勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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前回のあらすじ

勇者一行の料理人がパプニカ王女レオナに跪き、敵からの要請に応える事を許しを得ようとこい願う

勿論思惑満載です!!


決戦行かずに突然の休日⑧

「随分芝居がかった事をするものだな。」

 

ティファとレオナの遣り取りに、何の茶番だとハドラーが平然と突っ込む。

 

「ふっふっふ、ここまで壮大な遣り取りしないと書けなかった成分表ですと、小姑参謀さんに是非お伝えください!書くのには非常に困難な道のりがあったのだから、ありがたく読むようにと!!」

 

もしかしなくとも小姑ってミストバーンか⁉

 

「・・・・カッコつけて言っとるが、ようはミストバーンに対する面当てか?」

 

勢い立ち上がり両腰に手をあてがってどや顔で言うティファに対し、試しにミストの名前で聞いてみれば

 

「当たり前です。嘘言っていないのに、そちらの都合と思いに応えてやるだけでも有り難く思いなさい!!」

 

平然と悪戯っ子が悪さ思いついた時の様な良い笑顔で、何言ってるんだこやつは!

 

誰がただで書いてやるもんですか、成分表と内容に仕掛け施しとくもんね

 

 

何やらキッヒッヒと笑いそうないい笑顔で笑い出したティファを、ハドラー含めた全員から冷や汗が流れる・・・!!

 

「ティファ!その成分表に何書くつもりだ!!」

「いやですね~ハドラー。悪い事なんて考えてませんよう~。」

「嘘つけ!!その悪辣な表情を今すぐ鏡で見て来い!!!」

 

完全に悪の組織の奸計担当が悪い事思いついた顔だろう!!

 

「まぁまぁ、きちんと書きますから、あの小姑参謀さんは-どんな文章-でも読めますか?」

「あ?当たり前であろう。あ奴はバーン様に長年・・・その前にミストバーンの事は・・」

「小姑参謀でいいじゃないですか~。」

 

何だそのとってもいい笑顔でいいこと言っている顔は!!

あの冷徹寡黙参謀そんな風に言うのお前しかいないぞ絶対!!

 

「いいのかヒュンケル!元とはいえ師が小姑呼ばわりされているんだぞ!!」

「俺に振るなハドラー!!・・・・・・ノーコメントだ・・」

 

様々に周り振り回しまくっている張本人は、ハドラーの言う通り悪辣な笑顔で内心ルンルン歌いながら成分表を書いていく。

 

あの人位ならこれ-読む事-出来るよね~きっひっひっひ

 

 

「書けましたよハドラー、ってみんなどうしたのチウ君?」

 

周りの声が届いていなかったティファは、何故ハドラー含めた主な者達がグッタリしているのか不思議で、-参戦-せずに体力あるチウに尋ねる。

 

だがチウは答えない、答えられない!!

 

どうしてティファの思考がこうもぶっ飛んでいるのか!それでいいのかお前達から始まったハドラーの言葉に、慈愛に満ちた素晴らしい人との崇高な答えから、元気一杯でいいじゃねえかと実に爺馬鹿・親馬鹿・兄馬鹿な答えの応酬で疲れたとはチウだって言えない!!

 

「ふ~んまぁいいや。チウ君、悪いけど下行ってお湯貰ってきて。お茶のおかわり欲しい。」

「大丈夫です、そう思ってもう貰ってきました。」

「流石チウ君、淹れてくれる?」

「喜んで。」

 

チウは茶器がある-全員分-にお代わりを注ぐ。ティファだけではなく、ぐったりとしたバラン・マトリフそして

 

「・・・・俺にもくれるのか大ネズミ・・」

「はい、良ければどうぞ。僕は大ネズミですがチウという名前がありますよ。」

「・・・・・・俺が怖くないのか?」

 

地上の小モンスターからすれば、魔王は恐怖・畏怖の対象だろうに。自分の邪悪な気配が通じないとはいえ、怖れるくらいしてそうだがその気配が全くせん。ティファ様に見た目に反した強者には全く見えないが。

 

 

怖い?この人が?

 

「穏やかにティファさんと話しているのに怖がる必要あるんですか?」

 

自分達を威圧したり殺そうとしているわけでもない人をわざわざ怖がる理由っているのかな?

