勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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太陽が姿を消せば・・・・・


落日

暗い、どことも分からない暗い道をポップは歩いている。

道さえ見えず、歩いているのかどうかの感覚さえ定かでは無くなる暗い場所をただ一人

 

寒い・・・・

 

時折冷たい風が、体の芯まで凍らせるように吹き付ける風に、気持ち迄が凍えそうで。

 

早くティファの所に帰りてぇ

 

可愛い妹分のティファ。きっと冷たく凍えた自分を一目見た瞬間に心配しながら暖かいも毛布を掛けてくれながら、同じくらい暖かい食べ物や飲み物を作ってくれる。

どうしてそんなに冷える所に行ったのと少し怒りながら。

 

 

早くこの道を出てぇな・・・・・ティファもダイもマァムもみんなどこに・・・

 

 

 

魔界の太陽になっておくれよお嬢ちゃん

 

其方は、魔界の現状を知ってもなお?

 

可愛げのない小娘だ

 

 

・・・・なんだ?誰もいないのに声が・・・・

 

 

ポップ兄~。

ティファ!

 

三つの声が聞こえた後はまた静寂が続く中、一番会いたかった妹に会えた!!

 

ティファまでここに来ちまったんかよ。ダイ達はどうした?それに他の奴等も・・・

ポップ兄・・・覚えていないの?

・・・・何をだよ。

本当に覚えていないの?

・・・・・だから何をだよ!!!

 

覚えていないのか?俺は一体何を忘れていると言いたいんだティファは・・・・自分が何か忘れるなんて近頃は・・・・・ちか・・・ごろ・・・

 

 

父さん御免!

きゃぁぁぁぁぁ!!

戦いたくない!!!

この戦いが勧善懲悪の物語だとでも?

魔界の太陽になっておくれよお嬢ちゃん・・・

守りたいだけですよ!!!

 

 

あ!ああ・・・・・

 

ティファ!!俺は・・・・俺達は・・・・

大丈夫だよポップ兄は一人じゃない。皆で戦えばきっと困難に打ち勝てるよ

ティファ!!

皆の事が大好きだよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティファ!!!!!!」

 

はぁはぁはぁ・・・・・

 

叫びながら跳ね起きたポップは、荒い息をつきながら今見た夢を・・・・現実で起きた事を思いだし混乱する。

 

俺は・・・・・俺達はどうなっちまったんだ・・・・

 

バーンとキルとミストの攻防に翻弄され、自分達は生きているのさえ不思議な程のダメージを喰らい、バランに至っては右腕を消失し、ティファは・・・・ティファが!!!

 

「目が覚めたかポップ。」

 

もう馴染みとなっている低い濁声のする方に目を向ければ、自分と同じ場所のすぐ横にハドラーがいた!!!

 

「ハドラー!!!・・・・・ここは・・・・なんでお前迄・・・」

「知らん、俺も今しがた目が覚めたばかりだ。おっつけダイ達も覚めよう。その前に知りたくばあそこに座っているじじぃにでも聞け。」

 

途轍もなく投げやりなハドラーの言葉に周りを見渡せば、右隣にはハドラーがいたが、左にはダイが眠っていた。

同じ部屋に、マァム、ヒュンケル、クロコダインの姿も。

 

そして最後に扉近くを見れば

 

「・・・・師匠・・・・・」

「目が覚めたかポップ。」

 

いつも以上の優しい声に、ポップは悟ってしまった。

自分達は大魔王に完全に負けて、逃げ延びて偉大なる師に労わられている事を。

 

「・・・・敗けちまったんだな俺達。」

「ポップ・・・・・酷な事を言うがその通りだ。だがな、こうして生きていれば再戦の機会があるんだ。今は生きている事に感謝するべきだ。」

「うん・・・師匠、バランとティファの姿が見えねぇけど・・・」

「・・・・・バランは絶対安静だ。こことは違う場所で手当てしている。血も大分流して、今増血の薬を調合させて飲ませる所だ。」

「そうか。けど、生きてるんだ・・・・」

 

ダイとティファの父親が助かった事に、ポップは我がことの様に喜びほんわかと微笑む。

ブラスという育ての親がいたとても、矢張り肉親は特別。短い日数しか過ごしていないとはいえ、二人もバランを父親として慕っているのだから。

 

早く起きろよダイ。ティファと三人で見舞いに行ってやろうぜ。

 

ある意味自分もバランとダイとティファの血が入っているのだから、広い意味で竜の騎士の血縁に入ってもいいんじゃねぇかと思っているポップは、眠っているバランを見舞う事にした。

・・・そうするとノヴァも誘うべきか。あいつもティファの血のおかげで助かってるわけだし・・・・俺達-竜の兄妹-がいれば、大魔王との再戦にも希望はある!!

