メドローア
パプニカと書いて呪われた国と読むんじゃないか?
パプニカ城の上を下をの大騒ぎ・・・もとい大混乱になると思うと気の毒になる。
「ちょっくらパプニカ城に行ってくるぞ、留守番できるな嬢ちゃん。」
ティファはマトリフ達が朝食を食べている辺りで再び目を覚まし、起きてポップの横に座りマァムからパンを受け取りもしょむしょと食べている時に爆弾発言が投下された。
「・・・・・おじさん・・・みんな仲良く・・」
「あんな嬢ちゃん。」
ティファもマトリフの性格はよく知っている、敵には一切の情け容赦がない。そして自分とノヴァはマトリフの特別枠に入れてもらっているのも。
それを踏まえれば今回の一件でアポロはもしかしたら敵認定されてしまったかもしれない。
敵にはとことん容赦のない怖いおじさんが王城に行ったらアポロはどうなるのか考えるだけで怖ろしい。
それがなくともパプニカ城内は間違いなく大混乱に陥るだろうと予言できてしまいそうだ。
「パプニカ城の様子と、レオール王の見舞いに行ってくるだけだよ。」
「そう・・・おじさん・・王侯貴族の人達その・・」
「あん?嬢ちゃん何でそのこと知ってんだよ。」
「・・・ノヴァが教えてくれたの・・・内緒だよって。」
「ったく坊や情報かよ。まぁあいつの言う通りではあるが、俺はこの国の王は嫌いじゃねえんだよ。当時の馬鹿大臣達俺が出ていった次の日に速攻で頸にしてくれたくらいの英断できる奴だ。・・・まぁそれでも二度と宮仕えなんて御免だがな。」
「そっか、行ってらっしゃいおじさん。」
まぁ本当はアポロって奴の面を実際に拝みたいだけだ気だがな。嬢ちゃんはこの辺素直に騙されてくれて助かるぜ。
マトリフがあくどい事を考えている時ポップ達には当然のように疑問が生じる。
ノヴァって誰だ?
とはポップ達は口が裂けても聞きなかった。
ティファに説明させるという一番の心労事をさせるわけにはいかないのでぐっと我慢の子。しかしやはり気にはなる!
ノヴァは世間様では有名人で、大きな場所でそれなりの学者に聞けば分かるし屈強な兵たちに聞いても分かる程の押しも押されぬ人気がある。
片や万能薬の第一人者として、片や北の国の氷の勇者としての勇名を馳せているが、残念ながらポップ達は目の前の敵たちとの闘いの日々で世間の話を聞いている暇はなかった。
だがティファとマトリフの話を聞いているとどうもあった時期が一緒の様なので、鋭敏な頭脳を持つポップは何となく察したので、後でもしかしたら情報をマァム達に流してやるかと算段する。
「師匠、城に行くなら俺とマァム連れてくといいかもしんねえぞ。」
「あ?なんでだよ。」
「俺達門番の人と顔見知りになったの、通りやすいから連れてってくれよ。」
自分達が言った方が絶対にレオナは安心するだろうとは口が裂けても言えないが、ここで断られたらこっそり先回りする心づもりだ。
ティファ程でないかもしれないが、確実にレオナの心も疲弊しているのは昨日で分かっている。レオナも大切な仲間だ、守ってやりたい。
「分かったよ、その代わり帰ってきたらすぐに特訓だぞ。」
「おう!望むところだ!!」
「・・・ポップって特訓好きよね。」
「ポップ兄、あのね・・・頑張っても無理しないでね・・私が言えた義理じゃねないけど。」
「おう!無茶はするけど無理はしねえよ!!」
「・・・・クロコダインさん、ポップの奴が何言っているのか分かりますか?」
「んっむ、まぁいつもの地獄の特訓を乗り切るだけでやめておくという心意気では・・」
「それって無理とどう違うんですか?」
「・・・俺にも分からんよチウ。」
ポップのへんてこな慰めの言葉にチウは疑問をクロコダインに聞いてミニコントな様相を呈していた。
「分かった、無茶なら傷は治せるから頑張ってね兄。」
「おうよ!頼まぁ。」
・・・・ポップとティファも物騒なコント化している気がすると、常識的なマァムは頭を痛める。もう少し自重という言葉をマトリフおじさんにも一行の皆にも持ってほしいと思うのは贅沢だろうか?
