広間の上空に突如出現したシャドーの様なものに、ダイ達はおろかハドラーも親衛騎団達も唖然とした。
自分達が知っているシャドー・ゴーストとは明らかに異質なもので、では何かと聞かれれば見た事もない・・・
三人を除いては。
一人は間違いなくティファ。知識であれが何であり、あれこそがミストの本体だと知っている。
残り二人はバランと、そしてなんとキル。
バランは目の前に現れ愛娘をバケモノ呼ばわりした不届き者が何であるのか見定めるべく、数千年間の知識が蓄積されている竜の騎士の記憶に直結し、高速で閲覧し該当する者を探し当てた。
「・・・・・バケモノか・・・我が娘をバケモノと呼ぶとは片腹痛いわ!貴様こそ・・・」
「ミスト!!!!」
バランの検索結果であれは魔界に漂っていた暗黒闘気の集合体、生命体とも呼べない意思があるだけの半端者がと罵ろうとした矢先、キルは一目見た時から親友だと分かった。
暗黒闘気の集合体だとは知らずともだ。
「ミスト!ああ生きていたんだね!!君が無事で僕はとっても嬉しいよ!!!!」
上空にすっ飛んでいき先程までの殺気も憂鬱さも煙か幻かの様に消え果て、代わりに歓喜の気配を振りまいてミストに纏わりつこうとするが、肉体がない為素通りしてしまう。
「あ!!ミスト僕近づかない方がこの霧みたいなの消えたりしない?僕離れた方がいい?」
触れようとした手を伸ばせば素通りして霧状の暗黒闘気が霧散してしまう。
大好きな親友消すの嫌だと健気に申し出る姿にミストは驚く。
「キル・・・・・お前は・・・どうして私だと・・・」
暗黒闘気集合体・ミストは、ティファに抱いた怖れと怒りすらも吹っ飛ばされた。
キルは自分の様な暗黒闘気の集合体は知らず、そもそも自分は誰とも名乗ってもヒントもなかった・・・・筈なのに。
そんなミストの言葉をキルは、なに言っちゃってるのさという気楽さで答えた。
「親友の君の気配分からない訳ないでしょう。」
容姿ではなく、君の中身に僕は惚れたんだからさ
返ってきた返答がそれか!気配だと⁉私の気配はバーン様の若い時の肉体から発せられるもので、自分は今まで奥深く・・・そもそもキルよりももっと間近にいて寝食を共にさせた弟子のヒュンケルでさえ、私の事を分からなかったのにだ!!
・・・主に食べて寝ていたのはヒュンケルだけだが、十五になるまで傍らから離したのは料理をしに行く時以外は風呂にも入れてやり、バーン様の仕事も其れまでは他に回して貰っていたのにだ!!
なのにこいつが分かってどうしてお前は本当に私かと怪訝そうな顔で見ているのだヒュンケル!!
色々と各方面に驚いているやら逆恨みをしているミストに、またもやキルの返答は脱力したくなるものであった。
「だって怒っている時のミストの気配とさっきお嬢ちゃんを罵っていた時の気配一緒だったもん。」
・・・・・もんって、もんてそんなよく分からん気配理由でこいつは私の事を分かったというのか!
キルは伊達に数百年間もミストの親友をしていない。ミスト大好きっ子なキルは、不器用でも情に厚く、実は物凄く怒りんぼうな親友を日夜弄り倒してわざと怒らせて愉しんでたという悪癖があったりする。
怒りの気配の時は、戦いや他で感じる冷たい気配と違い熱が感じられるのが大好きだ!
ちなみにキルが冷たい気配とさしているのは言わずと知れた凍れるときの秘法で肉体的にも本当に冷たいバーンの若い肉体の方。
謂わばキルはずっとミストの本質・本性である方を本能的に探り当てて愛でていた、本当の意味での親友であったのだ。
「キル・・・私は・・・・私はバランの言おうとしていた通りバケモノ以下の・・・」
「うん!その事はバラン君倒して反省させようね!君に対してなんて失礼尚と言おうとしたんだろうし許せないよ。
でも君も駄目だよミスト。お嬢ちゃんにバケモノとかって、女の子に対して失礼すぎるよ!!」
「いやしかし!あいつは黒の核晶を暴発させず消滅させたのだぞ!!」
「方法分からないけど世の中にはそういう秘法が山ほどあるんだよ!それの一つや二つ使えたくらいで女の子けなしたら駄目でしょう!!!」
「・・・・・お・ま・え・は!!どこまであの小娘の肩を持つ積りだ!!いい加減あの小娘のあり得なさに気が付いて真っ当に消せ!!!そんな途轍もない秘法が山ほどあってたまるものか!!常識的に気が付け!」
自分の本性を見ても親友だと言ってくれるキルに感動しかけたが!相も変わらずの小娘べったり思考何とかしろ!!
