勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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この回にてひとまずバラン編の終了です。
よろしくお願いします。


・・行けません・・。

「ちょっと待って子供達!!」

向かって来る子供たちに、さしもの泣いていたニーナも顔を上げて驚くほどの勢いだったので待ったを掛けたら・・

「何よ!」

「ニーナ泣かせた奴が!!」

「酷いぞ!!」

・・クレームの嵐が吹き荒れた・・。

「違うの!このお姉ちゃんんはいい人だよ!!」

泣いていたニーナちゃんが説明をしてくれて、ようやく騒ぎが収まったくれた。

「「「ごめんなさい!!」」」

「すみません!」

「早とちりしました!」・・etc.・。

分かってくれて誤解が解けると、みんなきちんと謝ってくれた。

「分かってくれたらいいよ。皆ニーナちゃんが大切なんでしょ。だからいいよね、お兄さん達も。」

巻き込まれた三人も謝罪された訳だしと水を向けてみれば「・・ふん!」

「まあ・・」

「・・・」

三人とも憮然として全く納得いってない顔してる。かど、それだけでもなさそうだ。

・・それにしてもこの子供達ほんと凄い。

「この竜かっけええ!」

「空竜初めて見た!!」

「可愛い顔してる。」

「まだ小さいね~。」

皆でルード君を囲んでしげしげと見ている。

やたらと触られてはいないけど、囲まれているルード君はオロオロとしてこっちを見て助け求めてる。

「こいつ若竜?」

「バカね角見なさいよ。まだ幼竜よ。」

「竜の年齢は鱗か歯か角見ろって父さん言ってた。」

この国の子は竜信仰お国のせいかやたらと竜に詳しんですけど・・。

「君たち~。」

「「「「なあに~」」」」

「竜好きなの?」「「「大好き!!」」」

「スライムの子もいいよな!」

「一角ウサギの仔も・・」・・他のモンスターも好きか。

・・全員デルムリン島にご招待して上げたくなってきた・・超喜びそうだ・・。

 

(・・こいつ等・・)

(どうしたら・・)

(こんな妙な子に育つんだ)

 

ティファは純粋な子供たちを愛でるが、超竜軍団の三人は頭痛がしてきた。

この一月で自分達の持つ人間の概念を木っ端微塵にしていく子供達にお手上げ状態である。

 

「そういえば鳥のお兄さん。」

「・・んだよガキンチョ・・」

ガルダンディーは最早ティファにかみつく気力も失せ果てて、普通に返事を返した。

「さっきの二人のハリネズミの事だけど、二人共半分正解で半分不正解。」

「なんだそりゃ。」

「鳥のお兄さんのは冬で、ニーナちゃんのは暑い真夏。今は春だから、この湖の側の茂み探せばいるよ。」「・・そうかよ。」

疲れとも、呆れともとれるガルダンディーの返事を聞きつけた子供達が「何々?」

「ハリネズミ?」

話しに食いつき、「疑ったお詫びにみんなで探すぞー!!!」・・捜索隊が組まれ・・

「そっち行った!!」

「囲うぞ!」

「「せーのっ!」」がしっと捕まえて、「はいどうぞ!」

ガルダンディーに手渡した。

皆葉っぱまみれの土まみれで、女の子たちの髪の毛もぐしゃぐしゃで・・でも、子供達の満面の笑顔はキラキラと輝いている。

いつの間にかニーナも捕獲隊に入ってハリネズミをガルダンディーに手渡す役をしていた。

「さて鳥のお兄さん、ハリネズミさんから二十本くらいトゲ貰って、二本一束にして・・。」

ティファはガルダンディーに楊枝づくりを教え、「この蔦で巻く?」

「もっとハリネズミいるか?」

子供達にも構われ・・

「うっせえぞガキども!!」一連の流れに唖然茫然とに流されていたガルダンディーも真っ赤になってブチ切れるが、 

「えーいいジャン別に。」

「手伝ってやるよ。」

子供特有の怖いもの知らずの気安さに押し負け、結局ながされて「そこはさ・・」

「やかましい!」子供と騒ぎながら楊枝の束を作り上げてしまった。

 

楊枝を手伝う子もいれば、

「おっちゃんカッコいい!」

「どうやったらそんなに筋肉つくの?」ボラホーンは男の子に、

ラ―ハルトは女の子達から花飾りを押し付けられて途方に暮れる。・・なぜ・・こんなにもまぶしい笑顔を自分たちに向けられているのかと困惑をする。

子供達の笑顔に邪気は全く無く、憧れのまなざしを向けられて‥その様子をティファは黙って笑って見ている。

楊枝作りは子供たちに完全に任せ、一方的ではあるが超竜軍団の三人が・・人間の子供達と交流をしている素晴らしい光景を。

 

この交流がやがて魔王軍と世界を変えるきっかけになるとはつゆほどにも考えずに・・。

 

