・・・・誰でしょう
ティファって律儀って言うかなんというか、スライムの僕にまで手紙遺すってどうなんだろう?
大ネズミのチウ君は人語も人の字も一応習得しているから有りだろうけど、どっちもできない僕に遺すなんて本当に変わってる。
ある意味ヒュンケル以上に・・・・比べたらヒュンケルに失礼だからやめておこう。
あらゆる意味でティファに比べれば他の人は全員真っ当だろうな、うん。
獣王遊撃隊の隊長たるチウも、ティファの事で沈んでしまい隊員一同が不安に駆られていたのを、代わりにベほが宥めていた。
ダイ達はティファが死んでしまったと考えていたが、ベほはガルーダよりは短くとも、ティファの傍らにいた時間が長く、だからこそティファの強さとしぶとさをよく知っている。
あのティファが簡単に死ぬ筈も無く、どんな手を使ってでも周りと自分が助かる道用意しない訳がない。
不可能だと思った事をひっくり返すのはティファの手だ。それを信じ切るのは甘いだろうが、死体を直に見る迄は、ティファの訃報は信じないと決めている。
もしも本当に死んだとしてもだ。
ヒュンケルと仲良しのアポロが共に迎えが来て、ティファの手紙の事を聞いた時は呆れたものだ。
ヒュンケルのと一緒に書いて、ヒュンケルが伝えてくれるようにしてくれればよかったのに。
読めもしない手紙を残されたベほは、微妙な気持ちになりながら親衛騎団の一人のポーンヒムに読み上げて貰っている。
本来ならヒュンケルかもしくはダイ達だろうが、ティファの手紙を涙を流し握りしめながら食い入るように読んでいるので頼めない。
それは大人達も同じで、自分がベホイミをかけたハドラーすらもがその状態で、唯一ティファの手紙を読んでも、なんだかな~とぼやいていたヒムに頼み、肩に乗せて貰らい呼んでもらった。
内容は、とても簡素だった。
勝手に捕まりにに行ってごめんねべほちゃん。生きて捕まったら絶対にどんな目に遭っても必ずみんなの元に戻る。
ヒュンケルや皆の事お願いね。
・・・・・たったの三言で終わってる。
聞けばヒム達の方が、ハドラーの異変を知っても黙っていた事、そして勝手に生かしてしかつ、勇者達と共に逃がした事を丁寧に詫びられていたとか。
ダイ達にとっては味方になっても、ハドラーや親衛隊にとっては敵のど真ん中に放り出されたのだから致し方ないのだろうが・・・・何か負けた気がするので釈然としない。
「・・・・あいつって本当にぶっ飛んでるよな。」
「-大いに賛成だよ金属生命体君。-」
「・・俺はヒム、ポーン・ヒムだ。」
「-そう、僕はヒュンケルの相棒でティファの友達のベホイミスライムのベほだ。読んでくれて助かったよ。-」
「なぁ、あいつっていっつもこうなのか?」
「-こうとは?-」
「いや・・・周りが思いもしないようなことをいつもしているのか?」
「-そうだね~。あの子と付き合っていくコツは、もうティファがする事だしで難しく考えない事かな。-」
「ちょっとよろしいでしょうかベほさん。」
「-ベほでいいよ、金属生命体のお嬢さん-」
「・・・・私はクィーン・アルビナスです。」
「-そう、ふん・・・アルビナス嬢か。何かようかな?-」
「その盗み聞いた訳ではないのですが、ティファがした事は難しく考えるなと今あなたは言いましたが。」
「-言ったね。-」
「それは思考の放棄でいけない事では?」
ベほな発言に、アルビナスとしては其れはあまり良い事だと思えなかった。
何故ならばそれは相手を信用しているのではなく、ただ相手のしている事言っている事を鵜吞みにした、仲間どころか主従関係でもなく、隷属的な関係でしかないのではないかと。
アルビナスの自説を聞いたベほは、少し考えて再び口を開く。
「-アルビナス嬢の言っている事は、-一般的な範囲-では正しいと思う。さっき僕が言った事は、一般的には奴隷と主人の関係だ。
でもね、悪いけどティファにはそれが当て嵌まらないんだよ。」
「何故・・・おっと、自分はナイト・シグマ。以降お見知りおきを。もう一度尋ねるが、ティファだと何故思考放棄してもいい事になるのだ?矢張りいかんと思うのだが。」
「吾輩はビショップ・フェンブレンだ。シグマやアルビナスの言う通りだと俺も思うのだが。」
いつの間にか集まってきた親衛隊達全員がベほに名乗り、ベほの意味を問うと、ベほは溜め息を吐いて触手で頭を擦り付けて掻く仕草をする。
「-やれやれ、本当に君達分からないのかな?いいかい、確か-君達全員-にも手紙はあったんでしょう?
