うおおお!!!
頑張ってください勇者様達!!
姫様!どうぞご武運を!!
人類からの大反撃
その作戦を今朝がた王の御触れにより知ったパプニカ国民達は、今まさに出立せんとするダイ達を歓声をもって送り出そうとしている。
「す・・・すげえ人だかり・・」
「ポップ・・・早く行こうよ。」
「こらダイ!みんな俺達を応援してくれてんだぞ。」
静かなデルムリン島育ちのダイは、どうも人だかりが苦手らしい。
ベンガーナデパートでも人の波にもまれて半泣きしてたし、今も自分の服にしっかりと手を掛けて早く行こうとせっついている。
戦いの時はあれ程冷静に強い奴なんだがな~。
「ダイ、俺との特訓時弱音吐かなかっただろうがよ。」
「だってロン・ベルクさん・・・」
見送りに来たロン・ベルクとポップにお師匠様マトリフに苦笑いされる。
「気を付けて行けよお前達、絶対に帰ってくんだぞ。」
ダイ・ポップ・マァム・メルル・チウの頭を一様に撫で、ヒュンケル・クロコダインにも優しい瞳で送り出す。
「はい、行ってきますマトリフ師。」
「ああ、必ず。」
「皆さん、出立の時間です。」
レオナの言葉を合図に、全員が気球に乗り込もうとするが、マトリフが一冊の本を懐から取り出しダイ達に渡す。
渡されたのは、アバンが遺したアバンの書・空の章であった。
「あ!持って行こうとして・・・机の上に・・」
「ったくポップ、お前は大事なもんを・・・」
今朝持って行こうと用意しておいたのを忘れたとポップは赤面しながら師の説教と共に大切な本を受け取る。
「これで先生も一緒だね。」
「そうね、何があってもいつでも一緒だったわね。」
「ああ、そうだな。」
本だけではなく、ダイ達の胸元にはそれぞれアバンから授かった輝聖石のネックレスが下げられている。
それぞれ服の上に出し、今はいない師に自分達の今を見て安心してみて貰えるように掲げている。
ダイとポップがアバンの書を持ち合い空高く掲げる。
行ってきます先生
「行ってしまうか・・・どうか、全員無事に帰ってきておくれ。」
王城のバルコニーにて、椅子に座ったレオールと侍医長ロムスが気球で飛び立つダイ達を見送る。
彼等は人類の希望そのもの、何度祈っても足りない程に・・・
「・・・・・ティファも一緒だと思ってたのに。」
「仕方がねえだろう、向こうで傷薬大量にこさえておくってんだからよ。」
「そうですよダイ君、ティファさんらしいじゃないですか。」
さっさと現地入りした妹の不満を言えば、ポップとチウがすかさずティファ援護に回る。
自分だってその位分かっているが、どうもティファは個人で動き過ぎてはしないだろうか?
「その事なんだけどねポップ君、私ティファに詳しい作戦も場所すら教えていないのよ?大丈夫なの?」
別の意味で心配するレオナがポップに尋ねる。
これから行く場所は死の大地がよく見え港を持っているカール王国の漁村サババに行く。
勇者一行と大勢の兵や民間の格闘家・魔法使い・戦士達と共に攻め込むために、大勢の船大工を各国から募り船を作らせてじきに完成する。
このタイミングでダイ達に招集を掛けたのだが・・・一人足りなかった・・
ティファは一人で先に行った
不機嫌なダイがぶっきらぼうにレオナの不思議そうな顔に答えた。
そろそろ作戦とやらが始まるだろうから先に行ってノヴァと一緒に薬作って待ってるね~。
何ともお気楽なメッセージをマトリフに預け、自分達が寝ている間に行ってしまったのだ。
「あ~それがよう姫さん、ティファはノヴァの居場所分かるらしくてさ・・・あいつがいる所が作戦場所だろうから大丈夫だろうって師匠に言ってたらしいんだわ。」
「ノヴァ君・・・・まぁ彼と一緒なら平気ね。」
何せ天下の氷の勇者様だしと、レオナは心の内で安堵した時、一羽の白い鳩がダイだちの追いつき気球の端にちょこんととまる。
足にはマジックリングが括りつけられており、ティファがいつも飛ばしてくれる鳩だった。
「ダイ、ティファからか・・」
「うん、ちょっと待ってて。」
ダイはそっと鳩の足からマジックリングを外すと鳩は用は済んだとばかりに飛び立ち、ダイは見送ることなくリングの中身を取り出し入っていた妹からの手紙を読む。
そこには今朝死の大地の一部が隆起した異変が書かれていた。
敵からの何かしらの攻勢が考えられます。不用意に城に気球で乗り付けずに死の大地から目視されない手前で気球を下りて歩いてきて下さい。
降りる場所とそこにベンガーナの戦車隊長アキームが待っている事も記されていた。
「死の・・・ハドラーの言っていた篩って奴か。」
先程までの和やかさが吹き飛ばされる。ついて早々一戦かと力を籠めるポップの袖を大学行くと引っ張った。
「ポップ、ティファからアメの差し入れもあった・・・ヒュンケル!一人一粒って!!!」
力を籠めすぎないようにとティファからの心尽くしのアメを聞いた途端、がぜんヒュンケルが覚醒した!
