勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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氷の勇者は一筋縄ではいかせません

そして周りに及ぼす影響力は主人公並みです


ノヴァ

「申し訳ないが作戦の細かな概要と場所はまだお教えできません。当日移動中にお知らせする手筈となりました。」

「構いません、知らなければ万一相手に漏れていても情報源は勇者一行ではないと言い切れますのでご配慮痛み入ります。」

「承知してくださり助かります。アーデルハイド王も、此度の戦も武運あるように祈っているとの事でした。」

「父の件と言い、いたみ入ります。」

 

あの二人は幼馴染だったはずなのに・・・そうか、そうよね。

 

「こほん。」

 

勇者一行の料理人と、リンガイアの名代をしている二人の間にレオナは割込み空咳をして会話を止める。

 

「皆さん、実はフォルケン王のご容態を今朝はまだ確認していないの。後お父様の方も確認するから、こっちの部屋で待っていて。エイミ、案内したらすぐにお願いしたことあるから来て頂戴。ノヴァ君も-詳しい話-をしてから帰って頂戴ね。」

「は、分かりました。皆さんこちらに。」

「レオナ姫、ありがとうございます。」

 

エイミに先導されダイ達は後を付いて行き、一番最後に出る時ノヴァはレオナの心遣いに礼を言う。

 

いいから早く行きなさいと笑って手を振るおてんば姫に

 

先程の部屋よりも落ち着いた調度品が置かれている部屋に案内されたダイ達はそれぞれ席に着き、ティファもマトリフを日の当たる席に座ってもらってからいきなり猛ダッシュをしてノヴァに突っ込んでいった!

 

「ノヴァ!!!!」

「ティファ!!」

 

ダッシュの勢いのまま突っ込んで飛びついてもノヴァはびくともせずにティファを受け止め抱きしめる。

 

「五年間本当に一度も会いに来ないなんてティファの薄情者!!」

「会えなくっても手紙沢山送ったじゃないか馬鹿ノヴァ!」

「でも寂しかったんだよ!!」

「いつでもノヴァのこと忘れたことないんだよ!いつだって!!」

「それでも会いに来て欲しかったんだよ!」

「忙しかったんだよ!!」

「君はいつだってそうだ!勝手に来たりいなくなったり!!」

「そうだよ!そんでノヴァの事大好きなんだよ!!!」

「もぅ、本当に君は勝手なんだから。僕もティファが大好きだよ。」

 

二人はひっついたまま怒鳴りあい互いに薄情者だの馬鹿だの勝手だのと罵り合う。

だがその声色は何処までも楽し気で優しく、お互いが大好きだと笑いあう。

 

レオナの読み通り、この二人は子供であっても公私を使い分けるのが異様に上手すぎ、先程はお仕事モードで接していたのだが、マトリフはともかく未だにその辺のオンオフが分からないダイ達からすればいきなり人が違ってしまったような二人にポカンとしてしまう。

 

「おい嬢ちゃん坊やも、周り見てみろ。呆れてんぞ。」

 

二人の世界に入ったが最後、ひっつきあってじゃれる様は本当に昔と変わらずと安心したいところだが、ダイ達もいるのだと苦笑する。

 

「そうでした、すみません皆さんお騒がせして。」

「ダイ兄・・・ノヴァと本当に久しぶりでね・・・」

 

片や柔らかく、片や少々恥ずかしいかもと赤らめながらもひっついている二人はある意味筋金入りかもしれない。

 

だが声を掛けられてもダイはノヴァをきちんと見れずに俯きちらちらと見て言葉が出せずにいる。

 

ダイのその視線の意味が分からない凡庸ではないノヴァは、ティファをちらりと見て下におろしダイの前に来て膝をつく。

 

「ダイ君、僕の事が嫌いかい?ティファと仲がいいのが嫌かな?」

 

あえて敬語を取り払いダイに話しかける。

 

「違う!そうじゃない・・・けど、俺・・・」

 

洞穴でポップ達のエールを受け取った後でも、いざ本人を目の前にすると竦んでしまう。妹はどうしてこの人とこんなに仲良くできるのか不思議なくらいだ。

 

「ダイ君、それは君の御父上の事かな。」

 

ビクリ!!

