勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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パプニカと書いて不運に巻き込まれやすい国と読む


大魔王の篩②

目が覚めたらパプニカ王城の寝室とは違った。だからと言って自国のテランの自室とも違う。質素なベッドに周りは石造りの部屋で殺風景な景色が広がっていれば、寝ぼけていたとしても嫌でも分かる。

 

「目が覚めましたかテラン国フォルケン王。」

 

目覚めて体を起こしてみれば、正面には少々変わった風体の長身の者が立っている。声から察するに男の様じゃな。

 

「儂を此処に連れてきたのはその方か?」

「いいえ違いますフォルケン王。それよりも僕・・いいえ、正しくは僕等から詫びを言わねばなりません。」

「ほう、その方は何者か?」

「はい、僕は大魔王バーン様の直属の部下でキルバーンと申します。詫びと言うのは今回の一件では貴方のような人質を取るつもりはなかったのです。」

「ふむ。大魔王という事は儂は魔王軍の何かしらの行動に質として取られた・・というわけではないのか?」

「ええまぁ・・バーン様はご本人は戦いにおいて人質を取るのを嫌う質なのですが、現場を任せた者が暴走をしまして貴方にはご不便をおかけしますが此度の事が終わるまでこちらでお待ちいただきます。」

「儂を帰そうとは?」

「如何に主が嫌う事であっても、魔王軍が弱気だと思う行動をとると?」

「・・・愚問じゃったな、忘れてくれ。それよりもこの件が直ぐに済みそうな口振りだったが?」

「終わります。あの愚物が()()()()()に勝てるはずもありませんし、そもそも貴方を人質に取った時点で今回の作戦がご破算になりそうなので愚物にはこちらからもペナルティーを科す気満々なのでご心配なく。貴方を五体満足でお帰しをさせていただきます。」

「無事に・・」

「はい。僕はこれから出かけねばなりませんが愚物に手出しをしないように釘は刺していきますのでどうかご安心を。」

「どこに?」

「今回の騒ぎの中心地であるパプニカ王城に。」

あの子の怒りを解きに行かないと、本当に今回の目的達する前に問答無用でこの塔に向かってくるだろう。怒り心頭に発して愚物を斬る分には構わないのだが、長年主を悩ませ続けていたあの大騒動の真相を知るべく、昨日の今日だが会いに行かねば。きちんとお話してもらえるように、頑張って今回の件は全力で誠心誠意をもってお詫びしないといけないね。

え?昨日脅した件についてのお詫び?しないよ。だって昨日のは本気で実行するつもりだったんだもん。

 

お詫びの口上何にしようと真剣な目つきで右手の親指を顎に持っていきながら、腕を組んで思案するキルバーンの様を見ているフォルケンはこの状況下でも不思議と落ち着けた。

 

「・・・余程怒らせたら不味い者の下に行くのか?」

「ええ・・あの子は怖い子ですからね~。下手に怒らせたらどんな被害がこっちに来るか分かったものではありませんので・・いっそあの愚物の首持っていけば許してくれるかな~・・・味方を殺したって反対に怒りそうか。」

かといって人質返せないしとぼやく姿に、不謹慎ながらもフォルケンは吹き出しそうになってしまった。

「今回の件は地上に被害を出すつもりは?」

「は?あ、申し訳ありません失礼を。元々決戦は近いですので無駄な殺し合いはしませんよ。」

様々な機密事項を抱えているキルバーンだが、地上側だとてこのくらいの事は当然予想しているだろうからこの程度の情報は漏洩には当たらないと堂々とフォルケンの疑問に答える。

 

「ふむ、今回の事は現場の暴走であり魔王軍の総意ではないと儂から一筆したためるかね?」

「よろしいのですか?」

 

キルバーンは意外そうな面持ちでフォルケンを見る。

愚策とはいえ理想を掲げた徹底的な平和主義者のテラン王が、魔王軍の自分の言葉を信じてあまつ手を貸そうとは。

 

「なに、そうした方がこの騒動もすぐに収まるのであろう。儂は王としての資質は欠けるが、それでも政治と言う伏魔殿の中で目を鍛えてきたつもりじゃよ。」

 

風体こそ奇抜だが、このキルバーンという男には実がある。人質の自分に対する礼儀もあり、虚言妄動で人を誑かす者でもなさそうだ。

詫びている時、いや自分に話しかけてきた時から申し訳なさそうな雰囲気が漂っており、-お嬢ちゃん-の話をしていた時は困ったような気配がして笑いそうになった。

敵であることに間違いはなく、近い将来どちらかが滅びるだろうが今回は自分が手を貸してもよかろう。

 

そこは王としての懐の広さであり、これをして百にも満たない国を国家として纏め上げている度量であるのを、残念ながらフォルケンが自覚していないのが勿体ない。

 

「ではご期待に沿えるようにこちらも務めさせていただきましょうテラン国フォルケン王。」

 

敵の大幹部に一礼させる本物の王だという事を。

 

 

などと言う平和的な一場面があるなどと思いもしないパプニカ王城は大混乱を極めていた。

今朝の夜明けに地底魔城跡に大規模な塔が突如として姿を現し、警戒すべくすぐさま支給されている貴重なキメラの翼を使って王城に警告が発せられ、さしもの現状に病状のレオン王が起きて陣頭指揮をとろうとしたのをレオナとロムスが文字通り体を張って止めてすぐさま各国の王に警戒するように回ってみたら!城内にいるはずのフォルケンがいなかった!!

 

「あいつ燃やす!!!」

 

城内がパニックになりかけたところにルーラとガルーダでやってきたダイ達にすぐさま話せばなんと怒りを発したのは温厚であるはずの料理人のティファだった!!

 

「あの塔にいるのが敵なんですよね!今すぐぶっ潰してきますので少々お待ちを!!」

「駄目よティファ!無茶しないで!!」

「行ったら泣くぞ俺達!!」

「ティファ今回は堪えて!」

 

どうやらティファは怒らせてはいけない部類の様で、マァム・ポップ・ダイが本気で涙目になって止めているのを見た大人達は却って落ち着きを取り戻せてしまったほどだった。

 

「人質は無事に・・」

「ティファさんが一人で行くのが駄目なんです!」

「あう・・分かりました・・」

 

 

「姫様!鏡に・・鏡に血の文字が!!」

 

ダイ達の騒動が一段落着きそうになった時に、次の騒動が湧いて出た。

 

先のハドラー大戦の時と言い・・この国は何かに呪われているのかしら?

パプニカ王女として泣きたくなってきた。




プロローグ話が続きましたが、次回からサクサクと進みます。
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