔すんなよ!」
狭い村でも子供は割とおりポップの同年代の子たちも当然いる。おむつが取れないうちからの付き合い連中ばかりなのでお互いに遠慮なしなしで口悪く騒ぐのはいつもの事。
村の子供達もポップがアバンに付いて行ってしまった二年前のあの日から姿を見なくなった事に心を痛めており、中には初恋だった少女もおり涙を流した日もあった。
その鬱憤を今晴らさんと幼馴染連合はポップに言いたい放題であり、大体は相手の言う事が正論なのでポップとしては分が悪く、ジャンク達の所に行くという攻撃カードしかないのが辛い。
幼馴染ってすごいな。
今は村の子供たちはポップ兄がどれだけ凄い者なのか知らないから言いたい放題なんてできんだろうな。
魔王軍相手に日々戦いの研磨をし、近頃は王族にも物が言えるようになった魔法使いポップ。
その気になれば、人間の一個師団と戦っても圧勝できる実力の持ち主になってきてる。
それでも偉ぶらず、いつものお兄ちゃんでいてくれるポップ兄が私は好きだな~。
「なんだよにやにやとして、早く親父たちの所に行くぞ。」
「は~い。」
今ダイ達とポップとティファは二手に分かれている。
そもそもルーラのみならず、ガルーダが来たり獣王が歩いていたりした日にはランカークスは大騒ぎと化す。
そんな中訪ねられてきたジャンク夫妻にもどんな噂話が出るか分かったもんじゃない。
ジャンク夫妻の村での生活を乱さないようにとティファが配慮をし、大勢ではなくポップとティファだけで迎えに行こうと相成った。
ダイもティファに付いて行きたかったが、剣のお礼が先でしょう正論の前に敢え無く撃沈。他のメンバーに引っ張られてとぼとぼとロン・ベルクの下へと向かったのだった。
明日必ず戻る。
息子が出かける時に言った言葉を信じてジャンクとスティーヌは一晩眠れず過ごしたが、無事なポップを見れば疲れは全て吹き飛んだ。
特にメルルの水晶に映った鬼岩城をその目で見たジャンクはスティーヌ以上に息子を喪ってしまう恐怖に心が折れかけていただけに、無事なポップを妻が抱きしめる前に無言で抱きしめた。
まさかジャンクに抱きしめられるとは思っていなかったポップは狼狽をして振りほどこうとした。もう自分は小さな子供ではないのだと。
だが、自分を力強く抱きしめている腕は震えが伝わってきた。それは自分の事を、本気で心配して待っていてくれたのだと、嬉しさと戸惑いと申し訳ない気持ちが胸の中にあふれ出て、ジャンクの胸元のシャツを両手で握りしめ、ポップは震える声を懸命に押し出す。
「親父・・・・ただいま・・・」
厳しい父だった。鍛冶が下手、飽き性、根性がないと直ぐに自分を怒鳴っていただけの父だと思っていた。
でも、自分の無事を震えるほど喜んでくれる温かい父だったのだと思い知る。
自分の細腕とは全く違う、太く逞しい腕に囲われて胸元に抱き潰されても痛くない。それどころか安心をする。
親父の腕の中は、暖かい。
ジャンクは無言で涙を流しながらポップを抱きしめる。
本当はこの腕の中から二度とは出したくはない。二年前より与えることが出来なかった親の庇護の中に戻したい。
けれどもそれは息子自身が望まないのはよく知っている。
根性がないくせに、変に言い出したら聞かないところがある。分かり易く言えるのが二年前のあの家出だ。
あの時もポップの諦め癖と根性なしの所に妻共々望みをかけ、弟子にしてもらえなかったとトボトボと帰ってくるとばかり考えていた。その時は少し叱ってからいつもの日常に戻るのだとばかり思っていた。
だがそうはならず、息子を弟子にしたとアバンから丁寧な手紙が届いたときにはアバンを恨みかけた。
その時の怒りと悲しみは今でもこの胸の中にある。今回だとて、死にに行くような大規模な戦に何故年端もいかない息子が率先して戦いに行かなければならないのかという理不尽に対する怒りが胸を焦がす。
先の大勇者の弟子だからしなければならないという者がいたら、それはとても名誉で誇るべきことだと言ってくる者がいれば躊躇わずにぶん殴るほどに腹が立つ。
それでも、先の大戦を経験をしており、伊達に腕一本で荒波の多い世間で家族養っているわけではないジャンクは鍛冶の腕も度胸もあり、何ならお城の馬鹿大臣にも噛みつく気概も気骨もある。
だからこそ分かってしまう
この大戦とやらも-誰か-が戦わなければならず、その誰かの中に息子はもう欠かすことが出来ない者になってしまったのを。
「お帰りポップ。」
腕の中で守ってやる息子は自分の知らぬところで大きくなり、戦う男になっている。
そうジャンクは自分に言い聞かせ、惜しみながらも息子を腕の中から外に出す。男の巣立ちを邪魔してはいけないと。
「親父・・俺・・馬鹿でどうしようもない息子だけどよ・・全部終わったら帰ってくっからさ、待っててくれよ!」
ポップもジャンクの思いが伝わる。どうしようもなく不器用で、それでもこんな駄目息子をいつまでも愛してくれている父を、今自分に抱き着いて泣きながら無事でよかったと喜んでくれている母とまた暮らしたい。
あの頃には全く分からなかった家族を、自分は守りたい!守らないといけない!!
