その行為に対して一番驚いたのは誰であっただろうか?
巨大な力と権力で魔界の半分以上を統治している事を知っているハドラーかバランか。
殺されんとしている状況であっても大人しくできないティファを案じる一行だろうか。
敵である軍司令官を庇うおかしな勇者一行の料理人に驚いたハドラー親衛隊達だろうか。
自分の状況が分かっていないのかと呆然としながらティファを見ているミストだろうか。
直前までバーンに対して、全く警戒心を働かせていない事が分かっていたキルだろうか。
それは次の言葉を聞いた全員になった。
「どうして・・・・・どうしてハドラーと共に戦わなかったの・・・」
燃える様うな怒りの炎ではなく、悲しみの色を乗せたティファの瞳は、自身が噛まれて傷を付けられた事に驚いたバーンを捉えて離さない。
どうしてこんなに強い人がハドラーを駒にしたのか・・・・何故共闘しなかったのか
ハドラーの門番としての責務として?巨大な力を何故・・・
「・・・・・もうよいティファ!!」
その言葉を止めたのは・・・
「これ以上俺を道化にしてくれるな・・・・」
「!ハドラー・・・」
「駒にされたと気が付かなかったは俺自身・・・・これ以上言ってくれるな・・・」
「そんな・・・・そんな事!!」
「それでも・・・」
ティファの嘆きは意図せずともハドラーの矜持を傷つける。敵に倒されるのではない、無様にも助けられそして嘆かれる・・・・これ程の恥辱を自分は知らない。
幾度も倒すと言っていたあのティファに助けられる。これ程惨めなことがあろうか?
それでも、そんな目に遭っても自分は・・・
「其の御方が、俺の命を救ってくれた事実に変わりはないのだ・・・」
例え今日この時の駒としての意図しかなくとも事実は変わらない。未練だろうが、まだバーンを其の御方と呼ぶ程に、敬愛の念が捨てられない・・・・これ程の目に遭ったとしてもだ。
ティファに敗れる時には、どのように無様であっても相打つ気でいた。せめて自分が恩を返すにはこれくらいしかないと思い定めて。
結果はこの様だがあの思いに偽りはなく、後の主の勝利を祈ってさえいたのだから。
ハドラーの静かな言葉はバーンをして心揺らされるものがあり、キルとミストの心の奥まで確かに届き、それは-僅かな隙-が生じた。
それは隙というのにはあまりにも僅かな気配の緩み、本来ならば隙とも呼べないものであったが、ひたすらに-妹-の奪還のみを考えハドラーの忠義心に満ちた言葉など欠片も入らず、だからこそ父も含めた周りの者達が情に流されかけても己は流されず、僅かな気配の変化を見逃さずに動いた!
「オォォォォォ!!!!!」
ヒィィィイイイィィィィンッ!!!!
輝け!そしてティファの中に眠っている紋章と繋がれ俺の中の竜の紋章よ!!!!
今までは無意識に妹の紋章と繋がっていた。ハドラーの時、クロコダイン戦の時、テラン戦の時、どちらも自分達は意識したことは無かった。
昨日ロン・ベルクの小屋の前で初めて意識して共鳴するまでは。
私の紋章はダイ兄と繋がってるみたい
そう可愛い事を言ってくれた。
もしも私が捕まった時に、ダイ兄が紋章を発動させてくれたら私の紋章も発動して、一瞬でも爆発的に力が上がったら逃げられると思うんだよ。
それいいな!ダイ!!今やってみようぜ。
あぁ、ティファの力とお前の力が合わさればティファの言った事は可能だろう。
ディーノ様お頑張りを。小娘も発動が負担になったらきちんと言え。
ポップとヒュンケル、ラーハルトの前で繋がりを意識して発動させた時、眠っている妹を起こすような感覚であった。
深く、体の奥で眠っている力を揺り起こすようなそんな不思議な感覚に。
あの時はうまくいき共鳴範囲も見定めている!この距離であれば十分だ!!
ダイの紋章の発動は瞬きの間でありティファの紋章も兄の紋章に応える様に発動した。
其の力は今までにない瞬時に爆発的な力を発揮し、力の奔流がキルの大鎌を吹き飛ばしミストは耐え切れず吹き飛ばされ、バーンをも後ずさせる。
自分達兄妹を遮り止める者達の、今度こそ出来た明確な隙をダイとティファが見逃すはずはなく、ダイは前方に走り出しティファは兄の気配の下に駆け寄る。
気が付いたバーンはすぐさまイオラを連発するが、真魔剛竜剣を再び手にしたバランが、ティファと魔法の間に立ち塞がり次々と切り捨てていく。
息子と娘を毛筋ほども傷つけさせるものか!!!
