「ティファ!本当に魔軍司令官は確約したの⁉」
「・・・ノヴァ・・・」
「ああごめんねティファ。ティファが悪い訳じゃ・・・」
「若君!こちらの者が吐血を!!」
「若ではない!すぐ行く!!ティファ、止血薬と体力回復多めに。」
「うん・・・うん!」
兵士さん達と一緒に誰一人死なせないように頑張って、目途ついて偵察申し出てハドラー来るように細工したのを確かめに来たら本人きたし・・・・これって嘘吐きましたって言ったら戦闘開始していいんよね!!
ティファはハドラーの言葉は嘘だったのかと信じていた分心の底から落胆し憤慨するが、反面送り出したノヴァは敵の言葉を最初から信じていなかったのでティファの様に動揺せず淡々と仕事をこなす。早く終わらせてティファが無茶しないように見張りに行かなくてはと気が急く。
ここは戦場であり、戦闘に無関係な一般人はおらず、ドック作業の者達もそこは承知で来たのだから死も覚悟してるであろうし・・本当にティファとその仲間達はその辺が分かっていないので手が掛かると、溜息ついてもいいだろうか?
そんなティファとノヴァの心情は知らずとも、ハドラー自身もショックを受けていたりする。
確約を守る積りで親衛隊達を送り出した!
だが結果・・・・ティファが嘘を言うわけがない。
何故だ・・・・どうしてこんな事に・・
ハドラーはティファとの確約を優先する様にヒム達にはくどい位に言い聞かせていただけに、困惑しそして言われた事にとても胸が痛む。
ティファの言葉は、これまで散々言われてきた罵倒に比べれば子供の悪口であるのに・・
ダイ達も塔での確約を驚きながらも今のハドラーならと信じかけていただけに裏切られた思いでハドラーとヒム達を見すえ、静かに闘気と魔力を練る。
今回はティファが戦っても許可する!
だがこの件で最大の被害者は誰だろうか?
ドックの大工達もノヴァ達の考えだ通り危険と襲撃は承知で仕事を引き受けており戦えはしないが志はダイ達と一緒であり、襲われるのは百も承知だったと言っただろう。
ハドラーは原因不明でも襲撃した側であり、現在進行形で確約破り紛いをしているので自業自得と言えよう。
ティファもある意味敵の言葉を鵜吞みにしてはいけない世界に生きて長いのだからハドラーの事でいちいち怒る事ではないとノヴァに言われればそれまでで・・・では誰が被害者か?
「お嬢ちゃん!!どうしてそんな確約破りの事での引き合いに僕を出すの!!!!」
ティファをこよなく愛し、ティファとの約束を守る為ならばたとえ火の中水の中、冥竜王だろうが何だろうが消し去ってでもを掲げている死神キルバーンだったりする。
バランに胴を斬られ、小一時間も誰も来ずにいたのになんとこのオートドールは復活している。
ピロロ来なかったのにだ。
ピロロとしては最近勝手している人形にお仕置きとして倒された二時間後に助けに行き、これで懲りたか二度と僕に逆らうなと言い聞かせようとしたがどうやってか自力復活して死の大地に戻ってきて、今も元気一杯にティファの言葉に両手を握りしめ絶叫しながら憤慨している。
ハドラーの来る気配で、悪魔の目玉阻止作戦をティファが解除したので辛うじて波間で様子を窺っていた一匹の目玉が上陸を果たし、ティファが確約破りの嘘吐きとハドラーを詰っている辺りから見ていた。
「バーン様!!ミスト!!!僕ちょっと行ってきます!」
酷い事の引き合いに出すなんてあんまりだとお嬢ちゃんに抗議してきます!!
「・・・・よさぬか・・」
バーンは額に手を持って行きながら心なしか疲れた声で制止する。魔王軍で怖れられた死神が、あんな子供の悪口でホイホイ表に出ようとしないで欲しい。
キルとはこんなものだったかとため息ついてもいい気がしてきた。
「・・・バーン様のおっしゃる通りだ。」
「・・・・そんな~!!!」
おのれお嬢ちゃんめ!!!僕との賭けで答えが出ていなかったり不正解の時はどんな手段使ってでも捕まえてありとあらゆるお仕置きして苛め抜いてやる!!!!
