夕食会の話が終わるまで入れさせていただきます。
よろしくお願いします''`ィ(´∀`∩
「ティファ様、こちらが当デパートが誇る武装です!」
「あ!こちらは自分がお持ちします!!」
「重い・・・わぁ!!!」
「ふふふ。」
ロシナンテとすっかり打ち解けたマァムとメルルは三人で買い物をしに出掛け、ティファはアクバルの淹れた紅茶を飲んでいると不意に笑いだす。
「どうかなさいましたかティファ様。その紅茶には笑いの作用がある新種でございましたか?」
クッキーを出しながらアクバルは微笑ましげな瞳で不意に笑いだしたティファに何事かを尋ねる。
ティファがVIP会員になってもうじき三年ほどになるが謎の多い少女に興味は尽きず、実際に同い年の孫娘がいるので気分は客とコンシェルジュというよりは祖父と孫に近い。
だが長年接客業で身を立て、コンシェルジュ部門の長をして十年以上たつ自負が、それを微塵にも表に出さず、察しの良いティファにもその思いが気取られたことは一切ないというある意味物凄い離れ業をしているともいえる。
「ああ、ロシナンテさんが私に初めてガイドとして就いてくれた時の事を思い出してつい。」
「・・・・・あの折は本当に申し訳ございませんでした。」
「いえいえ、仕事に対する情熱とそれ以上に客に対して何かをして上げたいという彼の気持ちはとても素敵ですよ。あの時鎧一つ傷物になりましたが、素晴らしい若者に対しての先行投資と思えば安いものでしょう。」
この方は本当に・・・
何食わぬ顔で紅茶を飲みながらしれっと言うティファに思わず苦笑が浮かんでしまう。
二年前のロシナンテはまだコンシェルジュ部門に入って日が浅く、ティファのガイドに就いた時は研修開け間もなくの事であった。
知識はしっかりと覚え、後は実地で覚えてもらおうとした矢先にティファがサンプルとして買い求めた鋼の鎧を代わりに持とうとして落として衝撃でほんの少しの傷を付けてしまった。
当然落としたロシナンテは真っ青になり、事態は直ぐ部門長であるアクバルにご注進が奔り、ロシナンテはあわや降格になりかけたのに待ったをかけたのは迷惑を被ったティファ自身だった。
その鎧は丁度在庫がなく最後の一つだったが気にもせずに笑って言い飛ばした。
「鎧は使われているうちにボロボロになる物ですからこんなのは傷とも呼べないでしょう。」
からりと笑い拾い上げ、指に嵌めているマジックリングに収納し何度も謝るロシナンテに優しく笑いかけ、いつかまたガイド頼みますと言い残し颯爽とその場を立ち去った。
そこからロシナンテはさらに猛勉強をし、コンシェルジュ部門の中級者にまであっという間に駆け上がり、今やアクバルの後継者とまで目される程になっている。
迷惑をかけたティファに庇われ、次を期待されたことが余程嬉しかったのだろう。
「それに私にやらかしたのはロシナンテさんではなくアクバルさんが先でしたでしょう。」
「ティファ様・・・あの折の事は本当にもうご勘弁を。」
「ええ、たった九才の子供がVIP会員候補に挙がってきては普通驚きますもんね~。」
今度はしれっとどころかニマニマと笑っているから手に負えない
デパートで半年間、同じ客が毎回数千ゴ―ルドを使っていると聞いたアクバルはさっそく会いに行った時、表情筋を動かして内心の驚きを悟らせてしまった。
「初めましてこんにちわ。こんな子供が毎回高額買い物をしたらびっくりですよね。」
自分の驚きに腹を立てずにクスクスと面白そうに笑っていた様はその辺の子供と同じであったが、中身は大人顔負けであった。
「私がそのティファで間違いありませんよ。VIP会員のお話ならお受けしますので案内お願いします。」
会う前に予め店員からそこそこ話をしてもらい案内をスムーズにする手はずを整えていたが、まさか小さな女の子からすべて切り出されるとは思ってもみなかったので二度も顔に出してしまうという大失態を侵し、以降VIP会員候補の年齢はきちんと聞くルールが定められたが、今のところは成人していない者の会員候補は表れていない。
それが当たり前の事だと言われればそれまでなのだが
「さて、そろそろ私も行きますね。また近々寄りますのでよろしくお願いします。」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ。」