「おじさん、ポップ兄にどんな修行させるの?瞑想か反対に魔力限界まで放出させて底上げする系?」
「いんや、俺のとっておきを教えてやるよ。」
「・・・え・・・」
「やった!師匠すげえの教えてくれんの・・・」
-ダン!!-
「駄目だよおじさん!!!!!」
マトリフが奥義的な魔法を教えてくれるという言葉にポップは喜び勇んだが、ティファの大音声が止めに入る。
「駄目だよおじさん!そんな大呪文撃ったらおじさん死んじゃう!駄目だよ!!ティファが作ったお薬でおじさんの内臓は少しは回復したかもしれないけどそれでも駄目だよ!撃たないでよ!!」
机を勢い良く叩きながら立ち上がり、涙をぼろぼろと流しながらティファは座ったままのマトリフに近づき縋り付き、幾度も駄目だと言い続ける。
きっとおじさんがこれから兄に教えるのはメドローアだ!
こんな大事な事を忘れていたなんて・・
原作ではハドラーとの篩の前に、ヒム達の強さを知ったポップがマトリフに相談に行き授かった大呪文。
あれが無ければこの先は辛い戦いが更に大変な事になるのは頭では分かっている!それでも、今ここに、目の前にいる大好きなおじさんと引き換えにしてほしくはない!もう原作とこの世界の差異が酷すぎてもしかしたらアバンは生還しておらず、この場でマトリフが息絶えてしまう事だって十分に考えうることだ。
・・・耐えられない、自分の何と醜い我が儘を言っている事かは分かっている。魔王軍に勝つには、大魔王の野望を阻止するには戦力強化は正しいと分かっていてもそれでも、マトリフの死を見るかもしれないことに耐えられない。
「嬢ちゃん、俺がこれからどんな技ポップに教えるのか知ってんのかよ。」
泣き縋るティファの頭に手を置きながら尋ねる。
「・・・おじさんの呪文は世に出回ってない、それは威力が強すぎて生半可な人には扱えないからだってノヴァが教えてくれた。決戦近いこんな時だもん、その中でも一番の大呪文しかない。」
「・・・・・お前さんはもう少し馬鹿な方がよさそうだな・・」
「無理だよ・・・分かっちゃうんだもん。」
ノヴァ情報だけではないが、全てを知らないマトリフにその言い分は通ったようだ。
マトリフは自分の膝にティファを横座りにさせて包み込む。
「あんな嬢ちゃん、俺だってそうそう簡単にくたばらねえよ。しぶといんだぜ俺は。」
「そういうのは何も分かっていない人達に言ってよ。おじさんの心音昔より弱いの聞こえてるよ。なに?ティファの診たてにケチ付けるの?」
「・・・そこは騙されてくれよな、とにかくポップには今まさに必要な・・・」
「師匠、特訓は師匠の口頭だけで教えてくれ。後は自力で手前で習得するから。」
「ポップ、!あの呪文は・・・」
「へ!師匠だって誰かに教わった訳じゃあないんだろう?だったら口頭で教えて貰える分楽だ。だからティファ安心しろ、師匠に魔法は撃たせねえから。」
「ポップ・・・お前・・分かったよ、言ったからには是が非でもものにしろよ。」
「分かってるよ師匠。」
「へ!あったりまえよ!!」
「兄・・ありがとう・・」
先程まではしゃいで子供になったポップは何処にもおらず、たくましい男の面構えで宣告をし、泣きじゃくる妹の頭を何度も撫でて落ち着かせる。
師匠もティファも、もう充分世界のために頑張ってきたんだ。なら次は俺が・・俺達が頑張んなくてどうするのだと覚悟を定めて。
「嬢ちゃん、それでいいか。」
「うん、御免なさい話を遮って。おじさんこれからどんな呪文教えるの?」
「お前達はハドラーの禁呪生命体のフレイザードを覚えてるか?」
「あの氷と炎の奴か。」
「・・・元同僚だからな。」
「私会ってない。」
「そうか嬢ちゃんはそん時いなかったな。ハドラーがそのフレイザードを作った時、やっこさんのレベルが低くて助かったよ。」
「それってどういう意味だよ師匠。」
「俺がこれから教える呪文はその氷と炎を合わせた技でな、名前はメドローアだ。」
「ほ・・・正反対の呪文混ぜたら反発しあって危険じゃねえかよ!」
ポップは真っ青になって、先程の言葉を撤回したくなった。一歩間違えればこの世とおさらばだ!!
