お久しぶりの幕間です。
「あれミスト、こんな時間にバーン様は夜食かい?」
ピロロを適当にあしらって、ミストのお部屋に遊びに行く途中で料理の乗った銀のトレイを運んでいるミストに行き会った。
バーンは老人の見た目とは違いかなりの健啖家で時折夜食も食べるのだが。
「・・・・・・違う、ハドラーにだ。」
「おや珍しい。君今までバーン様かヒュンケル君にしか料理作ってなかったのにどういう風の吹き回しだい?」
「・・・・・・・・・・・あの小娘に振り回されて気の毒すぎる。」
ティファからの頼み事。平和の心を持ってしまった魔界のモンスター達の保護願いをハドラーもそうした方がよさそうだと案に乗り、バーンに奏上したところ案を出したハドラーが保護方法と魔界のバーンの領地に通達する分を考えて提出せよという無茶ぶりなお達しが下り、今の今までハドラーは書類と格闘して撃沈をした。
ただでさえ主より賜りし肉体を捨て、超魔生物へと肉体改造をした結果ハドラーの体調がよくないのを知っているミストは、夜食くらいは差し入れてもよかろうと作り届ける途中でキルにばったり会った。
「そう、僕もお見舞いに行くね~。」
「好きにしろ・・・・」
ハドラーの自室につきキルがノックをして返事を待たずに開けたところ怒号が飛んできた。
「お前達!またハドラー様になんかさせる気かよ!!」
「およしなさいヒム!失礼を、この者には後程厳しく言って聞かせますので何卒お許しを。」
怒号でミストとキルを出迎えたのはポーンヒムで、すぐさま仲間の不出来を叱責したのはハドラー親衛隊のクイーンアルビナス。
ヒムとして書類仕事でくたびれ果てようやく休めた主を起こしに北輩を叩き出したく、アルビナスもハドラーにはぜひ休んで欲しいところだが、魔王軍の大幹部相手にヒムの様な啖呵を切って万一不興を買うわけにもいかずに頭を下げる。
怒号を受けたミストとしては、自分がハドラーに仕事をさせたわけではないので理不尽さに怒りが湧く!
そもそもこの仕事の発端は勇者一行の料理人を名乗るあの化け物娘のせいで、それを受けたハドラーもハドラーである。
古来よりの天敵で不俱戴天の仇同士の二人が何を仕事の遣り取りをしているのだと叱責されてもおかしくないのを、面白いと笑って受けさせた寛大な主に礼こそすれ怒号を受ける謂れは無い!・・・とはヒム達には絶対に口が裂けても言えない!
ハドラーが敵からの依頼で仕事を受け、そのティファだけに注視していると知られた日には、親衛隊一同もそれに倣い勇者達を放っておかれるのは非常に困る!
今ダイ達もあり得ない速度で成長し、放っておいていい段階ではなくなっている。路傍の石とても主を躓かせる可能性のある者達は全軍を持って叩き潰したいのだが、近頃のハドラーは本当にティファと戦うこと以外さして興味がなく、全力でぶつかる日を指折り数えて待っている。
肉体の極限の改造で寿命が来る前にと考えているのだろうか・・・
その崇高な精神に免じ、部下の非礼の一つくらい見逃そう
「・・・・・」
ミストは無言で料理を覆っていた銀盆を取り、奥の寝室の方へと僅かに顎で示す。
主とキル以外、今のところ積極的に口を開くつもりはなくジェスチャーで示せば、ヒムの方はなんだそりゃという失礼な顔をしたが、副官はどうやら察しがいいのか喜色満面になる。
「これをハドラー様にですか?」
「・・・」コクン
「なんと!ハドラー様!!労いの料理が届きまして・・・」
頷くミストに喜びアルビナスはルンルンの声でハドラーの寝室に入り早速呼びに行く。
「・・・・ったく、こんな決戦間近な時に普通書類仕事なんてさせますかね・・」
言い足りないヒムは頭を搔く仕草をしてぼやく。万全な状態のハドラー様で勇者達を迎え撃ちたいのにと。
「あれ知らないの?その書類仕事バーン様が出したんじゃないんだよ?」
「は⁉じゃあ誰が出したっていう・・いうんすか!」
「お嬢ちゃんだよ。」
キル!!!!!
ヒムのボヤキを拾ったキルが、ミストが止める間もなく懇切丁寧に説明した。
五年前の大騒動から顛末、そして書類仕事になる一連の流れ全てを。
「・・・・・・あいつってマジもんの魔王軍の敵だわ・・・」
一度しか会っていないあの少女が、魔王軍全体震撼させて今も魔軍司令官ハドラーに間接的にダメージ与えてますってなんだそりゃ!!
