勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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サブタイトルと作者の心は一致しています・・


ハドラーの篩早く始まってほしい

冷静に振り返ってみれば、勇者一行の者が激情で敵倒したらいかんだろう、とは一体この人の前で何度反省すればいいんだろ・・・

 

 

「聞いておるのかティファ!」

「もう勘弁してください!!もうしませんから!」

「その言葉信用できるか!ヒムから報告は上がっておるぞ!!ザボエラの時と同じことをしおって!」

「今度こそ反省しましたから!もう本当にしませんから勘弁を!!」

グスグスヒグヒグ私が泣いても容赦してくれないよこの御人!ブラスじいちゃんにだってここまで叱られた事ないのに、人生で一番叱られる相手がこの人って・・少し時間遡ってマキシマムにとどめ刺そうとした自分止めたい!

 

 

 

 

結論から言えばティファはマキシマムにとどめをさせなかった。

 

ダイ達が止めに入ったわけでも、ティファの慈悲の心が働いたとかは全くない。

上空からいきなりベギラゴンが降ってきて、間一髪のところをティファは後方に飛び避けたが、内心では冷や汗が滝の如くに流れる。

 

いっや!この攻撃ってどう考えてもあの人じゃないの!!

 

不味い不味い!こんな乱れた心で敵倒そうとしたなんて無様な所をあの人に見られるなんて人生の中で一番・・ではないが最悪な部類だ!!

 

相手の視認を心が拒否して上を向きたくないけど、もうこの場にいる味方全員が視認してしまっているので自分が拒否したところで意味は全くない。

 

突然の攻撃にダイ達が上空を見上げてみればそこにいたのは

 

「なんで・・ハドラーが・・・」

 

それはダイかポップか、誰が発したかは分からない言葉だが、勇者の味方全員の心中の呻きを代弁している。

 

マキシマムが片付くと思った矢先、まさか魔軍司令官が出てくるとは誰も予想はしておらず、それはティファも同じだった。

 

いや、この場合は出てくるタイミングを読み間違えたというべきである。

マキシマムが倒されれば、それ以上争う益が大魔王サイドにも勇者サイドにもなく必然誰かがこの場を納めるために使者が来るとは読んでいた。だが軍の管轄にキルが来るには違う気がするし、かといってミストも表立ってくることはまだあるまい。そうなると後は魔王軍の軍団長はザボエラかハドラーしか残っておらず、ザボエラは私に速攻問答無用で斬るしかないからそれもないだろうし、そうすると残り枠でしかもふさわしいのは魔王軍・軍司令官のハドラーしかいない・・・と思ってこいつ倒そうとする前に来ちゃったよ!

しかも何か怒ってる!なに?マキシマムがそんなに大切なの!この人貴方の事散々こき下ろした人なんだよ、庇う必要ないんだよ。

 

ハドラーを攻撃するかどうか、それこそダイ達は本気で攻めあぐねた。

確かにハドラーは魔王で敵の軍司令でしかも師の仇ではあるが、この場で先端を開けば鬼岩城戦の後のパプニカが今度こそ壊滅の憂き目にあいかねない。

敵と会ったからといって、早々に戦っていいレベルではなくなってしまったのだ自分達も相手も。

それに、ハドラーの出で立ちがバルジ島やテランの小屋の時とは全く違っている!

あの三本の角は一体なんだ!

纏っている雰囲気や気配すらも違っている。

 

強い

 

長年戦いに身を置くヒュンケルやクロコダインはハドラーの内に秘められた強さに慄きすら感じ、体は強張り自然と持っている武具に力が入る。

 

 

「・・・・・・・あなたが来ましたか・・」

 

周りの緊迫した空気を、ティファの溜め息の様な言葉が打ち破る。

 

「俺が来るのが意外ではないのか?」

「ええ、ただ来るタイミングを計り間違えました。もう少し・・・そこの馬鹿が倒された辺りと踏んだのですが間違えましたね。」

 

上空の変わり果てた姿のハドラーを見てもティファは驚かず、それどころか得物の雪白を仕舞ってしまった!

