勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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この二人をようやく引き合わせられました


勇者同士の邂逅

朝の森をティファとマァムが散歩をしている。

秋近くとは言え青々とした森の息吹を癒しとし、ティファは何も考えずただただ歩いている。

 

何をどう考えてもキルの自分に対する思いがなんであるのか全く分からない、歩いて思考を動かせば浮かぶと思っていたのだが当てが外れてがっかりとする。

落ち込む気配にマァムの優しい声が降ってきた。

 

「ティファ、悩まなくていいのよ。」

「・・・・マァムさん・・でも・・」

「昨日も今日も言ったでしょう。あいつは皆で直ぐに倒すから、賭けなんて馬鹿らしい事で悩まなくて大丈夫よ。」

 

そうだ、昨日に続いてダイ兄達が言ってくれている。

 

キルバーンは戦場で会った瞬間に問答無用で灰にすると

 

常のティファならば、思考もせずにそんな短絡的な事をしてはいけないと止める立場だが、今回はむしろダイ達の考えに縋りつき思考を放棄している。

歩いていても思い浮かばないのではない。己が-魔王軍のキルバーン-を本当はどう思っているのか知るのが怖く、怯えてその事と向き合いたくないと無意識に逃げている。

 

早くハドラーの篩が始まってほしい・・・そうしたら、こんな煩わしさから解放されるのに・・・

 

キルと話せば自分の心はいつも搔き乱されるのに対し、ハドラーと話せば反対に落ち着く。共に敵で同じ魔王軍にいるのにこの差は何なのだろう?

 

埒も無い事を考えながら、頼りなく歩くティファをマァムは心配しながらも何も聞かず、ティファの好きなようにさせる事にしている。

本当は手を繋ぎ守って歩きたいところだが、今のティファは干渉を拒んでいるように感じ、負担にならないようにとそっとしておく。

 

 

 

森の中は平和な散歩だが、ティファとマァムが散歩に行って暫くした後、ロン・ベルクが何故変態野郎が洞穴に来た時叩き壊さなかったのかをマトリフに話す様に迫り、余りの執拗さに観念したマトリフが話し、それはそれで一悶着になった。

 

「どうしてお嬢さんにそんなバカげた考え捨てさせるように誰も説教してねえんだよ!!!」

 

夢のお茶会

 

味方どころか魔王やミストバーンともしてみたいなどという子供の戯言を何故そのまま見逃してやがる!!そんな訳の分からん考えなど持っているからおかしな奴に興味持たれてこんな大騒動にまで発展したんだろうと大激怒し、散歩に言ったティファに追いすがろうとしたロン・ベルクを矢張りマトリフが止める。

 

「言っとくがな、夢の話を知られたって知ったら嬢ちゃんの奴本気で俺達の前から姿消しちまうぞ。」

 

ただでさえ騒動を引き起こしやすい自分が、勇者一行の者にふさわしくない考えを持っているとダイ達に知られているのを知れば、ティファは本当にダイ達の前から消えるだろう。

会えるのは戦場でとなり、回復アイテムをダイ達に渡して共に戦い、戦闘後には直ぐにガルーダで飛んで行ってしまう姿が目に浮かぶ。

 

ティファの実力はマトリフをもってしても底が知れない。

昨日のキルを押し切った戦い方は間違いなくダイ達かヒュンケル以上に戦い慣れをしている。

己の攻撃に一切の躊躇いはなく大幹部を一瞬のうちに制圧した様は見ていて戦慄が奔ったほどだ。

 

そんなティファを一行の者達が取り押さえられるとは思えず、出来たとしても逃げ様と足搔きボロボロになるティファを見かねて行かせてしまうだろう。

 

「嬢ちゃんが洞穴に来た夜にな、やっぱり俺から逃げようとしたんだよ。」

 

狡い手だが、その時は自分の命を質にして優しいティファを足止めさせることが出来たが、二度もその手が通用するとは限らない。

 

「だからな、この件は本当に勘弁してやってくれ。」

 

マトリフはそう結び、ダイ達も視線でロン・ベルクに懇願をする。

 

お願いだからティファをそっとしておいてあげて欲しい。これ以上心を搔き乱さないで欲しいと。

 

・・・・こいつらは本当にお嬢さんに甘い、甘過ぎる。

だが、ダイ達があの変態野郎を会ったらすぐに壊すと言っているのだから、これ以上自分がグダグダいうのも筋違いか。

 

「分かった、この件はこれ以上は踏み込まん。それでいいだろうマトリフ。」

「済まねえな。」

「いいさ、その代わりお前達は俺の特訓を受けてもらうぞ!戦場であの変態野郎を叩き壊す為にもだ!!」

 

