ゆるさない
ベほのベホイミである程度回復したバランは薄っすらと目を開け、それに気が付いたティファは父に縋りつき咽び泣く。
「めんなさい・・・ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」
何度も何度も自分に取り縋り謝るティファに、意識がまだ半分朦朧としたバランは状況が分からなくとも、取り合えず愛娘の頭を撫でようと右手を持ち上げようとしたが・・・・
「・・・どう・・しても、父さんの右腕治せなくて・・・・ティファが・・・」
「そうか・・・・お前は何処も怪我はしていないか?」
戦士として生きて来たバランは、娘の短い言葉の中で己の腕がどうなったのかを悟り、それ以上言わなくてもいいように優しく笑いかける。
大逆を侵し、償う道すら分からない自分が生きているだけで何の文句があろうか。
ティファが無事なればディーノも無事の筈。腕一つで子等を守れたこと以上に喜ぶべきことがあろうか。
「・・・ない・・・・無いよ、だって、父さんが守ってくれたんだもん・・・」
グシグシと泣き、腕で滅茶苦茶に目をこする娘にバランは苦笑する。
「目が傷つくぞティファ。それよりもディーノはどうした?無事なればまだ戦いは・・・」
「・・・・・・俺が起こそう。」
「ハドラー・・・・お願い・・・・私の力ももうほとんどないので・・・」
娘の無事を知ったバランは次に気になった戦局を聞けば、まだ戦えないが動く事が可能になったハドラーがバランを抱え起こす。
「・・・・・貴様の子は・・いや、子等はとんでもない者達だ。」
以前ハドラーはバランの娘はとんでもない娘に育っていると評したが撤回した。ダイも十分とんでもなかった!!
ハドラーに抱え起こされるという不思議な状況にバランは少し狼狽するが、目の前で繰り広げられている戦いを目の当たりにして困惑など吹き飛んだ!!!
「ハァァァァ!!!!」
「クッ・・・・・」
息子が一人で大魔王バーンと一騎打ちをしていた!!
其れもどうやら息子の猛攻に、バーンが押される形で・・・
滅ぼし尽くしたい!!!
今ダイの剣で猛攻しているダイの頭を占めている感情はたった一つ。目の前のこの敵を打ち砕き滅ぼし尽くすのみ。
目には少し前まで宿る気配すらなかった殺気が宿り、その瞳は竜魔人化したバラン、あるいは雪白を全開にして戦った時のティファと同じ、戦士でありながら獣性を宿した獣の目。
元来ダイはティファ以上に優しい少年であった。自然を愛し、仲間を愛し、ティファと違い広い世界ではなく身近な家族を大切にする子。父バランよりも、母ソアラの穏やかな優しい気質を継いだのはダイの方であった。
だがそのダイが、魂の底で眠っていた獣性を呼び覚まされた。父と妹のあの凄惨な姿に、優しさを忘れる程の怒りに震えて。
「アァァァ!!!」
それはバーンの波状攻撃と同じで技と呼べる攻撃ではなく、ただ力の限り剣をふるい、我武者羅に光魔の杖に打ち込んでくる単調攻撃であった。
本来であれば、バーンも捌けない範囲の攻撃ではない。
しかしここで、先程二度使ったラド=エイワーズの消耗が効いてきた。
如何に呪文の魔力とハイ・エントの魔力が根本的に違っていたとしても、それを使ううのは同じ人物。
リャナンシーなどに比べれば消耗はさしてないが、其れでも溜し疲労と久方ぶりの実践で体の負担が思ったよりも大きいのが誤算であったが!
「調子に乗るでないわっ!!!!」
ダイが杖に執拗に攻撃するのを逆手に取り、打ち込んできたのを弾かず受け止め、左手に火炎呪文を素早く溜め込み、零距離から食らわせた技は・・・
「カイザーフェニックス!!!」
いつからか、大魔王バーンのメラゾーマはそう呼ばれるようになった。
たった一つの火炎上級呪文が必殺の域にまで高めたその偉業を讃えてか、それとも美しいその姿をさしているのか分からないが、誰とも分からずつけられたその名に恥じず、
カイザーフェニックスは使用した主の敵を嘴ににはさむ様にダイの体を包み込み、燃やし尽くさんと大爆発を起こした。
その威力は凄まじく、如何に魔法を無効化する竜闘気をもってしてもダメージを殺す事は完全に出来気ず、ダイの体は空中に無防備で放り投げられた!
「ディーノ!!」
「ダイ兄!!!!!」
「ダイ!」
動けず叫ぶことしかできないバランとティファと、護衛の為その傍らを離れることが出来ないマァムは無力感に苛まれながら叫ぶことしかできなかった。
「ダイ!!!退けキルバーン!!」
「退く訳ないでしょうがおバカな子だね~ヒュンケル君!」
片方で死神を開いてい戦っているヒュンケルは、カイザーフェニックスのダメージで上空に放り投げられた弟弟子に、もう一撃放とうとするバーンの下に駆けて呪文を阻止せんとしたが、死神が邪魔をする!
「メッラゾーマ!!!ヒュンケル!!」
ゴオオウ!!
自分にはあの火炎呪文は止められない!!しかし疫病神位は止めてやらぁ!!!
ヒュンケルの行く手を阻むものを焼き尽くさんとしたメラゾーマは、バーンほどでなくともキルにとっては十分脅威であり、回避行動をせざるを得ずヒュンケルを行かせてしまった。
・・・・・間に合わん!