ティファからは変質死神、ダイ達からは疫病神、ハドラーからは変態と呼ばれるキルは、その呼ばれ方にふさわしい怒り方をしている・・・・・・流れ弾くったとはいえある意味被害者枠に入れなくともいい人物かもしれない。
死の大地にまで余波を及ぼしている確約破りの真偽は、ハドラーの静かな声で進展する。
「ティファよ、瀕死の者達の内訳を教えてくれぬか。」
静かだが力強い声であった。
ティファの言っている事を全く疑っておらず、只々真相を知りたいという声音に、ティファの表情が心なしか険が薄まる。
「・・・・瀕死の人達の傷は斬撃とランスの突き傷が半割りで、残り全部は-打撃-によるものです。」
・・・打撃だって!!!それって・・・・・そいつは・・・
「嘘をおっしゃい!!ヒムが・・・ハドラー様の命を違うはずがありません!我等は敵とは言え・・・」
「もういいアルビナス!!」
自分を庇おうとしてくれているクィーンの言葉を遮り、ヒムがハドラーよりも前に出る。
その表情は沈痛な面持ちで酷く後悔している者の顔であった。
「俺が・・・・・加減間違えて殺し掛けた・・」
深い深い後悔と、敬愛する主が戦利品としてまで欲したティファと交わした確約を、選りにもよって自分が・・・
ポタン・・・
ヒム・・・
それはこの日二度目の奇跡的な事、金属生命体のヒムが深い自責の念から流れ出た涙に、ハドラーはすぐさま動いた。
その行動に、ヒム達は動揺し、ダイ達の怒りが霧散したほどに
ハドラーは兜を取り外し脇に抱え、そのままヒムの前に出て敵である勇者一行の前で無防備な状態で深く頭を下げたのだ。
ハドラーは兎角いい評判が聞かれない魔王であった。
三流魔王、慢心が多い男、驕りが過ぎた男、そして昔のハドラーを知る者は必ずこう評した。
プライドが高く、人間を塵芥の如くしか見ていなかったと。
その話をロカやマトリフから聞いていただけに、ダイ・ポップ・マァムはハドラーの深い謝罪に動揺し、かつての上官たるハドラーがここまでティファとの確約を大事にしていた事にヒュンケルとクロコダインは心の底から驚く。
敬愛し、身をささげても構わないと思い詰める程ハドラーを思うアルビナスは、それでも何も言わずにハドラーのしている事を止めないでいる。
これ以上、ハドラーに泥を塗り道化にする訳にはいかない・・・・心底ティファを憎みながら
ハドラー
ティファも分かっている。ヒムが涙を流した時に、確約は意図的に破られたのではなく、ヒムが強すぎて手加減しているつもりが出来ていなかった事だと。もしかしたら死の大地で自分がヒムの胸を易々と貫いた事で、ヒムの人に対する実力の認識が高く見積もられてしまったのかもしれない。
ティファの考えは当たっていた。ヒムは生まれてすぐに出会ったのが抜きん出た力を持ったティファだった為に、人間の強さの最低基準を見誤った。人間とはもっと脆いものだと今知る程に。
だがそれもいい訳でしかない。自分の首を差し出そうとヒムが動こうとしたその瞬間、剣が鞘に収まる音がいやに大きく辺りに響いた。
誰かと見れば、ハドラーと自分に一番距離が近いティファが雪白を鞘に納め銀のマジックリングに変換し、ネックレスとして首に下げる。
「・・・・・確約破ってしまった処断はそちらにお任せしますねハドラー。」
「ティファ・・・」
「私が誰も死なせません・・死神位蹴っ飛ばして!あの世に一人でシクシク泣きながら戻ってもらいますので!!」
力強い笑みで・・・滅茶苦茶な事を・・・これは・・・
「そうか・・」
「はい!勇者一行の料理人が!死神如きに負けるはず無しです!!安心しなさいヒム!誰一人死ぬことはありません!!悪いと思うのなら次の戦場で私達にズタボロにされて負けて償ってもらいますので!!!」
にっこりといい笑顔しながら何か物騒な事を言っている!
