勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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道は険しく茨、それでも歩き切れる事を信じて


照らし出される道

守りたい

守り抜く!!

 

守らなくちゃ

守りたい者がいるんだ!!!

 

 

私の心はもう・・・

俺の心ももう・・・

 

決まっている!!!!

 

 

ダイ兄、ありがとう。私のお兄ちゃんに生まれてくれて・・・・

 

自分はいつも迷子になる。道が、やるべきことが決まっていてもいつだって途中で迷子になる。

迷子になった自分を必ず手を握って握って導いてくれる、私が一番好きな勇者様だよ。

 

 

 

痛みに、嘆きに共感し慟哭しても、ティファの心は壊れはしなかった。

 

涙にくれ、それでも兄の首にしがみつきながらゆっくりと地に足を着き、自ら立ち上がる。

きちんと自分が決めた道を歩く為に、道を指し示す為に。

 

 

「ティファ・・・大丈夫?」

「ダイ兄、皆も大丈夫だよ。にぃの言葉のおかげだよ。」

「ううん、ティファがいつも言っていた事を俺も真似しただけだよ。」

 

妹のお礼にダイは頭を掻きながら面映ゆくなる。面と向かって言われると矢張り照れ臭い。そこは年相応のやんちゃな男の子になる。

 

戦場のど真ん中であってもだ。

 

ティファが目を覚まし、いつもの状態になった、ただそれだけで一行の雰囲気ががらりと変わった。

力強く、それでいて余計な気を負っていない、厄介な強敵たちへと。

 

 

「そなたは、魔界の現状を知っても?」

「はい、私の答えは先程兄が言ったようにもう決まっていたのです。私も、この地上に住まう親しい人達を守りたいのです。」

 

バーンの問い掛けにも揺れる事無く、ティファは静かに微笑みを浮かべて答える。

その事にバーンは訝しく思う。

 

先程与えたダメージで、喋る事は出来ようが。最早立つ事は儘らない筈。仮に筋組織にダメージがなくとも、激痛が奔っている筈だが・・・・何を隠している?

 

バーンが警戒するのは正解で、ティファの体は本来ならば最早立つことする儘らない激痛に襲われている。

ハイ・エントの力が戻っていなければ。

 

ようやくガン=フレアの反動ダメージが消えた。

 

禁呪以上の最悪の攻撃方術、ガン=フレアの影響で、能力も体力も使えない程の影響がようやく消えたので、早速結界術ジ=アザーズで自分の脳細胞の電気信号の一部を遮断した。

それは痛みを脳に伝え体に知らせる生きていく上では必要な最重要機関。そこにストッパーをかけ、痛みを無視して立っている。

 

 

敗れた皮膚の上にも、千切れた血管の先にもそれ以上出血しないように細かい結界で止めている。

 

とは言えこれは一時的で根本的に直されている訳ではなくあくまで御応急処置に過ぎない。

 

結界術の威力切れになるその前に・・・

 

 

「ダイ兄、皆を守りたい?」

「・・・・ティファ?」

「守りたい?」

「・・・守りたい。」

 

バーンから視線を切らず、それでも聞いてくるティファの質問の意図が分からず戸惑うが、それでもダイはしっかりと答える。

 

「ポップ兄は?マァムさんは?ヒュンケルは?父さんは?」

「・・・俺は見捨てず守るぞ。」

「私もよ。」

「無論だ。地上を消すなど、あってはならない事だ。」

「うん、そうか・・・・ハドラー、貴方は?」

「俺⁉」

「はい。魔界で育ったあなたにとって、矢張り地上は消したいですか?」

「俺は・・・」

 

ポップ達はすぐさまこたえられる事だが、ハドラーにとって、地上とはどういう所かを改めて考えさせられる。

 

自分にとって地上は・・・

 

「俺にも、先の大戦で付いて来てくれた配下がまだいる地上を、消してしまいたいとはどうしても思えん・・・」

 

先の大戦時、邪気で洗脳したとはいえブラスのように自分に従い戦果を挙げ、共に戦場をかけた配下のモンスター達が地上にまだいくらもいる。

その者達の顔も声もまだはっきりと覚えている。

 

キギロやガンガディア、バルトスは最早いないが、それでも自分を支えてくれていた大勢の配下モンスター達を・・・

 

「そうですか。」

 

答えが出揃った

 

 

ティファの心が凪ぎ始め、首に掛けている金のリングに手を掛ける

 

デルパ

 

 

取り出したのはアバンの黒縁伊達眼鏡。何の守の効果もないマジックアイテムでもないものをこんな場面で出し、しかもするりとかけるティファは、一体何を企んでいる?

