勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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物凄くいつもと毛色の違うものとなりました


決戦前の夜の過ごし方・後編

お風呂気持ちよかった~。

 

お風呂は結局父さんとダイ兄の三人で入った。ポップ兄とノヴァが駄目でもせめておじさんも一緒にって言ったのに駄目だって。

 

湯から上がった後眠いって言ったら皆して早く寝なさいって寝室に突っ込まれた。

まだやる事あるから蠟燭に火を付けて作業する。

皆も早く寝てるかな?

 

 

・・・・ハドラーも寝ているだろうか?

 

ハドラーの唇が触れ合いそうになった時を思い出し、ティファの心臓が早鐘をうち我知らず人差し指で唇を辿る

逞しい両腕に抱きすくめられたら自分は・・・・・

 

埒の無い思いを振り払うようにティファは頭を一度振り、作業に戻る。

 

明日行くので待っていて

 

 

 

バランとマトリフ

 

 

「父さんの背中って大きいね。」

「ホントだね~。兄も将来この位になるのかな?」

「俺背が伸びるのかな?」

「う~ん、少し私よりは大きく・・・なってるかな?」

 

ダイとティファの二人がかりで背中を洗われているバランは滂沱の涙を流す。まだ戦いが終わったわけでなく、明日は我が子と共に死地に赴き厳しき戦いが繰り広げようというのに。

 

ソアラよ、ティファは置いてゆく。ディーノも我が命賭け全身全霊をもって守る故安心してくれ。

 

湯の中でまだ自分の両腕に収まる我が子達を胸に抱きしめ、亡き最愛の妻に心から誓いを立てつつ、二人の他愛ない笑い話に頬が緩む。

 

湯から上がればティファが眠そうにしているので早々に寝室に引き取らせたが、自分と息子はどうするか。

 

「俺ちょっとレオナと話あるから父さんよかったら先に寝てて。」

「決戦前だ、存分に話してきなさい。」

「うん!行ってくる!!」

 

好いた者と存分に語らうと良い。

 

「なんでぃ、ダイも早熟だな。」

 

通路での親子のやりとりを邪魔しないように見ていたマトリフがバランが一人になったのを見計らい声を掛けた。

 

「これはマトリフ師。明日は・・」

「分かってるよ。それもいいけどお前さん飲める口か?」

「・・・そこそこは・・」

「だったら付き合えよ。明日の決戦前の景気づけによ。」

「いただこう・・・竜騎衆の三人を誘っても?」

「いいぜ、今日はリンガイアの奴等が見張り番するって張り切ってるからな。飲もうぜ。」

 

バランに声を掛けられたラーハルト達は、恐縮しながら主共々マトリフと飲み明かす。

 

 

 

ダイとレオナ

 

「ダイ君・・・明日はきっと勝って無事に戻って来てね。」

「大丈夫だよレオナ。父さんもいる、俺だって特訓で強くなったし皆で全力で戦う。俺は大好きなレオナが生きているこの世界を絶対に守りたいんだ。」

「・・・ダイ君・・」

 

砦の裏庭にレオナを伴ってきたダイに、レオナは無事に帰って来て欲しいと縋りつく。

まだ自分よりも小さな、それでいてもう-男-を感じるダイの胸に。

逞しい腕が、自分の体を包み込んでくれるのに安心感を覚える。大戦が始まってからずっと気を張り詰めて来た。病床にいる父を支えようと、国民や家臣たちが不安にならないよう明るく振舞い、ずっと不安を胸に押し殺して。

 

「俺に甘えてよレオナ。」

 

サババに来る前に父の病床でダイが言ってくれた。

その後もう一度ダイに会う機会があり聞いてみた。

 

「ダイ君はしっかりしたお姫様な私でなくてもいいの?」

「レオナはどんな時だって俺の好きなレオナだよ。レオナが疲れたら俺は嫌だ。」

「ダイ君・・・うん、うん・・」

 

ティファの疲れて請われた様を見せつけられたダイにとっては、頑張りすぎている気がするレオナも心配だった。ああやっていつか突然壊れたらと思うだけでゾッとする!

