-メルルとバラン-
早く・・・早く行かないと!!
「バラン様!ベンガーナの入り口で降りて歩く時間が惜しいです!デパートには直接キメラの翼で屋上に降ります。」
「待て、あそこは確かティファが王城並みのガードをしていると・・・直接降りて警備の者が来ないのか?」
「来ます。」
「では・・・・」
「ティファさんが緊急事態時の言葉を言えば通してくれると教えてくれました。」
「あの子が・・・分かった、行ってみよう。」
ティファの言葉が本当ならば、この娘に危害は加えられまいと判断し、バランはメルルと共にデパート屋上に直にキメラの翼で降りればあっという間に警備兵に取り囲まれた。
バランにとっては数にもなっていないが、メルルは震えそうになる体を両手を握りしめ叱咤する。戦いに身を投じても矢張り大勢の人に取り囲まれると怖くて言葉が上手く出なくなる。だが、今はそんな事を言っている場合ではない!大勢の患者と自分を信じて送り出したティファさんが待っている!!
「き・・・緊急レッドコール!コンシェルジュ部門アクバルさんに至急お取次ぎを!!」
震えてしまう声を押し出し、メルルは力の限りティファに教わった言葉を叫び上げる。
この言葉はVIP会員が本当に緊急でデパートの品が必要に迫られた時のみ屋上に直乗りする時の言葉です。屋上にいる警備兵さんにも伝わりますよ。
「・・・・貴方は当人か?」
「違います!私は・・・」
「これはメルル様!レッドコールで呼ばれましたが・・・・一体・・」
「ロシナンテさん!!あぁ・・・・これをティファさんから!至急アクバルさんに!!」
緊急コールは即座にコンシェルジュ部門に報が入り、どうしても手が離せないアクバルの代わりに来たのが、コンシェルジュ部門の中堅ロシナンテだった。
見知った者が来たことで、メルルの緊張の半分が溶けかける。
彼ならばすぐにティファさんの言った事が伝わるはずだと、縋る思いでロシナンテに取次ぎを願う。
「かしこまりました。その前にメルル様、そちらの騎士様は護衛の方ですか?」
「この方は・・・ティファさんの父君で騎士をされているバラン様です。」
「そなた!」
「なんと・・・ティファ様の・・分かりました。メルル様同様バラン様もどうぞこちらに。」
メルルが嘘をついているように見えず、仮に嘘を言っても後日ティファ本人に確認してしまえばバレル嘘を言うはずもないと踏んだロシナンテは、バランの身元を一応信じ、警備兵を引かせて二人をコンシェルジュ部門のゲストルームに通す。
ティファの父と堂々と紹介されたバランは少々狼狽したが次第に落ち着き、メルルをちらりと見る。か細く先程も大勢に取り囲まれただけで震える娘が、場合によっては肝が据わることに感心する。ティファは、良き友人に恵まれているようだ。
「メルル様、お出迎えもできずに申し訳ありません。」
「アクバルさん!こちらを至急!!」
「承りましょう。」
バランよりもいくらか上の男が、ティファからの手紙の封蠟をナイフで斬り裂き取り出し、真剣に読み進める。
コンシェルジュ部門の長アクバルは、中身を読み終わると直ぐにメルルに向き直る。
「メルル様、この手紙に書かれている物全てを、大至急集めさせましょう。貴女はその間休んで英気を整えてください。」
「いいえ!私もお手伝いを・・・」
「メルル様。」
少しでも早くティファさんに物資を届けたい。
あの人達が死んでしまってはティファさんが傷つく!!