 

「その事だったら君が気に病むことは何一つないんだよ。」

「え?」

 

ノヴァの言った事に体が揺れたが、変わらず優しい声で話し掛けてくれる。

その優しさに釣られるようにダイはようやく顔を上げれば、あった時と同じ優しい笑みが目の前にあった。

 

「きみの御父上は確かに大逆を犯した。でもね、それは言っては何だけれども君の仲間のお二人も一緒なんだよ。それでも各国の王の裁可の下、罪を償う道を歩くを事許されている。

他の国は知らないけれど、少なくともアーデルハイド王が下した裁可を否やという者達はリンガイアには存在しない。王の命令は絶対ではあるしそれ以上にアーデルハイド様は本当に許されない時は誰が言っても求めても許しは出さない厳しさで有名なんだよ。その方が許すと言ったならば、僕達も君の仲間や御父上を信じて一緒に戦う。

だからね、ダイ君が俯いて泣く事は何一つないんだよ。」

 

ノヴァの言葉にいつしか大粒の涙を流すダイをそっと包み込み優しく労わる。

 

「大逆者の分際でとかいう奴はリンガイアの兵じゃないのを覚えておいて。例え僕等と同じ鎧を着ていても、敵の内部崩壊を狙った策略者として処罰するから大丈夫だよ。」

 

優しいのに少しおっかない事もさらりと言って、ダイは少しおかしくなり少し笑ってしまった。

 

「うん、笑う声がティファに似ているね。」

「だってティファのお兄ちゃんだもん。」

「そうだね、二人とも良い子だ。」

 

十五のノヴァは、ダイとティファを抱き寄せ良い子だと言い続ける。

一行以外の者達から、これ程優しくされたのは初めてだとダイは嬉しい心のままノヴァに抱き返した。

 

この人なら、本当にティファの相手になってほしい

 

「ノヴァって氷の呪文も得意なの⁉」

「剣・槍だけではなく弓もか・・・」

「確かリンガイアには闘気技の開発が盛んだったとか・・」

 

ダイが打ち解けた事でポップ達もノヴァともっと距離を縮めたいとヒュンケルすらもがグイグイといっている。

人見知りのきらいがあるヒュンケルにしては本当に珍しい事だが、何故かノヴァには警戒心が働かない。

 

「あ~あ、ノヴァ取られちゃった。」

「嬉しそうな顔して何言ってんだい嬢ちゃん。」

「ふふばれたか~。ポップ兄やマァムさんとメルルさん以外の皆って、接している人たちって極端に少ないでしょう。エイミさんやバダックさんやアキームさん・・・それにアポロさん以外にもいい人はたくさんいる知ってどんどん世界を広げて欲しいんだ。」

 

チウもリンガイアの闘気技を自分の技に応用できないか熱心に聞きながら笑っている。こうやって世界が広がるのを見ると本当に楽しい。

 

「そうか。」

「そうだよ。」

 

だが楽しい時間もいつかは終わりになる。程よい時間にレオナがエイミを送りお開きにさせる。

 

「ノヴァまたね!」

「うん、またすぐに会えるよ。」

 

ダイ達は城門迄ノヴァを見送りに出てぶんぶんと手を振る。

 

「良いお兄さんだね。」

「そうでしょう。」

 

ティファは城門の外までノヴァを見送る。いつもの約束をする為に

 

ノヴァは無言でティファを抱き上げ、抱き上げた後右手の親指をティファの口に持って行きティファも左手の親指をノヴァの口に当て、互いに薄皮を噛みちぎりほんの少し血が出たのを確認しあい、お互いの親指と傷口を押し付けあう。

 

「また必ず無事に会おうね。」

「また元気な姿で会おうね。」

 

