勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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自身の望みが叶えば叶う程に、助けた者達を、蘇った者達を守らんと役割に縛られる

それは自身で望んだ事であっても、それが自分が最初に抱いた望みの全てでは無い事を忘れはてて


決戦行かずに突然の休日⑫

幽やかな声に似つかわしく今のティファは儚げなく、戸惑いの瞳でハドラーを見つめる。

 

少し前のティファとはとても思えない程に弱り、消えそうな陽炎と成り果てて・・

 

 

ああ、死の大地のあの時と同じだ。戦いを厭い、倒した敵に懺悔し己を壊す程に嘆いていた時と。

 

 

いや!戦いたくない!!

殺したくなんてなかった!!!

 

 

瘴気に侵され心の内側の傷全てを抉られのたうち回っていたティファを見た瞬間、気が付けばティファを抱きかかえ幾度も名を呼んだ。

 

十か二十か数えられない程に。

 

その最中に叫んでいた言葉をあれは覚えていなかった。

 

 

殺してごめんなさい・・・見捨てて・・・助けられなくて・・

 

 

必死に必死に何かに謝り罪を数え、少しずつ声も弱まり消える寸前の陽炎の様に気配も弱まり、そのままその者達の下に行ってしまうようで心臓を握られる程の恐ろしさを味わった。

引き留める為に名を呼び続けた甲斐あり戻ってきた時のあの安堵感は今も忘れていない。

 

あの時と同じか⁉仲間や周りを思い、謝して己の罪でも数えたか!!

あの時とは理由が違かろうが、陽炎の如くにさせるものか!

それがティファ自身の中の-何かの思い-であっても!俺にとっては下らぬ!そんなものに渡すものか!!

 

-これ-は俺の!魔王ハドラーの物だ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

それは何と傲慢で独占欲の強い思いか。

 

 

そう、ハドラーにとってはティファが抱えている事が何かは知らずとも、ティファが居抱いている罪悪感も役割も何もかも全てが邪魔な事でしかない。

あの自由奔放で、何処までも突き抜け燃え盛るようなとんでもない娘を弱らせる事は、事象であれ本人の意思であれただの邪魔だ!!

 

 

 

「答えよティファ!!」

 

ビクリ!

 

 

「お前は俺と、ハドラーと戦いたいか!!」

 

 

 

その言葉にはハドラーの思い全てが詰まっていた。

 

過去の栄光も、有り得たかも知れない未来も、全てを投げ打ってもティファと戦えるのならば惜しくもない男の狂おしい迄の情念全てが込められた願いへの問い。

 

以前のティファなれば、地底魔城のあの時と同じティファなればこの思いに容易く答えてくれていたであろう。

 

はい!戦います!!約束を果たしましょうと。

 

だが今は?あの時にはなかった-何か-に縛られ雁字搦めの様になり、己を押し殺しているように見える今のティファは、応えてくれるだろうか。

 

 

 

ハドラーが私とじゃない・・・・()()()()()()()()()()()か?

 

 

・・・どうして・・・どうしてそんなこと聞くの!!

さっきナタリーさんと約束したばかりなのに!さっき自分の中で決めたばかりなのに!!

下らない子供の夢など!もう見ないと決めたばかりなのに!!

 

「どうなのだ?」

 

揺らすな!

 

「お前が言ったあの言葉を、約束をどうする?」

 

浮かばせるな!!

 

「お前は・・・」

「貴方はどうなのだハドラー!!」

 

先を聞きたくないと耳塞ぐように怒鳴るティファの問いに、ハドラーは揺らぐ事なく返答する。

 

 

「俺がではなく、お前はどうしたい?」

「う・・・・あ・・」

 

 

 

その言葉は、あの言葉は!

 

 

 

ハドラーの言葉にティファは完全に揺らぎ、力づくでもハドラーを帰そうと算段を付けだしたポップに動揺が奔った。

 

何故ならあの言葉は、かつて己の戦う理由を明確化できずになし崩し的に戦い、いざ強敵との戦いを前に怯えて動けなくなったポップに、ティファが言った言葉と似ている。

 

 

私や他の人が戦うからじゃない、ポップ兄自身の戦う理由をきちんと出さないといつか命取りになる

 

他者の考えに由来するのではない、己自身がどうしたいか、そしてどう動くかを決めるのは自分自身だと。

 

 

 

 

「ティファ!ちゃんと嫌だって言って!あの時と今とは違うんだって!!明日は俺か父さんが戦うから!!」

「今すぐ立ち去れハドラー!!それともここで一戦交えるか!!」

「ティファ!向こうに行きましょう!」

「ティファ殿!!」

 

 

兄が、父が・・・・仲間やアキームさん達が私を守ろうとしてくれている・・・そうだよ・・・みんな私を心配してくれているんだ

 

そんな人達に心配かけたらいけない・・

 

貴方ともう戦いたいと思わない

 

一言そういえばいい。そうすればハドラーはもう私に対しての興味は失せて、さっ気の考えた通りにすればいいんだ・・

 

 

貴方に興味がなくなった、最大の敵大魔王との戦いこそが大事だと言えばいい!!

