お出掛けしたいが今は決戦前・・・・どうすっかな~
真魔剛竜剣治してあげたし、されど砦で出ていいものか頭を悩ますティファに天啓が降りる。
「ティファ、バランさん達と行っておいで。砦には僕がいるから大丈夫。何だったらダイ君達も一緒に出掛けておいでね。良いでしょう父さん?」
「そうだな。明日に備えて準備は万端に整えておいた方がいい。ダイ君達の剣も確か同じ匠の業物だったね。きちんと手入れをするのも戦いに備える大切な事だ。」
ノヴァは優しく、バウスンは一行のメンバーも外出できる理由をきちんと作って行ってくるように後押ししてくれる。
「う~ぅっっノヴァ大好き!!!」
兄の膝から飛び出し、向いに座っているノヴァに飛びつく。飛びつかれたノヴァは何事もなく受け止める。
「ありがとノヴァ!!」
「いいよティファ、この位何てことないよ。」
「・・・ノヴァなんか変わったね。」
「そう?」
「うん・・・大人っぽくなった。」
「そうかな?大人か・・・・・ねぇティファ、僕が大人になったらティファお嫁に来てくれる?」
「・・・・・・は?」
「ん・・・実はさ、今まで散々僕に見合い話きて大勢の人と会ったんだけどティファよりも大切にしたいと思う人がいなくて。」
「・・・・それで?」
「うん、ティファの事恋愛じゃないけど一番大切な人なんだよ。ティファと生涯を共にできたら僕は嬉しい。」
・・・・えええ!!
いきなりの氷の勇者の告白に、ノヴァの父バウスン以外が凍り付く。恋愛ではないが一生一緒にいたいってなんか達観した大人の様ではないか!
惚れたとかではないとハイキング様には言ったけど、生涯を共にしたいのはティファだけだ。
「ノヴァ・・・・私そういうのよく分からないよ・・私もノヴァ好きだけど・・」
「ゆっくりでいいよ、この戦いはこっちが勝つんでしょう?」
「うん・・・」
「その時に・・・・」
「そういう事は早く決めて貰った方がいいんですよ坊ちゃん!」
甘いんだか何だかの空間に割って入ったのは、バウスン将軍一家を陰日向なく支えてきたノヴァの乳母、現メイド頭兼料理頭を務めている恰幅の良い姉御肌のナタリーが、リンガイア名物焼き菓子をもってやってきた!
「坊ちゃんはやめてよナタリー。」
「好いた女の子一人口説き落とせない様じゃまだまだ坊ちゃんですよ。」
「ちぇ、ナタリーは本当に・・」
「おはようございますナタリーさん。」
「ティファちゃん。」
「はい。」
「おばあちゃんでしょ?」
「は・・・あ、いえ・・・でも・・」
「ナタリーさんなんて他人行儀じゃ返事しないよ。」
「・・・・・ナタリーおばあちゃん・・」
「はいよ、二人の好きな焼き菓子焼けたよ。お食べな。」
「うわい!焼きたてだ!!」
「いただきます!!!」
さっき生涯を共にしてほしいと言っていた大人っぽいノヴァは、焼き菓子を前に相好を崩し、机に置かれた焼き菓子に手を伸ばしパクパク食べる。
「あ!こっちキイチゴジャムだ。」
「こっちオレンの実の果肉入り!!」
ティファも手を伸ばし、中身が違えばどちらからともなくお互いの口に持っていきそのまま直に分けっこする。
昔からの癖を知っているバウスンとナタリーは目を細めて笑っている。
二人は実に似合いの夫婦になりそうだ。こうやって毎日仲良く暮らし、いつか子が出来る程の大人になっても仲睦まじく暮らそう。
「ノヴァなら・・・本当にそうなってくれたらいいのにな・・」
「・・・ディーノ、あの少年とティファは・・・」
「うん、マトリフさんとおんなじくらいに出会って、以来仲良しなんだって。俺もノヴァ好きだよ。」
