勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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物凄く筆者のもろ趣味で書いた文です

これを読まずとも前回と次回は繋がりますので、途中で苦手だと思った方はバックしてください


これはまるで・・・・

「実に楽しそうですに戦ってますね~あの二人。」

 

 

高みの見物を完全に決め込んでいるキルは、二人の激突と喰らい合いに唖然としているバーンの横に来て玉座の階に行儀悪く腰を据え、膝を肘掛けに使い頬杖をついてハドラー達の狂宴を見ている。

バーンとて双方の実力が高いのは知っていた。だが!ティファのあの獣性は何処から来た!!

ハドラーの右耳を噛み千切って平然と挑発し、今も口角を上げ哂って激突している姿など想像できなかったバーンにとっては、ティファの可憐さを弱さ脆さを知っているだけにバラン同様うすら寒い思いがしている。

 

しかしキルは知っている。篩の塔で、あの馬鹿を平然と壊そうとしたティファならば、あんな一面があってもおかしくは無いだろうと。

 

「あの二人はまだ自分達の力に振り回されているようですね~。」

 

キルは戦闘そのものには興味がないが、暗殺・討伐・始末を引き受けていただけあり実力者の動きに目が肥えている。

 

その自分から見ればティファは雪白の力と引き出せる速度に少しばかり振り回されすぎている。ハドラーも己の力の強さを持て余し、攻撃動作が大きすぎて拳を繰り出せば無駄に地面を抉りすぎる等の力と動きのロスが生じている。

 

 

仕方がないか~。ハドラー君は超魔生物としての戦闘はこれが初めて。お嬢ちゃんも雪白とやらの性能を十全に引き出しての戦闘はこれが初めてだと言っていた。

 

 

まさしく二人は()()

 

 

()()()()()に戸惑い、とはいえ今更やめる積りは毛頭無く、手探りながら肉薄してぶつかり合い、お互いの様子を見て互いで存分に愉しめるように息を合わせて上り詰め、()()()()()()()()()懸命に努力しあっている。自分から見れば可愛いくてそしてとても愛しい。

 

命を削り合い喰らい合う様は、最早戦闘と言うのが野暮で最も縁遠いもの。

 

これはまるで()()

 

存分にお互いを貪りあっている様は途轍もなく美しく、これ程の興奮を覚えた事は一度としてない!!

妬けちゃうな~。僕だけ爪弾きにしてハドラー君だけお嬢ちゃんと愉しんでいるなんて。

 

でも・・・あぁ・・・見ているだけで僕の思考も感覚も蕩けそうだよ二人共。

 

先程から-自分の中の何か-がざわざわとして仕方がない。これを沈めるにはどうすればいいのか分からないが、この感覚とも呼べる者はとても甘美だ。

 

もしもハドラー君かお嬢ちゃんどちらかが逝ってしまたら、お嬢ちゃんだけの時はハドラー君は僕にお嬢ちゃんを渡さないように遺体を灰にするだろうからその時は諦めよう。

大好きなハドラー君の思いに免じて。

 

ハドラー君か、あるいは双方相打ちの時に、僕の能力で二人の幽体を現世に留め置こう。

お嬢ちゃんは怒って百年ほど口を利いてくれないだろうけど、ハドラー君はバーン様に仕えられるって喜んでくれそうだから、そんなハドラー君を見せてお嬢ちゃんの機嫌を直してもらおう。

 

願わくば、お嬢ちゃんを生きたまま欲しかったけれど、()()()()()()()()()()()()食らい合っている獣達は納得しまい。

それがとても残念だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、竜の騎士バラン。」

 

ハドラーとティファの激突に巻き込まれないようにダイ達の足元に避難(?)させられたフェンブレンが、突如としてバランに口を利いた!

