「う~遅いよティファ達・・迷子になってないといいけど・・」
「ダイ、この道に詳しいポップの父も一緒なのだろう?もう少し落ち着け。」
「そんなこと言ったて、ヒュンケルだってさっきから窓の外何度も見てるじゃないか。」
「う・・・まぁ少しは落ち着け。」
「二人とも・・ティファならば大丈夫だ。」
二人にこの言葉を言っているのは何度目だと、クロコダインも少々お疲れ気味になっている。
戦闘になれば思い切りよく戦い、常勝中の勇者とその戦士はティファが少しでも絡めばからっきし駄目になるというステータスでも獲得してしまったのではないかと、クロコダインは本気で二人を心配し始める。
二人ほどではないにしろメルルとマァムも落ち着かず、チウも匂い辿って迎えに行った方がいいのではとまで言い出す始末。
「お前さん大変そうだな。」
「むぅ・・いや、普段はしっかりとした者達なのだが・・」
「あと数人来るだけなのにこんなにそわついて何なんだ?」
初対面で気難しそうでおよそ他人の心配などしなさそうな魔界の名工に労わられるほど、クロコダインは周りに落ち着くようにと促しまくって気分はもう保父さん状態。
ダイ達も小屋に着いた当初は礼儀正しく挨拶をしてダイは剣のお礼と使い心地と感想を、ヒュンケルも使用している魔装シリーズのお礼と、魔剣を破壊したことのお詫びも述べた後に魔槍の修復もきちんと頼んだところまでは良かったのだが・・。
流石に人情を表に出すのが苦手なロンベルクも少々同情する状態だが、もっとすごくなるのはこの後だったりする。
-ピクン-
少し落ちてきた気の葉を踏む複数の足音がロン・ベルクの魔族の耳に届いたとき、ダイにも届いたものがあった。
「ティファが来た!!」
小屋までおよそ二百メートル先だが、妹の匂いは絶対に間違えない!!
「ティファ―――!!」
兄なんだから妹は全速力で迎えるべし!!
ダイは小屋の扉を物凄い勢いで開けると爆速でティファの下に向かい-ガッゴン!!-
「いきなり抱き着かないでよダイ兄!!」
「遅いから心配したんだよティファ!」
「ポップ兄とジャンクさん達もいるのに何の心配があるの!」
いきなりダイが爆速してきてティファに抱き着こうとした時はポップもジャンク達も驚いたが、目にもとまらぬ速さで抱き着かれる前にダイの頭に拳骨を瞬間で落としたティファにもびっくりだ。
すったもんだの兄妹ならではの言い合いというじゃれあいしながら小屋に辿りついたティファを、矢張りヒュンケルが確保。
ティファが目の前に来て抱き上げられてようやく一安心だと、少し強張っていた体から力が抜ける。
マァム・メルル・チウも着いて早々抱き上げられているティファに何事もないように話しかけ、全員を宥めていたクロコダインとてもティファの頭を撫でて笑っている。
ポップもその光景が普通だとばかりに見ているが、初対面でティファの事をよく知らないジャンクとスティーヌ、ロン・ベルクからすれば何事だと思うほどだ。
迷いの森とはいえジャンクの家から小屋まではせいぜい数キロ程度で、道に迷わない限り数十分で付くほどの短距離だ。
そんな程度の距離しか歩いていないティファの身をここまで案じているのか全く分からない。
「おいポップ、皆ちと大袈裟すぎやしないか?」
「うん?いいんだよ親父、ティファに関しては俺達はいっつもこんな感じだよ。」
ジャンクのもっともな疑問をポップはいつも通りだと帰して終わらせる。
ポップは母スティーヌと話しながらも周りへの警戒は一切緩めていなかった。
いつまた空間から手が伸びてきてティファが攫われそうになってもギラで腕を切り落としながらトベルーラでティファを確保できるように全身に魔力を張り巡らせていた。
あらゆるものたちから狙われてしまっている妹を守るにはこれくらいの事は自然に出来て然るべきである。
疑問に思いながらも当人からしっかりとした挨拶と、お礼を兼ねての昼食会をさせてほしいと言う提案を気に入り、ロン・ベルクはあっさりと許可を出す。
「言っとくが台所はここにはないぞ。」
自炊はせず、肉は竈の火で焼き後はその辺の果物かジャンクが持ってくる酒で生活をしている。
・・・・えっと・・典型的な独身貴族様だこの人。それもちょっと駄目系な。
家なのに台所がないというまさかのロン・ベルク発言に、食は生きていく上での基本を標語に掲げているティファにとっては聞いた瞬間血を吐きたくなる衝撃を味わってしまった。
気を取り直して次いってみよう!