そのアメを死守すべくダイは目の色を変えてとびかかって来そうな長兄に先制攻撃をして動きを封じ込める。
「・・・・俺だけ二粒でも構わんのに・・」
いや構うだろうと長兄を尊敬しているアバンの弟子一同は口に出さず、内心で押し止めた自分達はえらいと思う。
「甘くて美味しいです~。」
「チウはアメ初めてか?」
「それはそうだよポップ、クッキーだけでもありがたいくらいなんだよ。」
「・・・・それバカすか食ってるヒュンケルって贅沢か?」
「え!!・・・それ罰当たりそう・・」
砂糖はこの世界では高級品の部類に入り、それをパカパカ食べてるとはチウからすれば罰当たりそうだとなげき、その言葉にヒュンケルはしょぼんとし見ていたダイ達の笑いを誘い、気球の中は笑いの渦に包まれる。
「あ~あ、なんか変に入っちまった力抜けたな~。」
笑い涙を拭いながらポップは一つ深呼吸をする。
これだ、大事な戦い前であっても、いつも通りの自分達でいることが大切だ。
「死の大地、着いたら俺がトベルーラで上空から見てみるわ。」
アメを食べながらポップは早速戦いの為の打ち合わせをする。
全員がどんな新必殺技が出来たのかも把握するために。
「俺とダイは新技は無いな。」
「私もね、その代わり今までの技の練度と戦い方を磨いてきたわ。」
「それじゃあ新技は俺とおっさんだけか。」
クロコダインの新技は、完成したその日の内に全容を教えて貰い、その日の夜は新技祝してとティファが少し豪華な夕食を用意して宴会になった。
この三日間で一行全体の戦力が跳ね上がり、それに即した作戦をポップは常に頭の中で組み立て、如何なる敵が来ても対処できるように用意している。
その頼もしい様を、マァムが微笑ましそうにして見ている。
「ん?どしたマァム。」
視線に気が付いたポップがマァムに尋ねる。何か自分は笑うようなことをしただろうか?
「最初会った時のポップを思い出していたのよ。」
作戦上手で頭が切れるのにクロコダインとの決戦時には青褪め動けなくなってしまったポップが、強敵が待ち構えているのに顔色一つ変えずにいる頼もしい様を見て嬉しくなったのだ。
「ポップさんにもそんな事が・・」
「今のポップ君からは想像もつかないわ。」
「なんだか意外ですね~。」
メルルたちが出会った時からポップはその細い体躯の中に勇気を詰め込み、バランやザムザ相手にも怯まず立ち向かっていただけに、今のマァムの話は本当だろうかと疑問に思ってしまった。
「俺だってな・・・最初からこんな風に出来ていたわけじゃねえんだよ。」
戦いは怖いが、師の仇を柱にしてダイとティファと三人で冒険に出てきたが、いざという時に動けなかったのを助けてくれたのはティファだった。
ポップ兄はなんの為に戦うの?
私や、他の人が戦うからじゃない、ポップ兄自身がの戦う理由をきちんと出さないといつか命取りになる。だから戦う理由をきちんと出してね
そう諭され、一人では出なかった時、偽勇者一行の魔法使い・まぞっほの助言を貰い-見捨てない為に戦う理由-を見出し今に至れた。
「俺は一人で強くなったんじゃねぇ、ティファもだしまぞっほさんに教えられて、師匠やみんなの力を借りてここまで来れたんだ。だからみんなももう一度思い出してほしい。戦う理由を。」
その思いを強くし、一行全員で勝つ為に。
そしてこの一行が掲げた、勝って戦の無くなった平和な世を謳歌する事
今はこの場にいないティファと共に。
一同はその言葉に表情を引き締め、一路サババを目指す