長かった・・(誰のせいだ?ポンコツ筆者のせいだ!!)
物語を動かすのに主人公に深く関わっているお二人に登場していただきます。
新たなる戦いへの序曲
天候は晴れず一年を通して薄曇りのギルドメイン山中の洞窟の最奥に、一人の男が瞑想をしている。
黒髪に黒いカイゼル髭を生やし、左目に竜の爪を模したモノクルを掛けている偉丈夫。
男の名はバラン
当代の竜の騎士であり、勇者ダイとその妹ティファの父。
最愛の妻を亡くした悲しみから、元凶となった人間を憎み全てを滅ぼそうと大魔王に与したが、子供達との戦いの中にて、人間は醜いだけではなくかつて自分が守るに値すると信じていた素晴らしい者達を実際に目の当たりにさせられ、今では人間と敵対する気など毛頭ない。
如何にして罪を償えばいい
ティファの秘密の部屋を出てもう十日以上になるが、考えても答えが出ない。
自分は陥落させられなかったとはいえリンガイアを攻め、人身的に被害はないとはいえカールの首都を破壊しつくし・・・・そして一国を殲滅させた大罪者だ。
ティファは罪を償う機会が一度はあっていいと言ってはくれたが、果たして許されるのだろうか?否、許されていいのかすら分からない。
温かいあの子ならば罪を償う道を本気で歩けば許されると言ってくれようが・・・
「死神か?私を殺しに来たのか。」
思考の海に漂いながらも、バランは思考を中断した邪魔者を気配だけで看破してみせる。
「ふっふっふ怖い怖い。気配を消してもこれだもの。バーン様が一目置く訳だよねぇ~。」
笑って話しかける者に、バランは警戒を解く事はせず傍らに置いている真魔剛竜剣をすぐさま引き寄せ立ち上がる。
軽薄そうに笑い、右手に大鎌を持っていてもひょいと肩をすくませる仕草は道化を思わせるだろうが、この男の恐ろしさを自分は知っている。
狙った獲物は絶対に逃がさず、バーンの命令が一度下されれば年月を掛けてでも仕留める暗殺者・死神キルバーン。
今も自分が闘気を放って威圧しようとも、飄々とした態度を崩すことがない。
「フッ・・死神の仕事が、他にあるとでも?」
飄々とした態度を崩さず、されど内心ではかなりバランの事をキルは惜しんでいる。
いや~参ったな、お嬢ちゃんのお父さん・バラン君はあんまり殺したくなかったんだけどな~。
誇り高き戦士であり、清廉潔白な騎士様はかなり自分好みの綺麗な人なのに、敵に奔ってお嬢ちゃんと合流されたら本気で困るもんね~。
お嬢ちゃんこと勇者の妹ティファは、現魔王軍の一番の敵。
知らず五年前には軍に大惨事を引き起こし、今では世界中の者達の心を纏め上げ魔王軍に立ち向かおうとしている旗印の一人。
すなわち力の勇者ダイ、優しさの料理人ティファとして。
今でも手を焼いているというのに、この上当代の竜の騎士迄加わっては不味い事態にしかならないのは誰の目にも明らかだ。
それに、お父さんにまで邪魔されたらお嬢ちゃん手に入れるのにもっと苦労しないといけなくなるのは自分的にもとっても困る。
キルはバーンの命令できたのが半分、残りの目的はティファを手に入れる障害を消しに来たのが半分。
オートドールの機械人形に与えられた疑似人格が長い年月を掛け育ち心を獲得し、遂には生き物の様に愛を知ったと、どこぞの物語辺りならば美談となろう・・・・ただし愛している対処が十二歳の女の子なのがいただけないが。
バーンやミストと共に長い、それこそ人の世が興廃を幾度も繰り返すほどの長い年月を共に渡ってきたキルが愛しているのが勇者一行の料理人ティファ。
笑顔に、泣いた顔に、時折見せるあどけない顔に、そして限りない優しさに魅かれている。
その事をバランが知っていれば、愛娘に纏わりつく害虫としてキルの気配を感じたと同時に有無を言わさず叩き切っていただろうが、残念な事に知らず穏やかに問いかける。
「かつて大魔王が私に約定した事を反故にするのか?」