 

なのに・・・

 

「あ・・・」

 

言えない・・・言葉が出ない!どうして!!

 

-今まで-と同じ!こんな事私にとっては大切な事じゃない!もっともっと大事な事が山積みになっているじゃないか!

成すべきことがある、それに向かって歩いてきたのに・・・・どうして・・・たった一言が言えないの・・

 

 

 

唇を戦慄かせ瞳をぐしゃぐしゃにしている痛ましいティファの姿に、怒声もいつしか消え果て、

ハドラーの言葉のみが響き渡る。

頑是ない子供に辛抱強く聞くように。

 

「お前自身はどうしたいのだティファ?俺と戦いたいのか違うのか?」

「わ・・たしは・・」

「どうしたい?どうする。」

 

 

 

やめて!聞かないで!!立ち去って!どうして・・・どうして私に構うの!

そんなに強くなったのなら、もっと強い人がここには大勢いるのに、立派な志を持った人が・・・もういい!私は貴方とは・・・

 

 

 

「自分を殺すなティファよ!!!」

 

 

瞳を歪め己すらも騙す言葉を吐き散らかそうとしたティファを止めたのは

 

 

「・・・・クロコダイン?」

 

 

それまで押し黙っていたクロコダインが、突如として叫び上げた。

 

「俺は・・俺達は今までお前に沢山の願いを叶えてもらった!!」

「なにを・・」

「我ら罪人達が償う道を歩けるようにしてほしいと王達に周りの者達に願ってくれた!幸福になってほしいと願ってくれたが故に!俺は幸せを見つけることが出来た!!他者の為にお前は様々な事を願い叶えて来てくれた!!だが!お前自身の願いを、俺は一度として聞いたことがない!!!」

 

 

それは・・・

 

 

「ハドラー殿の言う通り!お前自身がどうしたい!!周りの思いを受けて自分の思いを殺すな!!一度でいい!ティファ!たった一度でいいのだ!!周りの事柄ではない!!-ティファ-が望む事はなんだ!!!お前の答えを聞かせてくれ!」

 

 

クロコダインとて、今自分が言っているのは暴挙であると理解している。家族を兄妹を仲間を心配しないものなど恥である!ダイ達がティファを思い、戦わせたくないという思いは自分だとて負けない!だがその思いが今ティファの心を押し殺そうとしている。

 

ダイ達も其れが分かっているであろう。ティファが本当にハドラーと戦いたくないのであればもうとっくに言っている。

 

意にそわない事に対して容赦のないティファが、ハドラーの問いに苦悶の表情を浮かべ答えられないのがその証。

それでも戦わせたくないとダイ達は否定しようとしているが、それではティファ自身の望みを潰すことではないか!!

 

散々様々の者達の願いを聞いて尽くしてきたティファが望む事なれば、自分は叶えてやりたい!

それがティファの死に繋がったその時は、仇を討って自分も後を追う!!

 

仲間としてではなく、一人の武人としてクロコダインはティファの背中を押す。

 

自分だとて、少女と知っても強者のティファと戦いたいと望んだのだ。

高潔な戦士となったこのハドラーと戦いたいと願う事の何が罪になるというのだ!!

ダイ達が勝つとティファが信じているように、自分達もまたティファが勝つと何故信じてやれぬ!!

 

 

 

それはまさしく綺麗事。武人ならば通る理屈は、全ての者に通じるものでは無く、寧ろ理解されない事・・・・それなのに・・・

 

 

 

クロコダインの心からの言葉が、今も自分をじっと見ているダークルビーの瞳が、私に嘘を言う事を許してくれない・・・・逃げる事を許してくれない・・

 

かつてポップ兄に言ったあの言葉の通り、本当に自分が出さなければいけない正答の無い問いに・・・・・

 

 

もう無理だとティファは観念した。

信頼する仲間が己の本心を明かしてほしいと願った、願ってくれた

 

 

 

 

 

 

「・・・たい・・・・」

 

私は・・・ティファは・・・・・

 

 

「戦い・・・たい・・・」

「誰とだ」

「貴方と・・・・魔王ハドラー・・・貴方と戦いたい・・・」

 

 

 

 

一生を賭けて問うた答えに満足し、ハドラーは穏やかに微笑む。

 

 

 

 

 

「では決まりだな。」

「・・・・ハドラー?」

「明日の決戦で俺と戦うのはお前だティファ。」




今宵ここまで


最後まで走って貰う為に、主人公には自分がこの世界に来た当初に願った事全てを思い出して貰う為に、自身で役割以外の望みを言葉にして貰いました。

クロコダインの言った事が正しいとは思いませんが、それでも主人公の心を救い取った言葉になっていればと思います。

いよいよ決戦の相手が決まり、今後どのような望みを持って主人公が走りきるのかを見定めていただければ幸いです。
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