勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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主人公自身にも歩いてきた道を改めて歩いて貰います。


歩いてきた道が繋がる時③

バサリ

 

「ガルーダ!ザムザさんお願いね!」

「-分かっている!すぐ戻る。用を終えたらここで待っていろ。ー」

「うん。」

 

リンガイア首都の入り口の前にガルーダで降りたティファは、直ぐに走って王城に向かう。

五年前は入る事すら躊躇っていたが今は違う。

 

「-ネイ-・・じゃなかったティファちゃん!血相変えてどうした!!」

「こんにちわアルフさん!大至急アーデルハイド王にお目に掛りたく勇者一行の料理人ティファが来たとお伝えください!!」

「んだよ、水臭いぞティファちゃん!お前さんなら取次なし、ほら入りな。」

「・・・・分かりました。」

 

顔パスで入れる。

 

-ネイ-の偽名でずっと万能薬開発に携わっていたティファの正体がこのほど知れ渡り、以降アーデルハイドはティファが来た時は即座に城に入っていい許可を出し、下級兵士から大臣達にまで人相書きを見せて覚えさせた。

 

「よいか、この者なくば我らリンガイアが生み出した万能薬は生まれていなかった。よってこの者をリンガイア特別宮廷侍医長の称号を近々本人に贈る積りだ。努々忘れるな。」

 

リンガイアに万能薬をもたらしたティファの功績を考えればまだまだ安い位だが、財貨に興味がなさそうなので贈れるのは精々こんな程度。もっといい案があればと思い、構い無しで城の出入り許可も追加されたのが昨日の話だった。

 

ティファにとっては何が何だかなのだが、渡りに船とばかりに王の所在を聞いてそちらに足早に歩く。王城内を走るのは流石にマナー違反が過ぎるだろう。慌てる状況でも落ち着てかつ素早くいく事が肝要だ。

 

謁見の間にティファの来訪は即座に報が入っておりすぐさま会えた。

 

「お久しぶりですアーデルハイド王様。」

「久しいなティファ。用向きは緊急と見た。用件だけを述べよ。」

 

流石は騎士王の異名を持つ王であり、戦場で礼儀は最低限あれば後は本題に入るアーデルハイドらしい物言いに、ティファもサクサクと話を進める。

 

篩の事は後でノヴァが報告するだろうとそちらは省き、毒化と今必要な物にMP回復の泉の水が欲しい事を。

 

「戦時下においては限りある泉の水の採取は王の許可がいるとノヴァが教えてくれましたので。」

「確かに、今は不用意に持っていかない様見張りを立てている。行って汲み取り、すぐさまサババへ戻れ。辞去の挨拶は不要だ。」

「畏まりました、有難く。」

「うむ、気を付けて帰れ。」

 

どうもこの二人似た者同士で、合理主義な所が特にそっくり。

 

勇者一行の料理人と王との謁見であれば、もっとこう何かないのかと周りにいた大臣達は頭を痛める。そんなんだから王妃に言葉足らずの不愛想なのだと言われるのだ。

 

 

合理主義の片割れは、アーデルハイドの言葉通りに水を汲んですぐに城を後にした。

後でお礼の手紙書けばいいじゃない。

・・・もっと年ごろの娘らしい情緒もてと、突っ込まれても文句は言えまい

 

何はともあれガルーダが戻ってきたのですぐさま砦に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた何でここにいんだよ!!」

「いや、ティファさんに頼まれてですね・・」

「その姿でいいってティファが言ったの?」

「・・・・・流石にこれは不味くはないか?」

 

ガルーダでサババの砦に着いて早々、竜の騎士二人と魔法使いに拉致られようとはなかなか楽しい。

 

「いやこっち楽しくねぇから!!」

「おや、うっかり本音が。」

 