今はただ、三人の中に優しさが芽吹き人と敵対しない道を行ってくれればと願うのみ。

作り終えたころには夕方になって暗くなってきた。そろそろ帰ろうと年嵩の子が言うと、

ニーナはガルダンディーの前に立ち「鳥のお兄さん。」ティファと同じ呼びかけをした。

「・・この子の名前・・ルード君ていうんだよね。お姉ちゃんが教えてくれたの。」

「・・だったらなんだよ・・」

「いい名前だね・・沢山長生きさせてあげてね・・」

「なん!!!」ニーナはルードに優しい眼差しを向けてガルダンディーに願う。

自分の逝ってしまった大切な妹の分まで長生きをと・・。

「けっ!・・とうぜんだろ・・」

ガルダンディーの答えは素っ気なく・・顔を真っ赤にして小声で答えた。

半日も接していれば嫌でも分かってしまう。ニーナが本気でルードの事を案じてくれているのが。

分かるからこそ気持ちを持て余す・・人間に対して・・憎しみ以外を感じる、この気持ちを何と呼べばいいか・・どう・・接せればいいのか・・分からなくて。

 

その戸惑いは他の二人にも移ったが子供達は気づく事無く家路につき、その場にはティファ達だけとなった。

(さて・・もういいかな。)

「おひげのおじさん、いつまで隠れてみてるの?」

「「「なっ!!!」」」

三人は主の存在に全く気が付けなかったが、ティファは割と早いうちに気が付いていた。

多分ニーナがガルダンディーにハリネズミを渡した辺りから居たことに。

「娘よ・・。」森から出てきたバランは真剣な表情でティファに近づき・・

 

           「我等と共に来ないか?」

 

とんでもないことをティファに言い放つ。

 

・・・今・・父さんなんつった?

「どうしたんすかバラン様!!」そうよどうしちゃったのよ父さん!!

「いきなりどうされたのですか⁉」そうよ!

「こんな小娘相手に何を!!」・・そこは失礼よラ―ハルト!!

でも本当にどうしちゃったのよ父さん!!なんか変なもの食べたの⁉私も三人同様パニくりたい!!

「いきなり何言ってるのおじさん!!」とにかく訳聞かないと・・。

「そなたは人間の中にいさせるには勿体ない。」・・はい⁉

「種族問わずの公平さといいちしきといい・・それに娘よ、何かしらの力を持っていて、それを自覚しているだろう。いや隠すな。身ごなしといい、先日ガルダンディーにみせた気迫と闘気はただの村娘ではあるまい。」・・どうしよう・・言ってる事否定しようとしてもとめられて・・完全なんかバレてる!

これはあれか?超竜軍団へのお誘いか⁉・・スカウト好きはバーンだけにしてよ・・。

はっきり言って今人生初の大ピンチだ!!三人相手には逃げ切れても、父さん相手じゃ無理だ・・ガルーダ行かさなきゃよかった・・でも・・「おじさん人間が嫌いなんね・・」子供にも分かってしまうほど・・「そうだ。」あっさり認められた・・。

「私も人間だよ?」

「そなたは自身が何者なのか知らないのだろ?」・・・そうきた。

「それに人間であっても別にいい。」

「・・なんで?」

「そなたは人間らしくない。」

はい⁉なんじゃそりゃ!父さん超失礼!!七年間まっとうに生きてきた私に向かって!

「・・その通りっすね・・」・・なんですって・・。

「その点に関しては異議なしですなバラン様。」・・ちょっと・・。

「まったくです。」・・こんのー!!

「やかましいですよ!ガルダンディーさん!ボラホーンさん!ラ―ハルトさん!」

「「「なっ!!!」」」

「お互いに呼び合っていたので嫌でも覚えました!!

鳥のお兄さんがガルダンディーさんで海獣人のおじさんがボラホーンさんがんで、貴方がラ―ハルトさんでしょ!!」もう面倒くさいからこれはカミングアウトしてやる!

・・怒りなんて消えてしまうほど悩んでるんだこっちは・・。

父さんの優しい顔を覚えているだけに辛い・・今の父さんのは・・悲しみと怒りで暗い影を落としてる。

二度だけ笑って、優しく撫ぜてくれた手は温かくて・・泣きたくなった。

あの時に何もかもをぶちまけて親子の名乗りをしたくなった程に・・あの腕に飛び込みたくなった・・でも駄目だ・・今私がそっちに行っても本当の意味で父さんを幸せにはなれない・・皆不幸で終わってしまう。

今は・・超竜軍団の三人も幸せにしてあげたくなった・・だから!!

「お誘いありがとうございます。でも、いけません。」断らないといけない。

「一応理由を聞こう。何故だ?やはり人間の中がいいのか。」

「違うよおじさん。私には待ってくれてるじいちゃんと兄がいるんだよ。

それにね、ガルーダみたいなお友達も沢山いて、帰りを待っていてくれてるんだよ。」

だから・・「一緒には行けない。帰らないと皆が心配しちゃう。」

            

       一緒には行かれない・・でも・・いつの日かきっと・・ 

 

 




実の娘とは知らずとも、バランは主人公を本気で誘いを掛けました。
この出会いがのちの魔王軍を大混乱させるきっかけになり主人公がバ-ンの目に留まってしまうフラグです。
次回は別の人々と出会いフラグを立てまくり、錬金薬を発展させていきます。

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