勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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財貨・宝石ではなく、仲間の幸せが一番大好きです。


宝石箱の様な中に・・・・

マトリフの洞穴から走ってきたティファの眼前には、幸せがいっぱい詰まった光景が目に飛び込んできた。

 

和気あいあいと話しながら食器を配る兄達が、片方の意見を聞きながら笑って料理を作っていく女の子達が、薪をつぎ足し火の番をしながら時折鍋をかき混ぜているクロコダインとチウの姿が、煌めく宝石の様にティファには映る。

 

ああ、なんと愛おしい光景なのだろう

満天の星空の下、大好きな人達が幸せそうに笑っている光景は、本当に愛おしい

 

「ティファも手伝います!!」

「あ!ティファ!!駄目だよ、今日くらいは・・」

「手伝いたいのダイ兄!いいでしょうポップ兄~。」

「ったくしょうがねえな~、マァム、メルルいいか?」

「はい、肉団子の煮物の味付け決まらなくてマァムさんと・・・」

 

走りながらお手伝いを申し出、その宝物の中にティファは自分から入っていった。

少し前ならば見守るように少し距離を置いてみていた中に、自分も入れて欲しくて。

 

「これに胡椒とパテギア草の粉末入れてと。」

「あら!アバン先生そっくりの味になった!」

「これ先生に貰った物なんですよ。」

「ティファさん、キッシュの味見を・・」

「それポップ兄に頼んだほうが喜びますよメルルさん。」

「ちょ!ティファったら!!」

「・・・・ティファさん・・」

 

女の子三人はきゃいきゃ言いながら様々な料理を瞬く間に作っていき、その匂いに待っている野郎どもの腹が鳴る。

 

その音を聞いたティファは、一瞬びっくりとして次の瞬間はじけるように大笑いして後から追いついたヒュンケルやロン・ベルクを入れた周りを驚かせた。

普段自分達の知っているティファからこんな大笑いする姿は想像できず、だがこれもティファの一部なのだと思い知る。

マトリフだけが、やっと元気になったなと笑ってティファを包み込み喜んでいる。

 

普通に女子トークをし、普通に大笑いをする。このティファがいつものティファなのだと言える世の中に早くしてあげたいと、誰もが思う程生き生きとしている。

 

「ティファ、ここいいからそのままマトリフおじさんと座ってて。」

「ですがマァムさん・・」

「ではティファさん、お酒の用意をお願いしますね。」

「・・・分かりました。」

 

マァムとメルルに体よく休まされたティファは、ヒュンケルと取ってきたお酒の数々を出し、終わった頃に全ての料理が出来上がり、火を囲んでマトリフは流木を椅子代わりにしてもらい、他の面々は思い思い砂浜に腰を下ろす。無論ティファはマトリフと同じ流木へと押しやられマトリフの横にちょこんと座る。

 

メルルとマァムが大人達に酒を注ぎ、チウはジュースを注いで回る。いつもならば全てティファがしていた事だが、今日はそのティファに楽をしてもらう。

 

「さぁ、ティファさんもどうぞ。」

「ありがとチウ君。次は私が注ぐね。」

「いいからお前は今日は食べる事に専念しろ。」

「ポップ兄・・・ありがとう皆。」

 

ほんのりと赤くなり、少し俯きはにかんで笑うティファに温かい労りの言葉が沢山降り注ぎ、一段落してから乾杯の声が海岸に響いた。

 

温かい鍋を食べ、なくなれば隣にいるダイがすかさずおかわりをよそう。妹の好みを知っているのは至極当たり前なのでサクサクよそい、ジュースを適度に注ぎ足しさりげない給仕力を発揮する。

 

「・・・兄、ホテルマンでも食べていけそう。」

「ティファにだけだよ。あ、でも将来はレオナや俺の子供にもしてあげるんだ。」

「結婚は確定なのかよダイ・・」

「え?ポップもメルルもするんでしょう結婚。」

「ぶぅ!!!」

「!!」

「どうせなら一緒に結婚式ってのやろうよ、ね。」

 

天真爛漫なダイのあっけらかんとした物言いに、ポップとメルルは真っ赤になって口をぱくぱくとさせ周りは驚きながらも次第に温かい笑みを浮かべ、その時は必ず呼んでで欲しいとまで要望が上がった。

 

