前回の後書きでいよいよ竜騎衆の二人と対面と書きましたが大幅変更します。
父の大きな手から温もりを感じて安らぐ暗闇に落ちていく。
時々眠りに落ちる時から夢を見る。
でもこれは夢なのだろうか?真っ白い何も無い空間で父さんが泣いている。
・・・何故お前は起きぬのだ・・・・お前がいなくなれば、あの子がどれほど悲しむか・・・他の二人は起きたのに・・・・私の身勝手な行動に愛想が尽きたのならば私を罵りに来い、だがどうかあの子のために起きてくれ・・・・
テランのリュート村の子達とて待っているのであろう・・・・
はらはらと泣いている父さん・・・何が悲しいの?誰が起きなくて泣いているの?
父さんの涙が不意にどこか流れる。風も吹いていないのにどこか遠くに行こうとしている。
涙の色が竜の血の様に七色に輝き煌めく。まるでこっちだよと言っているみたいに
泣いている父さんを慰めに行きたい。でも何かが私の中で叫んでる。-今-呼ばれている方に行かないと一生後悔するって。
涙の流れる方について行き涙を流し、両手で顔を覆い遂にはに膝をついて蹲って泣き伏す・・・・まるでソアラ母さんを喪った時の様な慟哭に、引き返したいのに、今は駄目だと何かが言ってくる。
その内父さんの姿も小さくなって見えなくなる程遠くに来たら、ガルダンディーとラーハルトも泣いている。
起きてくれ!我ら両名だけでどうしてあの子に会えよう!!
起きろよ!ルードもいるんだぞ!!なのにお前がいなくて!!!ガキンチョ泣かすきかよ馬鹿野郎!!!!
・・・・あぁそうか、父さんもこの二人もあの人の為に泣いているんだ・・・
どこ・・・・どこにいるの?・・・・・どこにいるの!!
キラ
・・・・?
二人の涙も、父さんの涙と同じ七色に変わって同じ方向に流れていく。
・・・・行かないと・・・・行って起こしに行かないと!!!
待って!そっちに行かないで!!!!
白い空間が少しずつ薄暗くなって、更に暗くなる手前の狭間にその人を見つけることが出来た!
その人は更に奥に行こうとする。待ってって言っているのに返事もしてくれない!!
行かないで!行っちゃやだよ!!
追いついて、その人のマントを握りしめて叫んでようやく歩みを止める。
何処に行くの⁉もう何処にも行かないで!!!
必死に必死に止めれば、ようやく私の方に向き直ってくれた。
優しい瞳に、どこか困った様な色を含んで笑っている。
娘よ、我らの罪は知っているだろう。
知ってる!知ってるよ!!リンガイア攻めた事も!カールの首都占拠したのも全部全部知ってる!!
ならば分かるだろう?誰かが罪をその身で償わなければならないのを。バラン様達を頼む。俺の命をもって、どうかあの方と二人が罪を償う道を生きて歩く事を許して・・・・
・・・・・ば・・か・・・馬鹿馬鹿馬鹿!!!大馬鹿!!!!
なんてこと言うんだこの人は!
命をもって?そんなの死んで逃げるのとどう違うのさ!!
・・・娘よ・・・分かってくれ、この世界はお前が考える程甘くはない。我等がのうのうと生きればそれを誹り、お前達に害成す牙となる。誰か一人でも欠ければ、其れで丸く・・・・
収まったから何だっての!!そんなのおかしいよ!そんなの罪を償わないんじゃない!!生きて誹られ詰られ迫害されても償う道を歩く事が本当の償いだ!!!・・・・そうじゃなければ・・・ヒュンケルもクロコダインも・・・・父さん達だって生きていたらいけないことになるじゃないか!!!
ッ!
生きてよ!辛いし怖い事が待っていても世界は酷いだけじゃない!!リュート村のあの子達が待ってるよ!!
・・・・あの子達に・・・向ける顔などあろうか・・・・・・俺はガルダンディーやラーハルトとよりも尚人間をこの手にかけている。
・・・・種族滅ぼした人達を殺したの?
あぁ、そして憎しみに任せてもっと大勢の・・・・・バラン様の時とは違う。アルキード王国のあれは俺は悲しいが偶発的な暴走だと思っている。翻って俺のは自覚してした事だ。
分かるだろう娘よ。お前達が思うような者ではないのだ俺は。さあ、お話はここまでだ、俺は償いを・・・
そしたら・・・
ん?
