ガガガがガガガッ!!!!
眠りの底にいるティファにも届くほどの轟音がすぐ側迄迫っている。
それは何もかもを喰らい踏みつぶし進む無慈悲な壁が迫る音。
・・・・・・なんの音だろう?何か途轍もなく硬い何かを掘削機で掘っている様なそんな途轍もない音なんて、この世界に生まれてから一度も聞いた事ない。
・・・・・・音が迫ってる、なのに眠い・・・・・起きたい・・・・・起きないといけないのに何かが私の邪魔をする!
私の大切な人達を傷つけるかもしれない音等消さないといけないのにっ!!!邪魔をするな!!!
私の邪魔は許さない!!!たとえそれが何であってもだ!!!!消え失せろ!
おおっ!!!!
それは突然目覚めた。
迫りくる壁の前で呆然としてしまったマァムの腕の中で精神世界で自分に絡みつき眠らせ続けんとするラリホーマの力を引き千切りぱちりと目を覚ます。
驚くダイ達を尻目に睡眠呪文の威力を吹き飛ばし、ティファは完全に目を覚ました。
少し前にダイ達はバーンを相手に、ヒュンケルはキルを相手に苦戦していたが、それでも一進一退の攻防に膠着し、互いに決め手がない戦いへと突入した。
キルがヒュンケルを感情から崩そうとしても、その実力が崩れた所をカバーしてしまい揮いし大鎌をとうとう破壊され、空間からの突如の罠も多少のダメージを喰らってもギリギリで致命傷を回避し、少しずつ自分の動きに目が付いてきたようで動きが格段に良くなり辟易とし始めた。
武の天才児の二つ名は伊達では無かったんだね~・・・厄介な。
早くヒュンケルを倒してティファを手に入れたいのだが、立ちはだかるヒュンケルが邪魔になり始めた。
バーンの方も魔力の桁が周囲の者達よりも底なしに近い程違うとはいえ、いずれは限界を迎える。
黒の核晶の起動、ドルオーラを防ぐ為にもう半分方使っている。ここいらで幕引きを図りたいと、キルに念話を飛ばす。
-壁-で一気に押し潰す。其方は好きにせよ
たった二言三言の素っ気ない指示とも命令とも呼べないバーンの物言いに苦笑しながらも、キルは壁が放たれるのを喜んだ。
あれは何もかもを押し潰す-災厄の壁-
あれから逃げきるのは至難の業で、仮に壁を崩す為に伝う地面を破壊しようとするのを自分が即座に阻止すればいい。
壁がマァムに迫った直後、邪魔だがティファ諸共に亜空間に落とす。出現した直後にマァムの首を切り落としてティファを手に入れれば済む話だ。
ダイとバランを何度目かの払い攻撃の後、バーンは光球体を生み出すよりも更に大きく後ろに光魔の杖振りかぶり、バランはその姿に背筋がぞくっとしたものが奔り、ダイもカタカタと震えはじめた・・・・・・あの動きを!あそこで止めなければいけない!!!
「やめろぉぉぉぉ!!!!」
ライデイン!!!
何かなんてわからない!それでも今までにない何か途轍もない物が自分達に襲ってこようとしている!!
あれは!放たれてはいけないものだ!!!!
怖れが上回ったダイは、無闇にバーンへとライデインストラッシュを放とうとした。
止めなければいけない
ただひたすらその事のみを考えて。だが、冷静にバーンに向かって行ったとしても、例え父バランと同時攻撃をしても結果は変わる事は無かった。
-厄災の壁-カラミティウォールが放たれたのだから。
壁は放たれたライデインストラッシュを受けながらも飲み込み前進し続ける。
それは何もかもを砕きながら徐々に前へと進む。その威力はすさまじく、オリハルコンですら容易に砕くが半面移動速度ははさして早くはない。
だからと言って逃れる術はない!四方は壁で、出口方面からの攻撃にポップ達は追い込まれ、まさにカラミティウォールに閉じ込められ死を待つ袋のネズミと化してしまった!
「チックショウが!!!」
どうする?メドローアで消滅させるか・・・・・だがそれをすれば相手は大魔王!マホカンタ系の仕込みくらいはしていようし、跳ね返されれば結局は全滅するだけ・・・・・どうする!どうすれば!!
「全員伏せよ!!!!」
「父さん⁉!
「ディーノ!!お前は妹とマァム達を衝撃から守れ!!」
バランは両手をがっちりと合わせ、目の前まで迫っている壁に向け構える。
その動きと指示にダイは父の言った事を実行すべく、壁に激突したままのクロコダインを回収し、いつの間にかキルが消えたので壁にどう立ち向かうか対処しようとしているヒュンケルとポップも抱え、マァムとハドラーを起点に全員を伏せさせる!
「全開!!竜闘気!!!!」
ダイの防御陣の展開を見届けたバランは、ギリギリまで壁を引き付けドルオーラを放つ寸前に、カラミティウォールの音にも負けない声が聞こえぎょっとした。
「ティファ!!!どうして・・・」
息子の狼狽える声で何が起きたのか分かった。
あの子が目覚めた⁉だが、自分がやる事は変わらない!!ドルオーラで・・・・
「ラド=エイワ―ズ」
ドルオーラが放たれんとしたまさにその時、微かに聞こえるバーンの声がバランの耳に届くと同時に、厄災の壁よりも怖ろしい物がバランの目の前に出現し、視界に映った直後バランは瞬間硬直してしまった。
「-それ-に向けてドルオーラ撃って父さん!!!!」
目覚めたティファは、瞬時にマァムの腕から飛び出し兄の張った竜闘気の防御幕から身を踊り出し、動きの止まってしまった父に怒鳴り声で指示を出す。
あれは!アレは存在してはいけないものだ!!!