「だからそこは上手い事やるんだよ。とにかく、今レベルや中身が格段に上がっちまったハドラーが作っていたら、新技でそいつに作らせそうだからレベル低い時で助かったって言ったんだよ。」
・・・おじさんの推察あたってそう。この話聞いたらハドラーいそいそとフレイザード二世作ってこっちにぶつけてきそうだ。
嬉々とした顔が目に浮かび思わず笑ってしまった。
「ティファ・・・俺があの世に行きかけるのはそんなにおかしいかよ・・」
「あ!違うのポップ兄!ハドラーならね、間違いなくおじさんが言ったこと笑いながらやりそうだからね。つい目に浮かんじゃって。」
「そうか、今のあいつはやりそうに見えるか。」
「うん、死の大地で親衛隊の一人に会ったけどとても強そうだった。」
ティファは死の大地で出会ったヒムの話をマトリフ達に余さず話した。
昨日の敵と同じオリハルコン製だが、中身は雲泥の差がありヒムが月で馬鹿はすっぽんである事、隙のなさそうな身のこなし、決断力もさることながら敵ながらにあっぱれな性格だったと。
「話していて気持ちの良い奴だったよ。だから怖い、心に余裕のある敵ほど怖いって思った。それを生み出したハドラーの実力は間違いなく超一流の魔王だよ。」
「あんな嬢ちゃん、情報は助かるがやっこさん褒めてどうすんだよ。」
「ティファ・・・お前な・・・」
「あ・・・あとね!そんなすごい技おじさんどうやって使えるようになったの!!」
ヒム情報は喜ばれたが、ハドラーの話を出した途端雲行きが怪しくなったので、ティファは手近な話題で逸らそうとして直ぐに後悔する羽目になった。
面白い話じゃねえぞとマトリフもティファの思惑に乗って話してくれたのは、マトリフ自身の苦い悔恨の念だった。
サポートすべき勇者が、自分達を置いて自ら魔王と共に封印をされた事を淡々と話していく。
「ハドラーだけぶっ壊しちまいたかったんだがな、既存の呪文全部撃っても駄目だったんだよ。」
大賢者とまで言われておきながらこの体たらくと自身に絶望し、其れでも諦めずに開発したのが炎と氷の反発作用を指向性攻撃にしたのがメドローアであると。
生半可な思いでこの技受け取れねえ。
この一つの技には、アバン先生たちの思いの全てが詰まっている。魔王をなんとしても討ち果たさんとした勇者、その勇者を助けられなかったと強く後悔した仲間たちの思いが全て凝縮された技だ。
淡々と話しながらも、悲しい気配がそれを物語っている。
「おじさん・・聞いてごめんなさい、ごめんなさい。」
「いいさ、もう昔の話だ。あの後ハドラーも倒した昔の話だ。」
「でも・・」
「師匠。」
ティファの謝罪をポップが遮る。大事なことを伝えるために。
「話してくれてありがとうよ。俺、その大呪文の全部受け継ぐよ。」
「ポップ・・・ありがとよ。」
「ああ、だから安心して俺達に後託してくれよ。長生きするためにもさ。」
決意を告白し、それでもなおポップは軽やかに笑って見せる。
先代達の思いは全て今代の勇者一行が引き継ぎ世界を守ってみせると胸に秘めて。
魔法使いの決意の炎は自然とマァム・チウ・クロコダインにも移り、燻ぶってしまった戦いへの、そして世界とティファを守るあの決意の心に再び火を灯す。
師の思いを受け継ぎ、弟子はまた一歩強き男へと成長する。
今作品でもポップは一行のムードメーカです。
あのキルバーンをして、真っ先に始末しなければならないと言わしめた程の魔法使いにまた一歩も二歩も近づきました。
主人公の休みの期間は、一行の子達(ヒュンケル・クロコダイン含む)の決意を新たにして再び立ち上がっていくようにしていきます。
メドローア誕生秘話ですが、興味があってみて下さった方には申し訳ありませんが、これは原作を見ていただければと思いここでは割愛させていただきました。