勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

159 / 536
展開とゴールは決まっているのですが、そこに辿りつく道筋を書くのは難しく
投稿が遅くなってしまいました(´;ω;`)ウゥゥ


大魔王の篩の篩⑥

水晶を手に持って五年前のあの夏の日を思い浮かべればいい

そうすれば水晶が勝手に私の記憶を脳から直接読み込んで、嘘偽りのないあの日の事を映像にして壁に映して全てが分かる

 

そしてみんなが見てしまった

 

あの五年前の幸福で残酷なあの日の事を

 

 

「それじゃあ危ないよ鳥兄さん。」

「そうだよ、怪我しちゃうよ。」

「うっせえぞガキンチョ共!!ハリネズミの針位俺に抜けねえ!いって!!!」

「ほら言ったでしょう鳥兄さん。長いのが抜きやすくて中位と短いのはまだ抜けずらくてやろうとしても滑って指先怪我しやすいって。」

「マーチ、確かいつも持ってる工具道具の中にピンセットあったろ。」

「これでしょう、ほらこうしてこうで・・抜けた!」

「ちっ・・・あと全部自分で抜くよ・・」

「ピンセットどうぞ。」

「・・・ふん・・こうすりゃいいんだろう。」

「そうそう、怪我しなくて済むよ。」

 

「ねえねえ、牙のおじさんはどうしてそんなに筋肉ついてるの?」

「俺も筋肉の付いたかっこいい大人になりたいんだよ!何か修行してるなら教えてくれよ。」

「う・・いや・・・日々鍛えている。それだけだ。」

「ふぇ~、それだけでこんなになるもんなのか。」

「種族の違いかな。うちの父ちゃんも木こりで毎日木を切って持ち運んで、筋肉盛り盛りでもここまではねぇぞ。」

「おっちゃん、特別なことしてるんなら教えてくれよ~。」

「いや・・そういわれても本当にないのだ少年達よ。」

「少年達だって。」

「俺達いつも悪ガキどもとしか呼ばれてねえからくすぐってぇな。」

「おじさんは強いだけじゃなくて学もあるんだね。文武両道だ!」

「なんだよアル、お前迄気取ってさ~。」

 

「あの・・・この花の冠どうぞ・・」

「よかったらうけとってください。」

「・・・・・もしかしなくとも俺にか・・」

「はい!・・ここら辺は薬草多くてもお花が少ないので・・・」

「皆で探して作ったの!」

「ニーナちゃんは鳥のお兄さんに引っ付いてるけど作るのあの子が一番上手だから、ニーナちゃんに教わりながら作ったの。」

「お前達・・・・俺は・・俺は人間ではないぞ・・」

「え?」

「はい?」

「あの・・それはその・・・半魔さんですよね。」

「お話で聞いたことあるから知ってます。」

「魔族の姿に、顔に黒い文様がある種族がいるって。」

「私達は子供でもその位は知ってます。」

「知ってて・・なぜこの花冠を俺に・・」

「だって・・」

「ねぇ・・」

「「「「お兄さんかっこいいから!!」」」

 

 

 

懐かしい・・・子供たちの誰もガルダンディ・ボラホーン・ラーハルトを恐れず、それどころか無邪気に笑ってルード君の歯磨きを作りながら三人にも温かく接していたあの時。

 

ガルダンディは文句を言いながらも最後まで男の子たちを拒絶する事無く

ボラホーンは強くなる鍛錬の仕方を教えて

ラーハルトは戸惑いながらも花の冠を受け取って途方に暮れて女の子たちにもごもごお礼らしき言葉を言って

 

そんな温かい素敵な思い出を・・・私が粉々に・・・

 

ティファは自分も過去の日々をまじまじと見て更なる後悔が胸を襲う。

 

あの時、自分が運命を変えて三人を救い出す。誰も不幸にしないように自分ならばできると慢心をしていた。

今目の前で繰り広げられている竜騎衆達と子供たちの交流は大戦後も続けられるように自分こそが出来ると信じて、原作知識があるから、能力を知っているから、自分ならばと・・・結局自分が壊すことになったのに!

