たとえそれがどの様なものであっても存在している限り揺れ動き成長するなり退化するなりして常に動くものである、と、筆者は思うのです
洞窟でザムザさんと二人きりの最後の夜に教えて貰った。
ハドラーと死の大地で再会した時、とても冷たい禍々しい、黒い瘴気が渦巻いている気配がするものが埋まっている気がすると言ったら、それはおそらくこれだと小箱を取り出して見せてくれた。小指の爪ほどの黒の核晶を。
ザボエラの頭脳をもってすればこのくらいの大きさなら個人で作れたらしいとは、これが何でありどれ程怖ろしいかのレクチャをーを受けながら聞いた事だ。
予算と何度も作るのは危険な作業なので二度だけ作り、一つは失敗したが、一つがここにあるという事は・・
「私の父が、護身用に持っていろと・・・・父なりの愛情だったのでしょうが使う気はしませんでした。」
使っていたらロモスは消失していた。そんな大量破壊兵器に手を染める気にはなれない。
冷たく禍々しく、黒い瘴気を感じさせる体内に埋まっているものだとすればこれしかないとも。
「ハドラー様を助けたいですか?」
「助けるかどうかは・・・でももしかしたら・・」
「分かりました、ではそのようにしましょう。」
敵の軍司令官助けるのに何故も何も聞かずにザムザはティファ望みに奔走してくれた。
まず黒の核晶をただ抜くだけでは死んでしまう事。あれを埋めたのはおそらく魔界の神の仕業であり、長年ハドラーの体内にあり最早第三の心臓と化しているであろう事を。
「黒の核晶のもととなっている黒水晶を手に入れてみます。それが手に入れば後は簡単です。ハドラー様の体内に黒の核晶を抜いて直ぐに黒水晶を入れて、生命を活性化させるタイプの万能薬を振りかけ回復呪文で塞ぐのです。それがうまく作用すれば、黒水晶が黒の核晶の機能を果たす筈です。」
其れなら当てがある。レオナ姫とポップ兄を助けた精霊樹の葉入りの万能薬の最後の一本が。
「ティファさんの望み通りになるといいですね。」
実際には誰もそんな事は試した事は無く上手くいくかどうかなど分からないのに、にこりと微笑むザムザさんに、あの時自分は何と答えたのだろうか。
「あ・・・・あれは!黒の核晶!!!!」
ティファがハドラーから抜き取った物体を見た時のミストとキルの驚愕は筆舌に尽くせぬものがあった。
なぜハドラーの体内にそんなものがあるのか等、自分達にとっては分かりすぎるほど分かっている!!
それでも
「バーン様、なぜハドラー君の体内にあんなもの埋めちゃったんですか?」
茶化す様に、それでいて冷たい瞳で怒りの色を浮かべているキルは恐れげもなくバーンに問いただす。
直ぐにあれを誰が埋めたのかをその鋭敏な頭脳で弾き出し、埋めた自分を詰る様に。
今のハドラーは自分にとっては大好きな子。そんな子の中にあんなものがあっては黙っていられない。
近頃のキルの言動に頭を痛めていたバーンは、自分がした事とは言え育ちすぎ余計な意志を持ち始めたキルに手を焼く。
キルがヴェルザーから送り込まれてきた当初からオートドールで、近くにいる一つ目がマスターだとはすぐに見破った。
だが常のオートドールとは違い、どこか自分で動いている節があり面白そうなので探ってみれば、なんと自律思考する為の疑似人格が植えられているのを突き止め興が乗り、七千年間一度も使った事の無い備わっている能力ハイ・エントを試してみた。
無論ミストには内密で。二人きりの空間内に閉じ込め、疑似人格を更なる高みに昇らせる為に-生命力を与える-ハイ・エントを。
このような能力が一体何の役に立つと今まで忘れはてていたが、-人形を真なる生命体-にして見るのもまた一興。
無論キルにそんなことをしたと覚えられているのも面倒なので、記憶を消すリャナンシーも使用して。
自分のハイ・エントは、生命と記憶を司り、もう一つはあらゆる物質を転移させる能力。使い勝手が悪く自分には不要だと思っていたのが、存外暇つぶしには使える事が分かりキルがどう育つかその時は楽しみにし育ってくれたのは喜ばしい・・・だけでは済まなかった。
まさかここまで育ち人臭くなろうとは・・ティファに出会って加速したようだが、あれは本当に周りに与える影響と、