ヒムは驚愕したが、ハドラーの目が覚めそうだと報告に来たアルビナスは瞬時に怒りを沸かした。
「ヒム!その者は篩の時に叩き潰します!!」
「おい!あいつの相手は俺だってハドラー様が認めて・・」
「それで打ち漏らしたらなんとします!!その者は話を聞いただけでも危険ではありませんか!あなたの遊びに付き合っていい相手ではありません!親衛隊全総力で叩き潰します!!」
まだあった事がない相手を、それでも危険だと判断したアルビナスは篩だというのに討ち果たす宣言をティファに出した。魔王軍を震撼させた事よりも、敬愛するハドラー様を口先一つでこんなに苦労させているものなど滅べばいい!!
それは怒りよりも嫉妬心に近い。何かの話に一度は出てくるティファとやらはヒムをも惑わし輪を乱そうとしている!排除するべき相手だ。
・・・・・・やはりこうなったか・・・
話を聞いてしまったハドラーの副官もティファに目が行ってしまう・・・あの化け物娘は話に出るだけでどうしてこうも他人の耳目を引くのだ・・・
「あいつの相手は俺だって!」
「いい加減にしなさいヒム・・・」
「やかましい!!!!!」
ヒムとアルビナスの言い合いに、起きて覚醒しきれなかったハドラーをとうとう怒らせてしまった。
寝台横の机に置いてある兜を被り、寝所から出てきたハドラーはミストに軽く頭を下げてからしゅんとなった配下二人に声を掛ける。ちなみにキルの存在に気が付いていても、ティファに対しての数々の変態行動を鑑み放っておく存在として丸無視する。
「良いかアルビナス、そもそもティファが保護案を出す前に味方の俺達が考えついていなければならなかった。その事に俺が気が付かず、偶々あ奴が気が付いた。それだけの話だ。」
味方の保護案件などはどう考えても中間管理職の間軍司令か参謀が考えるべき事だと、不甲斐無い自分をハドラーは己を責めて仕事に向かい、結果良き仕事が出来たので満足している。
「あのハドラー様・・・・本当にあいつってなんなんすか?」
主と軍を此処迄振り回すティファは何なのだとヒムが問えば、ハドラーは溜め息しか出ない。
「先に言った通り、あれは説明不能な者だ。直接自分で見聞きして判断するしかないな。」
数日後に行う篩の説明時にヒムはティファの情報をハドラーの求めたが同じ答えが返ってきた。
曰く、あれは予測不能な者で世の常識では及びもつかない事態を引き起こす途轍もない者だということ以外は説明不能だと。
ティファが優しさとやらで動けば動くほど、何故か魔王軍が大ダメージを喰らうという図式が五年前から出来上がってしまっている・・・・どう考えてもあり得ないことを引き起こす者を説明しろと言われても無茶である!
その事を考えるとまた疲れて溜め息をつくハドラーの姿にアルビナスの怒りが再燃した。
「ハドラー様!勇者達は篩でも、ティファとやらは討ち果たさせていただきます!!」
「「アルビナス⁉」」
「軍に被害を出す者を討ち果たしとこその親衛隊でございますれば!!!」
「いや・・・勇者ダイも危険であってだな・・・」
「今軍の脅威度合いはティファとやらです!討ち果たしてごらんに入れます!!!」
三人の言い合いを聞いてミストはうんざりとした。こうなってしまったかと、ティファに耳目を引いた原因のキルに怒りの目を向ければ、キルは右手を顎に当て何やら思案していた。
そうだよね、僕にとっては愛おしい子でもバーン様とミストの邪魔をする子でもあった。
愛しているが生きていなくとも自分は困らないし、通告文送っておくか
キルのあり得ない言動に振り回され疲れ果てマトリフに包まれて寝ているティファの枕元に、キルからの感謝状とお見舞い手紙が空間を通して置かれた。
キルが空間で探し出し置いたのだ。
そして三通目も忘れずにおいておく。
それは明るい色合いの二通の封書とは違い、漆黒を塗り固めたような黒い封書であった。
もしも君が軍に甚大な被害を出しその事が僕の怒りに触れたなら、その時は僕自らの手で君を殺す
死神は愛した相手にも容赦なく、大鎌で狙い定める
今夜はここまで・・・・・えぇ、前回キルは表舞台に出しませんと書きましたが、
-幕間-と、本編ではないので登場させました。
次回は原作にある通りお父様を暗殺にしに行くまで出しません( ー`дー´)ノ
(多分・・)
この作品ではミストもキルも、ハドラーの体内に黒の核があるのを知りません。
原作ではミストは知らされていなかったと思いますが、キルも知らされていない設定です。