敵の大魔王直属の配下キルバーンは実は凄く紳士的で礼儀正しい人でした
・・・・・・・この情報欲しくなかった
ノヴァと別れた後、フォルケン王、レオン王の順で会うことになったダイ達はエイミとレオナに先導されフォルケン王の寝所を訪れた。
顔色がよく、穏やかに笑っているフォルケン王を見て誰もがホッとする。
先の大戦でも戦場に出たことない王が、いきなり敵の人質になってさぞ恐ろしく心細い思いをして、それが体に響いたらと心配していたが杞憂で終わって良かった。
「フォルケン王、此度は巻き込んでしまい申し訳も・・」
「いや、ティファ殿のせいでは無かろう。そうではないと、こちらに使者としてきたキルバーン殿が一切を話してくれた。」
・・・・・キルバーン-殿-⁉
近頃は変態か疫病神としか呼ばなくなったあの死神を、フォルケン王様何で殿なんて付けてんだ!!!
「あの・・・あの人が一体・・・」
流石にキルをそこまで酷い人だとは思っていない超少数勢力の筆頭ティファが恐る恐る聞いてみる。
だっておじさんまでもがこいつ何言ってんだってフォルケン王様に胡乱な視線投げてんだもん。
聞いてティファは後悔しなかったが、ダイ達は幻覚か幻見たのではないかと大騒ぎし、フォルケン王を苦笑させている。
戦場出てくればティファに変態的な事しないあいつが!他の奴には真っ当な態度とってますで誰が納得するか!!
あいつは斬る・燃やす・叩き壊すでダイを筆頭に燃えているが、メルルとチウはそこまでになれず、変態被害の当事者ティファの下に集まる。
「あの・・・今のフォルケン様のお話本当だと思います。」
「はい、そこは私も疑っていませんよメルルさん。」
「・・・・あの人本当は優しい人なんでしょうか。」
「そうだねチウ君、一面だけじゃその人を推し量る事は出来ないけど、少なくとも優しい人は合っているって私も思うよ。」
そうでなければ命令違反したデビル君を殺して終わりにさせていただろう
そんな人と敵味方、だから戦なんて嫌いなんだよな~。
「ティファ!メルルもチウもあいつは駄目だよ!!」
「そうだぞ!壊すで決めてんだからな!!」
ティファ達の様子に気が付いて聞き耳立てた兄二人が、打倒キルバーンで固まっているのだと言い聞かせる。良い人だろうが何だろうが、あいつは戦場で会ったら真っ先に倒す者だ。
「分かってますよ二人共。お話しくださりありがとうございましたフォルケン王。」
「いや、さして有益な話は出来なかったが会えてよかった。」
ティファがフォルケン王を案じたように、フォルケン王もティファを案じていた。自分がティファの心を土足で踏みにじり、その後も立て続けに心の傷を暴かれたティファを。
だが、今屈託なく笑っている顔に影は無く、声色も随分と明るくなっている。自分の心配は要らぬお節介であったか。
フォルケン王の体を慮り、辞去の挨拶は短めにし、いよいよレオン王の下へと向かう。
レオン王もフォルケン王同様に寝台の住人であり、同じく寝所で会う手筈になっている。
流石のヒュンケルとクロコダインは緊張し、ティファは表情が暗くなる。
「ティファ、お父様は大丈夫よ。」
「姫様・・・」
「今朝はパン二つ食べてスープも飲まれたの。声もはっきりとしているのよ。ここ数日キチンと寝れて嬉しいって笑ったの。だからね、大丈夫よ。」
三日前アポロの無茶ぶりではあったが王の様態を思いがけなく詳しく知ることになり、胃癌で助けられないと知ったティファは、せめて苦痛を和らげ夜眠れる薬を処方した。
だがそんなのは対処療法の一環で治療ではなく、治してあげることが出来ないと負い目を感じている。
優しいがゆえに人の痛み悲しみを共有していまうティファに、父は大丈夫だとレオナは優しく宥める。
本当は自分も父を失ってしまう悲しみに押し潰されそうで夜中に起きて眠れなくなる時があるが、それでもここ数日の父は本当に調子がよさそうで嬉しいのだ。
トントン
レオナがノックをすると、入りなさいと深みのある返事が来た。それを合図に扉を開ければ、寝台の上でロカの様に枕を背もたれにして起き上がっているレオール王の姿が直ぐに目に入った。
ダイとポップ、マァムは一度会っているのでお久しぶりですとにこやかに挨拶をし、ヒュンケル、クロコダイン、チウとメルルは緊張しながら初めましての挨拶をする。
他のメンバーが挨拶をし終えた後、手を添えたままマトリフとティファが寝台に近づく。
レオナ姫と同じ赤みがかった金の髪を腰まで伸ばし、フォルケン王と同じ病人だとは思えない程力強い威厳を感じる。これをして、病床の身なれど大戦最中のパプニカ王国を纏め上げ、各国の王達との連携を強化させているのか。
ティファはマトリフから手を外し、胸に手を当て一礼する。
「初めてお目に掛ります。勇者ダイの妹で一行の料理人をしているティファと申します。」
「そなたがティファか、娘やロムスより話は聞いている。そなたの薬のおかげでここ数日眠れるようになった。感謝する。」
レオール王は目元を和ませまずはティファに優しく話し掛け礼をし、次いでヒュンケルとクロコダインに目を向ける。
