勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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彼と仲間の実力の彼我の差は・・・


選定?剪定・・・

ドルオーラの体内に返ってくる衝撃は暗黒闘気に近い!

 

その事を身をもって知っているバランは即座に子供達を抱き抱える。

技を放った直後のダイとティファは、己達の技の結末を見届ける為に互いに倒れそうになる体を支え合い、苦しそうな息をつめながら見据える。

 

バーンがいない・・・気配が完全に・・・

 

バーンの姿が無い事を確認して緊張の糸が切れ、クラリと倒れかける子供達を、バランはしっかりと胸に抱きこむ。

 

「二人共・・・・なんという無茶を・・・」

 

如何に肉体が他よりも強靭であるからと言えど!まだ成長しきっていない子供の体でドルオーラを撃つなど!!下手をすれば肉体崩壊が起きても不思議では無いのに!!!

 

だからこそ歴代の竜の騎士の紋章と記憶の継承は肉体が出来上がる成人の時。

だが二人は歴代の竜の騎士の定めと理から外れて生まれて来た奇跡のような子達・・・その事が二人をこれほどまでに過酷な道を歩かせているのもまた事実!

 

しかし・・・これで・・・

 

 

「っこほ・・・・イルル~。ダイ兄・・・・これ・・・飲んで・・・」

「肉体回復・・・うん・・・」

 

コクリ

 

バランの心配と、大魔王バーンが消えた安堵を他所に、ティファは肉体回復の万能薬を即座に兄に飲ませながら自分も飲み干し、直ぐに父の胸元から出るように立ち上がり、-何か-を警戒する様に前方を見据える。

 

 

その瞳は、バランと代わってキルを相手に魔法を駆使ししマァムとタッグを組んで戦っているポップ達の方ではなく、光の闘気で師を討たんとしているヒュンケル達ではなく、穿たれ巨大な穴が開いた通路の方を。

 

 

いやな予感しかしない・・・

 

バーンの姿が見えないのに、心が震えるのが止められない・・・・これは怖れだ・・

未だかつてこんな恐れを抱いた相手は、ハドラー相手でもなかった。近距離からの完全に決まったかに見えたドルオーラを撃った後だというのに・・

 

 

「ティファよ、後はキルバーンとミストバーンのみ。二人の事は私達に任せて・・・」

「父さん。」

 

バランが警戒を解かず、体の衝撃に参っても休もうとしない娘を案じて言葉を掛けようとしたが遮られる。

 

「バーンが消えた・・・・・ならどうしてキルバーンとミストバーンは-普通-に戦っているの?」

「・・・・なに?」

 

キルは大釜で、ミストは暗黒闘気の糸で、それぞれ戦う事をやめてはいない。

 

「ミストにとっては、誰よりも何よりも敬愛し・・・違う・・・・自分の命よりも大切な主を喪ったのなら・・・」

 

            

          「あらら~ばれちゃってますよバーン様」

 

 

ティファの言わんとした言葉は、キルのおどけた言葉で遮られる。

 

 

「演技しないといけなかったかね~ミスト。少し飽きたからいい加減に遊ぶのやめるよ魔法使い君に武闘家さん♪」」

「・・・・・下らん。」

 

 

ゴオウ!!!

 

それは一瞬の出来事。キルのおどけた言葉とミストのうんざりとした言葉の直後、広間全体が魔界のマグマが噴出しダイ達に襲いかかる。

 

キルトラップの発動

 

 

この広間にもキルはトラップを仕込んでいた。それこそ剣戟の類から炎・マグマの類まで。

そればまではハドラーの事を慮って使用しなかったが、バーンを攻撃されても止めなかったという事はそういう事だろうと判断を下した死神は、容赦なく敵に大鎌を振り下ろす!

 

 

・・・・・これは地面から出てんのかよ!なら!!ヒャダルコ!!!

 

マグマが噴出したとはいえ、キルもミストや主の事も考えて対応している。それは相手にも避けられるタイムラグが多少生じるが、マグマを凍らせても直ぐに溶け、上空に昇ればそこを別トラップが発動する。

 

十重八重に二十重に敷かれたトラップは、これで必殺になる。

魔法使いがヒャダルコで凍らせても直ぐに溶けるので意味は無く、大鎌を振って仕留めに行こうとするのをマァムに止められても大した事にはなるまいと。

 

だが、一行の魔法使い、マトリフをして天才と評されているポップの名は伊達では無かった。

ヒャダルコで地面を凍らせ、素早く-地に深く埋め込まれているであろうトラップの仕掛け-を・・・

 

 

「全員避けろよ!!お前達はこのまま俺の後ろに居ろハドラー!メドローア!!!!」

 

 

味方が自分の号令と同時にティファはマァムを空飛ぶ靴で、ダイはヒュンケルを、バランはクロコダインをトベルーラで高く飛んだのを確認し、ハドラーとヒム達を背に庇い極大消滅呪文で地面を抉りトラップを消滅せしめ、のみならずメドローアを避けなければならず上空のトラップを発動させようとしたキルの邪魔をして見せた。

 