急く心がメルルを焦らせ、手伝いを申し出ようとするがやんわりとアクバルに止められる。
「貴女は物資が集まった後にやる事があるはずです。この手紙にある必要な物が緊急に使われるならば、沢山の傷病者がいるはずです。物資を取り揃えるは我らデパートスタッフの務め。その先は我等にはできませぬ。その先の為に、今はご自愛を。」
「アクバルさん・・・・分かりました。」
「はい。ではロシナンテ、メルル様とこちらの・・・」
「申し訳ないが私は少し他に用がある。そちらをすぐ終え戻るがまた屋上に直接来ても?」
「かしこまりました、警備兵にもうし伝えましょう。」
「バラン様・・・」
「案じるな、私の敵になる者は今は表に出まい。其方も体を少し休めよ。」
「はい、バラン様お気をつけて!」
「行ってらっしゃいませ。」
あの子は・・・様々な者と繋がっている。
自分の半分にも満たない我が子は、人間社会の高い位置の者達と繋がっている。
不思議なものだ、そんな子が知らずとは言え我等と縁を結んだのだから・・・
テランの回復の泉に向かう道すがら、バランは我が子を不思議に思う。
一体ティファは、この世界とどこまで繋がっているのか。
そのティファの手紙で、ベンガーナデパートは燃えている。
「よいですか!この依頼は勇者ダイ様一行と料理人ティファ様からです!!我等ベンガーナの民は、一行と彼女に尽きせぬ恩がある!これを今返さず何時返すか!!倉庫にある痺れ毒の薬草をあるだけ、他にも回復類は八割を、薬作り器具は最高の物を全て放出する。王城からの許可は待たず、無償である分全てを!!」
コンシェルジュ部門の長アクバルの号令一下、在庫品倉庫と薬品店頭販売部門は急ピッチで荷造りをしている。
VIP会員のティファだからではない、彼女が勇者ダイ一行の料理人ティファだからこそだ。
勇者様達のお陰で被害が少なかったは言えど、それでも出てしまった被害は当然あり、彼女の万能薬のおかげで大勢の自国の兵は死なずに済んだ。
それは家族が、恋人が、父が、兄が、弟が、友人が生きて帰ってきたのだ。
手足が無くなろうとも生きていた事にベンガーナの民は王直々の演説で鬼岩城の戦の規模と撃破した勇者達の勇猛な活躍を、そして料理人ティファの限りない優しさと叡智によりすくわれた事を知った。
勇者ダイ達にも感謝の念はある。敵が撃破できなければ戦は負けている。そして戦にこそ出なかったが直接の命を救ったティファの方もまたベンガーナの民に尊敬されいつの間にか畏敬の念が生まれた。
その勇者一行とティファが助けを求めているのだ。
「アクバル!!ティファ嬢ちゃんのピンチだろう!俺が直接サババ砦とやらに行くぞ!!」
薬部門の長にして、ベンガーナデパート名物頑固爺アオが意気揚々と乗り込んできた!
ティファが行くのは大概が彼のいる薬草店であり、当然顔見知りで、そしてこの頑固で有名なアオは、礼儀正しく、そして薬草の知識をきちんと持ち楽しそうに話をするティファを気に入っている。
「アオさん・・・行く先は戦の真っただ中です。許可は出来ません。」
「五月蠅ぇ!あんな娘っ子達が頑張っているのに俺達男衆が荷物届けてはい終わりが出来るかってんだよ!!!」
「貴方が行けば確実にティファ様が驚いて仕事の手を乱しますよ?」
ティファは色々と-大人っぽい-が、端々で優しい女の子だと知れる。まだまだ未熟なのだティファは。
子供や成長しきれていないものはころりとティファの雰囲気に騙されようが、少なくともアクバルとアオは騙されていない。
片や勇者も入れた小さい子供達を助けに行きたい、片やその心を乱すなで、軍配はアクバルに上がり物資は無事メルルに渡されたところにバランが戻ってきた。
「メルル様、バラン様、どうか無茶はせず。」
「はい、その旨ティファさんにお伝えします。行きましょうバラン様。」
「行こう。世話になった。」
「はい、いつか皆様でまたお越しくださいませ。」
二人が戦場に戻る事を承知で、アクバルは次と言う。この方達ならば、きっと危機を乗り越え来てくれると信じて。
「分かりました。」
「いつかまた。」
その思いに応える様に、メルルとバランは笑ってアクバルに向き直り返答して駆けて行く。
ティファの待つ砦に向かうために
-ダイ-
ドン!!
