勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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戦いたい理由は何ですか?

しれた事!あ奴がとんでもない娘だからだ!!


超一流魔王・武人ハドラーの意気込みがそれでいいのだろうか・・・


決戦行かずに突然の休日⑩

「行くわよティファちゃん!!」

「あ!待ってください!!ハドラー!明日は・・・・」

「いいから!後は-大人達-に任せておきな!!」

 

ハドラーに啖呵を切ったナタリーは、ティファを担いだまま食堂に行ってしまった。

 

後に残ったのは静寂

 

ティファ以外にも自分を恐れず啖呵を切った者に驚くハドラーは例外として誰もが冷や水を掛けられ夢から覚めた気分になった。

 

たかだか十二歳の女の子のあんたが!なんだって魔王の相手をしているんだい!!

 

ティファの隣にいたとはいえバランは今回の事態を上手く説明できないにしても、成分表を渡した時点で帰るように言うことが出来たはずだ。

それはバウスン将軍たちも同じであり、ナタリーが言った事が正しいのだ。

 

ただ一人、その事を最初から承知してながらも事の成り行きを見守っていた者が、ハドラーに声を掛ける。

 

「分かったかよハドラー。嬢ちゃんの奴がいかに凄くてもあれが普通の考えってもんだ。」

 

自分が対処してもよかったのだが、ハドラーと嬢ちゃんの間にある絆がどの様な者か実際を見ておきたくて放置していたのだが、これはかなり不味い絆が出来ている。

 

ティファを見るハドラーの瞳から、ハドラーを労わるティファの言動から分かってしまった。

この絆は、今はまだ自覚がないティファ本人以外に断ち切らせるべきものだ。

 

「分かったら、明日の決戦はティファ以外と戦え。」

 

勇者と竜の騎士なれば、今のハドラーであっても不足はなかろう。

 

 

その言い方に幾人も引っ掛かりを覚える物言いであった。

 

ティファ以外を相手にしろでは無い、ティファ以外と-戦え-と。まるでそれでは、ティファと ハドラーが戦うことが前提の様ではないか!

 

「師匠何言ってんだよ!そんなの当り前だろう!!何を今更ハドラーにそんな事言ってんだよ!」

 

ポップの驚きの声に、周りもその通りではないかと口々に言いだす。

料理人は戦わず、支援サポートという不問律が周りにはいつしか暗黙の了解となり取り乱す。

 

ヒュンケルとマトリフを除いて

 

「何故だハドラー!ディーノや私ではなく!!何故ティファと!!」

 

一番に驚愕したのはバランであった。確かにティファは尋常でなく強いが、今ここには竜の騎士たる自分と、娘の言う通り勇者が二人いるというのに全く目もくれていないとでもいうのか!

 

「ふん、親となり戦士として弱くなったかバラン。」

「・・・なんだと?」

「バルジ島での勇者の戦果を聞いた時、お前は息子と知らずともダイが十二の少年だと知っても戦おうとしたではないか!!」

「っ!それは・・・それは・・」

 

あの時親子の情で敵に奔られることを厭うて反対したが、敵の年齢問わずに戦いたがるこやつは根っからの戦士だと尊敬しかけたのが馬鹿馬鹿しくなる。

 

マトリフの時と同じ。テランでティファと会いたがったのを理由に、自身の状態・周りの状況を 顧みず戦端を開いたこ奴は妖怪爺ではなく、ただの老い耄れになり下がったと評価を下にしたあの時と。

 

ティファは見ている限り少なくとも敵の目の前で取り乱した事や、無駄な戦端を開いた事は無い。

怒りで激昂しても冷静であり、今のバランが無様に映る程に卓越している。

 

「ポップよ、お前はいつぞや俺に問うてきたな。何故俺がティファに拘るのかと。」

「ああそうさ!あいつは確かに強いがな!!魔王の宿敵は勇者だろうがよ!」

 

それ故に宿敵である先代勇者アバンを殺す為にデルムリン島まで来たのではないか!!

なのに勇者どころか戦士でもないティファに拘っていた理由が戦いたいからだと言われて誰が納得するかよ!

 

「宿敵か・・そうだな。古来より魔王の相手は勇者と定められたが如く連綿とそのように戦ってきたな。」

 

ポップの怒りにもハドラーは冷静に答える。一昔前のハドラーならば、格下の者が自分に無礼だと激しただろうが、穏やかさが崩れる事はなく受け止める。

 

何かに、誰かに定められたが如く、誰かが言ったかの如くそれはずっと続いてきた一連の戦い方。

神の啓示を受けたでもなく、言われたわけでもないのに魔王の相手は勇者だと。

だからなんだ?数千年の歴史に従えとでもいうのか?世の敷いてきた道をその通りに歩けとでもいうのか?

 

冗談ではない!!

 

「ティファは俺自身が定めた好敵手だ!!」

 

誰に言われたでもなく無論命じられたわけでもない!だが俺が戦いたいのは、俺の命を燃やし尽くして戦っても惜しくないのはティファたった一人だけだ!!