マトリフに教わった通りのメドローアならば味方も敵も全滅であった。

今ポップが放ったメドローアは、極大消滅呪文とは程遠い威力、ヒャダインでは無くヒャダルコを、メラゾーマではなくメラミと、どちらも上級呪文ではなく中級のそれも出力を最低限にした、いわば小型のメドローア。

 

その威力は本当のメドローアと比べれて数分の一にも満たず、それでも敵のトラップを地面諸共消滅させるのには程よく、呪文で消滅した地面も辛うじて残っている範囲でとどまった。

 

メドローアを授かってからずっと考えていた。局地戦において、味方が周りに居ても使い勝手のいい呪文に昇華出来ないかと。

当たれば確かにでかい、だが当たらず味方の方にマホカンタ系で弾かれたら?それが怖ろしくて使えないのでは意味がない。

 

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ポップが一番に師から教わった言葉を幾度反芻しても空恐ろしさが消えなかった。

この呪文は兎に角魔力を食う。それを跳ね返された後に2発も放ってはコストがかかりすぎる。

いざという時の切り札にしかならない呪文に、-とある所のポップーならば満足していたであろうが、今のポップには不満が残った。

 

強力であっても仲間にも自分にもリスクが低い呪文に出来ないかと。あれこれ考え頭を悩ましているある時突然閃いた。

 

そうだ!準備する魔法を弱くしてみれば!!

 

善は急げと、とりあえずヒャドとメラを同量の魔法量で発生させ合わせて撃ってみれば成功だった!!

 

地面を抉りながらも消滅はさせず、だが初級魔法を組み合わせた威力とはとても思えない威力になっている!!

 

以来ポップはマトリフにも内緒でこの技をひたすらに磨いた。マトリフにはやはり習得には時間がかかると言いながら、その実様々な魔法量で初級・中級を試し、どのくらいの魔法量でどれほどの威力になるのかを徹底的に身に覚えさせ・・・

 

「へへ、マグマ消しちまったぜ疫病神さんよ。」

「・・・・・僕は死神だよ。間違えるだなんて失礼な坊やだね~魔法使い君。」

 

大仕掛けを消滅させても不敵に笑み一つ浮かべて慢心した様子の無いポップを、キルは忌々しげに見つめる。

 

この子供は、勇者君とお嬢ちゃんに並んで厄介な者だ。

今まではこの二人にばかり目が行きがちであったが、確実にこの場で消さなければらない。

 

 

敵の戦力を見定める選定は終わった

 

 

「いい加減に高みの見物しないで御出座し願いますよバーン様。」

 

詠うようなキルの言葉に、ミスト以外の広間にいる全員が慄然とする。

 

 

果たしてその言葉と共に上空の空間が歪み、安全になった地面に降り立ったダイ達を見据え、杖の様な光る刃の武器を持った大魔王バーンの姿があった。

 

衣服に傷は無く、表面上は傷一つないかの様な泰然とした姿にダイ達は恐怖した。

あの至近距離からのドルオーラですら傷を付けられないのかと。

バランに至っては、魔界のヴェルザーとの死闘において、幾度となく窮地を救ってくれた必殺の技が破られた衝撃は大きくくじけかけたその時

 

 

「成る程、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()には貴方を削れましたか。」

 

誰もが実力の彼我の差に絶望しかけたその時、一筋の道を作らんとする声が奔った。

 

ティファは大魔王の表面には騙されなかった。

 

ここに来た時は素手で現れた。だが今は違う。キルの言葉の通りなら、自分達の戦力を見定める為に待機し、光魔の杖を発動させての出現は、バーンから余裕が無くなったと見るべきだと。

それが幸か不幸かわからないが・・・

 

実際にバーンはドルオーラから身を守る為に、前方に衝撃を殺す為のマヒャドを展開しつつリリルーラで死の大地のもう一つの玉座、太陽の間へと飛んで事なきを得られた。

 

魔力の3分の1は不発にさせられたが黒の核晶を遠隔操作させる時に、そこからまた四分の一ほど削られてしまった。

 

キルよ、構わぬから広間諸共そ奴らをマグマの餌食にせよ

 

畏まりましたバーン様、ご無事で何よりです♪

 

ミストとキルにはリリルーラ直後に念話で無事を伝えながら指示を出した。

勇者一行の、今まで何かに妨害され見られなかった真価を見定めるべく!

 

「さ~て、第二ラウンドの開幕だ~。」




今宵ここまで・・・・

メドローアのアレンジいかがでしたでしょうか?
そんな使い方は不可能だと思う方もいるかと思われますが、単行本で読んだ時から筆者は威力弱められるのではないかとずっと考えていたので、キルトラップの消滅に一役買っていただきました。

またヒャダルコも、広間全体ではなくとりあえず味方に被害が行かない狭い範囲でのしようとなっていますが、物語の進行をだらだらと書きたくは無かったのでこちらで書かせていただきます。
このアイディアは、地底魔城後の死火山が某ヤンキー(フレイザード)のせいで噴火した時、ポップが未熟なヒャダルコであってもわずかな時間を稼いだことから着想を得たので、あまり無理筋ではないと思うのですがいかがでしょう。

一行も特訓や死闘の果てに、戦略・戦術を受け持つ魔法使いの号令で動けるほどの練度になりましたが、この後の戦いは果たして・・・
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