 

今回は少人数で行ったのが敗因の一つ。次はノヴァも入れて全力で当たるべきだ。

マホカンタで氷呪文を封じられても、ノヴァには竜闘気に迫れるほどの闘気剣がある。

バーン相手でなくとも疫病神とミストバーンの相手でもいい。

 

今回は、大魔王達の総力を間近で見れたのを幸いとするべきだ。

 

「師匠、ここどこなんだよ。」

「ここか?サババ砦をもっと南に入った隠し砦だ。俺達以外にも魔王軍を相手に決戦をおっぱじめようっていう連中のな。」

「い⁉・・・・・・そいつは・・」

「・・・後で会わせてやる。」

「おう!頼まぁ師匠!!そうか、俺達以外にも・・・・・ありがてぇ。次は本当に負けられねぇし、心強いな。」

「・・・・・大魔王は強かったんだな・・・」

「あぁ。けどよ!!次は絶対に勝つんだ!!」

 

 

ポップの思考が-次-の事にシフトチェンジしているのを、マトリフは暗澹たる思いで見ている。

ポップに、否!ダイ達はまだ知らない・・・・・いつ、知らせればいい・・・

 

「マトリフ!」

 

ポップの思考を中断させる程の声で、ハドラーがマトリフの名を呼ぶ。

 

その声に、ダイ達ももぞもぞと動き目覚め始めた。

 

「・・・・ここ・・・は・・・大魔王は!!」

「ティファは何処に!!」

「う・・・くぅ・・・・ここ・・は・・」

「駄目よクロコダイン!貴方の傷は深く・・・・つぅ!」

「お前さんもだよマァム。」

「マトリフおじさん!!・・・・ここはサババなの?」

「違う、ここは・・・」

「ここがどこなんてどうでもいい!!!!」

 

マァムの疑問を遮る怒声が部屋に響き渡り、シンとした。

体が重く動けないことに苛立ち、寝台の上でもどかしげに問いただす。

 

「妹は・・・ティファは何処⁉」

「ダイ・・・・」

「ティファの紋章が・・・・ティファの左手から俺の左手に移ってきたんだ!!聞いた事もない呪文唱えて・・・・・握ってた手が離れて・・・・」

「ダイ!あいつは大丈夫だよ!!今はバランと別室に・・・・・そうだよな師匠!!!」

 

ダイの疑問を、ポップが青褪めた顔で遮りマトリフに泣きそうな顔を向ける。

 

次の再戦を考えていた時の顔とは全く違う。

ポップも薄々は察していた!自分達の体が消えかけていたあの時、ティファの体だけが消えていなかった事で!

 

だが認めたくない・・・・認めてしまえばそれは・・・・・それだけは嫌だ!!

 

「きっと親父さんと一緒にいるんだよ。あんだけの大ダメージ喰らった・・・」

「もうよかろうポップ!!!!」

「何がだよハドラー!!!俺はティファの居るところを師匠に・・・」

「この砦に、ティファはいないのだなマトリフ。」

 

ポップの望む甘い考えを、厳しいハドラーの声が粉々に打ち砕く。

 

「・・・・うそ・・・そんな・・・・そんな事ない!!そうでしょうマトリフおじさん!!!」

 

痛む体を無理やり起こしたマァムは、寝台から降りマトリフの側に駆け寄る。

 

「マトリフおじさん!ティファはこの砦にいるんでしょう?・・・・どんな方法か分からないけど・・・私達と一緒に・・」

「マァム・・・」

「だってハドラーもここに居るのよ!!なのにティファがいないだなんて・・・そんなそんな事が!!!」

「あるんだよ。」

 

マトリフの服を握りしめて問いただすマァムの言葉に、ヒュンケルもクロコダインも無理やり体を起こした矢先、暗く冷たい声が降り積もる。

 

気配を消していた為気づけなかった。部屋の一番端の窓際に椅子があり、そこに悄然として座っているノヴァに。

窓から差し込む西日に照らし出されたノヴァの顔は、戦場での時のノヴァよりも怖ろしく感じさせる。

 

「・・・・・ノヴァ・・・お前今何って言った・・・」

「ティファは・・・・・ここにはいないんだよ・・・・」

 

ポップはふらりとノヴァに近づき、不意に襟首をつかんだ。

 

「どういう事だよ!!ティファが、あいつがいないってのは!!」

「言葉の通りさ!!!」

 

ノヴァもポップ同様激し、乱雑にポップの両手を払いのける。

非力で、まして体力がほぼないポップが倒れかけてもノヴァは助けず、辛うじてすぐ後ろにヒュンケルが座っている寝台があり受け止めて貰え事なきを得たが、ポップはノヴァの顔を見て絶句していた。

 

ノヴァが、唇から血が出るのも構わず噛みしめ何かの痛みに耐えている姿に驚き。

 

「・・・・君達は同時に-とある陣-から出現したんだ・・・・そこの魔軍司令官と親衛騎団達と共に・・・・・彼らが一番早く目が覚めたから父達が今情報収集をしている。

・・・・話逸れたね・・・・」

「ノヴァ・・・・陣て・・・」

「ダイ君、その事は僕にもマトリフ様にも分からない。その陣から出て来た君達全員を父達が砦全員に運んだあとにね、その陣はまだ幽かに・・・・光っていたんだよ・・・」

「!!そしたら!!!」

「でもティファは出てこなかった!!!」

 

ノヴァの言葉に、ダイ達は僅かな希望をかけたが、無情にもそれは打ち砕かれる。

 

「ティファは出てこなかったんだよ!!そのうちに陣の光も!陣も消えてしまって!!!周りをくまなく精霊達と一緒に探しても何処にもいなかったんだよ!!!」

 

待っていたのに!自分はずっと、ティファが出てくるのを待っていたのに!!!