 

偽らざるハドラーの激情に、さしもの百戦錬磨のバランまでもが青褪める。

 

「・・・あの子と何があったのだハドラー・・」

 

これ程迄の男にそこまで見込まれた娘と何があったと父としてバランが弱々しく問うた。

その思いはダイやポップ、ティファの全てを愛しているノヴァとても同じで、ハドラーの返答をじっと待つ。

 

「ヒュンケル話していないのか?」

 

ハドラーはバランの問いに答える前に、ヒュンケルに振り返った。

ヒュンケルこそが、あの時の自分達の約束の証人と言っても過言では無かろうに。

 

「・・・ヒュンケル?」

「何隠してやがんだよヒュンケル!!・・・まさか・・・まさか地底魔城でやっぱりなんかあったのかよ!!」

 

ダイはヒュンケルに泣きそうな顔で問いかけ、ポップは思い至ったことがありヒュンケルの胸倉を掴んで問いただす。

 

テラン戦の後に、地底魔城戦でティファが捕虜になったあの時二人が偶然再会したが、何事もなかったというのは嘘だったのか!!

 

 

「ポップ・・・・皆も、ティファの方が、ハドラーに宣戦布告したのだ。」

 

戦場で倒しますという曖昧なものではない、私の手で貴方を倒したいですと、地底魔城の薄暗い通路で捕虜の身であったにもかかわらず堂々と。

 

ヒュンケルは胸に秘っしていた事を味方全員の前で打ち明けた。遅いと思われても、今まで隠していた事に後悔はなくポップの瞳から逃げる事無く見つめ返して。

 

「そうだ。そして俺はそれを受けた。」

 

返り討ちにしてくれると、あの日から自分達の奇妙な絆が始まった。

 

 

 

蘇生装置のおかげで蘇ったとはいえ、満身創痍でそのままでは野垂れ死に確定なクロコダインを放っておけず地底魔城に出向きヒュンケルと話していた時、従者モルグとその後にとても五月蠅い足音がした。

騒々しく走り回りみっともないと思えば、デルムリン島で自分に無礼な事しか言わなかったいけ図々しいティファであった。

 

それも下着一枚に男物のシャツをボタン一つというこれまたみっともない恰好をしたティファを思わず叱りつければ、敵地のど真ん中で捕虜であってもデルムリン島のあの時と態度を変えず怒鳴り返された時は面食らった。

 

てっきりあの時はアバンがいるから強気だったのかと思うところがあったから。

だがティファは違った。

ヒュンケルに戦場外であれば敵がいてもやたらいがみ合うのは愚かであると教え諭そうとし、あまつ自分を魔王もどきから初級魔王になって素敵ですと、どう聞いても悪口にしか言えんようなみょうちきりんな褒め方をしてきた。

 

それに腹が立ち、貴様それでも褒めている積りかと怒鳴った。どう考えても悪口だろうと。

 

だが本気で褒めていたのだあれは。

 

当たり前です。!このままいけば一流魔王も夢ではありませんよ!!!その方が倒し甲斐がありますと、怖れげもなく言い放って来たではないか。

 

倒したアバンが自分を倒した時よりも弱くなっていた事に失望し少々腐っていた時に、アバンの眼鏡を預かったティファが宣戦布告をしてきた。

 

地底魔城というアバンに討たれた因縁の地にて、アバンの跡継ぎの様なティファが言った言葉は重みがあり、布告された時何かが自分の中で満たされたような嬉しさがこみ上げ大笑いをした。

 

誰に媚びるでもなく怖れるでもなく、清々しい真っ直ぐなあの言葉と思いと力強い瞳が、アバンの事で腐っていた自分のよどみを全て吹き飛ばす程に。

 

「最初はあれもお前達と同じアバンの弟子で、師の仇を戦場で討つという意味で捉えたのだがな、戦い方の違いで直ぐにあれがアバンの弟子ではないと分かった。」

 

健気に師の仇を討つと堂々と言ってのけるかと思ったのだが、塔の篩で初めて見た戦い方に、アバンの面影は全くなく違うと分かったがその時はそんな事はどうでもよくなっていた。

アバンの弟子でなくともティファと戦いたいのだ。

 

「なんでだよ!先生の後継者に一番近いと思ったから受けたんじゃねえのかよ!!」

 

怒りでヒュンケルの首を絞めつけていたポップはもうどうでもいいとばかりにヒュンケルを離してハドラーに向き直り、違うと分かった時点でティファを放っておけばいいではないかと怒鳴るが、反対に問いただされた。

 

「ではポップよ!あの時点でお前は出来たか⁉捕虜であの時点ではヒュンケルは敵の軍団長であり、周りは敵のみしかいない。そんな中雪白とやらの武器リングすらもなく文字通り無防備な姿で魔王相手に宣戦布告する事が!!」

 

ティファはシャツと下着に腹に包帯を巻いていたのみで本当に丸腰であった。格闘が出来ると言えど傷を負った直後の動きなどたかが知れている。ポップの様に魔法が使えるでもなく、ダイの様に竜の紋章を発動して危機を脱する力が湧くでもないあの状況であったにも関わらずに言ってのけたのだ。

 

「ダイやマァム!お前達もどうだ!!」

 

今は出来る程の胆力と精神力を持っているだろうが、当時は無理だろうと断言できる。

 

それが証拠に、ポップ達は今の自分の問いに答えられず悔しそうに拳を握っているではないか。

 

「-三界一のとんでもない娘-故に!俺はティファを好敵手と定めたのだ!!」

 

 

これこそがティファと戦いたい最大の理由。

 

命尽き果てるその前に叶えたい狂おしい迄の自分の望み




今宵ここまで
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