ダイもメルル達同様王城に直にキメラの翼でやってきた。本来ならば城の結界に引っかり、捕縛されるはずだが城門警備が守備隊長であり、パプニカのサミットに王の警護として随伴していたおかげで、ダイの顔を見て知っていた為にすぐさま応対してもらえた。
「ダイ様!我が国に御用が?」
「あ・・・あのティファから手紙預かって・・王様に会いたくて・・・」
説明下手な自分を呪いつつ、ダイはそれでも言おうとした事を門番が察してくれた。
「緊急事態案件ですね・・・分かりました!ご案内します。」
本来城門番にそんな権限はないが、勇者ダイと料理人ティファの案件を迷う兵はベンガーナにはいない!!
「王様⁉」
クルテマッカに会いに行く途中で、走って自分に向かってくるってどういう事⁉
「門番の片方の者が、ダイ殿が来たと。何があった。」
「王様!とにかくこれを!!」
渡された手紙をクルテマッカは即座に開けてすぐさま読む。
「分かった、ここに書かれている事すべて許可する。デパートには無償にする旨も合わせって直ぐに知らせよう。其方は直ぐにサババの砦に戻り、ティファの助けを。」
「王様・・・ありがとうございます!!行ってきます!」
クルテマッカの思いを受け取ったダイは、直ぐに砦に戻る為来た道を駆け戻る。
その背中を、クルテマッカは悲しみを湛えた瞳で見つめる。
ティファもだが、ダイもまだ小さな子供ではないか・・・幼い子供達を戦わせる、自分達は王を名乗ってもなんと小さく役にもたたない者か
「せめて出来る事を最大限にしよう・・」
デパートにすぐさま国の在庫の薬草の三分の一を渡しに行く。メルルが受け取った品は、ティファが頼んだ物の倍となって持ち帰った。
-チウ-
「マトリフ様!!」
「おうチウ!!どうした?今日は篩が・・・」
「これをティファさんから!!」
「ん?嬢ちゃんから・・・・・・・・・・・・・・・ハッドッラー!!!あいつメドローアで消滅させてやる!!!!」
「ええぇぇぇ!!!!マトリフ様⁉」
「あいつ嬢ちゃんに確約しておいて!!あんの三流魔王とうとう馬脚を表しやがったかなっ!!!!!」
過日テランの小屋であいつに下した高評価!!詫びと共に返しやがれ!詫びは当然あいつの命だ!!!
「落ち着いてくださいマトリフ様!それよりも・・・」
「チぃ!命冥加な奴・・・・チウ!俺の服そこらにほっぽってあるからそいつ持ってってくれ!俺は薬のレシピとある分持ってく!!」
「分かりました!!」
ハドラーに怒りつつも、マトリフとしては内心ティファが頼ってくれた方が圧倒的に上回って嬉しかった。
嬢ちゃんの奴が助けを求める事を覚えてくれた。こんな老骨惜しくもねぇ、背え一杯働くぞ嬢ちゃん!!
「行くぞチウ!」
「はい!」
着の身着のままでマトリフはチウに連れられ砦に向かう
-マァム、ヒュンケル-
「ここは・・・人の気配が近いな。」
「ええ、私の村が近いの。」
「ティファは前からここに来ていたのか・・・・マァム、以前ティファを見かけた事は?」
「それがないのよ。そもそもここの群生地はネイル村の人しか知らないし、知らない子がいたらすぐに噂になるはずなんだけど・・・」
二人は薬草を探しながら話、その内疑問を深める。
何故ティファはこの群生地を知っていたのか、どうして村の誰にも見掛けられなかったのか。ここは村の大人も子供も結構な頻度で行きかう場所なのに。
・・・いつかティファに尋ねてみようかしら・・
ティファの小さい頃の話を聞いてみたいとマァムは思うが、薬草が集まれば長居は無用
「この位あればいいか?」
「ええ、行きましょうヒュンケル。」
今は大勢の人とティファを助けるべく砦に急ごう!
