死神の言葉で、文字通り地獄の蓋が開かれた
バーンが何気なく振るった光魔の杖から、数え切れないほどの光る球体が発生しダイ達に襲い掛かる。それも杖が振るわれるのは一度だけではなく、二度三度、それも横一閃だけではなく上方にも、気が付けば前方の縦横全てから。
それはバーンが自らの魔力を、光魔の杖を介して闘気の剣の様に高密度にし硬化した物質。
闘気量の少なさを、なんと魔力を代用にして攻撃できるまでに昇華させた球体。
ほぼ全方向からの高密度の攻撃にダイ達は回避するも、数の多さにいつしか蹂躙されて行く。
一つ当たれば凄まじい衝撃で息が出来ず、止まった体を貪り食らわんとする兇悪な怪物の群れの如く襲いかかる。まるで球体に意思があるかの如く。
ポップとマァムは一撃で壁に叩き込まれたがた為にそれ以上の攻撃は来なかったが、クロコダインとヒュンケルは抵抗した分だけ、それが悪いと断罪されたが如く打ちのめされる。
ダイだけが光の球体を竜闘気全開にして弾き返し、バーン達の方向に球体が返され、球体後の追撃戦をしようとしたキルとミストの二人の態勢が崩れる。
波状攻撃と辛くも追撃は無くなり、攻撃がやむと同時に地面に倒れ伏した二人の下に駆け付け背に庇い剣を構える。
ハドラーは親衛騎団達が庇い、オリハルコンの盾となってくれたおかげで無傷だが、その直後にミストが霧状となりハドラー達を囲んだ。
やべぇ!!!
勘が働いたと言おうか、霧に閉ざされる前にヒムは手荒ではあるがハドラーをダイ達の下へと投げつけた!
「ヒム!!なにを・・」
「ティファ!言えた義理じゃねぇがハドラー様を・・・」
「闘魔滅砕陣!!!!・・・・・勘の良い奴め・・・」
ハドラー諸共一網打尽としようとしたミストはヒムの勘の良さに忌々しげに舌打ちするが、これで万が一にも親衛騎団達が主に牙を向けられなくなった。
今のハドラーも、ティファ同様に戦える身ではないのが一目瞭然。
戦力削ぎには確実に成功している。
気が付けばダイと、娘を腕に抱き全てを避け切ったバランとその腕の中で守られていたティファ以外が倒れ伏し呻き声を上げるか囚われの身となった。
幸運にも一撃しか喰らわずに済んだポップとマァムはすぐさま動き、当たった個所を手で押さえながら直ぐにダイと合流し、マァムが素早くクロコダインとヒュンケルに
打撃用の万能薬を口に流し込みベホイミをかざす。
嘘だろう・・・・たったの一撃でこれだなんて・・・・
ポップの脳裏にはロン・ベルクの言葉が蘇る。
俺が大魔王に作った光魔の杖は-駄作-だが、それは俺の感想であって使い手があの大魔王だとダイの剣以上の力を発揮する代物だ。
使用者の魔力を吸って発生する剣、それが光魔の杖。理力の杖と違い、使用者によってはそれ以下の武器にもなるが、魔力が自分から見ても桁違いの大魔王が使用すれば危険な代物になると・・・・・忠告を受けていただけに、あの杖を見た時から警戒していたのが無意味のように蹂躙された!
「・・・ッウ、世話をかけたなマァム。」
「大丈夫だ、心配をかけたな・・・」
「起きれたかよヒュンケル、おっさん・・・・・あの大魔王さんの武器ってとんでもんでもねぇわ・・」
たった一度の波状攻撃で、幾多の死闘を乗り越えてきた自負がある自分達を此処迄ずたずたにしやがったよ。
悔しげに言葉を滲ませるポップだが、その瞳は死んではいない。こんな序盤で負けた気でいるわけにはいかないのだと。
その思いに応える様に、ヒュンケルは剣を、クロコダインもアックスを構えバーンを見据える。
彼我の差があろうとも諦めるつもりは毛頭ない!
バラン息子の下に降り立ちマァムをティファに預ける。地面で休ませたいが、其れではいつ死神に攫われるか分かったものでは無い!