 

何と愚かで思い上がった考えを持っていた事か!誰も救えず、ほぼ原作通りにしか物事を進めておらず!ほんのわずかな者達しか救えていない自分の!!何と愚かで醜く・・・温かくて懐かしい日々だったんだ・・

 

 

ふと視界が暗くなる

視界が何かに遮られた。

 

「もういいよ、充分だお嬢ちゃん。」

 

涙を静かに流すティファを、キルの大きな右手で視界が遮り左手でティファが両手で持っている水晶を取り上げる。

 

ここまで見ればもう充分。あの竜騎衆三人が何故、子供を虐殺したと言う魔族達に切れて喧嘩したのかよく分かった。

今見たテランの子供たちが三人の脳裏に浮かぶ程、心の奥底まで根を張り息づいてしまったからに他ならない。

 

自分から見ても、あの子供達は素晴らしい。世の垢に染まらず、無邪気で賢くそしてみんな優しい子供ばかりだった。

 

この戦いで死なすには確かに惜しいが、柄にもなく来世での幸せを願ってしまう程に。

 

「もう・・・いいのですか?」

「うんいいよ。君はそれでも戦ったんだね。」

「っつ!」

「辛かったね、悲しいね、・・辛い事をさせてしまったね。」

 

それは何を指しているのか。

自分の過去を再びこじ開けた事か。魔王軍として敵対をさせた事なのか。それとも今大戦を起こして自分を戦い続けけさせている事をだろうか?

 

どの事にしても、その道を選んだのは・・

 

「これは私の選んだ道なのですよキルバーン。」

「お嬢ちゃん・・」

 

キルの右手をそっとどかしながら、ティファは周りを見ながらキルに振り返る。

キルが自分のこんな近くに来ているのに、王や護衛達が騒がないどころか、仲間もあの兄すらが何の反応もしないのは何故なのか。

 

見て納得をした。

誰もが俯き涙を流し、途方に暮れている。

この場にいる全員がティファの過去と竜騎衆と父バランとの因縁を知っている者達ばかり。

昨日ティファに話させた事だけでも後悔したばかりの所に、あの映像の衝撃は計り知れない程の影響を与えて、ダイですら妹に近寄れない。

 

何故ならば自分が弱いがゆえに記憶を消され、その為に妹があの三人を直接手をかけねばならない羽目に陥らせてしまったのだから。

全ては自分が弱かったために!

 

それはダイ達のみならず、仲間全員縛り付けうごけなくした。

自分達の弱さが、ティファのあの美しい思い出を穢させてしまい壊させてしまった。

なのにティファはその辛さも悩みのひとかけらさえも自分達に見せる事無く、笑っている・・笑おうとしてくれている・・・自分達が弱いせいでティファは・・

 

 

ティファは力強い瞳をキルに向ける。

片膝をつき、自分と目線を合わせているキルの瞳を。

 

「分かってる。ここまでの事をさせたのだから・・」

「ええ、何故この記憶をあなた方は知りたかったのか教えていただきましょう。」

 

()()()()()()()()()()()()()()今起きている事態を解決させる道筋を見つけるために。

この篩の篩を終わらせるために。

 

これ以上自分の過去に触れられない為に

 

キルはティファの何かを感じ取り、余すことなく魔王軍に起きた大混乱の全てを語る事にした。

本当は混乱した内容を語るつもりはなかったが、ティファに辛い事をさせてしまっている詫びとして。

 

 

 

 

 

 

キルがポツポツと語った事はティファの予想の範囲を完全に超えていた。

 

あの竜騎衆達と戦いの時に話し込んでいた事で、自分が魔王軍の事を知っていて近づいた過去があるのではないか、それを探られているとばかり思っていたが、そんな事ではすむ話ではなかった。

 

曰くティファは魔王軍の尖兵となるべく魔界のモンスター達全てを使い物にならなくしてしまい下部組織を丸ごと潰し、それどころか魔王軍の高官達を数名失脚せしめて魔王軍を文字通り大混乱の渦に叩き込んでいた。

 

事の発端は竜騎衆達三人が子供たちの話に切れて、魔界の食堂で大乱闘を引き起こしたところから始まる。

 

「その中にね、尖兵モンスター達の中でも強い仔がいてね~。その喧嘩の発端から三人が圧勝するところまでを全部見ていたんだよ。」

 

魔界では強さこそが全て。その中でも強者の上位に入るあの三人が、人間の子供の死に途轍もない怒りを見せた事、そしてその怒りのまま百人近い魔族・魔者達を半死半生にされて行く様を見てそのモンスターに、本来ならば生涯思う事のない思考が生じてしまった。

 

人間、特に人間の子供は襲ってはいけないのだろうか?