 

奇しくも今のティファの服は血塗れで、普段の空色ではなく赤く染まっている。

同じ詰襟のその姿は、先代勇者アバンと同じではないか。

 

 

アバン先生、約束を果たします。私にこの平和の芽達を守り通す力を、どうかお貸しください。

 

アバン先生がやり遂げたように

 

 

ガシャン

 

「お嬢ちゃん、この状況で何企んでいるの?」

 

ティファを様々な意味で分かっているキルは、警戒度をマックスにする。ティファが何も考えず動く事等まずありえない事も。

 

 

「守りたいだけです。私は、この子達全員を守り切る。料理人の仕事を果たす。ただ・・・それだけですよ!!!!」

 

 

ゴォウ!!!!

 

話すと同時にティファは左手を地面に一閃させれば、そこから金色の炎がミスト目掛けて奔っていく!

先程台を捕まえようとした暗黒闘気の触手を道とし、炎は瞬く間にミストを取り囲む。

 

下らん、私に魔法、其れも物理魔法など・・・

 

暗黒闘気の集合体である自分が、火炎呪文や爆裂呪文、其れこそデイン系の呪文とても密度を変えれば素通りさせることは可能だと鼻で笑おうとした矢先に、有り得ざるべきことが自分のみに起きた!!

 

「ぎ・・・・あぁぁぁぁ!!」

 

金色の炎が自分の足の部分を捕らえた瞬間、生まれ出でて数千年間、一度も感じた事がない感覚を、其れも痛みという感覚が自分を襲っている!!

 

「ミスト⁉」

「あ・・・ぐぅう・・・ああああ!!」

 

その場を離れる事は、親衛騎団達を解き放ちダイ達の戦力強化をさせてしまうことに他ならない!

だが、初めて味わう痛みに、ミストは底知れない恐怖を覚えてしまった!

 

死にたくない!!

 

その恐怖がミストをバーン達の下へと戻させた。

 

 

ティファが放ったのは聖炎。魔の、其れこそ暗黒闘気の集合体であるミストの天敵のような技を、遺憾なく放ち、ティファの動きはそれだけでと留まる事は無かった。

 

親衛騎団達がダイ達の、更に言えば主であるハドラーの元に戻ったかどうかは気にせず、ミストがバーンの下に戻ったのを食い入るように見つめ、側近くに戻った瞬間ティファは空飛ぶ靴にありったけの力を込めて天井近くまで詠唱しながら飛びあがった。

 

 

「我は守り人、守りの担い手。我が守りたき者達を守れ、ジ=アザーズ。」

 

バーンの耳に届かないように自身の口の周りに無音になる結界を張りながらの詠唱は、目論見通りバーンや他の者達の耳に届くことは無く、バーンとキル、ミストを閉じ込める結界術の構築に成功する。結界が閉じる寸前、中に聖炎を流し込みながら。

 

バーンがそれで滅びる訳がない、これは時間稼ぎだ。

 

()()()を全て終えたティファは、くるりと向きを変え全ての魔力を開放した。

 

 

「繋がりし道よ!!!」

 

ガン!

 

「此方と彼方の道を繋げ!!!」

 

 

ガン!ガッガン!!

 

「契約の名の下にティファが命じる!!」

 

 

ガガガガン!!!!!

 

 

ティファが何かを詠唱の様な言葉を発するたびに、空間を震わせながら途轍もない音が響き渡る。

 

 

何か目に見えない巨大な物同士がぶつかり合い繋がっていくように!!

 

それは-道-を繋げている音

 

「我が思い!我が言葉に従い!!運と不運の道筋を入れ替えよ!!!!」

 

逆転への道が開かれて行く音だった。

 

ティファの詠唱に応える様に道を繋ぐ音が静まり、深緑色の光を放ちながら広間を覆いつくす程の魔法陣が突如として出現した!

 

 

あれは・・・・まさか!!!

 

其の魔方陣に、バーンは見覚えがあった!

 

まさか・・・・そんなバカな!!

 

自分の考えが合っているのならば!ティファがミストと黒の核晶を消し去ったあの技は・・・・・・古代に絶え果てた秘術中の秘術、ガン=フレア・・・・馬鹿な・・・あの者が!ハイ・エントを使えるわけがない!!!如何に竜の騎士の子であろうとも!あれは・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()が使えるはずが無い!!!