ミスト頭硬い!お嬢ちゃんが凄いのなんて今更過ぎる!あの子がラナルータ単騎で使えるって言っても僕驚かないもんね!!
双方目の前の敵をうっちゃって置き、ティファの処遇を巡っての大口論。
・・・・今の内ルーラでとんずらすっかな・・・・
ダイ達はその様子にポカンとし、馬鹿馬鹿しくなったポップは頭をガリガリ搔きながら逃げる算段していると不意に冷たい声が降ってきた。
「僕等が本当に君らを放っておいていると思うのかい?まだまだ甘いね~魔法使い君。」
「・・・・・小娘は引っ掛かりもしていないがな。可愛げもない。」
キルは悠然と大鎌を肩に担いだままうっそりと笑い、ミストも冷静にティファを見遣っていた。
二人にとって、口論しながら敵を殲滅した事等数知れない。キルは悪魔の目玉を自分の視力と共有させ、ミストは敵の周りに可視化できない程の粒子状の暗黒闘気を張り巡らし、見なくとも相手の気配と大体の状態を知れる。
もしもポップが直ぐにルーラで全員と逃げようとしていたら、その瞬間トラップを発動させていた。一瞬で人体が溶ける高濃度の酸を振りかけながらティファだけを引っさらうつもりで。
その言葉にポップは首筋に鎌の刃を突きつけられたような怖気が奔り、冷や汗を流し縫い留められ、全員の警戒度が最大限上がる。
ただ一人ティファだけが、今の二人を冷静に見つめている。自分達の普段からの戯れを無視し、虚実を見抜こうとして。
あぁ、本当になんて様々な意味で素敵な子なんだ君は。是が非でも欲しくなるじゃないか~。
先程ハドラーとの食らい合いを見た時と同じ。思考が蕩けて何かがズクズクとうずくじゃないか~!
「お嬢ちゃん!」
「・・・・・なんですか・・・」
キルの情熱的な呼びかけにもティファの言葉はどこか冷めている。何を言っても心に響かないような冷たさを感じさせ。
それでも結構!僕は丸ごと君が欲しいんだよ!!
「ミスト生きていたから君を殺すのは無しにして上げるよ!」
「キル⁉」
「・・・・それはどうも・・・」
隣のの親友は悲鳴を上げ、殺さないと言われた当人は喜ぶ素振りすらないが気にしないよ僕は。
何故なら死んだ方がいい目に遭うかもしれないからさ。
「その代わり君をどんな手を使ってでも捕まえるよ!君のした事でミスト本人とバーン様は怒り心頭に発して君の手足もいでそこにいるフェンブレン君みたいにされる可能性高いけれど大丈夫!!君の面倒の一切は僕が見て上げるから安心してね♪
君が死んでしまうその日まで僕がずっと大事に大事にして上げるから!」
まさにその狂気は死神に相応しく、途轍もない喜色の色を乗せ歌う様な声で紡がれしは、途轍もなく気色の悪い悍ましい言葉であり、-魔界でそれなりのもの-を見聞きして来たハドラーとバランの顔色を無くさせ、ダイ達はおろか、元味方であった親衛騎団達をも怖気を震わせる。
たった一人、ティファの気配だけが欠片も揺らがず静かにキルを見つめている
今宵ここまで
親友が生きていた事により、水を得た魚と化したキル。
バランの竜の騎士の記憶の検索は筆者のオリジナルです。数千年の歴史の膨大さを考えると、一個人の肉体と思考容量が耐えきれるとは思えず、必要な記憶を必要な時に検索できるものの方が負担は少なく、次世代に負荷をかけ過ぎず受け継がれやすいのではと思いこれにしました。