武運拙くここに来れなかったルーク・ブロックとかいう人にまで。-」
「・・・・まぁな、あいつは俺達にまで残してるってやっぱ・・・」
「-そこでもう分かるはずだよ。あの子の思考、いや言動全てが-この世界の常識-から外れているのが。-」
変わっているのでもズレているのでもない、外れているとべほは断言する。
自分もティファにくっついて世界を回っている内に数多くの人間や他の種族を見てきたが、人間は人間のコミュニティを、モンスター達もはぐれ魔族達にもその境界線はしっかりと存在する。
偶に精霊やモンスター達と友達になれても、境界線を越えての付き合いをするなどほぼない。
例外はノヴァの様に精霊達から愛され、遂には精霊王の加護を貰うかしないとあり得ない。
必ずある筈の境界線が、ティファには存在していない。
ただ-同じ生き物-だと、生まれた場所、生まれ方、生活の違いや言語が異なるだけで、-生きている者-の括りに入れてしまっているとべほは考えている。
其れこそティファの中には、-敵・味方-の概念すらないのではないのかと。
そうでなければ倒すべき相手を、万一自身で倒せなくともダイ達と共にやれば勝てるだろう相手の事を、助ける選択肢を用意している時点でおかしい。
助ける用意と、助けた後逃がすことを見越した手紙迄用意をしている時点で、-常軌を逸した-ティファの考えを理解しようとすること自体が間違っている。
自分達とは考えの根本が違いすぎ、知ろうとして振り回されて自分の身動きが取れなくなる方が本末転倒だ。
「-ティファの考えを理解するよりも、ティファが起こした事自体にどんな意味があって、それを有効的にするにはどうすればいいのか、それともこれは正しいかの精査をすべきだよ。-」
ティファがする事の大半は良き事でも、ティファだとて完璧とは程遠い存在だ。
ティファの個人的な動きで、世界が動いていい筈がない。
どれ程壮大で途方も無い事をされても、それが正しいかどうか、受け入れるべきか正すべきかを常に考えなければそれこそ思考の放棄だ。
「・・・・俺達まで助けたのはあいつの間違いだってか?」
「-そうは言ってないよ。僕もあの時を一から全部見ていたんだから。正しいかどうかは言えないけれど、少なくとも僕が君たちの立場でも今ここにいる事を望むね。
されたら許したく無い事のオンパレードだもん。
そうでなくて、一つの事象、この場合は爆弾がハドラーに埋め込まれていると知った時から、ここまでの遠大な展望で動いたティファが異質すぎるって言いたいんだよ。
やっている事自体が良い事で味方にとって有益を生むから、今まではティファは優しくて凄い子だで終わらせてしまうんだけれどもね。-」
不利益を生む訳でない事で、ティファ自身のぶっ飛んだキャラクターで隠されて来た事を、ベほはずっと胸に仕舞ってきた。
あの子は様々な意味で逸した子だと。
「私も、ハドラー様を駒にした大魔王が・・・」
「我等一同の主はハドラー様なのだ。」
「ティファが与えてくれたこの機会を無駄にはしたくないな。」
「そうだな。あいつが与えてくれたチャンスを無駄にしない事があいつへの・・」
この金属生命体の子達もダイ達と同じか。
先程はティファの考えを深く考えない方がいいとは言ったが、あの子が逸していると言ったばかりなのにその事はもうどうでもいいとばかりになって、あの子がした事を恩に感じて感謝をし、その先どう動けば有益かつ-ティファへの礼-になるかで頭が一杯になり、いつしか逸している事する疑問を持たないか。
いずれはティファのする事を全て賛同していくのだろうか。
ベほはヒム達に知られないくらいの小さな溜め息を吐く。
いつかこれが降り積もり、ティファが-世界全体を巻き込んだ途轍もない事-を仕出かした時はどうなるのだろうか心配になる。
それが間違えでないと何故言い切れる。
どうして誰も、ティファが凄い知識を持つに至り、雪白などと言う-伝説の武具-を持ち、遂には魔法とは全く違うとモンスターの自分でも分かるような力を行使できたたのかを真剣に考えないのか不思議で仕方がない。
唯一、大ネズミのチウが、一度どうしてティファはそこまで凄いのかを問うていたが、矢張りというかなんというか、ティファの優しい言葉や雰囲気に飲まれ、二度とは聞いてこなかった。
目先の事が大変になるとこういうのが普通で、こんな事を考えている僕も・・
ティファ・・・・・君は一体この世界をどうしたいのさ。
守りたいと言っているのに、敵を救う事しかしていないティファにべほは胸の内で問いかける。
この悩みを誰かと共有したいのだが生憎自分の周りにはティファに多大な恩があり良さしか考えないで賛同するか、ティファを全く知らない者しかいない。
ティファを知りながらも疑問を持つ人がいない、このおかしな状況にべほは頭を痛める。
こうとなれば、ティファが間違った道を行かない事を祈るしか出来ない。
精々、ティファの言う通り、精神的に弱ったダイ達の心の回復をはかる事が役目だろうかと諦める。
何せあの子は世界の常識が通じないのだから、あの子が敷いた道が合っている事を祈りながら行くしかいい手立てが思い浮かばないのだから。
今宵ここまで
ベホイミスライムのベほちゃんでした。
彼とチウ君には、今後ハドラー達と一行の橋渡し的存在になってもらうべく急接近してもらい、ついで一行や味方達の中で唯一ティファの全てを疑問を持つ子になってもらいました。
作中の通り、主人公に関わったキャラクター達は多かれ少なかれ人生の中で何かしらを救って貰い、その恩に報いる事を優先して良くも悪くも主人公の全てが逸している事に気が回らなくなってしまっています。
それがどれ程矛盾し、壮大すぎる事であってもです。
味方の中での苦労人ポジになりましたが、それだけに呉越同舟状態にさせられたハドラー達の心のケア担当にもなってもらうベほちゃんのお話でした。