これまで長く読んでくださっている方、これから読んでくださる皆様に感謝です
某変態と呼ばれている死神に似た者が登場します。
ハグハグムグムグ
パン柔らかくて美味しい、スープ出汁が効いててこっちも美味しい。
浜辺からポップに負ぶわれて洞穴に戻った時、丁度特訓を一段落終えたクロコダインとチウ、そして偶然特訓に居合わせたバダックも洞穴の入り口に到着をしていた。
「あ!ティファさん!!」
「どうしたティファよ、珍しくポップに甘えているのか。」
「もぅ・・・クロコダイン・・・からかわないでください。兄降りるね。」
弄られて真っ赤になったティファは顔を赤らめながらもポップから降り、バダックの前に立ち深々と頭を下げる。
「この度はお騒がせをして申し訳も・・・」
「ティファ殿。」
ティファは塔での一件から、詳しくは知らずともあの後騒ぎになった事は察しがつくのでパプニカ関係者のバダックに誠意をもって謝罪しようとしたのをバダックは途中で止める。
「ティファ殿は確かに少々騒ぎになる事をしましたがなに、それ程の事でもありませんぞ。」
「しかし・・」
「ティファ殿、本当に悪いと思われるのであれば何もかもが自分が悪いと抱え込みすぎずに周りを頼ってほしい。こんな爺でもそれなりに出来る事はあるもんですぞ。」
「それは・・・」
-ポン-
「失礼かもしれぬが、貴女は一人で戦っているのではない。大勢の味方と戦っている。苦しい時こそ一人にはしませぬよ。」
「・・・・はい・・・・はい。」
伊達に先の大戦は生き延びておらず、様々な事を見聞きして生きてきたバダックとしては、ティファが塔でしたことはアポロが騒ぎを起こすほどの事ではなかったと思っている。
それ故にアポロがティファに仕出かした数々の事の方が申し訳なく思う程で、反対に詫びを言いたいがそれではティファの心を苦しくしてしまう。謝罪が出来ないのであればせめて年長者として励ましの言葉を掛けたい。
忠言とも励ましともとれるバダックの年長者としての言葉に、ティファの心に温かさを吹き込む。
頭に置かれたバダックの手からも温もりを感じ、まだ硬さを残すティファの心をもほぐしていく。
自分は決して一人じゃない。
用事があるからと帰ったバダックと入れ替わりに、市場での買い物を終えて大量の荷物を持ったマァムがマトリフと共に戻ってきた。
「おじさん!!」
マトリフを一目見て、ティファは猛ダッシュでマトリフの下に駆け寄り腰にしがみつきえへへと笑う。
「って・・嬢ちゃん俺の歳考えてくれよな。あの時よりもさらに爺になってるんだぞ俺は。」
「へへ、でもおじさんにしがみつきたかったんだもん。」
あの時、幼いティファを抱っこ出来た五年前よりも自分の筋力は衰え、安泰にティファが大きくなっていると暗に言ってもちっとも反省せずに笑うティファを仕方がない嬢ちゃんだと包み込む。
城で聞いた数々の出来事に暗い影を落としていたのが霧散する。寝てすっきりとしたのだろうか?
「ティファ、お腹すいた?」
「あ・・・・少しは・・」
「少し待っててね、美味しいもの作るから。」
「はい。」
マァムさんが作ってくれている間暇だ・・・・・お手伝いもいいって言われたけど何かしてないと落ち着かない。
「ポップ兄、私も何かしたい。」
「師匠が駄目って言ったろ、少し回復したからって直ぐに動こうとすんなよ。」
「うぅ、クロコダイン、特訓はどうでしたか?」
「ああ、チウに手伝ってもらって順調だ。新必殺技の完成も程なくできそうだ。」
「そっか、チウ君どんなお手伝いしてるの?」
「クロコダインさん、バルジの大渦の中で技を編み出そうとして、息が続かなくなりそうになったら合図で僕がクロコダインさんに繋がっている鎖を引くんです。」
「ふふ、力持ちのチウ君がいないとできない特訓方法だね。」
「その通りだ、チウがいてとても助かる。」
「そんな、ティファさんもクロコダインさんも褒めすぎですよ。」
「いんやチウ、俺じゃあ一生掛かってもできない手伝いだわ。」
「ポップ迄・・・・でも、皆さんのお役に立てて僕嬉しいです。」
「チウ君・・・・」
健気な事を言うチウを、ティファは椅子を下りてチウに近づきそっと抱き上げ、チウのいた椅子に座り膝の上に乗せ顎をチウの頭の上に乗せる。
「皆はね、役に立つとか立たないで君を仲間にしてる訳じゃあないんだよ。チウ君が仲間思いの立派な戦士の心を持っているからなんだよ。」
「ティファさん・・・」
「そうだぜチウ、ティファの言う通りだ。俺達はつまるところお前が好きなんだ、ずっと仲間でいて欲しいんだよ。」
「その通りだ、ティファはいつもいい事を言ってくれる。特訓を手伝ってくれるのは無論嬉しいが、それ以上にお前の心根の在りようが好きなのだ。」
「クロコダインさん・・・ありがとう、ありがとうございます。」
物心ついてから一匹で生きていた自分が、老師に拾われマァムさんに出会い、もっと多くの素晴らしい仲間に会えて好きだと言われ・・・これほどうれしいことがあるだろうか?
