幸せは、見つけるだけじゃ駄目なんだ。その幸せを守れるようにしないといけない。
ヒュンケルとクロコダインの思いがけない告白に、ティファは決心する。
「ロン・ベルクさん、魔界の神・大魔王バーンに直接会ったことはありますね。」
会ったことがあるかではない、会ったことがありますねの断定系のティファの言葉にクロコダインとマトリフのみならず、言われたロン・ベルク自身も目を見開きティファを凝視する。
確かに自分は直接大魔王バーンから仕事を頼まれスカウト迄されたが、誰にもその事を明かさずに今日まで来た。
それを何故目の前の少女は断定できる?
「二つの貴方の作品が魔王軍にあったからです。」
ティファはロン・ベルクが疑問を言う前に、自ら考えを披露する。
ロン・ベルクの様な鍛冶師が人伝からの話で依頼を受ける事はなく、直接依頼主が頼まなければたとえ神が相手でも動かないだろう事を。そしてあんな凄い武具をいくつも作ってばら撒くような者にも見えない。一点作った後は余程の改良か新着想を思い浮かべない限り二点目を作らなさそうだ。
「以上の事を考えて、貴方が大魔王に直接会い仕事を頼まれ武具を作って納入したと思ったのですが外れましたか?」
知識なくともこの人分かりやすいから推測できる範囲内だ。さて、返答はどうか?
「・・・・・当たっているよ、お嬢さんの言う通り俺は直接大魔王バーンに会ったことがある。」
何なんだこのとんでもないお嬢さんは。会って数日の相手を此処迄分析できるって無いだろう普通う。
ロン・ベルクの告白に、さしものマトリフも絶句する。
敵の中枢たる長と会った者が身近にいた事に。そしてティファの慧眼に血の気が引く思いを味わう。成長して更に思考に磨きが掛かっていたのは分かっていたがここまでとは。
「それで、お嬢さんは俺に何が聞きたいんだ。」
「単刀直入に聞きます。-今-のダイ兄で大魔王バーンに勝つ見込みはありますか。」
「・・・・本当に聞きたいか?」
「前置きはいいのでお答えを。」
話し合う二人は火花が散りそうな程真剣なまなざしで互いを見あう。
ティファは腹の探り合いではなく今すぐにその答えが知りたいと願い、ロン・ベルクも昨日からのダイ達との特訓で得た今のおおよそのダイ達の力を算出し、溜息が出る。
「今のダイ達じゃあ奇跡が起こらん限り無理だ。」
労りの言葉もなくはっきりと告げる。どう言い繕うと結果が変わらないのであれば無駄な言葉は不要である。
その言葉を受けたティファは、詰めていた息を吐きだす。
「矢張りそうですか。」
「おい嬢ちゃん!」
「ティファ!いったい・・・」
得心したティファに、マトリフとクロコダインは目を剝く。戦う前から負けると分かっていたと聞いて冷静な者はそうはいないだろう。
落ち着いているティファの方こそ尋常ではない。
はっきりと言われて良かったよ。これでロン・ベルクさんに頼みやすくなった。
「私も一度で勝てるとは思っていませんでした。おそらく一度目はぼろ負けしますが逃げる算段は付けていますので大丈夫です。」
「・・・・いつからだ?いつからお前さんはそんな事を考えていた。」
「そうですね、先日の鬼岩城戦でミストバーンに殺されかけた時、彼の強さ×十倍で試算した結果ですね。」
「そうか。」
「はい、そしてその上での頼み事です。逃げる算段は付いているので再戦する時にヒュンケルが槍ではなく剣の魔装で再び戦えるようにこちらで製作を依頼します。」
自分の一行が負けると平然と言い放ち、そしてその後の事を淡々と話しながらティファはマジックリングから-オリハルコン製の手足-を数本取り出し砂浜の上にそっと置きロン・ベルクに依頼をする。
「おそらく剣の魔装と後いくつかの武具は作れると思いますので、他の皆の分の武具作りも並行してお願いします。」
クロコダインのアックスを改良できないか、マァムに手甲型の魔装は出来ないか、ポップに魔法を撃つだけではなくそれ自体が武器になるロッドを作れないか。要は原作知識の先取り依頼である。
そして使用されるのは全てオリハルコン製、大魔王との二戦目は是が非でも勝ちたい!
「ダイ達は一度負けたくらいでは折れません!必ず勝つために己を鍛え、敵の喉笛に喰らいつきに行きます。」
その時にふさわしい武装を用意するのも自分の役割だ