 

それは今も同じで、自分を案じてくれるレオナが愛しくて存分に甘えさせてあげたい。

ゆっくりと座り、胸に抱えたレオナの頭を自分にもたれさせたまま甘やかす。

 

明日必ず勝つんだ

 

 

 

ポップとメルル

 

木が覆い茂る中庭で、ポップとメルルは深い口付けを交わしている。

 

明日無事に帰って来て欲しいというレオナと同じ思いをメルルはポップに伝えた。

 

その姿は儚げで脆く、触れれば溶けてしまいそうだがそれが一層少女の内に眠る恋で育てられた色香が漏れ出し、頬を紅に染め潤んだ瞳で見上げられたポップは堪らなくなり、其れ迄自制していた思いをぶつける様にメルルの頬を両手で挟み、自分を見上げて薄く開いた唇を突如として貪り始める。

 

メルルは驚いたが抵抗する事無く、震える両手でポップの緑の法服を握りしめて懸命にポップの思いに応える。

 

いつでも優しい人だった。自分と結婚したいとフォルケン王にはっきりと告げてくれて、驚かれながらも祝福された。

 

「二人とも幸せにおなり。」

 

長い事占い師の孫娘としてながらも自分に目を掛けてくれた父の様なフォルケン王の祝福に、嬉しくて泣いた自分の腰を力強く支えてくれた時心臓が飛び跳ねた。

 

自分達はまだお互いに明確に好きだとも言っていないのに。

 

マトリフの洞窟に帰る前に、優しい口付けと好きだという素敵で、自分にとって終生の宝物になった言葉をくれた人の思いに応えたい・・・

 

柔らけぇ・・・ああなんでメルルのどこもかしこもこんなに柔らかくて心地いいんだよ!!

 

身の内から溢れる愛しさと、それ以上にメルルを欲する気持ちがポップを突き動かす。

柔らかい唇を食む様に何度も貪り、口内を味わいたくて遂には舌を入れても受け入れようと唇を開いてくれる健気なメルルが!愛おしくて堪らない!!

 

自分達の荒くなる息遣いと、唾液が混じる音の中に、メルルの苦しそうでそれでいてどこか甘い声に理性が飛びそうになる!!

 

これ以上はやばい!

 

獣性に落ちかける寸前にポップは理性の警鐘に耳を傾け力づくで己の顔をメルルから引き剝がす。

 

お互い息をするのも忘れはて、ポップは木に凭れ掛かりメルルを抱えたままズルズルと地面に座り込む。

 

膝の上にメルルを横に抱え、胸元に抱きしめながら。

 

「・・・ポップさん・・・私は・・」

 

力が入らずポップにもたれるメルルは、其れでも何かを伝えようと荒い息を整えずに口を開くが、その口を再びポップに塞がれる。

先程の荒くて、それでいて自分の何もかもを溶かしてしまう口付けではなく、あの時と同じ優しい口付け。

 

口付けをしながらポップはメルルの頭をゆっくりと撫でる。宥める様に慈しみを込めて。

 

メルルが苦しくなる前にそっと唇を離し、また胸に凭れかけさせる。

 

「メルル、この続きは結婚式の後だ。」

「それは!」

「明日勝って、ダイと姫さんとの合同だから・・・少なくとも三年はかかるだろうけどそれでもいいか?」

 

男は大体十五位で嫁を迎え始める者が出る。レオナの年齢も加味され、十五の歳と共に結婚の運びになるはずだ。

 

それまでは口付けより先に行く事はしないがいいかと優しく尋ねる。

 

「ポップさん・・・私はポップさんと皆さんといられればそれだけで幸せです。それ以上を望むだなんて・・」

「メルル。」

「・・・はい・・・」

「いつか俺の子を産んでくれ。俺一人っ子だから弟妹が欲しいってずっと思ってたんだ。たくさん産んでくれるか?」

 

今はダイとティファという弟妹がいるが、自分の子にもそんな弟妹が現れるか分からないから。

 

その言葉に、メルルは涙を流して思いに応える。自分は本当に何と幸せ者なのだろうか。

 

「はい・・・はい!私もポップさんの子供欲しいです・・・だから・・」

「ああ、絶対に帰ってくる。」

 

手足無くしたとしても、這いずってでも勝って戻ろう。

 

世界とティファを守り抜き、この愛しい少女と共に人生を歩むためにも。

 

 

ヒュンケルとエイミ

 

「綺麗な星空ですね。」

「あぁ、この時期の星空が俺は一番好きだな。」

 

塔の一角ではエイミがヒュンケルを誘い出し、他愛のない話をしている。

 

エイミはヒュンケルにまだ思いの丈を打ち明けられずに焦っている。

ティファから、ヒュンケルももしかしたら自分の事を憎からず思ってくれていると聞いてから機会を窺っているのだが・・・

 