 

「ティファ!こっち・・」

「いいよダイ兄、今ハドラーに戦う気はないから。みんなも下手に手を出さないでくださいね。城に来たキルバーンと同じで今の彼は使者でしょうから。」

 

めんどくさそうにティファは頭をガリガリとかきながら状況の説明をする。ダイ達が考えている通り、下手に戦端なぞ開いた日にはパプニカは今度こそ壊滅するだろう。それこそ廃墟と化すほどに。

下手にダイ達の所に行くよりは、戦う意思をしない意思表示をしてその場で待っていればいいと、考えたのが甘かった。

 

ゴ~ン!!

「・・・・・いったい!!!」

マキシマムが粉の目つぶしをくらってあげた絶叫以上の音と、それによるダメージに叫ぶティファの声があたりに響き渡る。

なんとハドラーが上空より急降下をし、その威力を右手の拳に乗せてティファの頭に拳骨を落としたのであった。

 

 

あれはどう見ても考えても攻撃だろう!ダイは即座に剣を抜き、ヒュンケル達も飛び出そうとしたがハドラーの大音声がそれらをすべて蹴散らす。

 

「この戯け者が!!!!!!」

 

バリバリの雷がティファに降り注いだ。

 

「なんだ貴様の先程の体たらくは!貴様それでも勇者一行の者か!殺気丸出しでどこの不逞の輩かと思ったわ!!」

「あ・・・それは・・」

「これで二度目だぞ!死の大地はザボエラで、今度はマキシマムとは、どちらも貴様にとってはとるに足らぬ敵を相手に何をしているのだ!」

「・・ですが・・」

「貴様には勇者一行の者という自覚がないのか!だったらさっさと一行抜けてデルムリン島のブラスの下に戻れ!!自覚無き者など相手にする謂れはない!!」

「そんな!」

 

そこまで酷いこと言うことないでしょうハドラー!!

 

そしてティファはハドラーの説教に涙目になり、えぐえぐになりそうなところでようやく説教の言葉がとまった。

 

「全部見ていた。」

「ふぇ?」

「塔からの戦闘時からだが、その辺りから上空で待機していたのでな。マキシマムが何をして言っていたのか全て見ていた。」

「みてた・・」

「そうだ。」

 

ハドラーだとてマキシマムが倒されてもよいとは思っていた。

少し前の自分なら、マキシマムがやらかした配下を顧みず、どこまでも自分本位なところは同じであっただろうが、今は不快に感じて助ける気さえも失せ果てていたが、ティファが殺意を放出したのに焦り急いで止めに行こうとしたが間に合わずとはいえ生半可な術ではティファが引いてくれる気が全くしなかったのでついベギラゴンを使ってしまってではあるが。

 

あのままマキシマムが倒されても構わなかったが、あの倒し方では後々ティファ自身が、正しい事をしたのかと気に病み心が傷つきそうだった。

倒したい敵ではあるが、決戦で自分と当たるその日までティファにはそんな暗い感情にとらわれてほしくないと思うのは、きっと自分の勝手な我が儘なのであろうが。

故に、邪魔をしたことを詫びるつもりはなく悪いことをしたとは思っていないが遅くなったとは感じている。

 

「少し遅くなったしまったがな・・」

「・・本当です、さっさとお開きにしてくださいこんな茶番・・」

 

こ奴は本当に・・

 

ティファの物言いに呆れながらもポンとティファの頭に手を置く。

 

「お前の言う通り篩の終わり宣言をしてくるように俺は大魔王バーン様より命じられてここに来た。あの者達は終生魔界より出る事はさせないと確約をするゆえに捕虜返還を頼みたい。」

「・・・・・それなんで私に言うんですか?」

 

 

なんで勇者一行の者とはいえ勇者や頭脳の魔法使いでなく料理人に言うのかね。

そんな話さっさかまとまるはずもないけれどと思っていたのがどっこい通ったよ。

 