バーンの下へと行くには距離があり過ぎ、着いた時にはもう遅いと判断を即座に下したヒュンケルは、走るのをやめありったけの闘気を足の筋肉に込め、上空高く飛びダイと放たれたカイザーフェニックスの間に割って入った!
この鎧ならばもつ!弟弟子を!!ダイを守ってくれよ鎧!!!
槍の魔装ではなく、剣の魔装であったのが功を奏した。
剣の魔装は本来の機能、魔法を完全に防ぐ機能が備わっているとロン・ベルクは言っていたが、想定以上の魔法を弾くのはマホカンタ系の呪文かシャハルの鏡など伝説の代物ではない限り不可能だ。
現にヒュンケルはデイン系の前で敗れ去っている。それが金属であり通電してしまうからだ。
通電の弱点があり、通常とは違いすぎる呪文などロン・ベルクとて出会うとは思わず、それ故にあらゆる魔法を無効化にすると謳っていたが現実はそううまくはいかないものであった、はずだった。
その鎧の素材はオリハルコンであり、魔界の伝説の名工とまで呼ばれるに至ったロン・ベルクが正真正銘ヒュンケルの事だけを思い渾身の力を込めて作られた鎧は、シャハルの鏡同様伝説の武装へと昇華させた。
バーンのカイザーフェニックスは、新たな敵を燃やし殺そうと体内に取り込むが燃える気配がなく
「海波斬!!!!」
数多の敵を焼き滅ぼしてきたカイザーフェニックスは、たった一つの技に斬り殺される。
斬られた炎の名残が消え尽くす前に、ヒュンケルの横を猛スピードで落下する者がいた!
「ダイ!!!」
第ニ波から守られたダイは即座に態勢を空中で立て直し、動くと分かった己の体をバーン目掛けて突進し、その威力を存分に剣に乗せる!
これで!壊れろ!!!
闘気と落下速度を存分に乗せ、威力が数倍になったダイの剣は・・・・悲鳴を上げる。
今までの様な剣に与えられ積もったダメージを考慮せず、使い潰すが如く大魔王バーンがふるいし光魔の杖相手に猛攻の連打し、如何にオリハルコン製でロン・ベルクが打った剣であっても金属疲労を起こすのは当然であった。
これが相手の武器が同等の、覇者の剣などであったならば話は違っていたかもしれないが、今相手にしているのはそれ以上の威力を放っている魔力の剣の前に・・・・
バキン・・・・・・
ダイの剣は、その刀身をまっぶたつに叩き折られた
あ・・・あぁ・・・・
折れた?俺の・・・・俺を支えてくれた剣が・・・・・大魔王には誰も勝てないって言うの?
相棒とも呼び始めた剣の無残な姿に父の敗れた姿も重なり、ダイも自分の心が折られかけたその時
武器は壊れて当たり前だよダイ兄
優しい、そして力強い妹の声が脳裏に響いた
折られても・・・・・そうだ・・そうだ・・・・・そうだよねティファッ!!!
「おぉぉぉぉ!!!!」
ズダン!!!
剣が折られ自身も地べたにへたり込もうとした体に、ダイは気力の鞭を入れ両足に力を込めたダイはそのまま流れる様に光魔の杖の柄の部分を搔い潜り、無防備なバーンの腹に渾身の拳を叩き込んだ!!
「折れてたまるもんか!!俺は折れない!何があっても!!どんなことをしてでも!俺は勝つんだ!!!!!」
ダイの剣が折れた時、使用者のダイからも心が折れかける気配を感じ取ったバーンであったが、決して油断はせず止めを刺そうと光魔の杖の剣で刺し貫こうとしたが、今生で味わった事の無い激痛に体を傾がせる。
「バーン様!!!」
「バーン様!!!!」
先程と違い今度はキルとミストがバーンを助けに走ろうとしたが、ミストはその場を離れればヒム達を解き放つことになり、無論ヒム達も即座にその事に気が付く。
「いいんだぜミストバーンさんよ、大魔王様を助けに行っても。」
「その瞬間我らはどちらに加勢するかは知れませぬがな。」
「我らが主、ハドラー様の敵を打ち倒す方に決まっているでしょう。」
「ブロ~ム!!!」
「クッ!・・・・・人形の分際で!!」
「邪魔をしないでよねヒュンケル君!」
「馬鹿が、先程貴様自身が言ったではないか!此処を退くと思うなキルバーン!!」
「この・・・・師を裏切りこちらに来てまた敵に奔った蝙蝠の分際で!!」
「なんとでもいうがいい!!」
ミストとキルは、互いの相手を忌々し気にしながらもバーンの下に駆け付けられず、ダイの猛攻は傾いでよろけるバーンを容赦なく振るわれ続けていく。
今宵ここまで・・・・
バーン様の十八番カイザーフェニックスは、一度目は絶大な威力を発揮し竜闘気を纏ったダイにダメージを負わせましたが、ヒュンケルの新たな剣の魔装の前に敗れ去りました。
これは作中にも書きましたがオリハルコン製で、作り手があのロン・ベルクなのでシャハルの鏡並みの威力を持っていても不思議はないと思うので、十八番で当ても敗れるのは順当だと思っています!(・・・・弱気に言い訳するくらいです)
原作でもダイの剣は折れましたが、筆者としてはあちらはダイと大魔王の実力差で折られたと思っていますが、こちらではダイの乱雑な戦い方で幾度も光魔の杖の剣部分と打ち合わせ、剣が受けるダメージを顧みない戦い方で金属疲労を加速させたのが要因の一つだとさせていただきました