どうすればいい・・・・隙がない
浜辺でお互いに木刀を持って対峙しているダイとティファは、始まりの合図から微動だにせずそれから五分近くが経ちダイの息が上がり始めた。
正眼に構えているダイに対し、ティファはロン・ベルクと同じく木剣を左手に持っているだけで何の構えもしていない。だというのにロン・ベルクよりも隙が見当たらず、打ち込みに行けばそのまま喰われてしまうのではないだろうか?
「どうしました?来ないのですか?」
不意にティファが口を開いた。その声音は冷たくて、聞いているだけで体が心が凍てつきそうな冷たさを感じる。
「なるほど・・・こちらから埒を開けないといけませんか・・・」
ティファの呟きと共に、何かが来る気配がして考える前に木剣を顔の高さで横に構えれば、打ち込んできたティファを受け止めていた。
受け止められたと思ったのも束の間、そこから二撃目三撃目が立て続けに振るわれて行く。
それを受け止めるのも矢張りダイの本能であり、次にどう動けばいいのか途方に暮れかけるが負けたくない!!
「うおおおおお!!!!」
ティファの威圧に、弱りかけ竦みそうな自分の心を振り切るように、ダイは力強く闘志を込めた声を腹の底から絞り出し反撃に打って出る。
攻撃こそが最大の防御
アバン先生もロン・ベルクも言っていた。
戦いは相手の観察も重要だが、竦みそうになった時こそ己から打って出よ
前に出てこそ活路が見出される時が多いと。
それはパーティー戦の時には無謀な事だが、一対一の時には有効な手だ。
「あああ!!!」
早い
ダイの俊敏さにティファも手を焼く。腕力は完全に兄の方が上であり、浜辺の様に足場の悪いところでは俊敏さが最大の利点の自分にとってはいささか不利なのは否めない。
だからと言って、負ける気もないが
「土龍閃!!!!」
自分の十八番、土竜閃で浜辺の砂粒に大量の闘気を練り込み兄に浴びせる。
横一メートルの砂の壁がダイに迫り、横によけようとした矢先残りの三方も同じ砂の壁に阻まれた!!
どこから・・・
迫る砂の壁のどこからと警戒していれば、上空から気配がした!
「龍槌閃!!!」
横からくる砂の壁のどこから来ても見えるようにとトベルーラで上空に上がったダイを待ち構えていた真上からの攻撃に、ダイは反応できずに右肩を強打され砂浜に激突する。
そのまま追撃が来る!
痛みを押し殺し、ダイはすぐさま跳ね起き上からくる妹にメラの壁で防ぐ。
なるほど、魔法もきちんと戦いに組み合わせるか。
勇者はオールマイティーなのだからそれが最適解。生き延びるためにはなんでもしてもらおう!!
だけどね甘い!!
体の前方に闘気を薄く張り巡らしメラの炎のダメージを軽減させたティファはそのまま打ち合いにもつれ込ませる。
緩急自在に打ち込んでいるティファの動きに、ここ数日ロン・ベルクの特訓のおかげでダイは慌てる事無く冷静に軌道を見極め躱しながらティファの木剣の根元を執拗に打ち込みそして
バキン!!