 

きょとんとして聞き返してくるチウに、怖くないかと問うた己の器量が低いようで恥ずかしくなった。

 

「チウ君良い子でしょう。私達の自慢の仲間ですよ。度量や心はチウ君が一番です。」

「そのようだな。」

 

ティファのどや顔に、ハドラーは真面目に返す。ティファの言葉にうなずくダイ達の気持ちも分かる。

心根が素直で器の大きいもの、自分の周りに是非いて欲しい者であった。

 

「いただこう。」

 

チウを柔らかい瞳で見たハドラーは、ゆっくりと紅茶を啜りはじめる。

 

「・・・ティファと同じくらい美味いな・・」

「そんな・・僕のがティファさんと同じだなんて・・」

「チウ君これ美味しいよ。後でまた淹れてね。」

「・・・・はい・・」

「お、ほんとだこいつは美味ぇぞチウ。」

「む、確かにティファと同じくらいに・・・」

「もぅもぅ!皆さん人の事からかわないでください!!!」

 

褒め殺しにあったチウは、恥ずかしくなってダイ達の方に逃げこんだ。ここなら安全だ、そう思ったのだが。

 

「後で俺達にも淹れてくれよなチウ。」

「俺も飲みたい。」

「・・・・・もぅ・・」

 

ダイ達君達迄!!

 

 

 

楽しぃひと時、気兼ねなく気心知れた人達と過ごす休日は実に楽しい。その知れた中に、魔王がいたとしてもだ。

 

書き終えたティファは、再びバランとマトリフの間に座ってのんびりと紅茶を啜る。その顔には警戒心を浮かべるどころかのんびりとしている。自分という敵がいてもだ。

ティファは本当に、出会った頃から変わらない。

 

 

 

「・・・あれからもう数か月経つのか・・」

 

デルムリン島での出会いを考えてみれば、数か月が経っていた。

 

「さて、もうと言うべきか、まだと言うべきか、どちらにしてもその位ですね。」

 

春先に始まった大戦は、気が付けば夏の盛りを迎えている。

 

この半年に満たない間にどれ程の激闘が詰まり、どれ程の悲しみ喜びを味わったか分からない。

島を出た当初、こんな大冒険になるとは思わなかったダイやポップ、村で慎ましく暮らしていたマァムも、祖母と旅回りの日々をしていたメルルもハドラーとティファが発した言葉に思うところが多々ある。

 

それは広間にいる者だけではない。目まぐるしく動く世に生きている全員が思うところであっただろう。

 

この数か月は、途轍もない数か月なのだと。

 

「確かお前はあの時俺の事を、」

「ええ、酒場の外で喧嘩しているおじさん並みだと言いましたよ。」

「今はどうだ?」

「今は・・・一流、それも超一流の魔王ですよ貴方は。」

「そうか、そう言ってくれるか・・」

「はい。」

「俺は変われたが、お前は変わらんな。」

「そうですか?」

「ああ、初めて会った頃と口の悪さがちっとも変わっておらん。」

「・・・そうですか・・」

「そうだ。」

 

魔王もどき

大馬鹿魔王 etc.だ。

 

「嬢ちゃん、こいつにそんな事言ったのかよ・・」

 

魔王の自覚もたすこと言ってどうすんだと呆れたマトリフに、ティファはしれっと返す。

 

「だって本当の事しか言ってないもん。」

「まったくよ・・」

 

そんなんだからあちこちから目を付けらるのだと呆れるが、バランはこの状況に困惑している。

 

何故敵の、それもただの敵ではない勇者一行の宿敵と娘はこうも穏やかに話していられるのだと。まるで古くからの知り合いの様に穏やかに・・・バルジ島では、ハドラーと一行は死闘迄演じたとういうのに。

 

ラーハルトもまたバランの様に困惑しダイ達を見るが、二人の話を止める気配が無いのに気が付き更に戸惑う。

 

ダイ達も最早師の仇という考えで戦う気はなく、戦場でハドラーを討つ事だけを考えている。

他者を仇と呼ぶには、自分達とて大勢の敵をその手に掛けたのだから。

 

 

 

「ティファよ、お前は何のために戦う?」

「私ですか?」

「ああ。」

 

こうしてお茶を飲んでいて不意にキルが言っていたティファのお茶会の夢の話を思い出した。

 

-夢なら、戦う事も憎み合う事もしなくていい-

 

あの言葉も余さず聞いている。戦う事が嫌いであるなら、何故戦い続けている?父にして戦士・竜の騎士バランが戻ってきても、前線に何故居続ける?

 

ダイ達もハドラーの言った言葉に思うところありティファを見る。一度だけポップが聞いたと言っていたが果たしてその理由は。

 

「守りたいからです。」

「守る?この世界をか?」

「まさか!そんな広くて曖昧なものではなく、単純に私が守りたいと思っている人たちを守りたいんです。」

 

心を除けば思い浮かぶ。王様達・デルムリン島の皆・ウォーリアー船長達に、ロモスの親切な港町の人々、リンガイアの皆様、カールで沢山おまけしてくれたお店の人達、ベンガーナデパートの皆、パプニカの古書店のお爺ちゃんや王城の人達それに、テランのリュート村の人々・・

 

「・・・それは世界ほぼ各国、つまるところ世界ではないか。」

「全然違いますよ~。それにそこで出会って友達になったモンスターさんや精霊さん達もですよ。」

「お前は一体どれほどの知り合いがいるのだ。」

 