・・・・打倒魔王軍はロン・ベルクの中では打倒キルバーンへとシフトした瞬間であった。

 

「俺も受けられるか?」

 

特訓、それも地獄の特訓大好きっ子なポップはいの一番にロン・ベルクに申し出た。

メドローアの特訓と併用して、体術もっと強化したい。

 

「・・・・お前魔法使いだろう?」

「いんや、単身でも戦える魔法使い目指してるからよ。」

「なんだそりゃ?」

 

魔法使いとはロン・ベルクの中のイメージでは、戦士・剣士等の前衛を後方からサポートする者だと思っていたが、どうやらポップは一人でも敵と戦い勝てる魔法使いを目指しているという。

 

体術で敵の攻撃をさばき、よけながら間髪入れずコスパの低い初級魔法を近接近で連発で打ち込み、相手に隙が出来た瞬間に距離を取りながら魔力を練り、中級か上級の魔法を素早く練り込み大ダメージを与え、倒せなくとも敵を無力化できるようになりたいと。

今習得しようとしている大魔法も、その動きと併用できれば一行の更なる戦力になると確信して。

 

「分かった、ダイとヒュンケルは引き続き俺と打ち合いで。ポップはその間その新魔法の修練して午後にダイ達と交代だ。それでいい・・・・」ガシャ!

 

ロン・ベルクが特訓内容を話している最中、不意に言葉を切り机に立てかけていた剣を手に掴むと同時に表に走り出す。

魔族特有の聴覚が、この洞穴に向けてルーラをしている者がいる音を拾い上げた。

この洞穴にはダイ達以外が訪れる事もあるというが、昨日の今日で警戒心をマックスにしているロン・ベルクは迎撃態勢で飛び出したのだ。

 

ロン・ベルクのただならぬ様子にダイ達も即座に動き、マトリフとメルルは洞穴から出ないようにポップがいいながら表に飛び出す。

 

本当はチウにも残ってほしいが、ダイ達と共に出てしまったので仕方がない!いざとなったら未完成でも大技出すかと算段を付けダイ達がいる砂浜に出た。

 

「ロン・ベルク、なんか聞こえたのか?」

「ああ、じき此処にルーラで来る奴が・・・来た!」

 

海の端から光るものが見え、それはあっという間にダイ達の前に降り立った。

ルーラ特有の着地音もさせず衝撃もなく、その人物はダイ達の前にふわりと降りと舞い降りるように。

 

 

降り立った者は長身ながらもまだ表情にあどけなさ残っており少年の様に見え、氷の色をそのまま髪の色に写したような透明な水色を長く伸ばし、中央だけが少し黒毛がある不思議でどこか幻想的な雰囲気を纏わせている。

 

青年と少年期の境にいるようなその人物は、武装しているダイ達を見ても腰に佩いている剣に手を伸ばすことなくふわりと笑い話しかける。

 

「どうやらお騒がせしてしまった様で申し訳ありません。」

 

もの柔らかい声にダイ達が毒気を抜かれた瞬間、洞穴からマトリフが飛び出しきてダイ達をどかし、降り立った者の両腕を掴みながら叫んだ。

 

「坊や!!!」

 

それは負傷したティファを見て叫んだ時と同じ声音だった。

自分の宝物に再び、それも何の前触れもなく再会できた時の驚愕の声。

 

「お久しぶりですマトリフ様、息災の様で何よりです。」

「お前さんはこんなにでかくなっちまいやがって!前は嬢ちゃんより少し大きいくらいの背しかなかったのによ。」

「最後にお会いしたのは二年前でしたか。手紙だけで本当に申し訳ありません。」

「坊やだって嬢ちゃんとおんなじでやること沢山あったんだろう?こんな爺に絶えず手紙を送ってくれて感謝こそすれ恨む道理はねえよ。」

 

右手で訪問者の頭をわしゃわしゃしながら嬉しそうに話すマトリフに、その人は誰かポップは尋ねづらくなるが、空気読まないロン・ベルクがサクサクと聞く。

 

「マトリフ、その子供は誰だ?お前の知り合いか?」

 

問い掛けでようやく自己紹介をしていなかったと少年は参ったなと苦笑し、マトリフの腕を優しく外し、ダイ達の方に歩き前に立つ。

 

「挨拶が遅くなり申し訳ありません。僕はリンガイアで騎士職をしているノヴァと言います。以降お見知りおきを。」

 

右手を胸にあて一礼する様は優雅で一目で柔らかい人柄が見て取れる。

 

北の氷の勇者が、マトリフを訪れて来た。

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