扉の外まで来て一礼して見送るアクバルに手をひらひら振りながら、ティファはエレベーターに乗って買い物へと出掛ける。
近々・・・来るにしても半月先がざらなティファにしては珍しい。
来る度に鋼の鎧と鋼の剣を十ずつ注文し、受け取りに来た時に大量の薬草や医療器具、はては大所帯でも持つのかという程の鍋釜食器類を大量購入した時もあった。
鎧・剣はもう五百程売ったが、そんなに大量に何に入用なのか疑問ではあるが、犯罪の形跡がない限りお売りするという不問律を守り何も詮索せずに今日まで来ている。
それにあの子供ならば悪用はしまいと、接客業者にあるまじき私見ではあるが信頼しているのだ。
買い物フロアーに降りたティファは目的を定めずにふらふらと店を見回り、目に付いた物にふらふら寄るという買い物スタイルを貫いている。
店側もティファの性質はよく知っている。セールストークを嫌い、話しかければ余程欲しい品でない限りすいっと逃げてしまう。
新しく入った見習店員はそこから叩き込まれる。まず買い物に来たティファの容姿を徹底的に覚えさせ、買い物が終わりティファが立ち去って少ししてから、あのお客様にはセールストークはおろか支払いの時までこちらからは話し掛けないように教える。
破れば減給であるときつく脅して。
一度破った者がおり、折角買ってもらえそうだった数百ゴ―ルドの魔導書を無言で元あった所に置かれそのまま立ち去られてしまったことがあるので徹底されている。
楽しい時間を知らない者の声で煩わされたくないティファはそのスタイルを徹底して貫き受け入れさせるのに成功して買い物を満喫する。
何といいものが!これはマァムさんとメルルさんに是非着てもらおう。
そろそろ薬草のストック切れかけてるな。
「アオおじいちゃん、良い薬草入ってる?」
「ティファ嬢ちゃんか、今これといった物はないな。いつも通りの薬草類はあるぞ。」
「そしたらいつものを十セットずつと眠り草を五セット頂戴。」
「あいよ~、毎度あり。」
女性の服装店で可愛い二着のワンピースを買い求め、着ているマァムとメルルとそれに喜ぶ野郎どもの姿を想像してニマニマし、なじみの薬種問屋の名物頑固爺さんと素で話をする。
ダイでもめったに見ない普段のティファは、いきいきとデパートの買い物を楽しんでいく。
デパートは客も商人も実に楽しそうに往来し売り買いし、中には市場の露店のように値引き合戦をする剛の者や、慎ましい生活の中でもお金を貯め子供の一張羅を買い求めに来た親子連れもいる。
小さな頃からちょくちょく来ているが、ここはいつ来ても楽しい。生活感に溢れ誰もが笑っている。買えなかったとがっかりしている人も中にはいるが明日か明後日には入荷しているかとさくっと立ち直り、笑いさざめきの声がそこかしこに溢れている光景を、宝物を見る眼差しで見回す。
ああ自分は、こんな何気ない日常を守りたい
特別な事は何もないが、今日過ぎれば明日が、明日が終わればまた次の日が待っていると誰もが特別に考える事無く何気なく訪れる日常が送れる日々を。
「守りたい・・・違うか、守るんだ。」
もしも
心の整理が一段落し気分が晴れやかになったティファは地下食品売り場に行く途中で珍しい衣装や装飾品の出店を見つけて珍しいなと足を踏み入れる。
夏のこの時期にはカーニバルがあるようでマスカレードの衣装と仮面が所せましに置かれている。大戦最中でもカーニバルはやるのだろうか。
白黒のピエロマスクに目隠しだけ。その内の一つに、赤と黒が半面ずつの仮面もあった。
これは・・・・キルの仮面にとても似ている・・・・
ティファは何かに誘われるようにその仮面を手に取りそっと輪郭を小さな人差し指でなぞり上げる。あの人は今どうしてるかな。
親友のミストといるのか、それとも約束通り感謝状を書いてくれているのか・・・・また服作りをしてくれているのだろうか?兄が燃やしてしまった服は本当に見てみたかった。
なぜ自分はこんなにもキルが気になるのか不思議。
先程から雑踏を歩き、背が高い人を見るとどきりとした。あの人がモシャスで紛れて自分に会いに来たのではと、どこかで期待している自分がいる。
・・あの人は敵で、倒さないといけない人なのに・・・会う度に分からなくなる人。
優しいのに怖い事も平然と言ってきて、でもまた優しさを見せてくれる不思議で・・・・不意に甘い声がする。
お嬢ちゃん、可愛い可愛いお嬢ちゃん
っ!