「そしたらティファさん。」
「ん、なぁに?」
「僕達もティファさんの事が大好きです。とってもとっても大好きなんです。」
「うん。」
「大切仲間でとっても大好きな人なんです。」
「うん、ありがとうチウ君。」
嬉し涙を流しながらも、チウはティファの事が大好きだと言う。自分だけではなく仲間全員が大好きなのだと、ティファの心に刻もうとするように。
テーブルの端で頬杖をついて見守っているマトリフはその素晴らしい光景に自然微笑みが浮かぶ。
この一行なら大丈夫だと、心の底から安堵をして。
ご飯できたわよ~とマァムの掛け声を合図にマトリフとティファは座らせたままポップ達は食べる支度にとりかかり、程なくして洞穴は食べる音と美味しいと言う歓声が響き渡った。
昼食を食べ終わるころ洞穴に一人の妖精が入ってきた。
「お~、なんだが今日は随分と賑やかだなマトリフちゃん。」
「パック!手前そのちゃん呼びは辞めろって何度言えばわかる!!」
「俺達精霊からすれば人間なんて多少老いても赤ん坊と変わらんのよ。おんや、そっちの黒髪の子は俺の事をばっちり見てるってことは見える子か。そっちのリザードマンと大ネズミ君もかい?」
洞穴に入ってきた妖精パックはマトリフの怒声にも怖じずに飄々としている。
白い肌に青い髪を結わえている姿は絵本に書かれてそうなこれぞ妖精と言われそうではあるが、中身がとんでもなく性悪でマトリフとても手を焼く。
そんな奴がティファ療養中に来るとは最悪だ。
「ふ~ん、見た目可愛いし贔屓にしてやろうかおチビちゃん。」
「え!や・・その・・」
「くっふっふ、初心な所がまたいいね~。俺は・・」
-貴様いい加減にしろ!!!-
悪い顔でティファの肩に留まり色々と吹き込みそうなパックにマトリフが切れる前に、洞穴の外で待機していたガルーダがぶちぎれた。
「おんや神獣ガルーダが人を案じるとは珍しい。」
「-ティファは我が愛しの雛鳥だ!!まとわりついてみろ、食い殺すぞ貴様!!!-」
出会いの当初は迷惑な者だとしか思っていなかったティファを、いつしかガルーダの中では愛しい我が子への思いへと変わっていった。
まだ本当の子はおらず、結婚もしていないだろうと言われそうだがそんなことは知った事ではない。
「ガルーダ連れた女の子・・・君さ、ティンクを知ってるかい?」
「知ってます、あ、私ティファって言います。」
「礼儀正しい良い子だね。ティンクの言う通りだ。」
「ティンクの友達ですか?」
「ああ、あいつとは生まれた場所まで同じでね。そうか君が竜の騎士様の子供か。見た目も気配もただの人間だね。」
「・・・・・どうも・・」
パックって、もしかしてティンクの幼馴染で光の精霊王様の変わり息子さん?