そしたら!大切な人達を殺した私も一緒に行く!!!
な!娘よ!!お前が償うことなど何一つないのだぞ!!!我等を止めたは・・・
自覚して殺したのが悪なら数なんて関係ない!!あの時あの場所で私は自分の意志で貴方とガルダンディーを私が殺したんだ!!!
罪は一緒だ!ならティファも一緒に行く!!!!一人でなんて行かせない・・・一緒だよ・・
お前は・・・・・本当に何処まで・・・俺が行くと言ったら、本当についてくるのだろうなお前は・・・
行く・・・・行くよ
それは困る・・・・お前が来てしまっては大勢の者が悲しみに沈む。俺の罪がさらに増える・・
なら帰ろう?ティファと一緒に帰ろう
あぁ仕方がないな、お前を連れ行くわけにはいかん・・・・あの二人にあそこ迄格好つけておいてこの体たらくか・・・・何を言われたものか・・
・・・・何か言われたら私も一緒に謝る。一緒に帰ろう・・・
あぁ帰ろう
夜深き頃、眠りながら涙を流すバランとティファの紋章が淡く光る。
バランの中の竜の血が、与えた三人の内一人が蘇らない事の深い悲しみを紋章の共鳴を発動させティファに伝える。紋章に意思がありティファの助けを借りる様に。
共鳴でティファはバランの精神世界と繋がり、そこから更に竜の血の絆で繋がったガルダンディーとラーハルトにも繋がり奇跡はそこで止まらずさらに先に進ませた。
起きない者が黄泉路に完全に着く前に間に合い、引き留め手を繋いで共に現世に帰る。
ティファが夢だと思った事は全て現実世界の出来事であった。
バン!!
「小娘!!」
「起きろガキンチョ!!」
翌朝ダイとティファを膝に抱えて眠っていたバランは、自分が大勢の者に取り囲まれている気配にすぐさま目を覚ました。
歴戦の戦士であるバランは、敵意がなくとも瞬時に目覚め意識をすぐさま覚醒させられる。
囲んでいたのが部下とポップ達だと分かり照れ臭くなる。こんなに無防備な自分を他者に晒そうとは思ってもみなかった。
今まで魔王軍の自室でもこれほど熟睡した事は無く、ティファの秘密部屋でもいつ娘が悪夢で目覚めても包み込めるように気を張っていたが、昨日は本当に落ちる様に眠りに付けたが・・・・何か途轍もない夢を見たような気がする。
「バラン様、ディーノ様が目を覚ましそうですがその・・・・」
一番にラーハルトがダイの目も覚めそうだと告げるが、ティファの事をなんと言えばいいのか分からず沈黙をする。
ティファに様を付けるのを躊躇うほど自分達の関係は近くなりすぎ、とはいえ主君とティファの仲間の前で親しみを込めているとはいえ小娘と呼ぶのもどうなのだろうか?
「あんな、ティファなら好きに呼んでいいっていうぜ。後で話しあえよ。」
「・・・・・けどよ・・俺達だけで会って、こいつ喜ぶのかよ・・・」
ポップの気遣いにガルダンディーもそこは感謝するが、自分達二人だけで蘇った事に罪悪感を感じている二人としては、このまま会っていいのか分からず途方に暮れる。
その言葉にポップ達、特にヒュンケルとクロコダインはその思いが分かってしまう。ヒュンケル等はフレイザードの奇襲でアバンの弟子全員が死ぬのを防ぐ為、一人溶岩の中に残りながらも弟妹弟子達を命を掛けて救った事に悔いはない。
命を落として償う方が余程楽なのを自分が一番身に沁みている。幸せを見つけられたからと言って、罪悪感が突然消えてくれる訳ではない。
ティファが自分達に望んだ道は、本当に茨の道だ。誰が誹らずとも、自分達の罪は自分達が一番知っている。時折振り切るように逃げ出したい・・・・ティファがいなければ、おそらく自分の命を顧みず一行を助けて死んで終わらせていたかもしれない。あの幸せを見つける約束をしていなければ・・・
「きっとティファならば、悲しみに暮れてもお前達の生還を喜ぶはずだ。辛い事を共に分かち合ってやって欲しい。この件だけは本当に俺達にはどうする事もできん。」
ヒュンケルの万感の思いが込められた言葉に、ガルダンディーとラーハルトはティファが起きるのを静かに待つことにした・・・・・・はずだったが・・・バランからの知らせで血相を変えてティファの寝ている部屋に二人で突撃を掛けた!!