最愛の妻ソアラを喪い、怒りのままに力を暴走させアルキード王国を滅ぼした後、妻の亡骸をひっそりと葬った後息子と娘をあてどなく探していた時に大魔王から魔王軍に勧誘をされた。
地上の害にしかならぬ人間を全て滅ぼし共に理想郷を作ろう
その言葉に感銘を受け自分は軍に入ったのだが。
「だって君はもう人間と敵対しないって子供たちにはっきりと言っていたじゃないか~。」
死神の大鎌を弄ぶように回しつつ、キルは歌うように答える。
この大鎌の柄の笛の部分は、動かし方によって生物の感覚を麻痺させ遂には神経をも麻痺させ動かなくさせる特殊な音波が出る。
それは魔族の耳にも聞こえる事のない高音波であり、目の前のバランも気が付いている様子はなく、自分が言った事を吟味している。
「テランの、あの場にもいたか。」
「ミストも一緒にね。あの時君を消そうかとも思ったんだけど、どう出るか見定めていたんだよ。残念な事に君は軍に戻る選択してくれなかった。
でもね、寂しくないよ?」
「何?」
「バーン様が滅ぼすのは人間だけじゃあない。人間と一緒に精霊も地上のモンスター達も全部消すんだよ。」
「馬鹿な!そんな事をして何になるというのだ!!」
人間を滅ぼすのは地上を手に入れる為には最適解だからだ。将来の反乱の芽を生ませる事無く永劫支配するためには。
「地上・・地上ね~。僕にとっては魔界も地上もどちらも大差ないけど、バーン様にとっては魔界が大切なんだよ。その魔界の蓋になっている地上を消して魔界を浮かせたいほどにね。」
「な・・・・馬鹿な・・・そんな事が許されるとでも!!そのような邪悪な企てを天界が黙って見過ごすものか!!」
「邪悪ね~。地上と天界にとってはでしょう?魔界にとっては朗報を届けてあげられる。正義を気取ってるあの邪魔な天界も滅ぼす予定なんだよ。だからねバラン君、あの世は直ぐに大賑わいになるから寂しくないよ。僕にとってはどうでもいい事だけど・・・・バーン様の為にも死んでもらうよ!!!!」
ヒュゥゥゥ!!
高音波をバランにたっぷりと浴びせ、自分の言葉に動揺し隙を見せたバランに、キルは予備動作なく一気に大鎌を振り上げ首筋目掛け一気に振り下ろす。
自分の為、何よりも親友と大好きな主の望みの為に!!!
「そうはさせん!!!」
キルの不意の動きにも動じず、
斬られ宙を舞うキルが見た物は健在なバランとそして完全な刀身の剣。
「そ・・・んな・・僕の罠が・・・それに剣も・・」
「ふん、何の小細工をしていたかは知らぬが、この私に通じるとでも思ったか。真魔剛竜剣もとっくに直っている。」
キルの驚愕にバランは真っ二つにした者を見下ろして答える。
当代の竜の騎士たる自負と、長年生死を共にした愛剣を誇り自然と口に出た。
「はは・・・君は・・とんだバケモノだ・・・」
生き物全て、それこそ今のハドラーでも無事では済まないあの音を浴びても何の不具合もないとは・・・
その言葉を最後に、死神の赤い瞳から光が消えた。
あの子の下に行かねば・・・
行って伝えなければならないことが山程増えた。
バーンと魔王軍の企みを・・・そして-あの者達-の事も
バランは真魔剛竜剣を鞘に納め背中に背負い、キルの骸をそのままにして洞窟を後にする。
後には真っ二つにされた死神の体だけが横たわっており、助けに来る者とてなかった。
ようやく・・ようやく勇者達が死の大地に行く切符を手に入れる話が始められます!
気が付けば最新アニメでお父さん出て!下手したらこの物語の前にダイ君達と大魔王たちが激突しそうです!!
原作沿いを上げていますが、原作にはないエンドを迎える為に、原作と違う敵・味方双方の変わっていく描写やその道に至る為のアフターストーリーが多すぎて、長々となってしまっていますが、それでも最後まで読みたいと思い読んでくださっている方、これから読み始めてくれている皆様に感謝しつつ、最後まで書かせていただきたいと思います。