リンガイアの騎士に代々伝わる呪いの一つ。

互いの無事を祈りながら互いの血を体内に分け合いまた会える事を祈願する。

 

そしてこれは自分達だけの呪い

 

額もくっつけあい笑い合う。次に会った時も同じように笑い合えますようにと祈って。

 

 

 

 

その不思議な光景は何処か侵しがたく尊いものに映り、誰もが無言でノヴァがティファを降ろした後もとやかく言わず、一礼してルーラで飛び去るノヴァに全員が手を振った。

 

 

 

「良い子達ね〜あの子達。」

「そうだね、ティファと同じ良い子達だ。・・薄汚れた者達や了見の狭い者達から守らないと。」

「ふっふ、()はきちんと刺したんでしょう?まだ心配?」

「う〜ん、ティファもだけどダイ君や他の人達、ヒュンケルさんやクロコダインさんも世間ずれしてないから心配だよ。」

 

帰りのルーラの中でノヴァはダイ達の心配をする。

一応釘は刺してはきたが、効力あるのか不安になる。

手元にいてくれれば守りやすい。あの綺麗な一行の良い子達を()()()()()()()()のティファも込みで。

 

 

 

 

 

 

 

「ノヴァっていい人だね。」

「そうだな、あいつと一緒に戦える日が待ち遠しいな。」

「心強い仲間が増えるっていいわね~。」

「はい、皆さんならきっと勝てます・・」

 

ダイ達は完全にノヴァの大ファンになり口々に褒めそやす。

特にダイの懐き様が凄かった。今別れたばかりなのにもう会いたいというほどに。

 

自分は今まであまり叱られる事なく伸び伸びと育ってきた。

だから今まで()()()であり、()()()()()に立った時、心の底から恐ろしさを感じた。

もし相手が自分を憎み許してくれなかったら?

そう思うだけでもゾッとし、心まで凍る思いがした。

寄る辺なく心細く、それでも周りに助けを求めてはいけないと縮こまっていた。

しかし、ノヴァは許してくれた。父の罪は自分のせいではない、そして父も償う道を歩くなら共に戦うと言ってくれたのだ。

縮こまった自分に差し伸べられた手に縋り、包まれた時のあの安心感は言葉でいい表されないほど嬉しかった。

ヒュンケル・クロコダインは、バルジ島戦の後と王様達から正式に許された時、自分と同じ思いをしたのだろうか。

許された時のあの想いは・・

 

 

俺も・・許せる人になろう

 

今までヒュンケル・クロコダインを許し助けてきた。それよりも更に大きな罪を犯してしまったものでも、誰かの為だったりどうしようもない事情でそうしなければならなかった者がいたら・・全力でその人の助けになり光の道を示してあげたい。その人が助かり償う道を歩ける様に。

ティファや先程のノヴァの様に自分も。

 

ダイの中で、勇者としての確たる己の道を見つけた瞬間であった。

 

 

明るく賑やかなダイ達を先導しているエイミの胸中はかなり複雑なものであった。

 

 

 

優しい?あの氷の勇者が優しく良い人?()()()()()()()()()()()()()()()()()を、何故そこまで仲良くできたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「料理人のティファの事で騒がせた方は今回の作戦に来るのですか?」

「いいえ、その者は別の任に就きます。」

「そうですか、それは助かります。今回の件は海洋に詳しいリンガイアが主導させていただくので、その方が来たら少々騒ぎになるなと危ぶんでいましたので。」

 

一国の国主代理に向かって平然と内政干渉紛いの事を笑ってさらりと言い放ち、脅し迄掛けて来た時の彼の瞳は、まさしく氷の勇者の名にふさわしく冷たかった




今宵ここまで

主人公にポップ、ダイにノヴァのお兄ちゃんポジとあいなりました。


ノヴァと主人公の約束呪いは筆者のオリジナルです。

後の話のバランを受け入れ態勢と後半で必要なフラグをふんだんに立てさせていただきました。

そして彼は優しいだけではありません。
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