幼女とはいえ年頃の娘が眠っている部屋に突撃を掛ける暴挙に、深く眠っていたティファが目を覚まし唖然茫然となった・・・・二人の形相が怖い・・・
「小娘!!!今すぐ俺達と来い!!!!」
「ラーハルト!言葉いらん!引っ担いでいくぞ!!」
「え⁉ちょ・・・・何するんですか二人共!!!!!」
有言実行を貫いて生きてきたガルダンディーが、ベットで上半身を起こしたばかりのティファを肩に担いで、階段降りるの面倒とばかりにいきなり寝室の窓から虚空に身を躍らせ中庭に向かって飛んでいく。
「ちょっと!ガルダンディーさ・・」
「さんいらねえつったろうガキンチョ!!あいつが起きたんだ!!起きたんだよ!!!」
「・・・・あいつ・・・あ・・・あ!!」
「見えた!!」
ティファの寝ていた寝室から中庭庭は正反対の方向で少し距離があったが、ガルダンディーが飛べばあっという間に着き、ゆっくりと着地する。
降りた先に待っていたのは父とそして・・・
グレートオーラスの竜騎衆が一人・・・・
「うっく・・・・ひっぐ・・・」
うわぁぁぁぁんん!!!!!
ボラホーンの姿を認めたティファはその場で立ちつくしたまま、顔をぐしゃぐしゃに歪め大声で泣き始めた。
それは過日マトリフの洞穴で泣いた時よりも更に大きな声で。
いきなり泣き始めたティファに、ラーハルトとガルダンディーはぎょっとしどうすればいいのかオロオロとする。
元気一杯なティファか、悲しませてしまったティファしか知らない二人からすれば、まさかティファがいきなり泣き出すとは想定外だった。
てっきり生き返ったボラホーンを見て、説得に応じなかった自分達を叱り飛ばすとばかり思っていたから。それが泣くとは・・・
自分達だとて目を覚ます気配がないボラホーンに怒りを抱きながらも悲しみ涙を流した。
そして・・・先程ボラホーンが目覚めたとバランに教えられた時は頭が真っ白になり、気が付けばティファの部屋に突撃を掛けていた。
ティファの泣き止まない気配に、次第にラーハルトとガルダンディーも涙を浮かべ、鬼の形相でボラホーンに向き直る!
「お前が素直に起きなかったせいでガキンチョ益々泣いちまってるじゃねえかよ!!」
「何が俺が命で償うだ!!余計なお世話もいいところだ!!そんな益体も無い事せず素直に俺達と業火に焼かれる道を歩くと言って、共に起きていればこんなややこしい事になっていなかったんだぞボラホーン!!!」
二人は泣きながらボラホーンに向かって罵倒する。
テラン戦の後、バランはポップに竜の血を与え完全回復させ我が子達と別れてすぐ、ガルダンディー達が倒された場所に向かい、ポップに与えた竜の血を三人も与えたのだ。
直ぐには甦れまいと思い、三人が起きるかどうか分からないが安置する場所は何処かと思案する前に、ガルダンディーとラーハルトが即座に起きた時は心底驚いた。
「待てボラホーン!!」
「行くなってんだよ!!!」
それも起きて直ぐに発した言葉がボラホーンを止める言葉だったのが更にバランを驚かせた。一体なぜ直ぐに蘇れたのか、それにボラホーンが何の関係があるのか?