ザムザの思いっきりザムザな容姿にどうにかならんのかと、砦のロモス応援兵達や有志達に見つかる前にしょっ引かれる。ロモスの有志にはザムザが罠で用意した武闘大会出席者が大半だ。もしもここで魔王軍のと言われたら・・・・なんだろう、なんで自分達の周りの頼もしいお人達の大半が元魔王軍なんだろう・・・

 

ポップは改めて自分の周りの-大人達-を勘定して嫌になってきた。

兄弟子、頼りになる戦士、味方になってくれた騎士様とその配下二人・・・・・魔王軍って実は勇者一行強化でもしてくれてんのか?ラスボス強いから余裕ぶっこいて・・・

 

軽い現実逃避するポップを労り、ダイはそっとしておいてあげる優しい子。ともかくザムザに旅人のマントを渡し、頭から被ってもらって手伝ってもらう。

 

「私モシャスは苦手でして。」

 

悪びれずにいい笑顔で言うザムザにダイ達は本気で頭痛くなる。この人本当に元敵の自覚あるのかな?

 

「ところでティファは?」

「あのお方なら今頃はリンガイアかと。」

「・・・ガルーダなしでか?」

「いいえ、ガルーダ殿がティファさんの手紙を携えて来たので私はそれを読んでこちらに来ました。大体の事は分かりましたが、詳しい事は砦のノヴァさんという方に聞くようにと。ちなみに今必要な万能薬製作に一番詳しい方は?」

「ああ、師匠とノヴァが今レシピ作ってる。こっちだ。」

「ではご案内を。」

 

砦に入ってすぐのホールにティファが出していった机はそのままで、今はノヴァとマトリフが真剣な表情でレシピを作成している。

 

「失礼・・・・ふむふむ・・なるほど、これではなくこちらではいかがでしょう?」

「あ!ザム・・・・不味いだろう!!」

「あん⁉・・・お前さん誰だ?」

 

二人のレシピを後ろから覗き込み、おおよそ理解したザムザは必要な薬草名を書き込みポップ達が慌てて止めるが間に合わなかった!

 

「私ティファさんとダイ君、ポップさんに大変お世話になったものです。本名は明かせませんのでご容赦を。ティファさんに頼まれこちらに来まして。」

「・・・・・手前ぇ自身で怪しいって言ってるようなもんだろう。ポップ、こいつ本当に大丈夫か?」

 

誰がどう聞いても怪しい自己紹介に、大抵の事では驚かないはずのマトリフも流石に面食らい、愛弟子に真相聞いたところポップは頭痛を堪えながら頭をガリガリしながら答える。

 

「・・・後で詳しい話するけれど、多分薬学に関したら師匠とノヴァとティファと張る。」

「ほん・・・まぁこのレシピならできそうだ。坊やはどうだ?」

「出来ると思います。ポップがザムと言いかけたので仮の名前でも?」

「構いませんよ、若き氷の勇者殿。」

「分かりました。ではザムさん、このレシピを今すぐ調合してください。僕とマトリフ様は体力回復と増血の方を作ります。」

「承知しました。調合できましたらお知らせしましょう。」

 

怪しい者の出だしではあったが、ザムザが来たことで一気に事が進む。マトリフとノヴァだけであれば、薬の効能が強すぎて薄めるにしても効能を消さないように何を入れるかで躓いていたが、伊達に魔界で博士号は取っておらずすぐさま解決してみせた。

 

それを特別な事をしていないと言ったような飄々とした掴めない感じがどこかティファっぽい。

 

そのティファ本人もリンガイアから丁度戻ってきた。

 

「御免遅くなった!ノヴァ!今何作ってる?」

「お帰り、体力回復と増血!」

「それ後にして、MP回復の泉の水持って来たからキアリク掛けている人全体に渡るように効能消さないで薄めるの直すの手伝って。」

「分かった!マトリフ様今増血薬作って・・・」

 

 

 

「ダイ兄達も手伝って!!!!!」

 

