勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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リャナンシー

これを一目見た時驚いた。魔族の自分を、其れも一般的にいる魔族とは全く違う自分を見ても、必要以上に驚かずにいた娘に。

そして向けられた言葉も・・・

 

神様?

 

可憐な唇から零れ出た言葉は、まさしく自分を指し示していた。

魔界の神である自分の正体を、知らずして図らずも言い当てた少女は、それ以上何も言わずに目の前の怪我をしたモンスター達の手当てにの続きをしだす。

まるで目の前の自分に等興味なく、重要でも何でもないと言わんばかりに。

再び自分を振り返っても特に騒ぐことなく、それどころか手を伸ばせば不思議と懐いてきた娘を昔可愛がっていた-あれ-に似ていた。

本当に古い記憶で、それとどう出会い、どうして可愛がっていたのかを今でも覚えているあれと同じ瞳を向けられて。

 

それ故に一時でも愛い者だと感じていたが、これ程の邪魔をされるとは。

 

可愛さ余って憎さ百倍というが、余にとっては万倍と言っても飽き足らぬ。

 

 

 

 

「あぁ・・・かっは!」

 

吊られた小さな体を震わせ、溢れる赤い血がバーンの顔に当たるたびに、バーンの笑みが深くなる。

左腕から伝わるティファの痛みに震える感触が、耳に聞こえる苦痛の声が心地いい。

己の悲願の邪魔を誰よりもする強者のティファを、存分に仕置きしていることが。

 

 

「どうしたティファよ、先程の元気はどこに行った?」

 

掴んでいるティファを自分に近づけ、貝のような耳に息を吹きかける様に話しかける。

 

「う・・あぁくぅ・・」

 

痛みと溢れる血で、ての口からは意味を成す言葉が出る事がないのを知っていても、愉快気に聞き続ける。

 

「そなたはハドラーの黒の核晶の事をいつどのように知った?」

「あぁ・・・い・・う・・」

「答えてくれないとは、悪い子だな其方は。」

 

それはいつかの夜に、キルがティファの心を壊すために言った言葉を再びバーンが口にする。

 

あの時のキルは、ティファの体を傷つける事は無かったが

 

グシュ!

 

「あ!ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

バーンは左手で無造作にティファの胸に爪を容赦なく突き立てる。暗黒闘気で皮膚も体内もボロボロになっているティファに対して無造作に。

 

「あぁあ!ガッハ!!!」

 

ティファがもがけばもがくほど、痛みで叫ぶ程にダイ達の心が抉られて行くのを承知で。

ティファの凄惨な姿に、耐え切れなくなったマァムが悲痛な叫びをあげる。それ以上ティファを嬲り者にされるのが耐えられない。

 

「やめて!!!ティファはもう!戦えないのに!!!!」

 

今まで様々な戦いを繰り広げ、その度にティファの何かは確実にすり減るようにボロボロになっていたが!それでも惨い目に遭っていい筈がない!

 

「やめろバーン!!戦うなら俺と戦え!!!!」

 

ヒュンケルの剣を手にしたダイが、紋章を光らせバーンに戦いを挑むが、バーンはダイに視線すら向けずに馬鹿らしいと切り捨てる。

 

「そなたの兄は実に愚かよな。己達の立場をまだ弁えていないと見える。」

 

正義感からか知れぬが、この状況で自分に物を言える立場だと思っている愚かな勇者の行いも、他の者達の行いも全て・・・

 

スゥ

パサリ

 

「すべて其方に行くというのに。」

 

ティファの束ねた豊かな黒髪を切り捨てながら優しく言い放つ。

髪と同様、ティファの首をいつでも落とせるのだと。

 

その事実にダイ達は心の底から震え上がった。あの髪が・・・・もしもティファの首であったれば・・・・・

 

ガラン

 

今の状況を今度こそ思い知らされたダイの手から剣がするりと抜け落ち、今度こそ力なく地べたにへたり込む。

 

如何なる時も折れずに前を向いてきた勇者のその姿に、ポップ達の中でも何かが折られかける。

 