現に、今の今までハドラーの側に居た魔王軍の誰もがハドラーの体内にある黒の核晶に気が付かず、如何なる時も冷静なるミストをして驚愕せしめているのを、あの娘は平然と持っている。
ハドラーの外傷が塞がれる前にちらりと黒水晶が見えた。ならば手に持っているものが何であるかは当然知っているはずだ。でなければ黒の核晶の代用品を再度埋め込み修復を試みる等出来はしない。
何故その存在を知り、どのようにしてハドラーを救う手立てを探し出してきたか、五年前の大混乱同様全く分からない。
あれは早々にどうにかせねばならない。キルの言葉を無視しながらハドラーとティファを惜しみながらも遠隔操作をし、爆発に巻き込まれない結界を張ろうとしたが起爆魔力は作動しなかった。
・・・そうか、あの娘もまた竜の騎士の端くれであったな。
紋章を使えずとも、闘気の中に自然と竜闘気が備わり、黒の核晶の暴発を防ぐか。
「ミストよ、
「バーン様!!それは・・・・」
「余の言葉に不服かミストよ?」
近頃ミストも自分で考え始めるか。以前のこやつは余の考えが全て正しいと何も考えずに、盲目的に追従してきていたが、はてさてどう返答するか?
「・・・・・畏まりましたバーン様。行ってバーン様の敵を全滅させてまいりましょう。」
「うむ。キルは黒の核晶が発動したと同時にティファを空間からこちらに引き入れよ。」
あれには聞きたいことが山程出来た。
ミストは内心ハラハラしながら主と親友を見守る。
キルは暗殺はすれどもどこか正々堂々とし、相手の前に姿を見せて刈り取ってきた。罠は使えど謀略・策略の類を嫌悪しているきらいがある。
そこにハドラーは見捨て、小娘だけをこちらに引き入れよとの命令に素直に従うだろうか?
自分は大魔王に仕える義理はあれど義務はないと常々嘯いているキルが・・
「畏まりましたバーン様。」
キル⁉
ミストの内心の心配と裏腹に、キルはあっさりと・・・・どこか
それは普段のキルとは全くの別人の雰囲気を漂わせているからだ。
だがバーンには直ぐに看破された。とうとう人形の勝手な振る舞いにマスターがしびれを切らし、自らがキルを動かし始めたのだと。
これはこれで退屈になろうが、戦場を引っ掻き回され魔界の悲願の邪魔をされてしまう事とは引き換えには出来ない。
「行って、黒の核晶を爆発させて来よ。」
「お前達を何処にも行かせん。」
出現したのは大魔王本人ではなく、ミストであったことにバランは拍子抜けする。このハドラーの体内に黒の核晶を埋めたものなどとうに知れている。
恐らくバーン本人の魔力が注がれれば黒の核晶は起動し爆発する。
だが来たのがミストとは・・・
「貴様一人が来た所で何になる!!死ぬのは貴様だ!!!」
ミストとは直接戦った事は無いが、予想するに自分を上回ってはいまい!!
ダイ達も応戦態勢をとるが、ヒム達は事態のそもそもの全容を知らずどうするべきかと迷っているその時
「ティファよ・・・・その・・・手に持っているのはなんだ・・」
弱々しくもハドラーの声が聞こえた。
大勢の気配に目が覚めたハドラーが最初に見たのは、禍々しい物であった。それはに何かと問うたが、ティファは沈黙をして教えてはくれない。
再度問おうとした時、教えてくれたのは意外にもバランであった。
「ハドラーよ!それは地獄の火種、お前達魔族・魔界の者達も禁忌としている超破壊兵器黒の核晶だ!!!」
「・・・・なん・・だと・・・」
「そしてそれはお前の体内に埋まっていた!!」
「そんな・・・・何故俺の体内にそんなものが・・・」
「知れた事!!おまえを助ける振りをし、その実強敵と相打ちにさせんと目論んだ大魔王バーンよ!!そしてお前諸共我等を始末しようとミストバーンもそこに居るのだぞ!!!!」
一切をバランはぶちまけた。この際ハドラーの心情を無視してでも、何が起きているのか分からない息子達全員に、如何に黒の核晶が危険であるか、そしてそれを目論みハドラーを駒に扱いしたのは誰かを暴き立てる為に。
それが果たして正しいかは分からない。自分もハドラーの戦士としての内面に触れハドラーを評価していただけに、このような事はしたくはない!!