耳元で囁かれように甦ったキルの声にティファは身の内からゾクリとした感覚が広がり動揺する。
あの人は・・・・・倒さないといけない人だ・・あの人を倒す?ああ、それを想像すると悲しくなるのは何故なのだろう
「こっちにきて・・・」
あの真夜中の呼び出しの時、キルがティファに言った言葉を、反対にティファがキルに向けてそっと呟く。
赤と黒の仮面を買い求め、自分にとって大切な物、アバンの眼鏡も入れている金のマジックリングに入れながら。
地下の食品売り場には、欲しい物を買い待合室に戻ろうとした三人とうまい事合流できた。
ここのベリータルト美味しいからお土産に買って、アクバルさんによろしくとロシナンテさんに言伝をして帰途につく。
そろそろ日も傾いてポップ兄がダイ兄達を呼びに行く頃だ。
早く帰って支度しよう・・・・その前に試着室借りてと。
「ちょっとティファ!本当にこれ着せる気!」
「はい!値札は取ってもう返品不可です。」
「あの・・・ティファさんお金を・・・」
「む、メルルさんこういう時はお礼を言ってきてくれるのが礼儀に適っていますよ。」
「・・・・・そういうものでしょうか?」
「そういうものです。はい、二人とも着替えて着替えて。」
付き添いの女子二人は、ティファが買い求めた服をプレゼントされ半ば強引に着替えさせられたのであった。
あれはどう判断すべき事なのかな?
暇なキルは与えられている自室で水晶でティファが見れないか試していたら、マトリフの結界の外に出た女の子三人が見れたので夢中で余すことなくティファの一部始終を見た。
意外にお金持ちで驚いたが、素のティファは少々やんちゃっぽい女の子で可愛いことこの上ないとご満悦で見ていた。
だが、人間のお祭り用の衣装の中に自分と少し似た仮面を手にしてからのティファのあの表情と言動がよく分からない。
不意に赤くなり、かと思えば仮面をそっと胸に抱きしめ買い求めた。
そしてあの言葉の意味は?なぜ自分にそこまで来て欲しいと求めるのかが分からない。
自分でもティファにこちらに来て欲しい本当の理由が明確になっていない。
戦力削ぎ?来てくれれば楽しいから?ああもどかしい、なぜこれほどまでに自分はティファが欲しいのか、そして欲しがられるのか分からない。
それでも、この瞬間にでも攫って閉じ込めたいと思う理由がなんであるのか分からないがこい願う気持ちは止まらない
「こっちに来てよお嬢ちゃん。」
きっときっと大切にするから
ダイ達の前ではしない主人公の日常をお送りしました。
この何気ない日常を積み重ね、世界を頼まれたから助けるというだけではなく、自らの意思で守りたいという強固な意志が育まれたのだと書き切れていれば幸いです。
次回にマァムとメルルが来ている服が何かをお出しします( ´艸`)
追記
主人公とキルの心情を加筆させていただきました。
詳しくはも目次概要に記載します