 

その瞬間、広間から一切の音が消えた。

ダイ達の抵抗の声も、制止する声も全て消え果てる。

 

こうなって当然だね~、これで勇者君達も終わりか。

篩の篩の前に自分が目論んだ事を、図らずも主が代わりに策を成功させるとは。

 

キルが周りを見回せば、ダイ達どころかハドラーも親衛隊達までもが抵抗する気力を奪われている。

ティファの影響のすさまじさの弊害といったところ。希望を与える者がいなくなれば、絶望にすり替わる時の速さは普通の比ではない。

 

最早決着がついたかに見えたその時

 

 

 

・・・シン・・・・・

・・パ・・シィン

パシン・・・・パシン!!

 

 

 

始めは幽かに、だが次第に大きくなる音に、ダイは虚ろになりかける自分の顔を音のする方に向ける。

 

その目に映ったのは

 

 

 

駄目だ!抵抗をやめたら駄目だ!!

 

掴まり体の半分以上をぼろぼろにされ、母譲りだと大切に伸ばしていた髪を無残に切り捨てられながらも、戦う事を辞めず諦めていない瞳を持ち続けたままバーンの右腕を叩いているティファの姿があった。

 

諦めるもんか!()()()()()()()()()()()()はある!

 

 

「・・・・・其方は、何故抵抗する?」

「わたし・・・まもる・・・・まもるの・・・」

 

バーンでなくともダメージにもならない頑是ない子供の様な抵抗するティファに、バーンは心底呆れる。

最早決着は付き大勢は決まっているのに無駄な抵抗をするティファに。

自分に取り縋り泣いていた幼な子の分際で。

 

 

「さほどに余らと戦いたいか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()何故戦う事をやめようとしない。」

 

 

バーンの放った言葉はティファ自身は無論の事、ダイ達も弾かれるようにバーンとティファの双方を見た!

今、バーンは何と言った?余の腕の中でと・・・・それはティファがこの戦いの以前よりバーンと会っていた事に他ならない!!

隠し事が多いティファは!そんなことまでも隠していたというのか⁉

 

 

「・・・・バーン様・・・いつお嬢ちゃんと会ったのですか?お嬢ちゃんもいつバーン様に会ったんだい!」

 

あまりの事に声をなくしミストと、死神キルバーンですら驚愕する事を言ったバーンは、あの時の事を思いだす様に薄っすらと笑い、キルの問い掛けにティファが何と答えるのかを見定める。

ハイ・エントのリャナンシーの効力がまだ残っているのか。

 

「あ・・・で・・・出鱈目言うな!!!・・ガハァッ・・」

 

バーンの言葉をティファは、血を吐きながらもありったけの気力で否定する。

 

如何に隠し事が多すぎ、世に対し、仲間達に対し言えない秘密を抱えている自分でもこんな事を秘密にする道理がない!!

 

声が出るようになったとはいえ叫んだ事で更に血が溢れ激痛に襲われながらも、ティファは気丈にもバーンを見据える。

 

「わたしは・・・・あなたに会った事なんて・・・・無い!!!」

 

その答えにダイ達はティファの言葉を信じ言い知れぬ安堵を覚え、バーンもまた満足する。

 

そうか、ティファが自分と会った記憶も、()()()()()()()()()()()()()()()忘れはてたまま・・・・・よかろう、それほど知りたくば返してやろう。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()思い出すがよい。」

 

 

ポォウ

 

左手に光球体を蓄えたバーンは詠唱を始める。

 

「蔦を伸ばし宿主の下へと帰りて蘇れ、リャナンシー。」

 

さぁ、あの悲しみと痛みを宿し、再びのたうつがいいティファよ

 

そして今度こそ壊れ果て、その姿を勇者達に晒すがいい




今宵ここまで・・・・・


大魔王の名誉の為に

普段の彼は冷酷な面もありますがここまでの残虐性を向けるのは主人公が初めてであり、他に向けた事は一度もありません。
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