武器破壊
これで決着がついたと思った途端、ダイは顎に衝撃をくらい気が付けば青い空を見上げ、そのまま左腕を掴まれ体が浜辺に打ち付けられティファの拳が自分の鼻先でぴたりと止まった。
「それまで!勝者ティファ!!」
目まぐるしい攻防にポップ達は詰めていた息を吐きだし汗を拭う。
ダイの武器破壊迄の攻撃も、それをものともせずに武器破壊後にも冷静に左足でダイの顎下を蹴り上げ宙に飛ばし、流れるようにダイの左腕を掴み投げ飛ばし止め迄気を抜かずに流れるように動いたティファの強さに。
「ダイ兄、私の武器壊した時点で勝てたって思ったでしょう?」
「う・・・うん。」
やっぱり
「あのね、武器は壊されるのは当たり前って考えておいた方がいいよ。」
「どうして・・俺の武器もティファの武器も・・・」
「うん、オリハルコン製だね。それでもダイ兄はヒュンケルの魔剣でオリハルコン製の剣折ったじゃない。」
「あ!・・・そうだった。」
兄に手を貸し立たせながらティファは教える。
「伝説の武器もね、無敵じゃないんだよ。それは武器頼みになって折られた時に心まで折られちゃうよ。頼りにしている相棒が折れた時も、負けないように心折れないように考えてね。折られても今私がしたみたいに攻撃をやめなければ勝てるから。」
かつて真魔剛竜剣を叩き折ったことがあるのをすっかりと忘れていた。そうだよ、神様からのアイテムだって折れたんだ、ロン・ベルクさんが作ってくれてこの剣も、俺が力足りない時は折られてしまう・・・・その時負けたと心が折れたら・・・嫌だ!負けたくない、俺達が負ければ守りたい者は全部なくなってしまう!!
「ティファ、勝ってくれてありがとう。」
「ダイ兄・・・へへ・・」
自分に勝って教え諭してくれた妹の心遣いをダイは考え至りお礼をする。
さて、次はヒュンケルか・・・・
「ヒュンケル!お前も手加減すんなよ!!」
無論だ、ティファは手加減できる相手ではない!
合図が始まる前からヒュンケルは木の槍を右手で持ち肩口に構え、直ぐに動けるように左足と左手を前に出し戦闘態勢に入った。
流石はアバンの長兄隙が無い。
新しい木剣を出したティファも左肩に木剣を担ぎ、右足と右手を前に出し姿勢を低くしトップスピードを出せる構えを取る。
ダイ兄の後でスタミナが減った自分が長引けば不利だ。
それにヒュンケルには是が非でも覚えて欲しいことがある!やったら間違いなくおじさんとロン・ベルクさんに怒られるのは必定で、下手をしたら・・・それでもヒュンケルを信じて!!
「始め!!」
フッ
始まりの合図と共に、ティファは躊躇いもなく木剣をヒュンケルの胸元に切っ先が当たるように真っ直ぐに投げつけた。
もしこれが乱打戦で体力が消耗し構えが乱れて居た時なら有効な手であったろうが、始まりのこの時に何の意味がある?
避けて構えを崩れる事を嫌ったヒュンケルは、槍の穂先で木剣を易々と跳ね上げる。
直後にティファが迫ったが、振り上げた槍で打ち据えさせてもらう!!
だが、それは果たされず今まで感じた事のない冷気が体を支配し動けなくなり
パァン!!!
ティファの両手が鼻先で叩き込まれた直後頭の中が真っ白になり気が付けば槍を取り落とし後ろに倒れて行く
「ヒャダルコ!!!」
バキン!!!
ヒュンケルが倒れると同時に氷系呪文がティファに放たれ、ティファはすぐさま上空高く飛び立ち難なく避ける。
氷系呪文を放ったマトリフは怒りの形相で上空を見上げ一喝する。
「降りて来いティファ!!其れとも引きずり降ろされたいか!!!!」
如何なる時でも嬢ちゃんと呼び大概の事を笑って許していたマトリフが、初めてティファの名を呼び本気で怒りを見せている。
何が起こったのかはたで見ていたダイ達には分からなかったが、ロン・ベルクもティファのした事が分かり無言で剣に手をかけ威圧を放つ。
降りなければ二人が相手になる
老いたりとは言えマトリフは一分という制限時間の中であればハドラーをも圧倒できる魔法戦が出来、そこにロン・ベルクが加われば間違いなくティファとてタダでは済まない
二人はそれ程までにティファの行ったことが許せなかった。
ティファが先程したのは、ヒュンケルに本気の殺気を叩き込み意識を崩したのだから
戦闘描写がお粗末で申し訳ありません(ーー;)
大魔王戦前に武器破壊の先取りをした主人公でした
生き延びるために様々な事を教えてきましたが、授業は次回で最後になります。