人脈の多さもさることながら、ティファの戦う理由のなんと優しい事かと呆れる。そんな優しさを胸に抱きながら、血みどろの道を歩いてきたのかティファは。

 

「-今-の貴方はどうなのですか?」

 

不意にティファから反対に問われた。

貴方はではなく、今のと聞かれたがこれは。

 

「まるで昔の俺の戦っていた理由を知っているようだな。」

「ええ、死の大地の時、貴方に魔界の事を聞いた時辛そうにしていましたので大方は。冷たい地にて朽ち果てたくなかったのでしょうか?」

「・・・・その通りだ・・なんだマトリフ、その意外そうな顔は。」

「お前・・・そんな理由で先の大戦おっぱじめたのかよ!!」

「貴様の欲望を満たすためにか!!」

「そのような事許されると思っているのか!!!」

 

たった一人の男が!生まれ故郷が嫌だからと!!そんな理由で五年も十年も地上を蹂躙したのか!

今のハドラーの言葉に、先の大戦に苦い思いをさせらえた兵士・有志の者達もこらえきれずに叫び出し、ダイやティファが不味いと止めに入る前にすぐさま掻き消された。

 

「黙れ!お前達には分かるまいよ!!あの太陽の恵みを余すことなく受けているのが当然だと思っている貴様等には!!!」

 

マトリフや大戦経験者の激昂に、ハドラーも古傷に触り悲痛な声で怒鳴り返す。

 

辛さしかなかった、喜びも楽しみも、それ等は強者の身に許された特別な事!だがこの地上はどうだ?貧しいと言っているところもたかが知れている!お前達は泥水ではなく血の混じった水を飲んだことがあるか?ひと月飲まず食わずは?他者に騙され時に騙し、裏切りあい罵り合い、それでも辛うじて信頼を結んだ相手がいとも簡単に目の前で殺されるあの地獄を!!お前達が何を知っているというのだ!!!

楽園に生きている者どもが!地獄の住人の何を・・

 

 

「・・・・ドラー、ハドラー!」

「・・・ティファ・・」

「ごめんなさい、余計を事を聞いたみたいで・・」

 

今の思いを表に出す前に、気が付けば自分の椅子の横にティファが立ってローブを引っ張っている。

 

ハドラーの思いがけない激昂に、マトリフも青褪めティファの行動を止める動きが出来なかった。

 

「・・・古傷触れ・・うかつに聞いていい事ではありませんでした・・」

 

しょぼくれて、どこか捨てられた子犬の様にしょげるティファに、悪いと思うが吹いてしまった。

 

そうだ、こうやって時折俺の悲しみを拾って分かってくれるこのティファと、全力で戦い合うのが-今-の俺の戦う理由。ある意味自分もキルバーンの事をとやかく言えまい。自分こそティファにもっとも執着しているのかもしれないのだから。

 

 

「これではバーン様に顔向けできぬか・・」

「うん?大魔王に?」

「ああいい、今言った事は忘れろ。」

「・・・・気になります・・」

「なるのか?」

「はい。」

 

敬愛する主の為に戦うのではなく、ティファと戦いたい。そんな思いを持つ者が魔軍司令官なのだから呆れられようと言ったにすぎぬが。

 

「なんだ、俺がバーン様を敬愛している事が面白くなさそうだな。妬いているのか」

 

今のティファは、自分の言葉にむくれているように見る。いつも自分があれこれ言われているのだからからかう積りで聞いてみる、。

 

周りはハドラーの雰囲気が和らぎ、次いで-あり得ない事-を堂々と聞くハドラーに呆れティファを呼び戻そうとしたその時

 

「ええ妬いてますよ!おかしいですか!!」

 

 

 

・・・・何か物凄い問題発言が発せられた!!!!

 

 

「ティファ⁉お前は何言っているのだ!!!」

「なんですか!驚くくらいなら聞かないでくださいよ!!」

 

地団太を踏み鳴らしそうな勢いのティファに、聞いたハドラーが思わず謝りかけるほど今のティファは迫力がある!

 

 

 

ハドラーが私以外をそんな風に褒めるのなんだか本当に面白くない!これが妬くというのかは分からないけど・・・凄く嫌だ!!




今宵ここまで

もう少し書き進める積りでしたが、キリがよさそうなここまでとさせていただきます。

予定では休日編は⑩位で終わるはずでしたが・・・主人公や周りが生き生きと動き出すもので収まりそうにありません(;^_^A

先の話と主人公の雰囲気と大分違いますが、料理人のティファも、子供のティファも内包し、自覚なく行ったり来たりしている不安定で脆いのがこの主人公の弱点です。

もう少しで、また別の一面を掛ければと思います。

ハドラー大戦が始まった思いは筆者のオリジナルですが、魔界の過酷さを思えばこうではないかと思い書かせていただきました。

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