「お前達・・・・何があった?」
少し錯乱している二人に声を掛け暫くして落ち着いたラーハルトの話に暗澹たる思いがした。
三人は死んだ後、気が付けばどこか真っ白い何もない空間に集っていた。
ここはあの世の入り口だろうか?バランとティファは大丈夫だろうかと心残りを誰ともなく口に出し自然に話している時、上に引っ張られる感じがした。
自分達は生き返ろうとしている
ガルダンディーとラーハルト、ボラホーンは今まで何も感じなかった体に温かい血が通うのを感じ直ぐに分かったが、生き返るのを喜べなかった。
罪に塗れた自分達は、素晴らしい奇跡に値しないと
だが、ガルダンディーとラーハルトは甦った。上に上がるようボラホーンが二人を即座に投げたのだ。
「お前達は目覚めよ!罪は俺の命で贖う!!お前達はバラン様と共に生きて償え!-ティファ様-がきっと導いてくださる!!!!」
「待て!お前も共に・・・・竜騎衆の長の命令だ!!」
「待てよボラホーン!!」
「・・・・・達者で暮らせよ・・・」
二人の伸ばした手に、遂にボラホーンはその手を取らなかった。
「・・・・分かった・・・私は暫く一人でどう償えばいいのかを考える。お前達は・・・」
「我等は回復の泉近くの洞穴に身を潜めましょう。バラン様が迎えに来られるその日まで。」
「食っていくには困りませんな。」
「そうか・・・ボラホーンは棺に入れリングに入れて連れ行く・・・・程良きときに北海の故郷のあった所に埋めに行こう・・・」
そして別れ、再びティファに会う決心をしたバランは二人を伴い、秘密部屋にティファの友人ティンクがいないか尋ねていき、折よく会えたのでティファの気配を辿ってもらい三人でサババに来たところにガルダンディーとラーハルトの顔を知っていたチウに出会い砦に来られたのだ。
ティファに会い、今日共にボラホーンを北海に埋めに行こうと棺を取り出した時、ボラホーンがのそりと出てきた。最早奇跡が起きたとしか言いようがない。
決意固く竜の血を拒んで黄泉路を辿ると思っていたのだが、とにもかくにもバランは直ぐにガルダンディーとラーハルトを探し出し、ボラホーンが起きた旨を告げ当然のごとく大騒ぎになる。
「死んで償うとか馬鹿でしょう!!!生きて償ってよ馬鹿馬鹿馬鹿!!!」
「俺達と共に生きて苦しめ!!!」
「二度と死んで云々言うんじゃねぇぞ!!!」
「-ボラホーンの馬鹿!!-」
中にはにいつの間にかルードも降りてきてとぐろを巻いてバラン達を包み込み泣きながら咆哮を上げている。
ガルダンディーが一度ダイ達を取り逃がした後、ティファと再び戦う恐れもあるのでルードを筒に入れ、ティファに敗れた後その筒を託したおかげで、ルードはあの悲劇を知らずに心に傷を負わずに済んだが、ガルダンディーは簡単にボラホーンが死んだことを短く教え、仲間が大好きなルードを悲しませた。
「-もう生き返ったんなら死んだら駄目!!-」
「ルード君の言う通りだよボラホーン!!」
「そうだな、死んで何の役に立とうか・・・バラン様申し訳ない・・・・ラーハルト、ガルダンディーすまん。」
主と仲間に頭を下げ
「娘よ誓おう。俺は生きる。生きて業火に焼かれようが生きて償おう・・・」
「うん・・・・うん・・」
その光景を、遥か上空で見つめている-神-がいる
竜の騎士の親、マザー・ドラゴンその人であった。
「子等が喜んでいる・・・・・私の最後の力を使った甲斐はありましたか・・・」
魔界よりの日々強まる邪気に押され、力が削り取られる中で使った最後の奇跡
バランが竜騎衆三人に竜の血を与えた時の祈りがマザーに届いた。自分の命の火を分け与えてでも生き返ってほしいと、バランの切なる願いがマザーを動かし、最後の力を使う決意をさせたのだ。
「私に出来るのは最早ここまで・・・・数奇な運命を歩く-孫娘-よ、子等を頼みます・・・」
力を使い果たしたことに後悔はない。三人の魂を一つの場所に集め、ボラホーンも寸前まで黄泉の道に行かれないようにしていたが、力が尽き掛けあわやの所を寸前で間に合ってくれた。
これでダイ達に何があっても最早助けられないが、今眼下で繰り広げられている光景を見れた事を嬉しく思う。
神としては公平性に著しくかける行為であっても、-母-として、-祖母-としての務めを全うできたのだから。
今宵ここまで・・・・・
すみません!!ご都合主義のタグも無いのに思いっきりご都合主義やりました!
プロット段階ではボラホーンは上記の通り命を贖いそのまま蘇る事はなかったのですが、作品を進めていくうちにそれでは悲しすぎると筆者自身が耐えられず、これまでは奇跡的な事も細やかに書いてその道筋に辿り着ける様に書いてきた作品が多少軽薄化するかもしれないのを考慮しつつもボラホーンを蘇らせる事にしました。
甘い作品になったとがっかりした方もいると思いますが、最後まで読んでいただければ幸いです