マトリフの浜辺ではロン・ベルクがダイとヒュンケル相手に手を焼き始めている。即興のコンビネーションが形になってきて、二度三度といいところに打ち込まれ始めている。
たった二日でこれとは恐れ入る
かつて天才剣士の名を過酷な魔界に轟かせた事もある自分をたった数日でひやりとさせるとは大した二人である。
油断していればヒュンケルの斬撃が嵐の如く吹きすさび、それにかまけていればダイが瞬時に打ち込んでくる。徹底的に自分と距離を置き、隙あらば打ち込んでくる。
中距離と近距離コンビの理想に思わずニヤついてしまった時は二人はぞっとした顔で警戒してきた時は失礼な奴らだと思ったが、笑っていられなくなるのも時間の問題のようだ。
それにしても、城から帰ってからのこいつらの動きは昨日とはまるで別人だ。特にヒュンケルの熱量が増している気がする。城で何か決意した事でもあるのだろうか?
まぁ、主にお嬢さんが起因してんだろうが強くなる理由はなんだっていいい。
強くなって生き延びることが肝要だ。
「ティファのお茶って・・・飲むとどうしてホッとするのかしら?」
「いつもと同じ茶葉なのですが。」
強さを目指す理由候補筆頭のティファは、ただいま可愛い娘さん達相手にティータイム中。美味しいと言ってくれる二人をニコニコしながら眺めている。
これ分かってたらうんと美味しいもの持ってきてたのにな~
「姫様、後でクッキーやマドレーヌお持ちしましょうか?エイミさんに洞穴に取りに来て貰ってもいいですし。」
マトリフのティファお近づき厳禁を知らない当人は悪意なくパプニカ破滅カウントダウンを歌いだし、レオナとエイミは一気に血の気が引きティーカップを落としそうになる。・・・・・食べてみたいが取りに行ってもこの国無事だろうか?
マドレーヌで国が亡ぶ・・・・・笑い話にならないところが恐ろしい
「あのねティファ、作戦迄時間あるし・・・そうよ!ティファが作りにくればいいのよ!!」
我ながらナイスアイディア!と、内心でレオナはガッツポーズをとる。
-おじさん、マドレーヌ作りにお城に行ってもいい?-
マトリフの袖をクイクイと引くティファの可愛い頼みごとは大概通るはずだ!
アポロは現在作戦の調整の為に各国に飛んでもらっている。ベンガーナやリンガイアにも行って貰い、針の筵だろうが本人からの申し出だ。
各王家の使者は今回キメラの翼をふんだんに持たせている。物より時間が惜しい為、各国それも王城に行ったことがあり自分の身をきちんと守れるくらい高き者はパプニカではそう人数はおらず、アポロの申し出は渡りに船であった。
「私は本当に何という事を・・・」
パプニカにも歴戦の兵や騎士はおり、アポロが仕出かしたことがどの様な惨状を招くか容赦なく突きつけ教え諭された。
それは叱責よりも堪えた。自分があの場で戦端を開けば、下手をしたら姫どころか国そのものが無くなっていたかもしれない事に。
勇者一行がいれば大丈夫などと・・・鬼岩城戦でダイ達の活躍に目が眩んでしまったとしか思えず、自分の危機管理能力の低さに心底落ち込んだ。
ティファさんは、身を挺してこの国全てを守ってくださった・・・
大元を言ってしまえばそのティファにあるのだが・・初手から躓き、王と姫の為を免罪符に負担を押し付け、挙句があの騒ぎになったとロムスを筆頭に淡々と何がいけなかったのかを言われれば言われる程に自分消したくなった。
だが、それでもあの時に覚えた怒りに偽りはなく、とは言えあの小さい方に本気で詫びたいのであれば、針の筵に自分から飛び込んでいく。
各国の調整をしつつ、ー料理人ティファーを見定める為に。
戦闘は経験は少なくとも、政の中枢にて各機関同士の調整は得意なアポロは、自分から志願し今頃は嫌味と怒りの気配はあるだろうが、それでも一定数はアポロがあの塔で感じた怒りを理解して同情してくれるものもいるだろう。彼は今、様々な意味で嵐の只中にいるだろう。
つまり二人が会う事はない!
「うんむ・・・兄達が大特訓中に私一人が・・・」
「ティファは今休むのが仕事なんでしょう?ダイ君達にも作ってあげて、特訓ご苦労様って持って行けば喜んでもっと頑張るわよ。」
右手を口に持って行きオホホ笑いの形で姫らしくない崩したクフフ笑いを浮かべながら、レオナはティファの真横で悪魔の誘惑を掛ける。
休んでいても一行の為にな~る呪文
ムムム、確かにみんな甘いもの好きで、ここのキッチン借りればうんと美味しい物沢山作れる。材料は市場で買って、何なら王様にも食べやすいお野菜のマドレーヌ作って差し入れればビタミン糖分諸々の栄養取らせてあげられる・・・おじさんやロムスさん達にも差し入れられて、お城の人達にも配って日頃の感謝伝えて・・・
美悪魔レオナの誘惑に、ティファはすっかりその気になる。
「あのティファさん・・」
その気になりかけているティファに、エイミがもじもじとした様子で話し掛ける。
ん?
「どうしましたかエイミさん。」
「その・・・あの・・・」
余程言いにくいのか机の下で両手をもんで赤くなっている。
ティファは促さずに黙って待つことにした。
エイミの言いたいことが何となく察したからだ。
丁度い、自分もエイミに-その事-をきちんと聞いておきたいことがある。
「ヒュンケルはその・・・甘いものは好きなのでしょうか?」
「ヒュンケルですか?なぜ知りたいのです。」
「え?」
「あの大逆を侵した者を、何故それほど貴女が気に掛けるのですか?」
今宵はここまで
ロン・ベルクが魔界の名工としての地位は確立されていたようですが、天才剣士はミストと互角の様なので推測で書きました。
アポロも若くして三賢者の筆頭を任されているであろう理由も説得をもって書き切れていれれば幸いです。
主人公の最後の発言を次回きちんと拾い上げられればいいなと思います。