明日は・・・

 

「ところでそのだな・・・」

 

エイミの葛藤を知らないヒュンケルは、突如人差し指で鼻の頭を掻き話しかける。

 

エイミが言いたいことがある様に、ヒュンケルにもエイミに伝えたい言葉がずっとあった。

 

「その・・・・花をありがとう・・」

 

その言葉にエイミは面食らった。自分から見ても分かる程照れているのヒュンケルからどんな言葉が出るかと思えば、鬼岩城戦後のお見舞いの花のお礼とは。

 

「あ~・・・やはり遅い礼だったか?」

 

貰った直後や、その後いくらでもいう機会があったろうに・・・戦いと一行の人間以外にはどこか不器用で、子供っぽいヒュンケルの顔にエイミは吹き出してしまった。

 

「・・・そんなにおかしいか・・」

 

しょげた様子が可愛く見えて・・・そして愛おしい・・・

 

エイミは両手を伸ばし、正面からヒュンケルの胸に自ら飛び込んだ。

 

「好きですヒュンケル・・・」

 

この不器用で、そして茨の道を自ら歩く高潔なヒュンケルが愛おしい。

 

エイミの不意打ちにヒュンケルは反応できず、抱きしめもせず、拒絶の為に引き離す事もせずに呆然とする・・・・エイミの行動が全く予測できなかった!

好きだと?一体何の聞き間違いだ?

 

聞き間違えでないならばその思いが間違っている!この素晴らしい人が俺を・・・俺なんかを

 

「エイミさん・・・俺は・・・・俺は貴方の・・」

「分かっています。それでも償う道を歩くのでしょう?」

「そうだ、そして俺を疎む者が・・」

「構いません。石打たれる時は共に、もしも地獄に行くのが決まっているのならばそれも共に・・・・貴方と同じ道を歩きたい・・」

 

あぁ、どうしてこの女性はこんな俺をここまで・・・

 

力強い声では決してないが、自分の心に入り込むのには十分な声音で、なんと甘美な事を言ってくれるのだ・・・

 

三賢者の一人で、聡明で美しいエイミなれば国内外問わずに引く手数多であろうに!戦い償うしかできない自分に目を向けてくれて・・・俺はそれだけで満足だ・・・・満足の・・・筈なのに!!

 

「エイミ!!」

 

不意にヒュンケルはエイミを抱きすくめる。常の敬称を外して閉じ込める様に。

 

満足なものか!この人が他の男の手を取るのを想像しただけでも怒りでどうにかなりそうだというのに!!

 

自分を誤魔化そうとしたが出来なかった・・・・幸せの根幹のエイミを、それでも罪人の自分などが手を取っていい筈がない、もっとふさわしい男がいくらでもいると言い聞かせる度に胸を焼く嫉妬の炎が許してはくれなかった!

 

想像するだけでこれで、現実では相手を斬り殺してしまうかもしれないと自分の心根の低さに吐き気がして、それでもエイミの幸せを願って諦めようとしたのに!!

 

もう駄目だ、もうこの人を逃がしてはやれない・・・

 

「・・・・帰ってきてヒュンケル。どんなことがあっても・・」

「ああ帰る。貴女の下に必ず!」

 

そしてこの先の返事を

 

 

 

恋人達は互いを思いやり、クロコダイン達独身の野郎どもはバランとマトリフ達の宴に加わり明日を思う。

 

必ず勝って平和の世を謳歌するのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の大地

 

バーンとミスト

 

「いよいよ明日か・・・・長かったよな。」

「は・・・」

 

玉座にてワイングラスを弄びながらバーンは明日・・・・そして勝利した後の事を思う。

ダイ達を始末した後は手筈通りバーンパレスを浮上させ、六芒星を描く為に世界を回る。

 

果たしてその時自分の側近くにいるのは誰か?

 

ミストとキルは確定しているが・・・・・出来ればハドラーと、無茶であろうが仔猫の様なティファにもいて欲しいものだ。

最初は単なる駒であったが、今では失うのが惜しい男になっている、そして竜の騎士の娘であろうとあの娘を手元に置いておくのも一興・・・だが、悲願の為にはそうも言ってはいられない。

 

「ミストよ、魔界の状況はどうなっている?」

「は・・・・最深部の古都がまた一つ-沈んだ-と・・・」

「そうか、急がねばならぬか・・・」

「御意に」

 

ミストからの報告を聞いたバーンは苦い顔をする。神々め、魔界の現状を知っているのだろうか?