娘を助けてくれた礼を言えるうちに言っておきたかったと話、深々と二人に頭を下げる。
「そんな王よ!我ら等に頭を下げられては・・」
「左様!我等はそれ以上に十分にしていただいている、それだけでもう報われているのです。」
元とはいえ魔王軍の軍団長であった自分達に頭を下げないで欲しいとヒュンケルとクロコダインの焦りを聞いたレオールは頭を上げる。
目の前に見えたヒュンケルとクロコダインと目が合った。
「レオナはしっかりとした子でこの国の次期女王だが、私にとっては掛け替えの無い、何度お礼を言っても足りないくらいに愛しい娘なのだ。礼を受け取ってくれまいか?」
穏やかに笑いながらもダイ達にも再び礼を言い笑っているレオール王を見て、ティファは胸が痛む。
どうしてこの人を治してあげられないのだろう。
俯いていると、マトリフの手が頭に置かれ声を掛けられる。
「嬢ちゃん、王がさっきから呼んでんぞ。」
「え!・・・あ!!申しわけありません。」
心と一緒に思考も何もかも沈んでしまっていたようで、呼ばれていたのに気が付かなかった。
「料理人ティファ、娘の命を助け、今また私の事を助けてくれているそなたに礼がしたい。」
「そんな・・・私は薬を・・・そもそも王を助けているとは言えません・・」
どうしても沈みがちになる心を、温かく強い声がすくいあげる。
「確かに勇者ダイとその仲間たちの活躍があったればこそ娘は助かった。その礼は一行にもうしてある。」
ダイとポップの新しい武装の資金、ヒュンケルとクロコダインの許しを出し残るはティファのみ。
「何か望みはないか?」
「・・・望みですか?」
それはティファが一番苦手な事であった。
財貨に興味はなく、武装はもう最高の品が揃っており、万能薬の材料は事欠かず欲しいものが何もない。そもそもヒュンケルとクロコダインの望み以外後は何もないのだから困ってしまう。
だからと言って、ここでありませんでは申し出てくれた王の顔を潰すことになるのでありませんともいえない。
私の望み?・・・・ずっと望んでる事は今も昔も大切な人達が皆笑っている事だ・・
「王様長生きしてください。」
するりと口から出た望みはそれだった。
「・・・私が長生きする事?」
「えっと・・・・・はい・・」
それは言ったティファか言われたレオールか、どちらの方がより驚いたのか
ティファが一行の全面的バックアップを更に望めば出す用意の手筈をしていただけにレオンは肩透かしを食らった思いをし、言ったティファ本当に何でこれ言ったんだろうと少し不思議になったが、視界にレオナの顔が見えて得心した。
自分も兄同様レオナ姫が大好き。明るく笑っていて欲しい。
「王様、この戦いきっと私達が勝ちます。」
「なんと、この段階で断言するのかそなたは?」
「はい、険しく辛い戦いになると思いますが今この世界は人間だけではなくモンスターやとある魔族の人-達-も力を貸してくださっています。一昨日は各国の王様達が力を携えて勝とうと言ってくださいました。なので私は勝てると信じています。」
「そうか・・・先の大戦と何と違う事か・・」
ハドラー大戦のときはいきなり攻めたてられ、孤立したままの状態で戦っていた。
アバン達がハドラーを倒すのがもう半年遅かったらこの国は滅ぼされていた恐ろしさをよく覚えている。
だが今回は違う。神々の加護としか思えないような奇跡が次々に起こり、オーザム以外の各国はほぼ惨状はなく、あのカールとても人身的には無傷で逃げおおせている。
さらにティファのいう事が全て本当なら、この世界全てが大魔王に立ち向かおうとしている。
「この戦に勝利した後、兄は姫と結婚すると張り切っています。」
いきなりの爆弾発言に、レオールの目は点になった。
「・・・・・勇者ダイが・・」
「はい。」
ティファは滅茶苦茶いい笑顔で肯定する。
「レオール王!身内贔屓になりますが、兄は将来もっといい男になりますよ。レオナ姫ももっともっと素敵な女性になる事請負です!見たくありませんか?綺麗になったレオナ姫の花嫁姿を。純白の綺麗なドレスに身を包んだレオナ姫はとってもとってもきれいですよ!!」
「・・・・たしかに・・・・レオナは母に似てくれて今でも十分美しいが・・」
「お父様⁉」
「そうですよね、今でも物凄い美人さんです!!」
「ちょっとティファ!!」
何を言い出すと真っ赤になるレオナをうっちゃって、二人はレオナの美しさを言い続ける。
「普段はお転婆だが、芯は優しい子なのだ。」
「はい!もういっつも優しくて、ダイ兄のお嫁様は姫しかいないと!!」
「それに甘えん坊でもあるのだ。朝起きてあの子はいつもこの部屋に来て私の膝にもたれてな・・・」
「なんと可愛らしい一面も。」
・・・・誰か今直ぐ私の存在全部消してほしい・・・
自分が絶対にダイ達に知られたくなかった甘えん坊まで実の父に暴露されたレオナは赤くなって蹲る。
そこにダイが来て頭を撫でられた。
「レオナ、俺すぐに背が伸びると思うから俺にも甘えてね。」
にっこりととどめ刺された!!