それでも、これでハドラーと親衛隊達に味方の裏切りは十分に伝えられていよう。
そして選択するがいい。駒としてでも主の思いに準じるか、親衛隊達と共に反逆するのかを。
「・・・ミストバーン・・・・」
バランの言葉を全て理解し、偽りが無い事を確信する。昔の自分には確実に黒の核晶などという危険極まりないものなど埋まってはいなかった。
ではどこからだと言われれば、大魔王バーンに救われ新たな肉体を与えられた時しかない・・・・
分かってしまい、それでも問うてしまう・・・
「ミストバーンよ・・・お前にとっても俺は駒でしかなかったのか?」
以前までは不気味で、いつ自分の寝首を掻くか分からない者であった。
しかし自分が本気で強さの高みを目指さんとした時、それを肯定してくれたのは間違いなくミストバーンであった。
ザボエラの改造部屋まで来て、自分の現状を見てとても驚き、それでも改造の時間を稼いでほしいという自分の願いを、バーン様の城・鬼岩城をもってしてパプニカ強襲をしてくれた。
嬉しかった。自分を気にかけてくれるものが身近にいてくれたのだと思い・・・・一昨日と昨日の夜は騒がしく・・・そして楽しかった・・・・キルバーンも入れて、本当に楽しかったのだ!!
寿命迫る中で心が通じ少しは絆と呼べる者達が出来たのだと・・・・喜びさえ覚えたのだ・・・
その自分の思いを嘲笑うかのように、全て知っていた上で自分に接してきていたのかミストバーン
ハドラー・・・・・
ミストとても身を切られる様な感覚に戸惑う。今までは唯バーン様の命令を遂行する事こそが無上で唯一の自分の喜びであった。
だが今は・・・・主が自分に与えてくれた任務を辛いと思うなどとは・・・
しかしそれでも!自分にとって・・・
「大魔王バーン様の命令は全てにおいて優先される。」
その言葉を行動で示すかの如く、ミストは封印を解き、バーンの若い肉体の顔を晒す。
ハドラー、せめてわが手で眠れ
今宵ここまで
ザボエラは肉体改造時にハドラーの黒の核晶を見つけていますが、バーンが埋めたであろうと察して取り入ろうと、ハドラーの黒の核晶を放っておいたどうしようもない者です。
しかし息子には-護身用-に黒の核晶を持たせる情を少し足してみました。
とは言え使った時の威力を知りたかったのが本音なので、筆者としてはザボエラ消すか消さないかもう少し熟慮うしてみます。
やっとバーンのハイ・エントの能力と、何故キルバーンがここまで原作と乖離したのかが書けました。
彼の疑似人格成長を促したのはバーンのハイ・エント、自分の生命を相手に与えるマスター=エンゲージです。
本物の生命力を与えられた疑似人格はいつしか本物へとバーンの目論見通り・・・・なのかは断言できませんが成長したのは確かです。
(まさかここまでの真正ともいうべき変態になろうとはバーン様にとって絶対に計算外です)
与える生命の量は自分で調節可能でキルには人格形成を促す程度なので僅かですが、際限はなく魂と寿命の全てを渡すことも可能な技です。
原作キャラにここまでオリジナル技を追加しましたが、この物語の進行上必要な事と、どうかご容赦ください。
なおこのハイ・エントと主人公に使ったリャナンシーは使い方によっては怖ろしくもなりますが、現状大魔王バーンの強さが主人公の知る原作よりも強いのとは関連はありません。