かぁ~らぁす~、何故なくの~カラスは山に~かわいい七つの子があるからよ~。
星空の下、ティファは海を背に竪琴を弾き火を囲んで座っているダイ達に歌を聞かせる。
かわい、かわいとカラスはなくの~
ダイ・ポップ・ヒュンケル・マァム・メルル・チウ・クロコダイン
古い古い昔の自分が好きだった歌
夕暮れ時に一人で誰も聞いていないのに歌っていた歌の通り、自分はこの七人が誰よりも何よりもかわいく愛おしい
可愛い、可愛いと鳴くんだよ~
辛い道をそれでも生来の明るさを失わすことなく歩き切ろうとするこの一行が本当に愛おしい
山の~古巣へ~行ってみてごらん~
種族見た目なんてどうでもいい
まぁあるい目をした~良い子だよ
この子達はとても良い子達なんだから
食べて喋って満たされたダイ達お子様組は、ティファの優しい歌を子守唄替わりとし寝そべって聞いていたダイとポップはそのまま寝入ってしまった。
その顔には戦いの疲れも苦労もなく、ただただ安心して眠る子供の寝顔を浮かべて。
「しょうがない奴らだ。」
「ダイもポップもまだまだ可愛いもんだな。」
見回せばマァムもメルルも眠そうにし、チウもダイを起こそうとして力尽き上に覆い被さってくぅくぅと寝息を立てている。
クロコダインがポップを、ヒュンケルがダイを横抱きにして洞穴の少し奥に連れて行き、寝袋をティファに渡されていたので起こさないようにそっと入れる。
そのヒュンケルも相当出来上がっているのかほんのりと顔は赤く、可愛い弟弟子達の寝顔を飽かずに見ている。
そのまま横で二人を見ながら寝たいがもう少し起きていたいきもする・・・なんと贅沢な悩みをするようになったのだろうか自分は。
魔界でミストバーンに師事していた時は単に体を休めるための行為で、さらにさかのぼればアバン先生の時は、話しかける師から背を向ける口実になるとだけしか考えていなかった眠りが、こんなぜいたくな悩みを持つ行為になるとは。
「ヒュンケル、マァムさんとメルルさんは敷き藁敷くので手伝ってください。」
「そうだな、二人にはそうした方がいい。」
軽い酔いのヒュンケルは柔らかく笑いティファの手伝いをせっせとする。
マァムさんとメルルはクロコダインが連れてきてティファが寝袋に入れる。
流石にうら若い女の子達のお世話はティファの方がいい。
チウはティファにだっこされて連れられ、ダイの横に寝かしつけて一息つく。
「さて二人共、おじさん達まだ飲んでますがどうしますか?」
無論二人の答えは決まっている
もっと飲もう
浜辺に戻ればティファの言う通りマトリフとロン・ベルクはおもいおもいに酒を注ぎ静かに飲んでいた。
これ程楽しい酒はいつ以来だろうか?
二人共に世を捨てたような生活をして久しく、この数日でなんと色濃く充実した日々を送っている事だろうか。
足音と気配でヒュンケル達が戻ってきたのを察した二人は黙って空のゴブレット二つに酒を注ぎ座るように無言で勧める。
「相伴に預かろう。」
「いただこう。」
男四人の酒盛りを、ティファも黙って給仕する。
それぞれのゴブレットの近くに小皿を置き、チーズ・ピクルスと酒のつまみを盛りつけ、自分もジュースではあるがマトリフの横にちょこんと座り輪に入る。
そんなティファに、ヒュンケルは思いがけない事を告げる。
ここ数日、自分は仲間たちの言葉で人の王達から許しを認められ、励まし迄受けてきた。
そして・・・素敵な人から頑張っても無茶はしないで下さいと真っ赤になって言われながら花を渡された。
自国を攻め滅ぼそうとした自分を責める事無く・・・あの女(ひと)はこんな自分に花をくれ優しい言葉まで贈ってくれた。それを思い出せば今この時にも自分の胸を温めてくれて・・・
「ティファ、俺はきっと幸せを見つけられたのかもしれない。」
戦のこんな中にあっても、自分は幸せなのだと実感できる
その言葉に、クロコダインは驚いた。
確かに自分とヒュンケルはティファに、戦いの後自身の幸せも見つけに行くと誓ったが、まさか早々に見付けられていたとは。
それはとても嬉しく、我が事のように喜びが胸を打つ。
ヒュンケルに良かったなと祝いを述べようとしたが、言葉を止めた。
ふらふらとヒュンケルに近づくティファを見て。
ヒュンケルの言葉を受け取ったティファは弾ける様に顔を上げまじまじとヒュンケルの顔を見た後、引き寄せられるように腰を上げふらふらとヒュンケルに近づき、そしてヒュンケルの顔を胸に抱きしめた。
「・・・・ヒュンケル・・」
「ああ」
「ヒュンケル・・・ありがとう・・」
「ティファ・・・・・ああ・・・」
ヒュンケルの頭を抱きしめたままティファは幾度もヒュンケルの名とありがとうを繰り返し、ヒュンケルも小さなティファのか細く頼りない腰に縋るように腕を回して何度もこたえる。
ヒュンケルが幸せを見つけたと言ってくれた・・・これ程嬉しい事があるだろうか
どのくらいたったのか分からない、ほんの数舜だったのか長い時間だったのかは分からないがいつしかヒュンケルの腕は落ち寝息が聞こえる。
そっとヒュンケルの頭を胸から離し、ゆっくりと横たえ膝に乗せる。
「ティファよ。」
「はい。」
「ヒュンケルはお前との約束を果たしたのだな。」
「はい。」
「幸せを見つけられたのだな。」
「はい。」
顔を上げればクロコダインの目にも涙が溢れている。
「そうか、幸せかヒュンケル。」
共に同じ魔王軍の軍団長であり、自分達のいく道は険しく茨の道を行くことになると覚悟を決めていただけに、ヒュンケル同様自分達はこんなにも周りから庇われ励まされ受け入れられていいのだろうか悩みさえしたのだ。
自分達がこれほどまでに周りからよくしてもらい・・・あぁならば自分もきっと・・
「ティファ、俺も幸せをもう手にしているのかもしれん。」
敵を倒すことしかできない自分の両手を見つめ、クロコダインもぽつりとつぶやく。
この手を一昨日、王達に許された直後にダイを始め仲間達が次々と握ってくれた。
温かく優しい気持ちがそこから流れ込んでくるのが分かる程力強く。この素晴らしい一行と共にあれる、そしてダイ達だけではない。
パプニカのバダックやベンガーナのアキームまでもが後からおめでとうと言いながら握手を交わしてくれたのだ。
勿体ない
罪を償う最中の自分達に、これ程までに優しくしてくれる仲間たちがいる。これを幸せと言わずして何を幸せだというのだろうか。
下を向けば、またもや涙を流しながら喜んでくれているティファがいる。
そしてマトリフとロン・ベルクも優しい笑顔で自分とヒュンケルを見ている。
ああヒュンケルよ、俺達は本当に幸せ者なのだな