勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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未来の為に

その部屋の熱気は異常であった。興奮の坩堝と言っても過言ではなかろう。

 

 

「大体!!僕に仲間頼れって言いましたよねティファさんは!!」

「俺達にも言ったぞ!!皆で勝とうとか!!!!」

「ティファはね!もう本当に昔っから自分勝手なんだよ!会いたいって言っているのに忙しいの一点張りで手紙しか寄越さなかったんだよ!!もう三界一の勝手娘って呼んでやる!」

「それにね!!人に心配と迷惑かけたら駄目だってじいちゃんと一緒になって俺に言ってたんだよ⁉なのにやっている事がどうなのさ!!!!」

 

ティファが大好き男の子組が、憤懣やるかたなく大爆発。

 

最初の怒声で粗方発散させたマァム・メルル女の子組と、大人組全員はそろそろ止めた方がいいのか悩みだすが、待ったをかけた者がいる。

 

「言いたい事を溜めさせるよりはいいだろう。言わしてやれよ。」

 

世間の裏表を見て数百年、魔界の名工にして美中年のロン・ベルクが言わせてやれとストップをかける。

 

「お前さん達こそいいのか?あのお嬢さんに振り回されてた口だろう。今なら言っても誰も咎めねぇぞ?

マトリフも言いたいことあんなら言っちまえよ。」

「・・・・お前さん結構いい性格してたんだな。」

「あぁ?ふん、まぁな。」

 

本当に素の性格をさらけ出す自分に苦笑しながらも、ヒュンケル達にまでもういいのかと唆すロン・ベルクは本当にいい性格している。

 

 

「・・・・・・女王様・・・これ止めた方が・・・」

「・・・・・・・・・ティファさんは本当にどのような人物なのですか・・・」

 

いなくなれば一行の心を壊し、無事と分かればここまでの炎を灯させる。良くも悪くも影響力が凄まじい・・・そう!凄まじいのだ、凄いのではなく。

あらゆる意味で先代勇者アバンの上を行っている!

この場にいないのに、ダイ達の心を動かしている事もさることながら、ティファのした事で、先程からこの砦でカール騎士団とリンガイア・ベンガーナの混戦部隊が諍いまでは行っていないが、あちこちで口論をしている。

 

魔王ハドラーをいかにするかの処遇を巡って。

 

 

カール騎士団は当然彼を処断したい。先の大戦時からの遺恨と、今大戦アバンを殺した事と、彼の配下の軍団長が首都を無血とは言え占拠した恨みがまだ新しい。

それを言えば、バラン達の処遇こそと思われるだろうが、彼の半生はカール騎士団も知る所となり、償う道を歩いている内は許す方向で固まっている。

 

だがハドラー達はそうもいかない!そもそもなぜ勇者一行の料理人が彼を助けたのかすら不明である。

 

だのにリンガイア兵達に至っては料理人のティファに様を付け、あの方が救った者なれば信用できるとまで言わしめている。

それこそ厳格で敵に容赦しないと勇猛で名を馳せているバウスン将軍すらが、ハドラーの処断に難色を示している為に、リンガイア兵達も自説を曲げずに結果口論にまで発展している。

 

 

そろそろダイ達の発散の場をお開きにさせハドラー達から詳しい話させるべきだろうか?

 

フローラが頭の中で様々な考えを張り巡らせていると

 

 

パンパン!!!

 

 

「そこまでよダイ君達!元気になったのはいいけど、その元気は他に回して頂戴ね。」

「レオナ!!レオナ達もここにいたんだ。」

「えぇ、死の大地が鳴動してすぐにフローラ様が来たの。」

「そう・・・無事でよかった。レオナ御免・・・俺達敗けて・・」

「ダイ君・・・」

 

遭えた喜びは一転し、負けて申し訳ないと俯くダイに、レオナは駆け寄り膝をついてダイを抱きしめる。

 

「いいの!負けても・・・・生きていてくれさえすればそれで・・・生きていれば、何度だって・・・」

「うん・・俺達次は負けない!!ティファが必死に逃がしてくれたんだ!!!次は絶対に負けるもんか!!!」

 

涙を流しながらダイを慰め、ダイもその思いに応える。妹が逃がして作ってくれたこの貴重な時間を無駄にしてなるものかと。

 

 

「さて、落ち着いたんならお前さんたち宛の手紙渡してぇんだが・・・ベホイミスライムはいないのか?」

「な!!・・・起きた時は!確かに俺の枕元に・・・」

「あいつにも手紙あんだがな。」

 

ロン・ベルクの言葉に、ヒュンケルは慌てて周りを見回す。如何にティファの事で沈み、憤っていたとはいえ、相棒のべほの行方が分からないとは不甲斐無いにもほどがある!!

 

「ベほ殿ならば、先程森に待機している-獣王遊撃隊-の子達の所に居ましたよ。」

 

探しに行こうと飛び出し掛けたヒュンケルにベほの行き先を教えたのは、パプニカ三賢者筆頭のアポロであった。

 

「アポロ!お前もここに・・」

「はい、エイミも居るのですがお会いになりますか?」

「!!いや・・・その・・・・・アポロお前はその・・・」

 

アポロを見たヒュンケルは、もっと言えばダイ達が固まった。

前回ティフが引き起こした大騒動は、ティファとアポロとそして・・・

 

「魔王ハドラーの事は、ティファさんが助けたのだと親衛騎団達全員が証言しています。今の彼らが偽りを言っても理がありません。ダイさん達が目が覚めてしまえば偽りかどうか直ぐに知れてしまうのですから。」

 

穏やかに笑い、ティファが助けたのだから一度は受け入れると笑う彼は、本当にあの篩の塔で短慮を起こして先走り、大惨事を引き起こし掛けた人物であるのかと、マトリフすらも穴が開くのではないかという程アポロを呆然とした様子で見つめている。

確かアポロは各国を回る仕事をするってレオナが・・これって各国の関係者がティファの功績を称え尽くしてきた結果がよもや?!