かつてザムザから見せられた超小型の黒の核晶に、バランもティファも怖気震えたが、ティファはどう対処すべきか瞬時に弾き出し、バランもまた同じ考えに至り黒の核晶諸共壁を破壊すべくドルオーラを全力で放った!
ヒュッ・・・・ドッッゴオオオオオオンン!!!!
ドルオーラと黒の核晶の爆発は、余りにも威力が強く瞬間周囲の空気を全て吸い上げ真空状態になり、その直後途轍もない規模の大爆発を起こした。
それは何もかもを消さんとするかのような大爆発であり、ダイが全員を地面に伏せさせ竜闘気の防御をしていなければ間違いなく巻き込まれ瀕死か重症になっていたのは間違いないほどの威力であった。
バーン達もミストは陣を維持したまま密度を極力薄くした事で回避し、キルはバーンの張った結界の中に入ってやり過ごす。
ティファも雪白の中に残っていた僅かな闘気を防御に回して瀕死は免れたがある程度のダメージを負ってしまった。
だが!そんな事は関係ない!!!
「父さん!!!」
ドルオーラで相殺できたとしても零距離からの破壊衝撃に、竜魔人化したとはいえバランが無事で済むはずが無く、肉体がボロボロになりぐらりと空中から落ちてくる父を両手で広げようとして受け止めに落下地点に走った。
この戦いで軽傷で済んだヒュンケルも、今動かずに何とすると傷ついた己の体を叱咤して走り、ティファが受け止める前にバランを空中で受け止める事に成功し直ぐに担ぎ、地面に降りると同時にティファも小脇に抱えダイの下へと戻り、二人を降ろして瞬時に剣を構える。
誰が傷つこうとも、大魔王が攻撃の手を休めるはずが無い!警戒を怠れば即座に二の矢三の矢が放たれてしまう!!
それを防ぐのには仲間が傷ついた事は胸の中で嘆いても、攻められてきても容易にはいかないと構えなければならない!!
「ダイ・・・・」
「分かってる・・・・・父さんはティファが・・・だから・・・」
ボロボロになった父に縋りつきたい思いを殺し、ダイは目の前の敵を見据える。
妹は戦いもさることながら人を癒す術に長けている!心の悲しみから現実的な傷迄、これまで癒せなかったものは無かった!!そのティファが目覚めている。
ティファがいればなんとか・・・・・
「父さん御免!!!!!」
だからこそ、妹を信頼していたからこそ次に起きた事への衝撃は凄まじかった。
ティファのこれまで聞いた事もない悲痛な声に振りむいたダイが見た物は、マァムに支えられている父の右腕を肘から少し上の部分を雪白で斬り飛ばした光景だった。
それにとどまらず妹はすぐさま斬った右腕の傷口に噛みつき、青い血が顔につくのも構わずに-細い何か-を口に咥え伸ばし、いつの間にか手にしていた糸で細い何かを縛り上げると同時に、傷口に斬撃用の万能薬を振りかけ叫び上げた。
「ベほちゃんベホイミ!!!!!」
それは泣く代わりに叫ばれた言葉。
どうして・・・・・ティファは父さんの腕を・・・・・
・・・・これは・・・・もうどうしようもない・・・・
ダイの悲痛な心は、そのままティファにも当て嵌まる。
ヒュンケルに降ろされた直後父を見れば、体全体が火傷に侵され、特に腕の・・・・・右腕の方は完全に焼き潰れていた。
これでは傷口から細菌が入って壊死してしまう!
如何に竜の騎士が頑強であっても、あの秘密部屋の十間日で嫌というほど自分は知ってしまった。竜の騎士とても病になる事を。
肉体がいかに頑強であっても細菌が強ければ死んでしまう!-死んでしまった箇所-が、他の箇所を殺してしまう前に!!
マァム達が止める間もなく、躊躇う事無くティファは雪白をふるい上げた。
「父さん御免!!!」
雪白で父の右腕を肘から上で斬り落とし、腕を通っている大動脈をすぐさま歯で噛むことで多量出血を止め出血死を防ぎ、髪の毛ですぐさま式能力で糸を作って大動脈を縛り上げ、斬撃用の万能薬を振りかけすぐさまベほちゃんに表面の傷にベホイミをかけて貰った。
斬撃用の万能薬、火傷用どちらも破傷風菌を殺せる強力な殺菌効果を持つ薬草が入っている。表面を治しても破傷風で内部から死んでしまわないように・・・・・助けるにはこれしか方法がなかった!!
「・・・・・父さんの腕・・・」
せめて父の腕を弔ってあげたくて探すティファを、マァムが瞬時にバランを床に下ろし、胸に抱きしめ視界を防いだ。
「見ちゃダメティファ!!!」
「メラミ!!!」
ゴォウ!!!
ティファに斬り飛ばされ、どさりとダイ達とバーン達の超で真ん中に落ちた腕を見せまいとマァムはティファを抱きしめ、ポップがすぐさま燃やし尽くす。
ティファが見なくて済む様に・・・・いかに父の命を救うためとはいえ、心優しいティファがその事に耐えられるはずが無い!!
「・・・・・ティファ・・・・・お前はなぜ・・・・」
自分が傷つくのも顧みず他を助けようとすると、見ている事しかできない己の不甲斐無さを責めているハドラーすらが嘆き、見ていたヒム達もやりきれない思いが胸を占めた。
ボロボロになりながらも、それでも命を救わんとするティファに
妹と父のその姿を見たダイの中で-何か-が切れた
今宵ここまで