「結婚式か・・・・出たことないな。」

「その前にお前さんが結婚したらどうだよロン・ベルクさんよ。」

「・・・お前もしてねえだろうがマトリフ。」

「まぁまぁ、おじさんもロン・ベルクさんも、まだまだ先の話だよ。でも、合同結婚式いいかもしれないねダイ兄。」

「そうでしょう、ティファもかわいい服着て最前列に出るんだよ。チウもクロコダインもヒュンケルも来ないと駄目だからね。」

「分かってるさダイ、姫君とお前の結婚式に出ないわけがなかろう。」

「うっむ、俺はこのままで出ていいか?」

「・・・・・僕頑張って生き延びて結婚式に出ます!ダイ君もポップもメルルさんもお幸せに!!」

「っだああ!なんでそこで俺とメルル出すんだチウ!!!」

「え?メルルさん嫌なのポップ?」

「・・・・そうなんですか?」

「ば!違う!!!!嫌じゃねえ!!してえ・・・て!!きちんという時に言いてえから待っててくれメルル!!」

 

ポップとメルル、もうどう見ても良い中なのにまだ告白もしてないらしい

 

「・・・・なぁ、ポップ、魔法使いはな!いつだって冷静にそして迅速に物ごとに対処しろって教えてんだろう!!何をもたついてやがる!」

「うっせえぞ師匠!それとこれとは話は別だ!!俺にだってな・・・俺にだって言いたいタイミングがあんだよ~!!!」

 

酒の入ったマトリフに絡まれたポップは絶叫しながらいずれするからでメルルに待ってますの返事を貰って許してもらい、その光景にダイ達は吹き出し、そして大笑いの渦があたりを満たす。

 

あぁ楽しい、皆未来に希望を持って前に進んでいくこの光景のなんと尊い事か。

 

誰もが勝って明るい未来を作る事を疑わず、クロコダインもヒュンケルもその輪の中に自然と溶け込み、ヒュンケル等はほんの少し酔ったのかダイとポップを両脇に抱え込んで頭を撫でながらほんのりと笑っているという珍しい光景迄広がっている。

 

「お前達の結婚か・・・・・俺にも・・」

「何言ってるのさヒュンケル!そんなにかっこいいんだから!!」

「そうだぜ、ダイや俺よりも先に結婚するの絶対にヒュンケルだぜ!!」

 

抱え込まれ頭を撫でられても二人は嫌な顔をせず、ヒュンケルも結婚できると自信満々に言って、どんな人が好みか、結婚てのはなとか主にポップが話し盛り上がっている。ジャンクやスティーヌを見て育ったポップは、とくとくと知った風に言うのがなんともおかしくヒュンケルはますます弟弟子の頭を撫でている。

ダイもデルムリン島の皆とブラスじいちゃん呼ぶの大変だからデルムリン島で式を挙げ、ウォーリアー船長達も呼ぶんだと夢一杯に話し込む。

 

その横には赤くなりながらもマァムと笑って料理をつついているメルルがいて、クロコダインに少し貰ったお酒が苦いと舌を出すチウと笑っているクロコダインがいる。

右隣を見上げれば、黙って微笑みながらロン・ベルクと静かに酒を酌み交わすマトリフがいる。

 

嬉しくて、言葉を発したら壊してしまいそうで、ティファは唇を震わせ涙が零れそうになるのをこらえる。

自分はこんな素敵で幸せな場所にいれて、なんと幸せなのだろう。

いてもいいのだろうか、こんな自分がいても・・・

 

あぁ勝ちたい、勝って皆が話している事を全て実現させてあげたい。その為にも勝たないといけない、どんな手段を使ってでも。その為にこそ、自分がいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とこれでマァムさんは結婚はしないんですか?」

「あのねチウ、私まだ相手もいないのよ。まずはそこからでしょう。」

「あ、そうするとティファさんもですね。どんな人が好きですかティファさんは。」

 

 

 

・・・・・幸せって脆いの忘れてた

 

チウの何気ない言葉が、温かい空間にヒャド系の呪文がぶち込まれ冬が到来した。

 

「ねぇチウ、ティファにはねまだその話は早いと思うんだけど?」

「!」

「ね?」

「は・・・はい!!」

 

冬将軍化したダイの目力に押され、チウはびしっと敬礼してダイに返答した。

二度とこの話題に触れてはいけない!今度はヒャドじゃなくライデインが降る!!

 

私の好みの人か。そんな事考えた事もない、そもそも考える事でもない・・・・お嬢ちゃん♪

 

「っ!」

 

まただ・・・どうしてキルの声が時々響くんだろう・・・それもこんな時に・・

 

冬将軍化したダイをポップが宥め終わり、赤くなって俯くティファに気が付かずまた食べ始める。

 

ただ隣にいるマトリフだけが気づいたが、突かないでおくかと気を利かせて黙っている。

 

聞かれていたらティファは困っていただろう。敵のキルバーンの声を思い出し赤くなったとは言えずに誤魔化すしかなくなるのだから。





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