勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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苦い決着

同時刻 死の大地地上部

 

「はァァァァ!!!」

「クッツ!小賢しい!!!」

「おっさん!」

「おう!獣王激烈掌!!!!!」

 

死の大地の中でも岩場と崖が多い地にて、勇者一行とハドラー親衛隊達が激突を繰り広げている。

互いに負けられない思いを背負いどちらも欠ける事無く、一行はポップの、親衛隊はアルビナスの統率の下にまさにチェスの盤上の駒の様に目まぐるしく動く。

互いに相手の弱点を突かんと、マァムをブロックに行かせようとするのをシグマが横槍を文字通り入れそれをクロコダインがアックスで討ちかかり、まさに堂々巡りで膠着して随分経つ。

 

ヒュンケルが縦横無尽に動ければ膠着した戦局の打破になるが、ヒムに食いつかれ身動きが取れずにいる。

 

「どうしたよ!その新品の鎧は飾りか伊達か!!」

「ちぃ!!大地斬!!!」

 

ようやく戻ってきた長年の愛剣の一撃を、ヒムはヒートナックルスクリューアッパーを繰り出して剣をいなし、そのままヒートシュートを打ち込もうとしてしたその時

 

 

バッガァァァァァン!!!!

 

 

何かが吹き飛ぶ音の後に、微かに大地が鳴動しヒムはバランスを崩しその隙にヒュンケルは飛び退り距離を取る。

もしかしたらそのまま剣を振るえば、ヒムを仕留められたかもしれないがそれよりも

 

 

「・・・・・ティファ?」

 

 

大地が鳴動する前に暗黒闘気と()()()()()()()()()の気配の方がはるかに大事であった!

 

今のは・・・そんなまさか!!ティファは今サババの砦でノヴァを筆頭に大事に堅固に守りの中で眠っているはずだ!!

 

そう想おうとしたが、戦士としての思考が否定する。今の闘気の気配は確かにティファであったと。それが証拠にマァムもクロコダインも戦闘をやめて防御しながら自分の下まに集ってきた。

 

「ヒュンケル!!今の・・・・今の・・」

「間違いない・・・・ティファの闘気だ!」

 

闘気を扱う二人の言葉に、ヒュンケルも確信し愕然とした。あの守りをどう突破した、どうして来てしまった!!

 

「何馬鹿言ってんだよ!!」

 

マァム達の言葉にポップが青い顔をしてトベルーラで降り立つ。

 

「ティファはあいつは・・・」

「おいお前達!!」

 

ティファがこの場にいるはずが無いと否定しようとしたポップの言葉をヒムが遮る。

 

「今日のハドラー様の一番の相手はあいつだろうがよ!約定が果たされそろそろ決着が近いんだろうよ。それなのに何オタついてんだよ?」

 

ポップ達が驚愕している事は、ヒム達にとってはハドラーから予め知らされていた事で既定路線であり、闘気の気配がしたくらいで何を驚いているのか呆れ果てる。

 

「だがまぁ、あんな凄い闘気をあんなちっこい体に秘めていたのか。お前達が驚くのも当たり前か。」

 

ヒム達は知らず、ポップ達は置いてきた者として、おのずと次の行動が違うのは自明の理。

 

ヒムはティファのあの小さな体に、ハドラーと張る凄まじい闘気を内包していた事に感嘆している間に、ポップは全員に小声で自分に掴まるように指示し一気に飛んだ!!

 

 

トベルーラ!!!

 

 

「あ!待ちやがれ!!!」

 

意表を突かれたが慌ててヒム達も内部にルーラをかけて追っていく。

ハドラー様の邪魔はさせねえ!!あの方は命かけてティファと戦うことを望んだんだ!!

 

ポップは自分のトベルーラをこれほど遅く感じた事は無かった。時間にすればほんの数秒か長くとも十秒もかからないが、其れでも遅いと感じた。早く言って真相を確かめなければと思考がせっつき、闘気が噴出した箇所の穴を山間に見つけすぐさま降下する。

 

その先に見たのは、最初に見つけたのはダイと何かに怯えるように震えているバランと、何故か手足なく転がっているフェンブレンがいた。

ポップはその横に降り立ちすぐさまダイに駆け寄った。

 

「おいダイ!今ティファの・・・ティファ⁉」

 

ダイの肩を揺さぶり問いただす前に、気配がしてそちらを振り向けば・・・

 

「ティファ!!!」

「これ・・・・何があったのダイ!!」

「一体・・・」

 

見つけたティファとその周りのその有様に、ポップは絶句しマァムとクロコダイン、ヒュンケルも凝視する。

 

「おいお前達!!決闘の邪魔すんじゃねぇ!!」

「まだ二人の決着・・・・なんだあれは!!!」

「ハドラー様!!!!」

「ブ・・・ブロック!!」

 

追いついてきた親衛隊達もポップ達を止めようとしたが、ティファとハドラーにかが付き目を向け途中で口を噤み言葉を喪う。

 

大魔王達の部屋に通じる入口の壁に白い刀身の雪白がハドラーの右腕を縫い留め、その横にティファが立っている。その左手は青い血に濡れ、まだ血が滴り落ちている。その掌にはティファの手よりもはるかに大きい()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を手に持ち、俯いて佇んでいる。

ハドラーの方は左脇腹に抉られた傷があり、呻き声を上げながらも身動きが叶わないのかピクリとも動かない。

 

「・・・・ベほちゃん、もう少しベホイミお願い・・」

「-うん!-ベホイミ-」

「ベほ!!」

 

その光景と、自分が砦に置いてきた相棒がいる事に更にに驚いたヒュンケルがバランに問いただす。

 

何故ティファがここにいるのかもさる事ながら、重要なのは何故ティファが敵で倒すと宣言していたハドラーの治療をべほにさせているのだ。

 

 

 

 

 

露呈させてしまった・・・・・映像を見れば、バーンは躊躇いなく使用するだろう。

私の考えが間違っていなければ()()()()()なりふり構わず有能な部下をも贄にして勝つことを優先する・・・・そんな事許したくない!!