「ティファッ!!!」
「ダイ兄ッ!!!!!」
父の助けを借り、互いに懸命に伸ばしあった二人の手はしっかりと指を絡ませ合う。
二人共利き手を伸ばした為に、兄は妹の左手を、妹は兄の右手を。指が絡まり合い、掌もひたりと合わさった時、ダイは自分の体の中の力が掌に集まるのを感じた。
これは、この手の形を俺は知っている・・・・きっとこの手の形は偶然などではない。どちらかの利き手が違っていたら、この形にはなる事は無かった!
自分達は双子で共に生まれ、共に育ち、それでも利き手が違うことが不満であった。
性別の方は良い、可愛い妹なのだから。だが利き手は違う事は別だった。
今日この時までは
身の内から溢れる力を開放すべく、掌の二つの紋章が一層輝きを増した事に戸惑う妹に微笑みながら、ダイはティファの右手を開いている左手で自分の腰に回させ、自身の左手もティファの腰に手を回し体を固定させる。
ティファ、今から放つ技は俺とティファ、其れと父さんしか撃てない技だよ
心の中で呟きながら、ダイは妹の左腕をしっかりと伸ばさせ自分も伸ばす。
その時になってティファも漸く分かったようだ。これから自分達が放つ技がなんであるのかを。
この間僅か数瞬であり、誰も二人が何をしようとしているのか分からず、それ故に邪魔をする者はいなかった。
ダイは二度其の形を見た。一度は父が仲間達に向け、二度目は自分と妹が受けた時。
ティファはその時の一度だけ。
その技を、今妹と自分の二人で撃つ!!
本来であれば真の竜の騎士が、その技に耐える為に竜魔人と化し肉体強化をするのだが、
自分とティファ、二人合わせてこそ一人前の竜の騎士。紋章の共鳴で発動されんとしている技の闘気と衝撃は全て自分に流させ受ける!!
「ティファ・・・撃つよ・・・」
「ダイ兄・・・大丈夫・・・ティファにも分けてね・・」
「ティファ、お兄ちゃんに任せて」
妹が何を分け合いたいと言っているかは分かっているだけに、その願いをすげなく断り、ダイは前方の討つべき敵を見据え、ティファも諦め兄と同じ方を向く。
うとう
「父さん!!!」
「横に!!!!!!」
流石にこの時は周りもダイ達の力の高まりに気が付き、キルとミストが二人の下に行こうとするのをクロコダインがアックスでキルに討ちかかり、ヒュンケルも光の闘気を纏わせた大地斬の連撃で足止めをする。
バーンも-武器-を召喚し、これから来るであろう技に対処しようとしたが、その時は既に遅く、バランが横にどいてしまい、射線があけられた!!
目の前の竜の咢が口を開く!!!己の・・・己達の敵を食い殺さんとして!!!
食い尽くせ!ドルオーラ!!!!!
暴力的な光の奔流がバーンに向かって伸びていく。まさしくそれは、光の竜が敵を飲み込む姿となって。
光の竜が通り過ぎた後には、巨大な抉り取られた筒状の穴がどこまでも伸びきりはてが見えず、立っていたバーンの姿も見当たらなかった。
今宵ここまで
門番が主を守るのは当然ですが、その味方である門番を駒に使う事を理解できない主人公はバーンに何故と聞いたのです。
戦の概念を頭で理解していても、心が納得しない結果です。
バーンに対して敬愛の念を捨てられなかったハドラーの前ではありますが、主人公は守りたい者の為にハドラーにどれ程恨まれても敵を討つ事を躊躇いません。
またこの作品の大魔王達は原作にはない厚い情を持ち合わせ、だからこそのハドラーの言葉に揺れてしまったのです。
ドルオーラが二人の体に与える影響は次回書かせていただきます。
この場をお借りして、ダイと主人公の紋章が共鳴できるのであれば合体技があってもいいのではというアイディアを頂き!今日漸くお披露目出来ました!!
アイディアを下さった¥¥様!本当にありがとうございました!!