「そうか・・・」
娘の無邪気に笑う姿と、息子の後押しにバランはそれ以上何も言わない。二人が好き合うのならば、自分が何を言えよう。
「ナタリーおばあちゃん、昨日から今日まで大変だったでしょう。」
「あんなのどってことないよ。ティファちゃん達の方が大変だったろう。」
昨日の夕刻前に、リンガイアのバウスンの家に戻ったノヴァはナタリーを砦に連れて来た。連れてきたのはナタリーだけではなく城から大勢の料理人を借りてきて。
空腹は思考を鈍らせ体力ももたなくなる。徹夜になるのはあきらかだったので早々に料理人を確保して一口サイズのサンドイッチなどを作ってもらいお陰で薬作り治療と集中してできた。
「私も手伝えば・・・」
「ティファちゃん、あんただって薬作って疲れてただろう?無理しなさんな。」
「それは-慣れてる-から大丈夫・・・」
「ティファちゃん!」
徹夜も薬作りもひっくるめて大変なことに慣れていると言おうとするティファを、ナタリーが強く止めに入った。
「-子供-が、そんな大変な事に慣れるもんじゃないよ。」
「ナタリーおばあちゃん?」
「分かったかい?」
「でも大丈夫だよ。体力は自信あるし、力持ちだし、料理だって慣れてるから大丈夫なんだよ。」
「・・・・・ティファちゃん・・」
あれ・・・まただ・・
時々私の事を知っている大人の人は、私の事をこうやって困った事を言う子供みたいな顔をするんだよね・・・どうしてだろう?出来るからできるって言っているだけなのに・・・そして大抵この後は・・
ポンポン
「無理しないんだよティファちゃん。」
「・・・・はい・・」
こうやって宥めようとする
ティファは子ども扱いされてると憮然とするが、ナタリーは胸が痛む。
急いで大人になろうとするティファが可哀そうで仕方がない。力があろうが何だろうが、ナタリーにとって、ノヴァもティファも可愛い子供なのに。
「沢山お食べ、出掛けるんだろう。」
「はい、夕食前には戻ってきます。」
「あいよ、ティファちゃんのお父さん達は何か食べたいものあるかね?」
「・・・いや我々はいただけるのであれば・・」
「・・気にしなくて・・」
「食えればいいし・・・・」
「お任せする。」
「なんだい張り合いのない男達だね~。ここはドンと決戦前には肉がいいとか言えないもんかね。遠慮せずバンバンお食べ、あ、それとマトリフさんは若い女の子見ても口説くんじゃいよ。」
「けっ、言ってろばあぁさん。若い女の子は生憎嬢ちゃんで満杯だよ。」
「はっはっは!その通りだね~。」
バランやマトリフ相手にも豪快に話しかけ竜騎衆三人も手玉に取ったナタリーは手を振って食堂の調理室に戻る。その目尻に、涙が浮かんだのは誰にも見られる事なく・・・
「出掛けるのは私とダイ兄とポップ兄と父さんとラーハルトとヒュンケルでいいのかな?ボラホーンとガルダンディーは行かないの?」
「俺はチウと空の見張り一緒にする約束してるからな。」
「俺はまだ体が本調子ではないから止めておく。それよりも明日に備えよう。」
「分かった、そしたら・・・ダイ兄達着替えてね。」
ダイ兄と父さんとヒュンケルは武具の手入れ、ラーハルトさんは父さんの護衛とロン・ベルクさんに魔槍のお礼で、ポップ兄はついてきたいからだとか。
残りの皆はゆっくり休むのと見回りをすると言ってお留守番。
例によって例の如くお着替えだ。
出掛ける前の御着替え待っている間にレオナ姫とエイミさんとアポロさん発見!!
早速お声掛け!