 

「ティファに感化されちゃったの?!!ダメだよそれは!!」

「そうだぞアポロさん!!あいつだって間違うことは沢山あって・・・ハドラーの事は正解でも!他はやらかす困ったやつでもあるんだぞ!!」

「ティファのする事すべて正しいとか全肯定したら駄目ですよ!人生どぶに投げないでください!!」

 

 

後の世に、-竜の兄弟達-と呼ばれる事になる、ダイ、ポップ、ノヴァが、アポロが変な方向に行こうとするのを全力で阻止する。

ティファは確かに素晴らしい面もあるが!それと同じくらい困った面が多々あるとんでもない娘なのだと。

 

しかし、ダイ達の心配とは裏腹に、アポロの考えは違った。

別にティファの考えに感化された訳でもなく、時と場合を鑑み無かったことは間違いであっても、敵の魔軍司令官と気安く話していたティファを罰し、敵を討たんとした心に間違いはないと確信している。

ただ、各国を周り、確かにティファの功績やそれを元にした纏り感が半端ではないと感じたのもまた事実。

最終決戦でこの世界の行く末が決まるのであれば、使えるもの、それこそ憎い魔王だろうがー料理人ーであろうが使う、そう心を決しただけの事。

全ては、この世界とパプニカ王と王女達のために。

その為ならばカール騎士達とハドラーの溝を埋められないにしても和らがせる事をしなくてはと算段するほどに。

それを全く表に出さないアポロに対して止めようとするダイ達と、ポーカーフェイスで笑って受け流すアポロの図式が出来上がってしまった。

アポロは元より優秀であり、ヒュンケル達に見せた公平さも慈悲もあるのだが、ティファとの相性が最悪という運の悪さに見舞われただけに過ぎないが兎も角として。

 

「はぁ、それでべほは?」

 

四人の、最早コントと化した遣り取りに疲れた全員を代表してヒュンケルがべほの居所を訪ねながらアポロと共に迎えに行き、部屋が静かになると漸くといった風にハドラーがフローラの前に立つ。

 

 

「久しいなフローラ・・・」

「・・・・・こんな形で会おうとは思いませんでした。」

「俺もだ・・・お前は・・」

「はい、アバンがいればこう言ったでしょう。私怨よりも公を優先し、世界を救える力があれば利用するべきだと。

貴方の配下が、貴方が大魔王の駒にされた事、それをティファが助けた事、そしてこの地上を消すことに異を唱えて大魔王と完全に袂を別った事を聞きました。」

「そうか。あいつらは?」

「別室で見張りを置いていますが大人しくしています。一人・・・手足がないのですが・・・」

「構わん、俺が後で・・治しても構わんか?」

「えぇ、戦力はいくらあっても足りません。ヒュンケルが戻り次第そちらとこちらの話を総合させましょう。

 

決戦時に何があったのかをダイ達が、その後世界に何が起きたのかをフローラ達が話し合う。

 

 

「そうか。フローラ、カール騎士団は、俺を許してはおるまい。」

「何故そう思うのですか?」

「ここにいる者達はリンガイアの者達だ。お前が主導で動いているのであれば、カール騎士団の者達が俺を見張っている筈だ。それがないのは、暴発したもんが俺の寝首を掻く恐れがあるからではないのか?」

「・・・・慧眼ですね。その通りです。中にはそのまま貴方を死なせよという意見も出ています。」

「だろうな。 ()()()()()()それが正しい。ティファとそれに感化されたものの方が・・・・其れで生かされている俺がいえた義理ではないが些か逸している・・」

「その通りです・・・・」

 

フローラに送られていた手紙には、ハドラーの事は書かれていなかった。ここまで見越して動いていたというのならば、それも頷ける。

自分達が過去と今の因果で、ハドラーを助けるという料理人のいる一行を、果たして救援に来たかどうか・・・・世界の為とはいえ、その恐れもあったのだ。

 

カールと世界を蹂躙し、故郷の英雄を殺したハドラーを助ける者達等見捨てたいと、ごく当たり前な人の感情が優先されて。

 

 

「その事は後で話しましょうハドラー。今は、今後どうするかが最優先の筈です。」

 

 

愛した男を殺されても、フローラはハドラーを一時とは言え受け入れる。

それは愛して逝ってしまった男が、常々言っていたから。

 

 

私事よりも公を優先し、世界に貢献する事こそが力を持つ者の義務だと、大戦を終えても世界を回り、人々を救いながら平和の芽を育てると旅から旅をした男の口癖を、忘れれる筈も無く。

 

アバン、私はカールの女王として、この世界を守る為にハドラーとも手を組みます。

貴方が愛し、守ろうとしたこの世界を。

 

 

そこに居るのは、為政者として長年君臨してきた女王陛下その人であった




今宵ここまで・・・・

アポロさんは、各国の主要者から、これでもかという程主人公の功績を聞かされ続け、遂には改心(洗脳)されかけましたがご覧の様にかかりませんでした( ´ ▽ ` )ノ(・・大丈夫だよね?

ハドラーの処遇は、もうしばらく荒れます。
(それが普通だ!
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