一切の気配も音すらも消されたような空間は耳が痛くなる
ハドラーとバラン等元魔王軍はミストバーンの恐ろしさを心底知っていただけに、ダイ達は実際に戦った時のあの強さを、ヒム達も先程の威圧感に竦んでしまっただけに、一瞬とも言えない瞬きで消滅した事が、それを平然と敢行したティファが異様に映ってしまった。
常の優しさは何処にもなく!報いを受けろと言っていた時のティファは、まるで断罪を下す神の様に・・・・
そのティファがグラリと倒れかけ、慌ててバランが抱き留める。
「とう・・・さん、みんな・・・説明を・・」
「分かった、お前がした事は途轍もない事だろう。体が辛いのであれば休みなさい。」
「・・・うん・・・お願い・・」
先程のティファとうって変わった弱々しい娘を労り地面にそっと座らせ、バランは黒の核晶の怖ろしさと仕組んだものを再度説明する。
娘は一行とこの場にいるもの全員を救ったのだと。その反動が体に来たであろう事を。ティファはバランの説明にもピクリとも動かずに、疲れたとぺたりと地面に座り込んでいる。
そのティファは頭の中で目まぐるしく現状を考えている。
ミストを消せたのは大きい。これでこの世界の大魔王の強さも、私の知る原作の若い肉体と融合した時の強さで止められた。
そう、この世界の大魔王はミストが守り抜いていた若い肉体と融合されてしまった時神々であろうが、双竜閃を手に入れ、竜魔人化したダイだろうが止めようのない、正真正銘の怪物クラスの力を有してしまっていた。
それを阻止できたのだから勝率はぐんと上がったろう・・・。
ある意味、これでこの世界の目的の為の第一段階を漸く終了できた訳だが、これでしばらく私は使い物にならない。
ガン=フレアは威力がけた外れに凄い反面、使用後は少なくとも三十分はまともに活動できなくなる。
闘気も喪い、ハイ・エントの魔力も枯渇し本当に何もできない。
動けるのであれば、ハイ・エントの移動能力でこの場全員逃がしつつ、自分は結界を斬り裂き脱出する手もあるのだが・・・あれ?
なんで-アレ-が残ったんだろう?
・・・・そんな・・・・こんな状況でまともに戦えるはずねぇ!!!
「勇者一行全員撤退すんぞ!!!」
こんな訳の分からない状況でまともに戦って勝てる気がしないポップは瞬時に撤退を弾き出す。
あの黒の核晶が一つだけという確証はなく、また長年己に仕えていた腹心の配下を消された恨みがどんな力を大魔王に引き出させるか分かったものでは無い!
「お前達も連れて行くぞハドラー!!!」
「はぁ⁉お前何言ってんだよ!!」
「お前達こそ今の状況分かってんのか!此処に残っていたら間違いなくお前達全員消されるぞ!!」
ポップの発言に驚いたヒムの抗議をポップは瞬時に黙らせる。
自分達を消す為にハドラーを駒にした事を、ハドラー自身が良しとするはずはなく、そうであれば必然叛逆の芽を刈り取らんと手負いで弱っているハドラーと親衛騎団全員が処理されるのは自明の理ではないか!
「・・・貴方は・・・・我等は敵なのですよ!!」
ポップの説明を聞いたアルビナスはそれでも尚、否、それだからこそポップが自分達も連れて行くという理由が理解不能となった。
これが魔王軍の内部情報の最新版欲しさだとかの情報収集の為ならばまだ分かり、主を此処から連れ出せるなら渋々ながらう付いていく積りであった。
自分達の主は何処まで言っても魔軍司令官ハドラーであり、その主を駒扱いした大魔王と魔王軍の情報などくれてやる!
「うるっせぇ!!!時間が惜しいんだよ!グダスカ抜かさず行くぞ!!俺はな!お前達を見捨てたくなくなっちまったんだよ!!!分かったか!!」
ポップの暴言ともいえる発言に、アルビナス達は今度こそ固まった。
ポップにとっても、最早ハドラーは師の仇以上にティファの言う尊敬に値する敵となってしまった。
先生・・・いいっすよね、こいつは先生が知っている三流魔王じゃないんです。味方だと思っていた奴等からこんな仕打ちをされているこいつを助けてもいいですよね。
師ならば、アバン先生ならきっと許してくれるはずだ。かつてハドラー大戦の決着前に、その無限ともいえる慈愛の精神でバルトスを倒さず、ヒュンケルを育てる事を約束した先生ならばきっと、ベリーベリーグットですよポップと言ってくれるはず・・・あの満面の温かい笑みで。
「いいなダイ達も。」
「うん、ポップの言う通り。難しい事は後で考えよう!!」
・・・・真顔で少々おバカな事を平然と言うダイに、ポップ筆頭に全員ががっくりとしたくなった。
・・・・・・先代勇者と氷の勇者と、竜騎士を兼任している勇者ダイは・・・・そこは自分がいるから何とかしようと、鼻水を啜りながらポップは素早く-全員-の決を採る。こういう時こそ全員の意思を一つに固めておかないと後々問題になって、亀裂になられては困る。何よりこの方がヒム達も観念しよう。
決議とったら直ぐに全員つかまってもらい、やった事ねぇ人数だが一世一代の大ルーラで逃げ切ってやる!
マァム達も直ぐに頷きバランも賛成し、最後の一人に聞こうと足元を見れば・・・・いるはずのティファがいなかった!!
「おいティファ!!!!」
ミストが浮かんでいた辺りの地面に、真っ白なミストの衣が落ちていた。封印の前止めは消失したのに。もしかしてガン=フレアはこれをミスト・バーンの一部とは認識せずそっくり残したのだろうか?・・・・・だとしたら
他者が聞けば謎かけの様なもの思いに囚われていると、兄から呼び出され。返事をする為後ろを振り向く。
普段のティファは後ろを向く時、左側に顔を向ける事が多いいが、
それは偶然か天祐か。体全体を右に捩じった直後、
更に言えば、そこは丁度ティファの心臓のど真ん中の位置であった。
普段と同じ左側に向いていれば、心臓は辛うじて貫かれず済んだかもしれないが、確実にレイピアが体のどこかを刺し貫き大ダメージを追うのは免れなかった。
強運により凶刃を擦り抜ける事が出来た。だがしかし、、空間から出現する死神からは逃れる術がなかった。
振り向いた瞬間目と目が合った。その瞳の色は殺気を宿した冷たい炎で、レイピアを偶然避ける事が出来たティファの細い首を瞬時に左手で締めあげ、渾身の力を籠め地面に押したしレイピアを逆手に持ち替え無言で振り下ろす。
今度こそ確実に心臓を刺し貫きティファの命を刈り取る為に
今宵ここまで