勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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ようやくお出かけです。
よろしくお願いします。


初めてのお出掛けinロモスの港町

今日で五歳・・やっとの五歳だ~‼

長かった~色々計画している事練って、修行していても長く感じた・・。

これでお外に行っても世間の人達からは、近所の子供のお使い位に見えるはずだ。

行く場所決めて、ウォーリア船長さんの約束貰って半年間じいちゃんの説得の方が苦労した。

 

じいちゃんからは猛反対の嵐きた!!

 

「何を考えておるのじゃティファ!!!」

「でもじいちゃん・・。」

「でもじゃない!お前の様な子供がそんなに遠い外に行ってどうするのじゃ!!」

「世界勉強したい。」

「危険じゃ!!」

「島の皆より強い人滅多にいないってウォーリアさん言ってた。」

「・・移動は!」

「ウォーリアさん達が船乗せてくれるって言ってくれた。」

「外の世界にはゴールドというお金が・・」

「島の薬草とキメラの翼を少しずつ売る。」

「・・何のためにそこまで・・」

 

半年間粘って粘り倒してようやくじいちゃんの心がほぐれてくれた瞬間きた~!!

 

「世の中を知りたいの、世界は広い!自分の目で見て体験して知りたいの!」

 

知識で知っているだけの積りの世界なんて本気で守りたいという気概にかけてしまう!!

知識だけじゃダメだ。

それだけでは最後の最後でのポップのような踏ん張りがきかず、何度も力尽きるたびに心折れそうになった『ダイ』の方になりかねない。

私が目指すのはあのポップの諦めないしぶとさだ。

普段はお調子者で逃げ癖あって・・実際何度か逃げようとしたけれど、状況の困難と、自分自身の弱い心を克服していき、一行の心の支えとまでなった人。

バランを改心させる一助となり、暗殺者・死神キルバーンに目を付けられて、ハドラーやあの大魔王バ-ンにまで一目置かれた一般人代表のポップが私の目標だ。

 

私の考えでは彼は一般家庭で愛情あふれる家族の中で育ち、

血脈や因縁だのの己ではどうする事もできない苦悩が無く、

しがらみに囚われ事が無かったからこそ、あそこまで突っ走る事が出来たと考えている。

 

私はその反対をする。しがらみの根を世界中に植えに行きたい。

その根が深くなり、『守り抜きたい』気持ちが、最後の瞬間まで踏ん張れるように。

 

そんな気迫満載のティファの気持ちに、とうとうブラスが折れる日が来た。

 

ティファの気持ちは本気のようじゃ・・

行きたい理由がよく分からんが、後になってみればどんな理由があったのが分かるのがティファじゃしな。

 

芋畑作りの時もそうじゃった。

芋を食べずに芽が生えてきたのをそのまま大事そうに取っておいて、料理にしようとしたら怒り、ある日二つに切って掘って柔らかくした土の中に入れていた時は何をしているのかがさっぱり分からなかった。

植えた場所に水をかけ、周りの草をとっているうちに芽が伸び、

二月後には芋が十数個も採れた。

芋を採り終えた後、あれは畑って言うんだよと、ようやくティファが笑いながら説明をしてくれた。

流れ着いた本の断片を読み解き、畑を作ってみたのだと。

 

・・最初に出来た芋は水っぽくグシュグシュとしていて、さほど美味しくなかったが、その後ティファが土や枯葉を混ぜて弛まず改良して、今は美味しくなっている。

何よりも食糧事情が安定してくれた。

 

自分たちモンスターだけならば島の自然の物だけでもいいが、ダイとティファには

栄養のあるものを沢山食べて育ってほしいと思っていた矢先の出来事だった。

今では芋の他に、ウォーリア殿から頂いた野菜類、ハーブ類を育てて食卓を賑わせている

 

・・芋畑を見た時、ウォーリア殿は驚いておったの・・。

 

―まさか畑の知識がお有りとは・・本当にブラス殿はすごい。-

―いえ、これはティファが作りましたのじゃ。-

―なんとあのお嬢さんに教えて作らせたのですか!-

―いやいや、流れ着いた本に書かれていたのを真似たそうですじゃ。

その本はもろくなっていて、今はもう手元にないと・・- 

-ブラス殿‼-

説明をしていたら、急にウォーリア殿が手を握りしめてきてびっくりしたが・・

 

―ティファ嬢はひょっとしたら天才児かもしれませんぞ‼-

 

その言葉の方がもっと驚いたが・・理由を聞いて納得もした。

 

―畑とは古来より人が考えて今に至る技術で、英知の結晶なのです。

それを断片的な情報から、畑を知らないで作ってしまえたティファ嬢は天才としか

言いようがありません。

よろしければロモス国の学舎に話を通して、私達の誰かの娘として勉学を習わせてみてはいかがですか?