「王様!人は・・・いえ、生き物は生きたいと強く願う意思が大切なんです!!」
「生きたいと?」
「はい!今は大戦最中で心配事が絶えない日々ですが、将来の楽しい事を思い浮かべて上げてみてください。レオナ姫が結婚したらその後にはお孫さんが生まれます!抱いてみたくありませんかその手に!戦いは一時の事です!!楽しい事が必ず待っています!だから・・・・」
切々と訴えるティファを、レオールは渾身の力で持ち上げ膝の上に乗せ強く抱きしめる。いきなりの事に驚いたが、ティファはレオンの顔を見て何事かとは言わなかった。
レオールの瞳がぐしゃぐしゃに歪み痛そうな表情を見て言葉を飲み込んだのだ。、
「そなたは・・・なんと・・・」
ずっと誰かに言って欲しかった
戦いは一時の事、必ず明るい明日があるのだと、ハドラー大戦の時からずっと。
各国に救援要請をしても自国で手一杯だとはねつけられた時より、自分の心が冷え込んでいった。大戦を辛うじて生き延びる事は出来たが、レオナが生まれるまで見捨てられた思いが心を凍り付かせ閉ざしていた。
愛娘を授かれば最愛の妻に去られたが日々成長し笑って大きくなるレオナに何度癒されたか分からず、また前を向いて歩く事を決め良き国を娘に残すべく、病の身なれど王の仕事を精力的にこなした。その矢先に愛娘が大戦の犠牲になりかけ、先の大戦以上の絶望に身を包まれた。
レオナが死んだ時は自分も後を追う事を決める程に。
国の主導者が立て続けにいなくなれば立ち行かなくなる事を分かっていてもだ。
だが、今回は勇者達が間に合いあい国も娘も何度も助けられ、そして今は勇者の妹が、優しい心で自分を・・・
厳格であると評され威厳あるレオール王が、勇者や大魔導士の前であっても人目を憚らず少女を抱きしめ涙を流す。
初めて見た父の本当の弱った姿にレオナは戸惑い近づこうとするが、ロムスに手で制された。
今二人の間に入ってはいけないと。
王様・・・
「王様、長生きして下さい。沢山寝て、少しずつ食べて、周りの人達と笑ってお話して、病に勝ってください。」
レオール王の首に両手を回しティファは何度も繰り返す。長生きしてほしいと。
「食事は固形が無理でしたら根菜をくたくたに煮て擂り潰してスープとよく混ぜてどろりとした物からとると良いかと。」
「笑うと元気が湧くので、姫様の幼少の頃の思い出やお孫さんはどんな子かなとか思い浮かべてロムスさん達とお喋りするのも良いと思います。」
「日光浴も体にはいいので、決めた時間にバルコニーに椅子を置いて過ごすといいです。」
「今日の様に体調がいい時は肩や足を動かして血の流れをよくしてあげてください。寝たきりでは体が衰えてしまいます。」
ティファは穏やかに持てる知識でレオールに体に良い事を次々に話す
この位の知識は現代では当たり前でも、ダイ達の世界には医療はまだ発展しておらず、中世のヨーロッパ初期程である。
薬は薬草などで発展しているが、食事療法や血液の循環、日光浴の恩恵などはまだ知られていないが、聞いているレオンは不思議とティファの未知な話をやってみようと言う気になっている。
側で聞いていたロムスもあわてて手帳と書くものを取り出し急いでメモし、熱心に聞き入る。
ここで万能薬の第一人者である立場が功を奏し、ティファが言った事ならばやる価値はあると評価されたのだ。
いつしかレオールの涙は止まり、ティファが話す姿を見つめる。なんと生き生きと楽しそうに話す子供なのだろう。近頃は早く大人になろうとして背伸びをしているレオナの小さい頃を見ているようだ。この大戦が終わった後は、復興など大変な事は自分が全て見て、レオナにまた明るい娘に戻ってほしい。
その為にも
「ティファ、そなたの願いは必ず叶えよう。私は病に打ち勝ち、長生きをして娘の花嫁姿を見て孫をこの手に抱こう。」
願ってくれたものの頭を優しく撫で約束をする。
パプニカ王の髪は今作のアニメのレオナ姫をモチーフにし、より金色を強くさせていただきました。