 

我等を魔界の者全員を苦境の奈落に落として置いた後は、竜の騎士をヴェルザー討伐で差し向けて来た以外は何の干渉もしてこない。監視もせず、そして事ここに至っても救いもしない、憎み殺すだけでは飽き足らない天界の民と三神達。

 

明日の決戦ですべてが始まる、地上と天界を全て滅ぼさん

 

 

ハドラーとキル

 

死の大地の地上部に出たハドラーは満天の星空を見上げる。

 

自分が最初に地上に辿り着いたのも丁度こんな時期であった。

小さな境目の穴を命懸けで潜り抜け、精魂尽き果て仰向けになった自分が最初に見た物は太陽ではなくこの星空であった。

 

魔界には空がないので、見た時は天蓋に宝石を散りばめたかと思ったものだが、慣れとは恐ろしいものだ。

地上征服の野望に囚われてからは、星空の美しさを太陽の温かさに覚えた感動すらも忘れはて・・・マトリフの言う通り三流魔王になっていたと思うと馬鹿らしくなる。

 

この天地の下で、ティファと存分に戦えれば悪くない人生であったと思える日が来ようとは。

 

「感慨に耽ってるね~ハドラー君。そんなにお嬢ちゃんと戦えるのが嬉しいかい?」

「・・・・お前、少しは俺を放っておいてくれんか?」

「え~嫌だよ、大好きな君を応援しているんだからつれなくしないでよ。」

 

・・・・どうしてこの変態に懐かれた?

 

「お前に取っておれは重要ではなかったはずだが?」

 

最初に会った時は自分に対して恭しく一礼しながらも、馬鹿にしている気配を隠そうともしていなかったキルが、ここ最近は別人の如く接してくる。

 

「当然だよ。あんな三流魔王に敬意払うって本気で思うかい?」

「いや・・」

「今の君は本当に超一流の魔王様で戦士だ。僕が大好きな人になってくれて嬉しいよハドラー君。」

「・・・・・嬉しくないな。」

「嫌だな~照れちゃって。」

 

軽々しく肘を自分の肩に乗っけてくるキルを、ハドラーはまじまじと観察する。

 

こうして自分に気軽に接しながらもその内部に巣食っている闇はとてもではないが受け入れられる者ではない。

 

邪恋

 

キルバーンがティファに向ける感情に名を付けるのであればこの一つのみ。

 

敵相手にだからではない、たったの十二の少女に情念と情欲を抱くキルの悍ましさをどうあっても受け入れるわけがない。

 

そんなハドラーの思いを見透かしたのか、キルはハドラーの耳に近づき毒を流し込む。

 

「お嬢ちゃんのあどけない顔は堪らなかったでしょう?」

 

ズバン!

 

聞いた瞬間は理解できず、理解した瞬間ハドラーは覇者の剣を抜剣してキルに斬りかかったが空を斬り裂いたのみ。

 

「怖い怖い。」

「・・・・覗いていたのか貴様・・・」

「あの子は監視対象だよ。とはいえ僕自作の目玉だけしか映っていないから安心してね。」

 

見たのかこやつは・・・ティファと自分の神聖なあの約束を!!

 

「邪魔はしない、その代わり君が負けそうになっても助けないけどいいかい?」

「・・・・余計なお世話だ・・」

「ふふ、口付けしそうな勢いでいて、戦い合うだなんて僕には理解できないけど、明日は頑張ってねハドラー君。」

「貴様!!」

「おっと、怒られる前に退散退散。でもね、勝って欲しいな君に。」

「!!・・・・言われずとも・・」

「もしも君がお嬢ちゃんに勝って、勇者君達に囲まれそうな時は助けるけどいいよね~。」

 

言いたい事を言ったキルはそのままハドラーからの応えを聞かずに空間を通って消えてしまった。

 

・・・あれほど望んでいた静寂に耳が痛くなる・・・

 

口付け?・・・・・馬鹿馬鹿しい!俺は・・・・・俺はあ奴と・・・

 

キルバーンの戯言に耳を傾けてどうする。だが・・あの時のティファの顔に俺は見惚れたのは事実だ。

 

 

明日連れ行く

 

勝ってあ奴を俺の行く冥界の底に諸共に、誰にも渡さずに済む場所に




今宵ここまで

恋人達の逢瀬とその周りのお話でした。
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