バーンが・・・これ程の強さであったとは・・・
あの攻撃は技でも何でもない、ただ己の魔力を開放した波状攻撃に過ぎないとバランは見ている。
それだけであの威力!・・・・・この姿では勝てぬ・・・・
「ティファ・・・・・すまん・・・」
バランの目を見たティファは、父がこれから何をするのか分かってしまった。駄目だ!自分は・・・
「とう!!」
ラリホーマ
ティファが止める言葉を言う前に、バランは娘を寝かせる。
「あぁ・・・いや・・・・いや!私も・・・・ティファも・・・た・・た・・う」
優しく娘の額に指をかざし睡眠呪文を掛ければ、ティファは眠りに抗いおうと必死に手を自分に伸ばしてくる。
「おいて・・・・いか・・・」
その言葉を最後に、ティファの腕がするりと下に落ちる。
赤子の頃は自分が抱けば泣いていた息子と違い、自分の腕の中が安らぎの場だと言ってくれるように笑いながら眠りについてくれた愛しい娘の、泣く寝顔に胸が痛む。それでも
許してくれティファ、お前の今の体では戦えぬのだ・・・・
自分が知らない高度な術で黒の核晶と、もしかしたらバーンの秘密を背負った肉体を消した時から弱っていたティファは、ダイと共にドルオーラを放ってしまった。
大半はどうやら息子が自分の闘気を使い、ダメージも引き受けたようだが全部と言う訳に行くはずが無い。
僅かであってもかなりな負担になるのがドルオーラ。そのダメージを回復させるためには安静にさせなければならない。
だがティファが、黙って一行の戦いを見ているだけでいられるはずが無い!きっと傷ついた体でも動ける範囲で戦おうとしようとするのが目に見えている。
優しい娘、それ故に自分の肉体など顧みず躊躇いも無く動いてしまう。
それを防ぐと共、睡眠呪文をかけたもう一つの理由、それが
「おおおおおおお!!!!!」
バリバリ!!!
バランは左目のモノクルを左手で外した直後雷をその身に受け、肉体が変貌していく。傷ついた掌から滴る血の色が、人間の赤から魔族の青へと変わった時、肉体は変貌を遂げていた。竜の騎士の最終戦闘形態・竜魔人へと。
この肉体を、ティファに見せたくは無かった!
自分と戦ったあの時、自分のみならずティファはガルダンディーとボラホーンと戦い、そしてその手で死なせてしまった事を思い出さずにはいられまい。
竜騎衆が蘇ったとはいえ、古傷が消える事がないのは自分が一番知っている。
己とても、二人の子に迎えられた今でも妻を喪った時のあの痛みを、大罪を犯した罪悪感が消える事は終生ないのだから・・・
本当ならば・・・
「ディーノよ、不快だと思うが済まない。」
ディーノにも見られたくは無かった!!
「だが、バーンに勝つには・・・」
「分かっているよ父さん。ティファには休んでてもらおう。マァム、ベほちゃん、ティファ頼んだよ!!行こう父さん!!!」
「ああ!行くぞディーノ!!!」
「ハドラー、悪いがここにいてくれ。ヒム達の思い無駄にしたかねぇんだ。」
「しかし・・・・」
「・・・・それにティファ守る為にも俺達も動けねぇんだよ・・・・おいでなすったか!!」
「海波斬!!」
バーンはダイとバランを迎え撃つべく、ミストは親衛騎団達を捉えてここに来るのは・・・
「お前が行くのは地獄だろうがよ疫病神!!!ギラ!!」
「死神だって何度言えば覚えるのさ、頭の悪い子だね魔法使い君は!」
ティファを捕らえ、出来ればハドラーの首を自分の手で堕とすべく大鎌を振り上げ投げながら迫る死神を、ヒュンケルの海波斬とその威力を殺さないようにしながらサポートとして放たれた収束して撃たれるギラの連発で迎え撃つ。
それら全てを空中で優雅に躱しながら迫るキルの前に立ち塞がったクロコダインが、腕力に極限の力を込めたアックスの一撃をキルに振り下ろす。
「渡さん・・・・我らの光を貴様などには!!!」
キルの赤黒い瞳を見据え、死神の何もかもを潰さんとするクロコダインの力と言葉を、苦も無く受けるキルは歌うように拒否する。
「渡してもらうよ獣王君♪」
光を喪えば生き物は滅ぶしかなくなるのだから
今宵ここまで
・・・・・戦闘シーンは本当に難しい・・・
光魔の杖の波状攻撃で制圧してみせたバーンですが、ダイが球体を自分達に弾き返した事で追撃戦が出来ませんでしたが、以前一行の窮地は変わらず、ヒム達も早々に捕まりました。
次回は大魔王バーン・キル対一行となります。