 

なまじそのモンスターは周りよりも知能が高いドラゴン種であり、地上の事も人間の事も知識と知っていたのが災いしてしまったのかもしれない。

強者三人が擁護するほどであれば、人間の子供は襲ってはいけないのだろうか。

その思考を後押しするように、同じ事で三人と周りは争い続けては勝ち続けていることが裏付けになってしまった。

 

そしてその思考は野火の様に全尖兵達に広がってしまい、遂には人間を襲う事は良い事なのかと口にしてしまった者が出た。

 

「その報告を受けたミストは慌てていたね。本来ならそのモンスター達は何かを疑問に思うことなく命令を遵守するように作り変えて生まれた仔達ばかりだからね。どこからそんなバグが入ってしまったのか探すのに苦労していたよ。」

 

一つの命令が全体に届きすぐさま行動する様に調教していたのがこの件では災いしたと言っても過言ではない。

 

リーダー格の竜種のモンスターの疑問は近くの者達から、次から次へと移ってしまったのだから。

 

「事態を重く見たバーン様がミスト自ら調べるように命じて、超竜軍団たちを隔離する為に反乱勢力討伐に送り出したんだよ。」

 

そして真相に辿りついたミストは、暗黒闘気の生命体として生を受けて-二度目-

の恐怖を味合った。

一度目は主バーンとの出会い。そして二度目が下部組織の尖兵隊全軍がたった一つの思考によって壊滅をさせられたことだ。

 

疑問を持ってしまったモンスター達は最早使い物にならない。

仮に戦闘力の高さで地上に出したとしても、人間を確実に襲うかどうか分からない軍なぞ役に立つものではないどころか害でしかない。

ハドラー大戦とは違い、地上を消す為にも素早い進攻こそが肝心であり、その為に命令が瞬時にいきわたり、従順なモンスター軍が必要であったというのにだ!

 

そもそもがあの竜騎衆達とバランは人間憎しで魔王軍に所属をしたはずであった。

その事は、あの三人組が騒動を起こした時バーン自らがバランに確認を取っている。

 

人間に対する恨みが消えかけているのかと際どい言葉を使って

 

案の定バランは怒り狂った。自分達のこの憎しみを疑うのならば魔王軍なぞ出ても惜しくもないと激高をして。

流石にそれは不味いとバーンは言葉のみであったがすぐさま謝罪をして事なきを得たが、それにより三人への聞き取りをする事は出来なくなった。

そんな事をすれば今度こそバランは出ていくことは確実であったからだ。

 

調査は続き、下部組織全体を入れ替えるために途方もない数のモンスター達を捕獲し、魔界各地の王達からも貢がせ調教しなおすという労力の中、魔王軍の上層部からも人間は全て滅ぼさなくともよいのではないのかと、バーン達にとって看過できない思想が蔓延しようとしていた。

 

尖兵隊長格のモンスターが見てしまったように、上層部の一部も見てしまっていた。

 

下部組織丸ごとの入れ替え、上層部の首のすげ替え

どちら一つにしても天地がひっくり返るほどの大騒動であり、魔界の神をして戦慄せしめた事態である。

どこかの組織、主にヴェルザーの策謀か、あるいは天界がとうとうバーンンの勢力に手を伸ばしたのかと疑いあらゆる手を使い探らせたが痕跡一つ見つけられなかった。

 

「見つけられなくて当たり前だったんだね。」

 

キルは本心からしみじみという。

 

あの五年前の大騒動は誰の策謀などではない。

テランと今目の前にいる少女の無邪気な優しさが、竜騎衆達三人の心を変えてしまっただけなのだから。

 

「君のしたことではないかもしれない、けれども君がいなければ起きなかった騒動の、これが全てなんだよ。」

 

先のテラン戦において、あの大混乱がたった一人の少女の存在が引き起こしたことはミストをして三度目の戦慄をさせ、バランが去ってでもティファが軍に来なかったことを心底安堵させ、この篩の篩をさせる決意をバーンにさせたほどだが結果はティファの優しさだったのは幸運なのか、これ以上の悪影響を魔王軍に与えないように今直ぐに殺してしまうべきなのか。

死神キルは本気でため息をつきたくなってきた。




たった一人の存在がここまでの影響を及ぼす

魔界の神様にとって天敵になったかもしれない主人公でした。

この話をどう描けばいいのか詰まってしまい、長らく投稿せずすみませんでした。

ここから小石が取れた水路の様に、滔々と書ければと思います(;^_^A
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。