 

倒せなかった、どうしても駄目なその時の為の用意はもうしてある・・・

 

 

「ハドラー・・・」

 

技の直後にティファの暗い声が自分の耳をうつ。まるで、愉しき事を無理やり終わらせなければならないと悲しむ様に・・・顔を上げたティファの泣きそうな顔を見てそれは確信に変わった!!

 

「よせティファ!!!」

 

何を止めようとしているのか己自身も分からないが!今ティファがしようとしている事は、ティファ自身にとって()()()()()()()だと断言できる!

やりたくないのであればやめろ!!お前はなぜ自分の心情を無視し続ける!!そんな事だからお前自身が削られ遂には壊れたのではないか!

 

だが、ハドラーの祈りにも似た願いが叶う事は無かった。

 

「貴方は()()()()()()私を許さなくていい!!!」

 

 

叫び上げながら、ティファは首にかけているリングから煙玉を取り出し、視界を遮る。

 

・・・今更この小手先の事に何の意味が・・・

 

目眩ましにもならない直ぐにはれそうな煙にハドラーの思考が一瞬取られる。

その隙は本当にほんの一瞬、刹那と呼べそうな短き時にそれは起きた!

 

ドガ!!!!

グシャ!!!!!

 

「グゥオオオオオ!!!!」

 

一瞬あれば十分

 

逆手で雪白を持ちながらまだ力が入り辛いハドラーの巨躯に渾身の力で壁に激突させ左腕を刺し貫き縫い留め、見えている黒の核晶を引きずり出す為に左手を無造作にねじ込み一気に闘気でハドラーと体に接続している神経ともいうべき触手を焼き切る。

それは死にも勝る激痛であり、ハドラーから苦悶に満ちた声が広間を覆いつくす。

 

「ハドラー様!!!」

 

余りの苦悶に満ちた声にフェンブレンがハドラーが死んでしまうと悲痛の声を上げ主の名を叫び、ダイとバランも決着がついたのかと考えた。

 

本当はその真逆、ティファはハドラーの命を繋ぐ為に懸命に務めている。

 

・・・・温かいな・・・ハドラーの体内は・・

 

泣きたくなる思考に無理やり馬鹿な事を思い浮かべさせ、左手は作業を、右手でリングから六角形の黒水晶と、-万能なる万能薬-とモンスター筒を取り出す。

 

もしも倒せず、こんな事態になってしまった時の為に用意した全ての物を取り出し、煙がはれる前にまだ結界に覆われている黒の核晶を取り出し、右手で素早く黒水晶を黒の核晶のあった場所に置き、液体万能薬の瓶の蓋を口で開け黒水晶と周りにかけ、最後にデルパを唱え中に居たモンスターに頼む。

 

「ベほちゃん、ベホイミ・・」

「-ピ!!・・・・ベホイミ!!」

 

砦で待っていて欲しいというヒュンケルのお願いだったが、明け方よりも更に前に、寝付けず散歩していた時ティファに会って頼み事をされた。

 

決戦に一緒に行って欲しい

たとえどんな人でも治療して欲しいと頼んだらしてほしいと。

 

「-分かったティファ、一緒に行く。-」

 

ヒュンケルも大切な相棒だが、ティファお大事なお友達だ。頼み事を引き受け呼ばれて見れば、満身創痍の・・・・ヒュンケルをいためつけた奴がいた!!!

 

バルジ島でのハドラーの所業をべほは覚えているが、それでもティファの頼みと、ベホイミを掛ける。

 

「ありがとうべほちゃん・・」

 

ティファはお礼を言いながら最後の作業をする。

 

結界を壊さず、その上を自身の白い闘気で覆いつくす。

 

紋章は発動できないが、それでも確信がある。自分の闘気には間違いなく竜闘気が自然と混じっている事を。

 

それは先程近距離でのハドラーからのイオラを闘気で防いだ時無傷であったことが何よりの証。

 

それらすべてが終わった後にヒュンケル達が来た。

 

これで大魔王が魔法を注ぎ込んでも防げる。

遠距離操作による爆発が無理ならミストバーンが来る・・・・これを爆発させために・・・

 

こんな・・・・・こんなものが私達の邪魔を!!!

 

「よさぬかティファ!!!」

 

左手を振り上げ戦慄くティファに、バランは一瞬で駆け寄り細い腕を本気で掴んで止める。

 

 

 

何故ここに、地獄の火種・黒の核晶がある!!!

 

この中で唯一、ティファ以上に黒の核晶の怖ろしさを知り、なおかつティファと違い実際に地獄を体験したバランは自分の体の震えが止められずに、それでも娘の暴挙を止める。

 

「・・・・ごめん父さん・・・腕・・・痛い・・」

「ッツ!済まない・・・ティファ、その黒の核晶を今すぐ渡しなさ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様等は何処にも行かさん。」

 

バランの言葉は遅すぎた。

 

黒の核晶を自分が受け取り、死の大地から最も遠い海上で安全に爆破処理しようとしたバランの言葉は、いつの間にか広間上空に浮かぶミストバーンによって遮られる。




今宵ここまで・・・・

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