パックがティファを事前に情報を得ていたように、ティファも本人に会う前からパックの事を知っている。
ティファはこれから起こす事の為に精霊王達と様々な事をしている為に縁が深い。それがなくとも普通に精霊達とは友達であり様々な情報を貰っている。
その中には光の精霊王の外れ息子の噂も届いている。
教えたのはパックの幼馴染みで偶然ティファと友達になったティンクだが、ティファにははずれとは言わずに変わり者として教えた。
精霊とは思えない偏屈さで、状況を引っ掻き回し困りごとを楽しむ、精霊どころか悪霊と言えそうなパックの事を忠告したのだ。
ティファは優しい、そんなティファが悪霊もどきのパックに会ってしまったらパックの餌食になる事は容易に想像がつき、悪口にならない範囲で忠告したのだ。
「警戒しなくていいよ、君マトリフちゃんのお気に入りの子でしょう?」
「ふぇ?」
「ティンクが一時手紙運びしていた時があってね、それって君で間違いないかい?」
「はい、確かに私です。」
「ふふふ、その時僕も洞穴にいたんだよ。お気に入りのマトリフちゃんが俺に何でも良く効く薬作るの手伝えって言ってきたから二・三年洞穴を離れられなくてね。」
「貴方が万能薬の手伝いを・・」
このパック、性格は最悪だが気に入った相手にはとことん優しい面もある。
若い頃の無茶をしていた破天荒なマトリフを気に入り以来八十年近く自主的に側に居る。
普段はそこそこで追い払ってるパックを、精霊の薬学知識を欲して頭を下げて共同研究をさせたのだ。
「その時の手紙ね、マトリフちゃん嬉しそうに読んでたよ。」
「パックてめえ・・」
「おじさんそれ本当⁉」
「あ?」
「私からの手紙嬉しかったって本当!」
「あ!・・・・それはだな・・」
「違うの?」
「・・・・・あぁもう!嬉しかったよ!本人がくりゃあもっと嬉しかったよ!!」
年甲斐もなく照れて怒鳴るマトリフにティファは嬉しそうにしがみつくが、精霊パックの姿が見えず声が聞こえないポップとマァムはぽかんとする。
何やらうんうんとうなずいたり笑っているクロコダインとチウは、今何が起こっているのか分かってそうなので聞いてみる。
「おっさん、師匠とティファ誰に話しかけて今ああなってんだ?」
「ポップ、そうかお前には精霊が見えていないのか。マァム、お前もか?」
「うん・・・・精霊が今いるの・・・」
「ああいるとも、ここにいるとも、ずっといたとも。」
「きゃっ!」
人間の男の子と女の子が自分の事を聞いているのだと察したパックはいきなりマァムの鼻先に姿を現しマァムを心底驚かせる。
「初めまして人間の娘さんに人間の坊や、俺の名前はパック。そこのマトリフちゃんとは半世紀以上の付き合いの者だよ、よしなに。」
「あ!はい、私はマァムと言います。」
「俺はポップ、し・・・マトリフ導師の弟子です。」
「くふふ。そうかしこまらなくてもとって食いやしないよポップちゃん。驚いた顔は可愛かったよマァムちゃん。」
「「ちゃん・・・」」
精霊って・・・考えていたのとイメージが違う気がする・・・・余程ティファの方が精霊の化身の様な気がすると二人は思ってしまう程にパックの物言いは人を食ったような態度だ。
「・・・・珍しいじゃねえかよ、お前が人前に姿見せるなんてよ。」
「別に今まで隠れていたわけじゃないよ。人間に姿を見せないとか高尚で退屈でコチコチに固まった考えでいた訳じゃないさ。」
精霊は見える者以外は-滅多には-見えないが、絶対ではない。
精霊自身が姿を見せて声も聞かれても構わないと思えば任意で姿を現すことが出来る。
しかしできるが本当に滅多な事ではなく、物語に描かれる程に稀な事であり、この洞穴にはアバンも出入りしていたが、最後まで姿を見せる事はなかった。
マトリフの疑問に、パックは肩をひょいとすくめてみせる。
「単に興味が湧いただけさ。マトリフちゃんの洞穴で食べて飲んで大事にしている子供達に。」
自分と同じくらい偏屈な男が面倒を見ている子達はきっと面白い退屈しのぎの玩具になりそうなので唾つけておこう。
・・・・・某仮面の死神と似通ったような精神構造をしている精霊が存在してしまっている。
要は自分が面白いかどうかでしか動かない厄介者同士である。
「あぁもういいからお前は今日は帰れパック!」
「おやつれないなぁ~マトリフちゃん。」
「けっ、ぬかせ!俺はこれから弟子の修行見るんだよ、暇してねえから帰れってんだよ。」
「おやおや張り切って。」
「なんだよ。」
修行の言葉を聞いて、パックにニヤついてマトリフの心臓の辺りにそっと手をかざす。
「こんなに小さく弱くなった心音を出しているマトリフちゃんが無理していいの?」
「パックてめえ・・」
「忠告だよ、忠告。良き友としてね。じゃあね~。」
言いたい事だけ言って、マトリフの怒りをくらう前にパックはさっさと洞穴を去っていく。
「あいつは全く。おい嬢ちゃん。」
「はい?」
「あいつが言った事気にすんなよ、朝言った通り、ポップには口頭で教える以外はしねえから、そんな顔すんじゃねえぞ。」
「おじさん・・・うん、うん。」
パックの言葉に不安を覚えたティファをマトリフは直ぐに察して案じなくていいように優しく諭す。
まったくあいつは・・・・本当に精霊なのかとパックに頭痛がする
決して某死神さんが精霊の姿にモシャスした訳ではありませんが、精神的双子の様なパックの登場でした。
精霊の詳設定はは完全に作者オリジナルとなります。
後半、それも最終回当たりの話で重要な役割を担うのですが、そのフラグ作りとして中盤の此処で出させていただきました。
そろそろ一行の勇者様と戦士様も出していきたいと思います。