 

「・・・なんだ・・・」

 

敵ではあるが、こんな悲惨な状態の者を相手に威圧する気は零なバランは一応聞いてやる。

 

「-儂-にとって戦いとは攻めてきた敵、邪魔になる敵を倒す為のものだ。」

「・・・・・」

「なのになぜハドラー様はそんな-作業-で笑っているのだ?それはお前の娘も同様だぞ。」

 

フェンブレンにとって、戦いとは作業と同義語。いかに効率よく敵を斬り捨て粉砕するかが命題であり、少々のサドッ気があるのは認めるが、激突して喜んでいる二人の感性が分からない。

 

あれは途轍もなく効率が悪く、愉しむことではない・・・筈なのに。

 

フェンブレンの言葉にダイも同じ思いを抱き始めたのでバランを見上げる。

 

その顔には困惑の色がありありと出ている。

 

ダイも戦いを楽しいと思った事は唯の一度としてない。攻めてくる敵から大切な人達を守る為以外に、戦いの意義を見出していない。

 

アバンからの特訓も、ロン・ベルクの強化修行も全ては世界と自分の大切な人達を守る為に必要な事であった。

 

だが今戦っている二人の様子はどうだ?あの二人は何故楽し気に戦っているのだ!!

 

ティファだとて、この一戦に世界の命運が掛かっているのを知っているだろうに!!

 

二人の疑問に、バランも何と答えればいいのか分からない。

 

自身も-三界の守護者・竜の騎士-として生を受け、連綿と継がれた使命と戦いの記憶をもとに、魔界の兇悪・冥竜王ヴェルザーとその軍を相手に長年戦い、強者との戦闘に血が湧きたち戦った事はあれど、笑ってぶつかり合った経験はない。

 

だが、それでもうまくは言えないが・・

 

「あの二人は戦士として最高の戦い相手を得られた事を喜んでいるのであろう。」

 

ただ強いだけではない。互いの事を隅々まで知り尽くし熟知し、その上で互いを好もしく思い、激突するに足る相手を得られたと歓喜している様子だ。

 

ハドラーは幾度ティファのとんでも無さと、それ以外を見ても接する態度を変えず、ティファもハドラーがまだ三流魔王と言っていた頃から内面を評価し、遂に超一流魔王になってくれたハドラーを喜び自身の手で倒したい願った。

 

これはまるで、古くからの敵同士が長い年月を掛けて胸の内で親愛の情を育み、お互いの手で倒すことを望んでいる古参兵ではないか。

 

二人にそれを話しながらバラン自身、戦士として我が子とハドラーが羨ましく映る。

 

自分にはそれ程深く心を繋げた相手はいただろうか?

妻を愛し愛されたが、あの二人の様に胸の内や、遂には自身の正体すら明かせられなかったではないか・・・・

 

ティファの言った通り、人間ではないと知られるのが怖くて逃げだした自分は、我が娘の様に深く心を繋げられたのだろうか?

 

不意のバランの沈黙に、ダイとフェンブレンが戸惑い顔を見合わせる。

 

バランからの推察を聞いても、矢張り二人にはハドラーとティファの心情は理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょこまかと!!」

「貴方が鈍いだけでしょう!!!」

 

さっきからいいところで首斬れそうなのに!その都度蹴りだ、拳だ、魔法だで対処してくるハドラーの方がちょこまかしてる!!

 

 

ティファは絶対に体の中心部分に刃を突き立てようとしない。ハドラーに埋め込まれている黒の核晶の気配は感じれども、正確な位置が分からない。

 

そこに万が一刃を突き立ててしまったらこの場にいる全員のみならず、地上で戦っている勇者一行とハドラー親衛隊は間違いなくお陀仏だ!!

 

知っていて敵を喜ばせる趣味は自分にはない!!

 

それにしても、さっきから攻撃を止められているのにイライラとしない。反対にこれ止められるんだと嬉しくなる。

 

鍛えて来た技をいともあっさりと躱され受け止められ弾かれる度に、次の攻撃を考えるとわくわくする・・・・・三界の命運が掛かっているのを一番知っているのはこの場では私なのに、それでもこの昂ぶりが止められない!

 

 

 

「愉しいかティファよ!!!」

 

 

 

その思考を読んだように、ハドラーはティファとぶつかり合いながらも言葉を掛ける。

 

自分との戦いは、激突は愉しいかと問うてくる!

 

 

・・・愉しい?