その言葉を聞いたダイ達は闘気を練るのをやめ、ティファの様に仕舞はしないが武器を下に向ける。
不思議な事だが、ティファが許す方向に向かった事で戦端が再び開かれることは回避された。
・・・・・またあの小娘は・・
映像で見ているバーン達は今の状況を様々な思惑で見つめる。
ティファに興味を持ち始めたバーンは、矢張り面白く手元に飼っておく予定を強め、キルはいつもの元気一杯なお嬢ちゃんが戻って嬉しいと思いながらも、ハドラー達が帰ってきたら一言も二事も文句言う積りで。
一人ミストだけが、なぜティファが許しただけでダイ達までもが許すのかが分からない。キル以上に心の機微に疎いミストは、ティファの影響力ばかりに目がいき、怖れを抱く。
目の前に敵の本拠地から監視されているのは知っていても、まさか飼うだの元気出ただのと喜ばれ、ある意味この世界一番の危険人物ミストから怖れられたとは知らないティファは、来た時の心の苛立ちが霧散し元気一杯にハドラーと話している。
「魔界のあ奴らの保護決まったぞ。」
「本当ですか!それは何より!!!あ!何かお礼・・・」
「いらん、あれは俺達の領分だ、貴様から礼を言われる筋合いはない!!」
「・・・・つれないですねハドラー・・」
「ふん!お前のおかげで昨日と・・・・五年前にも死に掛けたがな・・」
「それは大変でしたね~。」
「何を呑気に言っている!!あの書類地獄!お前も味わえ!!!」
「いや~私にはそういう事に向いていないので、できるハドラー凄いですね。尊敬して、書類に埋もれて過労死してしまったら敬意をこめて-書類仕事お疲れさまでした-と彫った墓石立てて差し上げますね!」
「しゃ・・・洒落にならん。」
ヒムの心とティファの心を和まそうかと話題振ってみれば、非常識な答えが返ってきてハドラーは溜め息をつきながら兜を被りなおすが内心で安堵している。
ティファの心は思ったより回復しているようだ。
あの地底魔城の時の様にハチャメチャな事をからりと笑って言っているティファが、自分は一番好きだ
そう!このティファにこそ今こそ言いたい!決戦の時の自分の相手は・・・
ドン!!
「ティファ遅いよ!!!」
ティファに決戦時の時の相手はという寸前に、見慣れぬ者が遮った。
「あ!ノヴァ御免・・・・・でも真偽は分かったよ!」
「そう、後ででいいよ。今は帰ろう。」
ノヴァのトベルーラでの出現に、一番ティファが慌てた。この幼馴染に叱られるのが一番堪える。
しっかりとした年上の幼馴染には弱いのだ。
ティファが反省した事を確認したノヴァは、ハドラー達に向き直る。
「初めてお目に掛ります。僕はリンガイアの騎士職をしていて今はこの地の警護を纏めているノヴァと言います。魔軍司令官ハドラーとお見受けしますが、篩が終わったのならば即刻御引き取りを!」
今のハドラーと対峙し、それでも恐れげもなくノヴァは堂々とハドラーに退去勧告を突きつけた。
ティファの様にハドラー達が確約云々などどうでもいい。それよりも戦闘継続のタネをさっさと返したいと、態度にありありと出ている。
そのノヴァに、ハドラーはある事に思い至りノヴァを信じられない物を見たと凝視し、口元を戦慄かせながら言葉を紡ぐ。
「お前が・・・お前が-ノヴァ-だと・・・」
その声は震えている。ティファの実力や知識の高さのあり得なさを知っても怖れなかったハドラーの額から汗が流れている。
どうしたんだろうハドラー?
てっきりノヴァの事を-お前が北の氷の勇者と名高いノヴァ-か、位で言ってくると思ったんだけどな。
ノヴァはダイ達以外には敵味方問わずにその名が知られているので、魔軍司令官職のハドラーが食いつくのはそこだと思っていたのだが・・・
だが、ハドラーがノヴァを知っているのはそんな生易しいものではなかった。ハドラーの中で戦慄と共に刻まれたノヴァの名前は・・
「貴様が!貴様が主力を欠いていたとはいえリンガイアに攻め込んだ超竜軍団を執拗な追撃戦の果てに全滅させた-殲滅の騎士団長・ノヴァ-か!!!」
今宵ここまで