勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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後二、三話で終わらせねば( ー`дー´)キリッ


大魔王の篩の篩⑦

「結局あの時の大混乱に件の料理人は関わっていなかったと。」

 

キルの持って帰ってきた情報にバーンは静かにそう結び、隣で聞いていたミストは思いっきり納得がいかずに殺気丸出しとなり、今すぐにでもティファを八つ裂きにしに行く気満々となった。

 

それはそうだろう。

 

大騒動終息を本当に迎えられたのは騒動から五年の月日を擁した。

原因を探し出すのに、始めにとんでもない思考を持ってしまった原因のモンスターを探し出すのに半年かけ、原因が分かったところで下部組織は丸ごと使い物にならなくなってしまったために、用意していたモンスター達の代わりを広大な魔界からとはいえ集めるのに苦労をし、軍として使えるようにするための調教を施すのに実に五年と掛け、モンスター達を集める費用と調教師の費用に莫大な出費がかかり殺意が湧いた。

如何に主が巨万の富を有しているとはいえ、本来ならば出さなくてもよい出費を、それも高額すぎる無用な出費を強いた奴を八つ裂きにしてやると考えながら主とヒュンケルの食事の支度で包丁を使っていた時のミストは本気で怖かったなとは内緒であるキルだったりする。

 

考えている事が丸分かりで流石の親友の事であっても本気でドン引きしたもんだ。きっと本当に犯人を食材の様にバラバラにして、サイコロステーキ化しそうだなと思ったのも内緒である。

 

「して、料理人はこちらの話を聞いてもまだ篩の篩をする気であったか?」

「はい。あの子は変に義理堅いというか、例え敵が作ったルールでも、ルールを尊重する子ですからね。塔の敵攻略してテラン王を助けに行くと言っていましたよ。」

 

 

 

少し遡ったパプニカ王城内

 

「これが五年前のあの時の全てです。」

喋るだけ喋ったんだからとっととテラン王返せとティファは常にないぶっきらぼうな短めの言葉でキルに迫った。

 

無理もない話で、昨日今日と味わった精神負担を考えれば、穏やかな料理人モードが緩むのも仕方なく、疲れきっているところに敵に礼儀正しく全うするのが難しくなっても当たり前だ。

 

前世プラス今の年齢当てはめれば自分が一行の中で一番年上だとかティファは考えているがそれは単に実年齢だけの話で、中身が追いついていないのに自覚がなく、そろそろ精神的に容量を超えそうな限界水域なのに本人が全く気が付いていないせいで色々と重ねている無理がたたって精神不安が起き始めている不味い兆候である。

 

キルとしては本当にため息しか出ない。

こんなにボロボロになっているティファを休ませたいから昨日心を壊そうとしたのに邪魔が入った。本当にあの鍛冶屋は命令なしで抹殺してやりたいが、いまさら言っても詮無いことであり、せめて()()()()()()()倒させて憂さ晴らし位させてあげても罰は当たるまい。

 

「ここに書かれている鏡通信の間違いから説明するね。」

 

これを送り付けた愚者の筆跡が酷すぎてティファをしても解読できずに、城のお抱え魔導士たちにとっても願ったりかなったりなので早速筆記用具とテーブルをキルに用意した。

戦にとって情報は命綱であり、内容から相手の度量も知れることもあるので、ティファは是非一字一句隠すことなく教えてほしいという要望をキルに出したところあっさりと快諾された。

出しといてなんだが、味方の情報あっさりと売って大丈夫なのか心配になったのが顔に出たのか、キルに苦笑されたいいからいいからと書き出されて行った。

 

あんな馬鹿な奴は君が倒しちゃっていいからね、とかお墨付き迄つけられて。

 

「あのですね・・・その・・篩の篩はもう終わっても良いのでは?」

 

キルが味方をあっさりと切り捨てたことにティファは小さなショックを受けて思わず言ってしまった。

原作とは本当に違いすぎるキルしか見ていないので、あっさりと味方を売るならやる価値はなく、お互いに知りたかったことが知れたのだからもういいのではないのかと。

 

「この篩の篩を受けているのは君達だけじゃあないんだよ。」

 

キルはまたもや書き写しながら苦笑して今回の篩の対象も話し始める。

大戦もそろそろ終盤であり、予定通り黒の核晶(コア)も精製し終わり落とせるようになるまで秒読み段階に入った。

そんな時にバーンの膝下から反乱の一報が入るのはよろしくない・・とまでは言えないが、そのモンスター達が大戦最中の今も逆らう気なのかどうかテストも込みである事を。

隔離しているとはいえ、監視している兵たちの雑談で地上界と戦をしている事は知れ渡っているはずであり、よろしくない思考を持った者達が行動を起こさないとは誰にも言いきれないので実際に地上に出して人間達と直接戦わせるので、報告にある塔の周りを囲んでいるモンスター達こそが、先に潰された尖兵達の一部であり、リーダー格のモンスターこそが始まりのモンスターである。

 

「その仔達殺されなかったんですか!」

 

ティファは思わず声を張りあげてキルに詰め寄った。

魔界で異質の思考を持ってしまい、期せずして大魔王の意向に真正面から逆らうような事をしてしまったモンスター達が生きているとは思ってもみず、全て処断されてしまったとばかり思ったからだ。

 

「生きてるよ。あの仔達は別にバーン様に逆らうつもり無さそうだもん。バーン様は広大な領地を持ってるから、高い塀に監視付きだけどあの当時の尖兵の仔達全員生きているんだよ。」