 

 

「愉しいかどうか分からないが!!!」

 

 

その思いと覇者の剣の刃をティファは真正面から受け止めた。

両足と両腕に闘気を流して強化し、ハドラーの上段切りを一度雪白の刃で受け止め、すぐさま横に刃を滑らせ威力を殺しながら脱出し、上体を前に泳がせたハドラーの隙を見逃さず踵落としで更にバランスを崩させ蹴り込んで壁に激突をさせ追撃しながら答える。

 

 

「貴方の首が欲しい!!!!!」

 

この雪白を手に入れても、強さを手に入れてもその時の自分にとって戦いは手段でしかなかった!世界と守りたい者達全てを守る為の!!

 

だがハドラーとの戦いはどうだ?この戦いは自分が望んだもの。キルやミスト、父達と激突しても胸が高鳴る事はなかった!

 

夢に見た

 

自分がハドラーの首を落とし、主の裏切りを知らずに逝けたハドラーの首が、超魔生物の定めに従って灰に成り果てるまで抱きしめてよかったと笑う自分を。

戦士としての誇りを穢させる事無く、無念の思いも抱かせずに逝かせられた自分に満足をしながら!!

 

これはまるで葬送の義

 

ハドラーが何にも知らない内に私の手で送りたい私のエゴ。

 

「自分の手で倒し、他の誰にもその首を渡したくないと願ったのは!!貴方一人だハドラー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふん!ティファの奴め!!あ奴は一体どこまで俺を喜ばせれば気が済むのだ!!!

 

 

迫るティファを魔法で迎撃する事無く、ハドラーはティファの攻撃諸共に思いも受け止める。

 

無垢な娘にここまで思われる自分はなんと幸せ者なのだ!

 

自分はザボエラに改造を施され、この肉体になったその日から毎夜ティファが夢に出る。それこそ培養液に使っていたその時から。

 

夢の内容は三つ

 

一つは全力で向かってくるティファを自分の手で倒し、力尽き息絶え果てるその瞬間まで、ティファの小さな体を胸に抱いて笑っている。

強者でありながら純粋で優しすぎるティファにはこの時世の世の中で生きていくには辛そうなティファに安らぎを与えられたと満足をして。

 

そして無論自身が倒される時もある。それは首を斬られてか心臓を二つ刺し貫かれてかは様々だが、自分を倒したティファが少し泣きそうになりながらも、崩れ行く自分を抱き留めてその灰を一身に受け止めてくれていた時もある。

 

そして一度だけしか見ていないのは、自身がティファを倒し、ティファの息が絶えたその瞬間、

自分も力尽きティファの遺骸の上に灰となり降り注いで共に冥界の黄泉路を辿る夢。

 

 

俺の体は最早限界で、今こうして命を削って戦える事に初めて神に感謝したくなっている。

ティファのような素晴らしい者を俺の前に立たせてくれた事を、こうして戦い合える場を作ってくれた事を!

 

今が俺にとっては奇跡のような時間だ。おそらくこの戦いが最後で、勝ったとしても俺の体は崩壊する予感がする。

 

願わくばティファ諸共に黄泉路を辿りたい、一度しか見ていないあの夢の様に。

 

 

これはまるで心中立てする様ではないか。

 

この場合ティファの心情は考慮していない俺の我が儘。

 

倒した時俺の力は残っているだろうか?わずかでも残っていれば、俺の魔炎気で諸共に焚き上げたい。

 

ダイとバランには悪いが遺骸とても渡したくない。無論あの変態死神になど論外だ!

あ奴なれば遺骸のティファとても愛でそうだ・・・・虫唾が奔る。

ティファの尊厳の為にも、安息の為にも・・・

 

 

 

ガン!!!!

 

 

 

「何考えて何処見てるんですかハドラー!!!!」

 

 

ッツ!!こ奴何と石頭な!!

 

折角お前の事を後々まで考えてやってるというのに頭突きをしてくるとは!!

 

 

「今あなたと戦っているのは誰ですか!片手間で私が倒せると思っているんですか!!!

他の事なんて考えていないで私だけ見てろハドラー!!!」

 

 

黒い瞳に煌煌とし赤黒い炎を浮かべて俺を睨み据えてくるわ。

 

 

フ・・・クックックッ、存外こ奴は嫉妬深いらしい。今の俺がお前以外の何を考える事があるというのだ!!

 

愛い奴だ

 

俺の首も命も魂さえもお前が取れるのであればくれてやる!ただし俺もお前の全てを貰いに行く。

覚悟せよティファ!!




今宵ここまで
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