この場には今レオナ姫がおわしまして、姫君の英断一つで話がすんなりとまとまるってすごい事だ。

 

「我が国もこれ以上の戦闘の継続は望みません。そのモンスター達が敵対する事無く疾くこの場より去るのであれば連れておいきなさい。

ですが先程の約定、守ると誓えますか魔王ハドラー。」

 

城で待っていてほしいというダイの願いを蹴飛ばして塔に来てよかったとレオナは心底思う。

こんな力づく荒事ではどうにもならないような話をダイ達だけでどうにかなる物ではない。

王族の判断で下したことであれば、後日敵と独断で取引したとダイ達やこの場の兵達が誹れ罪に問われることを回避できたのだから上々であろう。

レオナだとて今のハドラーからは得体のしれない強さを感じる程にはレベルが上がったせいで感じている。それこそ竜魔人化したバランと対峙した時のような空恐ろしさが先程から体を震わせるている。

気丈にもそれを押し殺し、レオナは人生の中で一番の胆力を使って敵の使者との交渉を始める。

 

ほう、面白い。力はともかく俺に向かって面とした物言いをするか。

 

「そなたは?」

「名乗りが遅れました。パプニカ王レオンが娘、レオナです。」

「そなたがこの場の将というわけか。」

「ええ、そう考えてくださって構いません。」

「成程、ならば約定を守る事を魔軍司令官の座にある者として、また我が主大魔王バーン様の名に懸けて誓おう。この者達は最早戦いには出ぬ。」

「・・・その言葉を信じましょう。アポロ、マリン、エイミ、他の者達も彼らの縄を・・」

「しかし姫!」

「命令ですアポロ。即座に取り掛かりなさい。」

「・・分かりました。」

「ティファ、貴女もこちらに来なさい。」

「う・・はい・・」

 

あれよあれよという間にレオナの采配で捕虜のモンスター達の縄は解かれ、全てハドラーの周りに集った。

ついでにティファはレオナの横にしがみつきそうな勢いでいる。

今この安全地帯を離れたらダイが怖いからだ・・・今回はポップ達も鬼の形相をしている。

それもそうだろう。師の仇で宿敵の魔王と説教されてそれを受け入れて聞いて話し込むは、頭に手を置かれても拒絶しなかった仲間なんて色々と論外すぎるだろうと頭が冷えた今では冷や汗しか出てこない。

そんなティファの様子を、パプニカの兵達、特にアポロはじっと見ていた。

 

百体近くいた捕虜のモンスター達はダイ達も手伝い即座に解き放たれ、どうやら自分達の新しい上司が来たようなのですぐさま駆け寄る。

もしかしたらすべての責任を取って自裁を命じられるかもしれないが、この場で死んでしまおうと覚悟を決めて。

 

だが、魔軍司令官を名乗った者は途轍もない言葉を放った。

 

 

「貴様らは命令を全うし指揮官であったマキシマムの非道を前にしても反旗を翻さなかった。よって魔軍司令官の権限において大魔王バーン様の名の下に罪を許し処断されることは決してない事を誓おう。魔界に帰るぞ。」

 

ハドラーの声はよく通り、後ろの者達にも説いたとき大歓声が起きた。

ある者は泣き叫び、ある者は隣の者達と抱きしめあう。

モンスター達には本能でハドラーが魔王であり強者であることが知れている。その者が言う事には間違いがあるはずもなく、自分達は救われたのだと涙を流して喜びに涙する。

 

ダイ達としても、好き好んで敵を倒す趣味はないので無用な流血が無い事に喜べるが内心ではかなり複雑である。何せ相手がハドラーならば仕方がない事であるが、ここは黙って帰すことで話し合いは済んでいる。

 

ティファとしても、自分がしたことで巻き込んでしまったモンスター達が無為に死ぬ事無く追われたことにホッとする。

 

早くハドラーの篩があればな~。

そうすれば無駄な犠牲出さないで早く死の大地での決戦が出来るのに・・

 

 

だがティファの願いはいつでも裏切られ、事が静かに終わらない

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