ダイ君もあの年であそこまで読み書きが出来れば世間の子供よりも並外れています。二人一緒にどうでしょう?-

 

二人の将来を、ウォーリア殿は真剣に考えてくれた言葉じゃったが・・二人が嫌がった。

 

―俺ずっとじいちゃんの側にいたい!島の皆と離れるなんて嫌だよ!!-

―先生はじいちゃんだけなの!他はいらないもん。-

 

ウォーリア殿はガッカリとしておったが・・儂は嬉しかった。

二人があそこまで儂と島の者たちを愛してくれている事が分かって・・二人の将来の芽を一つ潰してしもうたが、喜んでしまったの・・。

 

あの子らを浜辺で拾ってもう五年が経つのか。

両親が現れる気配は全くなく、ウォーリア殿達もできる限り探して下されているが

手掛かりはひとつとしてない。・・ひょっとしたらご両親はもう・・。

それならばなおの事、あの子等の育ての親としてしっかりと育て上げ、生きる世界を広げてやらねば‼

もしかしたら・・何かの奇跡が起こり、両親と巡り合えるかもしん。

 

微かな望みと共に、許可をしよう。

あの子はダイとは違いとてもしっかりとしておる。

 

 

「ティファや。」

「なにじいちゃん。」

「外に出て様々な事を見て聞いて学んでくるがよい。」

「・・本当にいいの・・」

「うむ、行っておいで。」 

「・・っう~・・じいちゃん大好き!!!愛してる~‼」

「あ~!これティファ‼」

 

許可が下りた時、あんまり嬉しくなってじいちゃんを押し倒してしまった。

 

そして初めてのお外、ロモス王国in港町に上陸だ!

・・あんまりにも嬉しすぎて前日眠れなくて船旅は爆睡で過ごしたので覚えていない。

船長さん達にはしょうがない子と苦笑されました。

船を降りる時、仕事があって船員が同行できないので遠くに行きすぎない事、

買い食いはほどほどに、知らない人とあまり話さないようついていかない様を約束した。

島を出る時じいちゃんとウォーリアさんが真剣に話し合ってたし、約束はしないとだ。

 

「全部きちんと守ります。行ってきま~す。」

 

げんまんもしてお出掛けだ。

 

タラップを嬉しそうに降り、人ごみに紛れてティファが見えなくなったところで一人の船員がポツリと漏らす。

 

「・・行っちまいましたね船長。」

「口動かしてねえで手の方動かせ!そしたら早くティファちゃんに同行してあげられんだろ‼きびきび動け野郎ども!!!」

 

          「「「「ヘイ船長!!!」」」」

 

ティファを一人にして、船長以下野郎どもは気が気でなかったりする。

誘拐やらなんやらの心配はしていない。

野生の暮らしで身に着けた俊敏力、腕力はよーっく知っている。

そっちではなく変な輩が目をつけて変態的な言葉をかけられたらと思うと、

・・言った奴は間違いなく魚の餌行きだ‼ 

ふわふわの艶やかな黒髪、生命力溢れた煌めく黒目、ふっくらとした唇、匂うような頬 。ティファはもの凄い美少女ではないが人を惹きつけてやまない魅了する何かがある。

元気いっぱいで眩しいくらいの笑顔が、他者を癒してしてくれる。

 

船の旅は常に危険と隣り合わせ。

近頃はブラスに海のモンスターの習性・行動範囲・縄張りを教わり、

そちらは回避できるようになり万々歳だが、海の脅威は他にも沢山ある。

デルムリン島で休ませてもらい、可愛い兄妹に癒されまくっている。

二人共無邪気でこましゃくれたところは微塵もなく、本当にいい子達なのだ!

そんな天使の片割れを守るぞと、ウォーリア達は燃えまくっている。

 

『絶対死守だ!!』

 

「フええ・・フェックション!・・何急に・・」

「大丈夫かいお嬢ちゃん、薬草のお値段五ゴ-ルドと、おまけにこれ付けとくね。」

「・・これって風よけマントですか?」

「そう。カール産で古びているけど丈夫で長持ち。

端が破けているからオマケであげるよ。」

「ありがとうございます。大事にしますね。」

「まいどあり~。」

 

ウォリア達の心配をよそに、ティファはルンルン気分で港町を満喫しまくっていた。

早々に馴染みになれそうな良い店を見つけられたと心が浮き立つ。

 

あそこの道具屋さんいい人だったし、店内清潔で品物の置き方も良かった。あそこで物の売り買いしよう。

他にも馴染みの店を作るべく動きくべく、あっちこっちをフラフラと覗き込み、気に入ったら商品を実際に買ってみる。

 

「リンゴください、んと・・ 十個で・・」

「お使いかい、小さいのに偉いね~。一個オマケ入れとくよ。」

「ありがとうございます。いただきます。」

 

ティファの天真爛漫な笑顔に、行く先々で大人たちに可愛がられてニコニコしている。

 

今日は初日だ、ゆっくり見物を決め込もう。

それにしても風強いな・・フード被っとこう。

カール産マントか、端に紅い糸の刺繍がかっこいい。いいもの貰えた~。

お土産のリンゴも一個多く貰えたからかじって見物だ。

 

このすぐ後にえっらい目にあうとも知らずに。




ドラクエの世界は識字率がさほど高くないと思うので、ダイもチョイ天才の仲間入りをはたしました。

船長やブラスの心主人公知らずで暢気していますが。次回―あのすごい人―に会ってしまって
肝を冷やして猛反省をします。

学校設定、マントは完全オリジナルです。

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