帰ってくればあっという間に薬作りに勤しみむが、患者の数と見る側の数が圧倒的に違いすぎ、これでは患者の体力と回復する側の魔力がもたず間に合わないと判断したティファが、薬工程の最初の部分をダイ達にも手伝わせる。

 

もう一生分の薬作っているような錯覚を起こす程に薬作っているのに端から無くなり作っても作っても間に合わないってどういう事⁉

 

 

「ハドラーのぶわぁか!!!!!」

 

 

 

あまりの目まぐるしさに、キレたティファが年頃の娘らしくない罵り言葉を言っても誰も叱責はしなかった。

寧ろもっと言え!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホゥホゥ

 

「・・・・・・もっぺん言ってノヴァ・・」

「だからね、あの魔軍司令官からの伝言なんだよ。」

「・・・超ありえなくない?」

「知らないよ、寧ろ確約破りだって非を鳴らしながら堂々と夜襲掛けてもいい案件なんだよこれって。」

 

夜の帳が降りて夜行性のフクロウが鳴くほどの深夜の砦に起きている人影は少ない。

日の落ちた頃、怒涛の勢いで砦一丸となって治療したかいあり、最後の患者も痺れ毒が完全解毒されたのを確認した後砦から歓声の声は・・・残念ながら上がらなかった。

 

ある者は初めての万能薬作りの緊張感から、ある者は魔力回復する端からキアリク掛けまくりまた回復をするうちに気分を悪くし水を一杯飲んだ後は床に転がり似たような骸もどきがあちこちに転がった。

 

ノヴァに鍛えられたリンガイアレスキューとそのノヴァ自身とティファ以外はザムザを除きなれない事に疲れ果てたダイ達もうつらうつらとしていたのでそっとしておき、二人は塔の上で見張りをしながら話をしている。

 

昼間の篩の時ノヴァは単身ハドラーと親衛隊達と対峙し、その際去り際にティファに伝言を託された。

 

「体調が万全にな時に決戦に来いって。」

 

・・・・・敵の体調心配する敵将って変だ・・

 

「まぁお詫び何だろうと思うよ。自分から言い出した確約破り掛けて、この位でも間尺に合わないけど確かに伝えたよ。」

「・・・・・早速明日お休みさせてもらうよ。」

 

ハドラーの馬鹿・・・・

 

内心でハドラーを思い出し、ティファの胸がズキリと痛む。

あの人とはどうしてこうもかみ合わないのだろうか?

 

お互いに戦う事を望んでいるのに、いつも何かしら邪魔が入る・・・

 

悲しそうなティファの横顔に何かを感じたノヴァはそっと抱き上げ瞳を覗き込む。

 

「泣かないでティファ。」

「ノヴァ・・・・」

「悲しい事は全部僕が凍らせて消してあげる。だから悲しい顔をしないでティファ・・」

 

ティファのこんな顔見たくない。

 

俯くティファの姿に、ハドラーに対する怒りが否が応でも増す。ティファにこんな顔をさせるだなんて・・

 

「ティファ・・・大好きだよティファ・・・」

 

狂おしい迄の感情のままに、ノヴァはティファを掻き抱く。

 

それは愛なのか慕情なのか分からない。分からないがこの感情に名を必要としない、ティファを守れるならそれでいいのだから

 

「私もノヴァが大好きだよ。」

「そう。」

「うん・・・・ノヴァ本当に大きくなったんだね。」

「そう?」

 

ダイにはない身長と手の大きさ、ポップにはない逞しい胸板にしなやかでいてそれでいてしっかりとした筋肉を付けている腕に包まれ、ティファは不意にドキドキとする。

 

「ノヴァ・・・今日はもう休もう?」

「僕はもう少しで見張りと交代する。ティファ眠い?」

「・・・うん・・」

「マトリフ様の寝室分かるね?ゆっくりお休み。」

 

暗がりでティファの表情が見えないノヴァは、赤くなったティファに気が付かずそっと下ろし寝るように促す。

 