「レオナ姫、エイミさんアポロさんおはようございます!!」
「あらティファ達まだ食事中?」
「おはようございますティファさん。」
「・・・おはようございます。」
食堂前を偶然通りかかった三人はティファの声で一行メンバー勢ぞろいなのに気が付き食堂内に入り、レオナとエイミは明るくティファに挨拶を返すが、アポロは矢張りといおうかかなり距離感を感じる様子で返す。なにせマトリフがいて視線がまだ険しいうえに、アポロ自身がティファに対する態度を決めかねている。
別にティファ自身は嫌いではない。何せ自分の敬愛するレオナ姫を救ってくれたのがティファの作った万能薬だからだ。
そこに感謝はすれど・・憎いハドラーと和やかに話をしていた光景が、今でも自分の胸中を怒りが焦がしている。
どうしてもそこは許せず、さりとて世界の為に最前線を支えているのもまた事実であり、様々な葛藤を抱えているのを知らないティファは気軽に話しかけてくる。
「皆さんお食事は?」
「打合せしながら摘まんだくらいね。」
「そしたらリンガイア名物焼き菓子食べませんか?ノヴァの家の・・・」
焼き菓子はあっという間に売れました。女の人はスィーツに弱いのは古今東西変わらない。意外にもアポロさんにも好評で平らげた。
「これは何とも・・・」
「アポロさん焼き菓子初めてですか?」
「ええ、余りパプニカを離れる事はなかったので・・」
「後でナタリーさんに伝えておきます。きっと夕食のデザートに出してくれますよ。」
「それはありがたい。」
兄達を待っている間に思いがけなくアポロさんとお話できた。
昨日のキアリク凄かったな~。
この砦で一番キアリクを掛けたのはアポロであり、その後も全員が解毒できるまで他の手当てを懸命に手伝い、終了宣言と共にぶっ倒れたのを運んだのがなんとノヴァ自ら運んだのだ。
ティファの騒動事はどう考えても一割はティファで、八割は無能魔王で、残りの一割しかアポロは悪くないのを知っているから・・世間知らずすぎるティファと世間知っているくせ無能者に無神経されたアポロを、傷つけるつもりは無い。
昨日のアポロの献身的な働きを見て、アポロという人物の為人を知っているのだから。
「これからベンガーナデパート経由でロン・ベルクさんのところ行きますが、デパートで入用なものありますか?」
「特にないわね、楽しんでらっしゃいティファ。」
「たの・・・・姫様、武器の手入れに・・」
「はいはい、よしよし。」
「むぅ~。」
「皆お待たせ!!」
レオナに弄られている丁度その時、ダイ達が着替えから戻ってきた。
全員前回と同じ服だが、バランの砕けた服装を始めてみたラーハルト達は絶句する。モノクルも取っているせいか、ダイと並んでいれば市井の親子のようだ。
「へへへ、父さんやっぱりかっこいい。」
「言いすぎだぞティファ。」
「ティファの言う通りだよ。父さん其の胴着よく似合うよ。俺も早く背が伸びないかな~。」
「ダイ兄ならあっという間だよ。さてお出掛けお出掛け~。」
いつもの様にティファはガルーダで、他はキメラの翼を持ったダイに運ばれベンガーナデパートの屋上の降り立つ。
デパート内ではとやかく言われずとも、このご時世街中を半魔のラーハルトが堂々と歩けないところが辛い。
石投げられなくとも痛い視線回避で屋上に降りて御免しようと思ったら・・・
「これはバラン様!また何か緊急の?」
「いや、今日は娘が来たいと・・」
「あ~どうも、昨日レッドコール活用したティファです・・・・緊急でないですがガルーダ預けても?」
「構いませんとも!!ささ、皆様お早く中に。」
昨日の警備兵がいたおかげでスムーズに話が進み、ラーハルトを見ても誰も特別な事を言わずにコンシェルジュ部門接客室に案内してもらえた。
「小娘・・・・俺が居てもいいのか?」
「大丈夫、デパートって時折はぐれ魔族さんや半魔の人が宝物持ち込むことあるから偏見は-外-よりは少ないよ。」
「そうか・・・そういう事もあるのだな・・」
人生の大半を人間の迫害に晒されて来たラーハルトにとって、リュート村以外でもそういう場所があるのだと知るのは不思議で、そして胸が苦しくなる。
自分は・・・自分達は一歩間違えれば酷い事をしない者達も諸共に消す手伝いをしようとしていたのかと思うとゾッとする・・・・そして同時に安堵する。
我らはこの方達に敗れて良かったのだと
「これはティファ様!バラン様も昨日ぶりですかな。」
「早い再会になったな。」
「お久しぶりですアクバルさん。昨日は大変助かりました。」
「何の、我等ベンガーナデパートは全面的に貴方方をサポートできたこと誇りに思います。
ご入用の物あらばいつでもお言いつけを。」
アクバルとの再会にバランは苦笑し、ティファはにっこりと笑ってお礼をする。昨日頼んだ以上の物資に目を丸くしたが、あれがあったおかげで助かったのだ。
「今日も薬草が入用ですか?」
「いいえ、お礼と少し注文が。少し急いでいるので手紙で失礼します。
そしてこちらが私の兄達と仲間達です。」
「え!・・えっと・・・・ティファの兄で勇者している(?)ダイです。」
「兄のポップで魔法使いしています。」
ティファ!いきなりの無茶ぶり毎度毎度酷すぎる!!