「分かりました!外で調理しますので大丈夫です。」
ここは野宿グッズが物を言う!デルパ~。
丁度全員外にいるので説明の手間が省ける。オレンジ色のマジックリングから調理台になる背が低く平たい天然石を小屋の隅辺りで出し、竈にするためのレンガも出してあっという間に三基の即席竈を作り、鍋・包丁・俎板などの調理道具類を置くテーブルと調理器具を置き、料理の支度を整える。
「メルルさん、マァムさんお手伝い願います。できればスティーヌさんにもお願いできれば・・男の人達はその・・」
「俺は手伝うぜ。」
「ありがとうポップ兄~。ダイ兄達は?」
「俺はヒュンケルと一緒にロン・ベルクさんに剣の手解きしてほしい。」
「支度を整えるのは手伝うぞティファ。」
「分かりました。頑張ってくださいね、うんと美味しい物を作ります。」
眩しいほどの笑顔でエールを送られたダイとヒュンケルは生きててよかった、ティファが可愛すぎると内心で悶え苦しむ。
ヒュンケルが魔槍の修復を頼むために、エイミから借りた旅人の袋から槍を出した瞬間にロン・ベルクにしこたま怒られた。
如何に自己修復機能を備え付けたとはいえ、こんなにヒビが目立つ様では早晩魔槍も魔剣のようなってしまうと。
「お前たち俺の特訓受けろ!いくらいい武器作ってやっても、碌に使いこなせず壊れましたではたまらんからな。」
鍛冶屋魂の意地にかけても、この二人には自信作を使いこなしてもらおう!!
男達が戦いで頑張っている間、ポップは一人女子たちに交じってキャッキャッウフフと料理作りを楽しんでいる。
男達が戦いで頑張っている間、ポップは一人女子たちに交じってキャッキャッウフフと料理作りを楽しんでいる。
「ポップ兄って手先器用ですね、野菜切るのこんなに上手だなんて。」
「ほんとねポップ、料理得意だったの?」
「いんや~先生ってさ、戦い以外にも家事全般教えてくれただろう。」
「そういえばそうね。それで料理も教わったのね。」
「素敵な先生ですね~。」
「ポップと一緒に料理を作れる日が来るだなんて・・母さん嬉しいよポップ。」
「よせやいお袋・・家に帰ったらさ、覚えた料理全部作ってやるよ・・な。」
「ポップ・・ええ、今から楽しみだわ。」
良い感じの親子の会話に、聞いていたティファ達の目にうっすらと涙が浮かぶ。
ポップが言ったようなことが出来る世の中に早くしてあげたいと。
「ほらどうした、俺に一太刀も入れられないで終わる気か。」
「はぁ・・うう~、まだまだ!」
「もう一度!」
木刀一本でダイとヒュンケルを相手にしているロン・ベルク息を乱すことなく立っているが、二人がかりで有利なはずのダイとヒュンケルは汗まみれでボロボロになってへたってしまっている。
強すぎる。打ち込んでも軽くいなされバランスを崩した所を打ち込まれ、それを隙と捉えてもするりと避けられる。
ロン・ベルクからすれば二人は真に武才の塊であり闘気量も申し分ないとみているが、如何せんダイは実戦の経験不足であり、ヒュンケルも本来は剣士であり槍はほぼ素人なので剣の達人であるロン・ベルクに勝つには色々と不足をしている。
それを承知しながらもダイとヒュンケルは諦めることなくロン・ベルクに喰らいつく。
強くなり、世界とティファを守る!!
残りの気合をかき集め、最後に一矢報いるために渾身の力を体と木刀に込めた二人の気迫についついロン・ベルクは口元を緩めてしまう。
良いぞ、その気迫のまま仕掛けて来い。
礼儀も態度も何もかも気に入っているうえに、向上心の塊であるダイ達は本当に気に入った!全力で来るのならば相応の力で返してやる。ありったけを打ち込んで来い!
「ご飯できましたよ~。」
そんな気迫満載、男の情緒溢れた場はティファの呑気な声でぶち壊された。
それも遠くから言ったのでは失礼だろうと、ロン・ベルクの真横で。
「ちょっとティファ!今いいところだったんだよ!!」
「ティファ・・その空気をだな・・」
「空気でお腹は満たされません。」
「そうだけどさ・・」
出鼻崩されたとダイとヒュンケルは思わず脱力してしまい、ピリピリした戦いの場で固唾をのんで見守っていたチウもティファにがっくりするが、横に来られたロン・ベルクは驚愕をした。
嘘だろ!側で見ていた大ネズミの表情を見ないで分かるほど全神経で気配を探っていたのに、こいつが声を出すまで気が付かなかったなんて!!
今までいやというほど魔界で戦い、時には格上の上位竜や魔神級を相手にしてしまい死掛けたことはあっても、戦いの最中に気配を察知できなかったことは一度としてない。
それこそ調子がいい時は数キロ先の気配まで読める時があると言うのにだ!
「おい。」
「はい?」
「お前さんは強いのか?」
「さて・・・どうなんでしょうね~。」
ロン・ベルクの当然の質問に対してティファははっきりとした返事はしなかった。
たんに誤魔化したわけではない。今自分の強いランキングの味方では堂々一位が鬼岩城をぶった切ったダイであり、敵では間違いなく大魔王であり、その二人に比べれば自分は強いと言い切れるのだろうかと悩んでしまう。
よって疑問形の答えしか返せないのが実情だ。
真顔で返事をしたティファは、料理が冷めてしまうとダイ達をせかしている。
そんなティファを見てロン・ベルクのティファに対する評価が決まった。
変わった奴だな
ティファの評価は矢張りこれ一択なのだろうか?
今夜はここまで。
ようやく一日の半分、昼食会に差し掛かれました。
今週中までには真夜中の使者編を終わらせたいです。
さてロン・ベルクが疑問に思うほどの主人公の実力は高いのですが本人の飄々とした態度と天然が相まって読み辛く、本編でもさほど主人公は戦闘では活躍を見せていません。
(そもそも戦闘シーンが少ない上に文章が下手すぎる)
一度どこかで無双させてあげるべきか、主人公が可愛い筆者も悩みどころです。