-ポップ-
「ポップよ・・・・その本当に・・・」
「私が行っても・・・」
「うう!!だああ!!王様!アポロさん!もうここはティファ信じましょう!!いざとなったら俺も一緒に師匠に土下座でもなんでするから!エイミさんとアポロさんお貸しください!!」
命かかってる時の人手不足に!いいも悪いもへちまもあるか!!
完全にポップがキレた
妹の無茶ぶりに悩んでいるのが阿呆らしい!とっとと人助けに行くぞ!!
烈火の炎のようなポップの奇妙な迫力に押し負けた形でレオール王はアポロと数名の魔法使いの貸し出しを許可する。
あの太陽の温もりの優しい願いを叶えるべく
世界各地の大勢の者達が一つの目的の為に動く。料理人のティファを起点にして。
砦には一陣・二陣と物資と人が大勢押し寄せるのをレオナとラーハルトが整理し、ノヴァが詳しい話をし、ポップが連れて来た応援に来た者達はすぐさま手指消毒の為の強い酒を手に掛け自然乾燥をさせる。
医療はまだ未発達なれど万能薬開発が様々な副産物を生み、その一つが清潔保持。
汚れた手で傷口を触れば更に細菌感染が起こる事と、水・熱湯・酒で手指を洗った所、酒が一番有効だった。
元来酒は化膿止めで使われていたが手指消毒に有効だと知れ渡り、以来医者や薬作りに少しでも造詣がある者は作る前にも消毒が徹底されている。
黙々と手指を洗う姿を少し怖いと思うレオナ達の前に、チウとマトリフが現れた。
「マトリフ様!!」
「挨拶はいい、嬢ちゃん・・・・おいお姫さんよ・・」
ついて早々ティファの所在を確認しようとしたマトリフは、地を這うような冷たい声で問いただす。
「なんでアポロがいる?」
その言葉で場が凍りかけたが、ポップとノヴァがすぐさま飛んできた。
「師匠!アポロさんの要請したのティファなんだ!」
「僕も最初は・・・それでも、ティファが望んだことです!!」
・・・・・あああもう!宝物三人結託しやがって!!
マトリフにとってはティファとノヴァ、そして毛色は少し違うがポップもかわいい愛弟子で二人と同じ掌中の珠!この場にはいないがティファ共々三人でアポロ擁護されたら・・・
「分かったよ・・・・役に立たなかったら簀巻きにしてやら~。」
ぽつりと怖いこと言われながらアポロは無言でマトリフ達に頭を下げ、マトリフとノヴァで打ち合わせたレシピ通りにせっせと薬を作る中、ガルーダが一人の男を連れて戻ってきた。羽の音を聞きつけたポップとダイが飛び出す。
「ガルーダ!ティファは・・・あれ?」
「・・あんたは・・・・まさか!!」
「お久しぶりですダイ君・ポップさん。その節はどうも。ティファさんから手伝って欲しいと言われて来ましたが、何をすればいいですか?」
耳を丸くし、肌の色を色白にしただけの顔はそのまんまのザムザ来た!!!こいつ魔王軍から追われる心配ねぇのかよ!!!!
しかも爽やかに笑っている好青年になっちまってるし!!一体何があったんだよザムザ!!!
今宵ここまで
主人公が今まで歩いてきた道を一つずつですが一行の皆に歩いて貰い、主人公の行動や繋がりに疑問を持っていくようになりました。
長文になりましたので、繋がる道は次に持ち越します。