ポップは父母からの深き愛情をしっかりと受け取り、魔王軍に勝ちたいという思いがより一層深まった。
勝ちたいから勝たなければという思いに変わっていってはいたが、ポップの中の思いが明確化をした。
勝って家族と共に暮らしたいのだと。
その決心はポップの表情に現れ、傍で見ていたティファを驚かせた。
まだまだ甘いところがあった兄が、一人前の戦士となったことを。
守りたい、その為にも頑張らないとだ。
ポップ達が落ち着きを取り戻したのを見計らい、ティファはきちんとジャンクとスティーヌに挨拶をして名乗り、用向けを伝えれば快諾をされた。
ジャンクとしては、息子よりも幼さを残す少女が勇者一行の者だと名乗るのを悲しく感じてしまったが表情には出さない。
「息子がいつもお世話なっている。招待を受けよう。」
「ありがとうねティファさん・・あなたもポップも無理はしないでね・・」
スティーヌも眼のふちに涙を溜めながらもティファを優しい言葉で労わる。
早く大戦など終わってほしい。戦わなければいけない子供たちの為にも。
夏の少し前に大戦が始まってから早三か月経とうとしており、迷いの森にも秋の気配が感じられる。
木々の葉は色づくとまでは行かなくともうっすらと端を染めており、まだまだ咲いているハナミズキ、野ばらの群生が歩く者たちの目を楽しませ、木々の間からクラブアップル・ノブドウなどが美味しそうに実を付けている。
ジャンクがなれた道を、妻と少女が歩きやすいようにとなるべく平らな道を選び、ポップとスティーヌが他愛も無いお喋りをしながら付いて行き、その後ろからティファは目につく秋の収穫物を背負っているリュックに入れながら付かず離れず歩いている。
高くにあるノブドウは普段ならばジャンプしてとるか、空飛ぶ靴を使うかをしているがスティーヌたちを驚かせないようにと、森に入ってすぐに仲良くなったドラキーたちに取ってもらう。
それとポップ達には見えないが、精霊達もティファの優しい気配に寄ってきて、森の美味しい木の実はどれかを教え、取りに行けないと伝えると持ってきてくれる者達もいて賑やかだ。
ドラキーたちやゴルバットもパタパタとティファの周りを旋回しながら付いてくる。
「なぁポップ、ティファさんはいつもモンスターと友達になれんのか?」
「そうだよ・・おかしいか?」
「いんや、おかしかねえが優しい子なんだな。」
当然ティファに初対面のジャンクは驚き息子に聞くが、おかしな子とは思っていない。
挨拶も向上もしっかりとしたいい子であり、ああやってお友達がすぐにできるのは優しい証拠なんだなくらいにしか思ってない。
伊達に魔族の友達はやっていない、多少の事ではびくともしないジャンクの姿に一層頼もしさを感じるポップとスティーヌだった。
なんやかんやとスティーヌもティファと共に食材取りをしながら小屋に付いた。
ダイ達が首を長くして待っているだろうか?
矢張り書いてしまうアフターストーリー的な事。
今回のスポットはポップでした。
勇者一行として戦うのは名誉な事かどうか分かれるところだと筆者は思います。
ドラクエの世界であっても、我が子を戦地に出したいという親こそ少ないのではと。
原作で鬼岩城に向かっていくポップを泣きながらも見送るスティーヌさんと、それを抱きしめて大丈夫だと息子を信頼して見送ったジャンクさんの大ファンの筆者としては、ジャンクさんとスティーヌさんのポップを思う気持ちを描き切れていればと思います。