「ダイ一行の戦士ヒュンケル。」
「バラン様の配下のラーハルトだ。」
狼狽しながら挨拶するダイ達が全員名乗り終えるとアクバルも優美にお辞儀し挨拶を交わし終えると、ティファは用は済んだと直ぐに辞去の挨拶をする。
「せめてアオの所に寄っていただけませんか?」
「アオじいちゃん・・・分かりました。ついでに少し食品店も見てから行きますね。」
「はい、是非に。」
ティファ達が行った後、アクバルは早速手紙を読み始める。
昨日のお礼からが始まり、ベンガーナデパート全員食事とお酒を贈らせてほしい旨がしたためられていた。
-三千~五千ゴールドかかるでしょうが受け取ってください。皆様の迅速な対応のおかげで死者が一人も出ずに済みました。そのお礼なのでお願いします。
勇者一行の料理人ティファより-
一通目にはお礼の品を送りたい旨が。そしてもう一通は-礼服-の注文書が。
それは-大戦終了後-、兄達に必ず必要になる物。いざという時に慌てなくていいように、特急料金でお願いしますと書かれ、入用の人物の名前と寸法が全て書かれている。
そこに書かれているのは男物三着と、大ネズミの子ですがと書かれた子供用が一着、そして女性物が-二着-
それぞれ詳しい寸法が掛かれており、特に大ネズミの子はイラスト付きの寸法書で、当人がいなくとも仕上げられるようにきちんと全て書かれていた。
本人たちが寝ている間や、式をふんだんに使って測った寸法に誤りはないとティファは自信満々である。
大戦が終われば、あの方達はあちこちに引っ張りだこになるか・・・・王城にも行くだろう、これは早急に届けられるようにしよう
「アオじいちゃ~ん。こんにちわ~。」
「来たかティファ嬢ちゃん!!薬草足りたか!何かまだいるか⁉」
「・・・デパート破産しない?」
「はん!子供はそんな事気にすんじゃあねえ!!いつでも言えよ!」
「はは・・・ありがとうアオじいちゃん。」
手短ながらもしっかりと礼を言い、次に食品店に向かう。
「・・・・ロン・ベルクさんに贈り物・・」
「あの武器見たらロン・ベルクさん怒るかな?」
「うむ・・・武器を大切にしない奴は滅んでいいと言っていたしな・・・」
これから向かう先の主のご機嫌とりのお酒を探し。伝説の武器腐食させた父に対する怒りを和らげて貰う為にティファ達は真剣に選んで買った。
酒店の向い側に甘味売り店がある。甘味の中には当然・・・
「・・・・ヒュンケル、それ欲しいんですか?」
「いや!俺は・・・」
「いいですからどれですか?」
「その・・・・・鼈甲色のを・・・」
アメをまじまじと見始めたヒュンケルに溜息つきながらティファはもう何も聞かずにさっさかと買う。
「ヒュンケル、一日一個にしてね?」
「お前食べ過ぎじゃね?」
「いやそんな事は・・・分かった、一つにしておく。」
ヒュンケルはアメが絡むと本当に駄目っ子だとダイ達は溜め息をつき、元同僚達はヒュンケルとはこんな者だったか?自分達の次に人間憎んでいなかっただろうかと目を疑う。
特にラーハルトは不安になってきた。
頼りになる強者と見込んだからこそティファ様と魔槍を託したのだがこいつ本当に大丈夫だろうか?
全て買い終わったティファ達は屋上に戻り、一路ロン・ベルクの下に飛んでいく。
今宵ここまで・・
長くなりすぎてロン・ベルクさんの所に辿り着けなかったです(´;ω;`)