 

 

「嘘よ・・・・ティファが!!」

「もしかしたら別の場所に!!!」

「逃げている最中かもしんねえんだろ!!!師匠!俺探しに!!!!」

「ポップ!俺も・・・・」

 

 

ガン!!!

 

 

「あの・・・・戯けが・・・・・・・」

 

 

寝台が砕ける音に、全員がハドラーを見れば!!ハドラーが涙を流していた・・・

 

マァムの様に嘘だと言わず、ダイ達の様に探しにいくそぶりも見せず、まるでそれは・・・それは!!!

 

 

「あ・・う・・うわァァァァ!!!ティファ!!!!ティファ!なんでだよ!!!なんで俺達を置いていっちまったんだよお!!!!」

 

 

崩れる様に床に膝をついたポップは、両手を床に叩き付けながら突如泣き叫び慟哭の声を上げた。

 

ポップとても観念せざるを得なかった。

 

ノヴァと師が嘘を言うはずもなく、ましてあの大ダメージでどう逃げれるというのだ!!

心の何処かで分かっていた、この砦にティファがいないと知らされてすぐに!!

動いている事自体が不思議で、奇跡的としか言いようがない大ダメージを負ったティファがどうなったのか・・・・どうなってしまったのかを!!

 

それでも認めたくは無かった!!認めてしまえば・・・・ひょっとしたらいつものようにひょっこりと現れるティファが消えてしまうと・・・・甘く馬鹿な夢が消えてしまいそうで・・・・・・認めたくなんてなかった!!!

 

「いやぁ!!ティファ!!ティファァァァァ!!!」

「アアアアア!!!ティファ!!!!」

 

マァムとダイも泣き崩れ、ヒュンケルはやり場のない怒りと渦巻く悲しみに打ち震えながら涙を流し、戦士として生死を見てきたクロコダインとても無事な右目から大粒の涙を流しながら悲しみに吠え上げる。

 

・・・・・嬢ちゃん・・・

 

崩れたダイ達を前にし、マトリフもまた崩れ落ちる様にへたり込む。

常の自分なれば、魔法使いはいついかなる時も冷静であれ、仲間が死んだとても犠牲はたった一人であり、バラン以外は勇者達全員が身体を損ねる事なく脱出でき、もしかしたらハドラー達も助けられた事を恩に着て共闘し、共に大魔王を打ち果たす戦力が揃ったと!料理人が命を賭けて守り抜いたお前達が、託された希望なのだと!!それを声高に叫び仲間を鼓舞せねばならないのに・・だのに・・心が冷え込み、軋みあげ自分の何もかもが崩れる音しか聞こえない・・・そして、違う言葉を叫び出したくてたまらない!!

 

俺みてぇな悪党爺が生き残って!!どうしてお前が逝ってしまったんだよ嬢ちゃん!!!

 

 

親衛隊達の話から、決戦で瀕死の重傷を負ったティファの話を聞いた時から軋む音がしていた。

魔界の神と呼ばれるものを相手に、誰の犠牲もなく戻る事は無いのではと危惧していたが、的中しちまっただなんて!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ティファは希望の光を、平和の芽を未来に届ける為にダイ達を逃げ延びさせた。

 

魔界の現状を知っても、それでも地上を守るというダイ達の答えを聞いて、今の一行ならば自分が居らずとも勝てると信じ、一行の料理人の任を全うすべく、一行全員を無傷は無理でも軽傷で、最終戦で最大の敵の下に送れるようにと。

 

だが料理人は一つの事を見誤っていた

見誤っていたとも言えないかもしれない。

料理人が命を賭しても守りたいと一行全員を愛したように、一行全員もまた同じ思いを料理人に向けていたのを理解していなかった。

 

自分は何処までいってもアバンの代わりだと、温かい-保護者-を演じた結果の果てに、仲間達が結束したのだと誤解して。

そして、それぞれには守り抜きたい大切な者達がいるのだから、前を向いて歩くだろうと・・

本当は、ティファ生来の優しさに魅かれ、大切な者として守り抜きたいのだと思われているとも知らずに。

ティファが保護者を演じていたのはごく一部分だけ。後は本当に一行を、周りを愛している優しい女の子なのを見続けた末に向けられた愛情なのだと、目的の為に走り続け周りをきちんと見ていなかった為に気が付かずに。

 

一行にとって、世界と同等に守りたいと思ってやまなかったティファ

 

 

そのティファが姿を消した

 

その事実を前に、ティファを愛した者達は脆くも崩れ落ちる

 

太陽がその姿を隠し、暗雲立ち込め星も月明かりもない暗い夜の帳が落ちる様に真っ暗な闇の底へと落ちていくように




今宵ここまで

物語もいよいよ最終章へと進みます。
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