夕刻前に一段落着いたのを見計らってノヴァとティファが速攻でマトリフを寝室に-お連れ-という名の連行をし、泣き落として寝て貰った。

百歳の超ご高齢を考えれば仕方がない

 

そのマトリフの寝室に向かう途中、起きていたザムザに会えた。

 

「ザムザさん、この度はありがとうございました。」

「なんの、貴重な経験をさせていただきました。バラン様からお借りしたマントのおかげで正体はばれませんでしたな。」

「それは良かったです。もうお休みに?」

「その前にティファさん、-例の物-が全て揃いました。遅くなりましたがギリギリ間に合って良かった。」

「あれが・・・ザムザさん!本当に何から何まで・・」

「いいえ、礼には及びません。使うかどうかはティファさん次第ですし。」

「ええ、ですが-これ-があるとないのとでは・・・」

 

 

ザムザと話、眠気が出かけてしまったティファは砦の中庭に出る。

 

満天の星空・・・・綺麗だな・・・この星空見覚えがある。篩の篩の為に、キルに呼び出された時も美しい星空だった。

 

 

お嬢ちゃん、可愛い可愛いお嬢ちゃん

 

 

・・・こんな時はいつも声がする

 

まるですぐ後ろにいて、耳に直接声を掛ける様に甘い声が脳の奥底、体の中まで響き渡り、どうしていいのか分からなくなる。

いつもならばおじさんにしがみつけば、背中をポンポンとしてくれて落ち着けるのに・・・今は自分一人しかいない。

 

自分の奥底まで入り込もうとする声を振り払えず、幻のキルの声に囚われる寸前で-別の声-が響き渡った

 

そんな変態死神など放っておいてさっさと俺の所に戦いに来ぬか!!!!

 

・・・ハドラー?

お前がぐずぐずするからいらん邪魔建てが毎度毎度入るのだ!!俺との約束忘れるな

約束・・・あの時の約束

 

貴方を倒します

返り討ちにしてやる

 

地底魔上でのあの誓いにも似た約束の様なもの・・・忘れるわけがない

 

不意に手の中のひんやりとした物があるのを思い出す。

 

これを強く握ったから、ハドラーが出てきたのだろうか?

 

先程ザムザから受けて取った-六角形の黒い水晶-をティファはまじまじと見る。

 

キルの声は最早せず、再びハドラーの声もしない。

ティファは黒い水晶を胸元で握りしめ、何かを惜しむかのような表情をしている。

それはキルの声か、ハドラーの声どちらを惜しんだのか・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くその場で佇み、意を決したように歩いた先に、扉付近の床で寝ている兄と、その頭を膝に乗せ撫でている父がいた。

ティファの気配に気が付いたバランが無言で空いているもう片方に来るように促す。

 

父さんのお膝・・・・それよりも・・・デルパ

 

ティファは大きな毛布をリングから取り出し、一度バランにダイを抱えて起きて欲しいと頼み立ち上がってもらい毛布を床に敷く。

その上に座った父の右太腿にきちんと兄の頭を乗せさせ、自分も反対側の太腿に頭を乗せる。

少しすれば、大きな手が背中を優しく叩いてくれる。

 

ティファはほんのりと笑う。

あの十日間の始めは、父は自分に全てぎこちなく、撫でるのも背中を優しく叩くのもとても不器用で。

今はとても自然で・・・・・温かい気配にも包まれ、いつしか眠りの底に落ちていく。

 

 

 

 

翌朝目を覚ました一行とラーハルトとガルダンディーはその光景に涙を流す。

 

陽光の下、竜の親子が寄り添い穏やか眠るその姿に




今宵ここまで

主人公自身が、無我夢中でひた走ってきた道がどう繋がっているのかを再確認してもらいました。

今までは余裕なく、気が付かなかった自分の内面に少しだけ目を向けられたかと思います。

次回はいよいよ竜騎衆の二人と対面します。
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