 

バーンもまた、生まれ出でて初めての経験をティファにさせられた。ティファのした事と、ティファ自身の素性がまったく一致せず、出来るはずが無い事を今目の前で繰り広げているティファに思考が混乱をきたしたのだ。

 

バーンが動かずとも、キルが動こうとしたがぎしりと何かに関節が掴まれている様に身動きが取れないでいた。

ミストもまた、聖炎の炎に炙られ力を発揮できずに、ティファの企みを止めに行けずに憎々し気に見る。

 

 

ティファは、妹は一体何をしようとしているんだ?

見えないものがぶつかる轟音と、見た事もない陣にダイ達も不安になり上空でティファと合流しようとしたが、ダイ達も動けなかった!

 

これからする事を止められないようにティファはダイ達の体の一部にも結界の足止めを施している。

 

 

私がする事を、皆は決して許してくれない

 

これから自分がするのは途轍もなく罪深い事、一行全員と親しき人達全員に対しても

 

それでも、私は皆を信じてる

 

許してくれとは願わない

ただ、先程の答えを、実現してくれる力をみんなはもう持っている。

-神々や精霊王達-と進めていた計画も、道半ばだがあそこ迄であればバーンを倒した後で何とでもなる程にはしておいた積りだ。

 

最後の詠唱で魔力を込めるべく左腕を上げながら、ティファは戸惑い何かをさっ急いて泣きそうになっている兄の顔を見ながら困った笑みを浮かべて懺悔する。

 

大丈夫、ダイ兄なら道を歩き切れるよ

 

皆がいるんだから

 

 

「ラック=バイ=・・・・・・」

 

 

ヒュパ

 

 

「ティファ!!!」

 

詠唱途中で、ティファの皮膚がずたずたに斬り裂かれる。

攻撃は見えなかったのに。

 

 

・・・・早いな、流石はバーン、結界を突破したか・・・でももう遅い!!!

 

詠唱の最終段階で他の言葉を言ってしまえば、始めから空間を繋ぐ作業用の詠唱から始めなおさなければならないが、痛みの電気信号をストップしているティファは、血が噴き出た事でバーンが結界を破壊したことに驚き一瞬驚いたが声は上げていない。

 

ジ=アザーズは汎用性が広く、メリットがたくさんあるデメリットも当然高く、敗れた時、術者にダイレクトにダメージが行く。

 

それを考慮しても脳内に対する結界が功を奏した。

 

 

最後の詠唱を・・・・

 

 

だが、その決意をもってしても、ティファが声を上げかけ寸前で飲み込んだ。

自分に攻撃が来たのには驚かなかった。

 

結界を破れたのはバーンのみで、キルは出来ずにもがき、バーンも直接上空にいる自分に近づくのを警戒して、光魔の杖を投げつけて来たのだ。

それもただ投げられたのではない、恐らくバーンに残っているありったけの闘気を込めてだ。

迫る剣に今は避けられない。詠唱途中でその場を動くのは詠唱は気と同じになってしまう!

貫かれても!詠唱は・・・・そう覚悟を決めていたのに・・・・・

 

 

ガッシャン!!!!

 

その剣を身に受けたのは・・・・

 

 

「ブロック!!!!!」

「あ・・・あ・・・・か野郎!!ブロック!!!」

「そんな・・・・何故・・・・・何故ですブロック!!」

「ブロック!!!」

 

 

それはティファの結界を、-外側の鎧-を脱ぐことで脱したブロックが、露になった細い身で受け止め、吹き飛ばされながらも笑みを浮かべ・・

 

 

「みんな・・・・ハドラー様を・・・・・」

 

ジジ・・・・・・ズガァァァァンンンン!!!!

 

何処までも仲間を思う言葉であった。

 

 

ブロックどうして・・・・・・貴方の王はハドラーではないか!!なのにどうして()()()()()()を私に使ったの!!

 

本来は使用者と庇護する者の場所を完全に入れ替える技であるが、ラック=バイ=ラックの発動間際で空間術がティファ以外使えず、ならばとキャスリングの途中である外殻を脱いで飛び出し、その身でバーンの剣を受け止めた。目論見通りに。

 

この人が今やろうとしている事はきっとハドラー様達を救ってくれる。

 

守る事に徹して生まれたルークの守りに対する勘が、正しくそれを教えてくれた。

ならばその邪魔をさせない事こそが、ルークとして生まれた自分の役目ではないか・・・

 

 

 

・・・・ブロック御免・・・・そして・・・

 

 

「ラック!!!!!!」

 

ありがとう・・・・

 

 

バーンがすぐさま放った三羽のカイザーフェニックスが迫る寸前に詠唱を終えたティファの言葉に、術が発動する。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()停止は出来ない。

 

カイザーフェニックスにその身を焼かれる前に、ティファの体は真下へと落下し始めた。

 

「ダイ兄!!!!」

 

体が粒子化しはじめ戸惑う兄を呼ぶ。

 

結界はダイだけが解かれ、声の主にダイは思いっきり左手を伸ばす。妹の手をしっかりと握れるように、ティファの利き手に合わせて。

 

「ティファ!!!」

 

自分達に、何か途轍もない事が起ころうとしている!その感覚と共に、怖ろしい何かを感じている。

手を伸ばさなければいけないと!!