 

丁度鏡通信の写しを終えたキルは、羽ペンを置いて空いた手でティファの頭を撫でて優しく笑って教えてくれる。

ティファは強いが命を奪うのに罪悪を感じているのを見て知っている。間接的であれ自分が苦境に陥れてしまったモンスター達の事で胸が潰れる思いをしているかもしれないとあたりはついていた。

たとえそれが全く見た事もない、しかも敵でありティファ達と戦っていたかもしれない者であっても甘いティファは悲しむ。

 

「あの・・鏡にはなんと書かれていたのですか?」

 

流石にティファも周りの空気を読んでキルの手を躱して本題をせっつく。

そろそろ仲間たちと兄も先程の件から立ち直り始めているのでキルを追い出さないとまずそうだ。

 

キルとしては今すぐティファを攫って行きたいところだが、ミストほどでないにしろバーンからの命は絶対であり、篩は続行しなければならないのでティファに写した紙を手渡す。

渡されたティファは読み進めていくうちに超微妙な表情になり、遂には溜め息をつく。

 

「料理人殿、何が書かれていたのですかな?」

「それ程すさまじい内容ですかの?」

「儂らにも見せてくだされよ。」

 

読んでも中身を一向に読み上げないティファの周りに魔導士おじいちゃん三人組がわらわらと寄ってくる。

年を食ったせいで怖いものはもうほとんどなく、奇妙な敵の大幹部キルバーンがいてもものともせずにだ。

 

「ほほう、流暢で綺麗な字ですじゃな。冥土に行く前にこれほどの美しい字に出会えるとは。」

 

見る所そこなの⁉

 

魔導士長男・インスの一言に、キルと大広間の心の声は完全一致した。

敵からのメッセージ内容ではなく筆跡の良しあしから入るのはどうなのだろう?

 

「確かに見事な字じゃのう~。」

「お若い方、折角の綺麗な筆跡をお持ちなのに戦いなぞするのは勿体ないぞ?どうかの~、儂等と一緒に魔導書の翻訳の仕事せんかの?」

「はい⁉」

「それは名案じゃの、フォスの言う通り書き物の仕事に就かなかな?魔族であれば辞書いらずで、給金もうんともらえるぞ。」

「ワイズ兄さんもええこと言うの。儂等も年で後継者に恵まれずに困っているのじゃがどうじゃろう?」

 

いやどうじゃろうって駄目に決まっているでしょうお爺ちゃん達!!

 

くいくい

 

大声で断ろうとしたキルの袖を引く者がいたので見てみれば

 

「・・・そうしませんかキルバーン?」

 

なんかお嬢ちゃん迄おかしなこと言っちゃってる!!

 

「駄目だよティファ!そいつは倒すの決定してるんだからね!!」

「ティファさん!正気に戻って!!」

「インス!ワイズ!フォスもとんでもないこと言ってないでさっさと内容読み上げてお引き取りしてもらいなさい!!」

 

あまりの阿呆ごとに落ち込んでいた周りはすっかり復活をしてキルをさっさと返す様にお叱りの声が四方八方から飛びだす。

 

魔導士お爺ちゃん達は魔道研究に半生を捧げ、共に仕事が出来るのであれば種族問わずの学者気質であり魔道狂いと呼ばれて周りからは変わり者バダック以上に敬遠されがちであり、後継者が見つからないのを嘆いていた。そこにキルという字は綺麗で翻訳うってつけの魔族であり性格もよさげな後継ぎ候補が見つけられていいアイデアだと思い、ティファとしても敵が減ってしかも性格よさそうなキルが来てくれないか少しだけ期待したので四人としては本気でがっかりとする。

周りとキルは何を考えているんだこの四人はと本気で呆れて室内には溜め息の声で満ち溢れた。

 

「もう僕が読み上げるね。」

 

折角写しておいてなんだが話進まなさそうなのでキルはサクサクと読むことにした。本当はあんな愚者の書いた文なぞ読んだだけで口が腐りそうだがしょうがない。

考えてみればこんな文章を読ませてしまったらティファが可哀そうだ。

 

-人間どもに告げる

吾輩は偉大なる大魔王バーン様よりこの篩の全指揮権を賜りしキングマキシマムである。

お前達とは塔にて戦う事を命じられたが、貴様達が吾輩の強さに怖れを無し来ない可能性を考えた。

よって貴様達が逃げ出さないように貴様達の仲間を一人預かる。

どこにいようとも吾輩の-全能の目-から逃げる事は叶わぬと知り、速やかに塔に来て吾輩の剣の錆となるがよい。

                     大魔王バーン様の親衛隊隊長キングマキシマム-

 

・・・・・何が悲しくってこんな愚かしい文章読み上げなければならないんだろう。しかも

 

「あの・・キルバーン、こんなお粗末な事しか書けない同僚がいる所とは手を切った方が・・」

「そうですぞ!字はその者を表すといいますぞ。こんなに素敵な字を書く貴殿のお仲間にはふさわしくないですぞ。」

「矢張り儂等と共に働きましょうぞ!戦いなぞよりも遣り甲斐のある良き仕事ですぞ。」

「なんでしたら今すぐに儂等の地位をお譲りしますので安心して来られよ。」

 

本気でお嬢ちゃんとお爺ちゃん達に慰められて勧誘されてるのが辛い!




今回のラスボス((笑)を出したので、そろそろ篩編は終わりにします( ー`дー´)キリッ
・・できるかな
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