 

パシリと、ドルオーラの時とは違うお互い左手同士で握り合った時、紋章が再び力を最大限に引き出し、光魔の杖を再び手にし、ティファとダイを切り捨てようとしたバーンを弾き飛ばした。

 

ラド=エイワーズを使おうにも呪力が足りず、切り捨てようとしたのが仇になった。

 

偶然に出来た安全な時間にティファは幸運に感謝する。

 

これで、兄に渡せる・・・・

 

 

昔、転生してくれた者達に与えられるギフトが二つあると三神様達に言われた。

それぞれの秘められた能力や才能を跳ね上げるギフトに、ある物は底なしの魔力を、ある物は回復力が高いからと一度だけ死から蘇る体を、そして自分が願い欲したのは一つは見聞きしたものを任意で永久的に覚えておける記憶保全・・もう一つは・・・

 

 

「あぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

カァァァァァァァ!!

 

ティファの叫びと同時に、ティファの左手の甲の紋章が薄れ・・・

 

「・・・なんで・・・・」

 

驚愕するダイの左手の甲に・・・・・

 

 

「なんで!!どうしてティファの紋章が!!!!」

 

新たな紋章が光ながら浮かび上がった。

 

 

 

私の紋章を、任意でダイ兄に譲渡する事

 

父を死なせず、双龍紋を完成させる為に必要な事を願った。

ギフトの話がなければ、最悪ゴメちゃんを冒険に連れ出して心の底から願う積りであったが、

 

友達を利用しなくてよかった。

 

ダイに取ってそうであるように、知っているティファとてもゴメを一度として生きたアイテムだと思った事は無い。

 

危険な目にも、まして利用する事がなくてよかったと喜ぶ程の親友なのだゴメちゃんは。

 

 

何かを達成したように笑うティファの手を、ダイは放すまいとしたが!!

 

スゥ

 

 

消える・・・・自分の体が・・・・・

 

 

「なんだよこれは!!」

「ティファ!一体何を・・・」

「どうして・・ティファの体だけ・・・」

 

異変に戸惑い叫ぶ仲間達を見れば、体が透け始めている。ティファとバーン達は透けていないのに!!!

 

其れこそ、ハドラーや親衛騎団達も消え始めているのに!

 

 

 

「ダイ兄、皆も。大好きだよ。」

 

 

眼鏡をかけながらも、とっておきの笑みを浮かべたティファの声に応える間もなく、ダイ達は粒子と成り果て広間から姿が消えた。

 

その瞬間、広間の陣は消え果て静寂が支配する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カァァァ!!!!

 

同時刻、カールサババの砦にて、()()()()()()()()()()()()に砦の裏手に刻まれた魔法陣の前で待っているマトリフ達の眼前で、陣が深緑色に発光した。

 

しきと言っていた者が手紙となり、中に書かれていたのは確かにティファの筆跡。

内容は勇者達を逃がす筈があり、死の大地が長く鳴動することあらばすぐにそこに行き待っていて欲しい旨がしたためられていた。

 

その中にはある筈のない事柄も書かれ、信じられないながらもマトリフとノヴァの言葉で、式に指名され、その者達と共にと心を決めた者達が陣を見つけずっと待っていた。

 

 

 

カァァァン!!!

 

光が増し金属音のような音がした時、一瞬視界を奪われマトリフ達が再び目にしたのは・・・・・

 

「ダイ君!!!」

「ポップ!」

「ポップさん!!」

「マァム殿!」

「ヒュンケル!」

「クロコダインさん!!」

「「「バラン様!!!」」」

 

 

ズタボロに傷つき気絶している一行と

 

「どうしてこいつら迄・・・」

 

ハドラーと四人の金属生命体が、ダイ達の側で横たわり

 

 

 

「・・・・ティファ・・・ティファ何処!!!!」

 

ノヴァの言葉に恥からるように全員が周辺をくまなく探したが、一行の中にある筈の、否!無ければならない者、勇者一行の料理人の姿が見つかる事は無かった




今宵ここまで
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