勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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雨降って地固まるも・・・・

これは本当に勝てるのだろうか?

目覚めた勇者達の情報に、砦の者達全員が青褪める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体ザムザは何を盛ったのか、ステータス異常耐性の強い筈の竜の騎士のダイ達までもが本当にまる一日ぐっすりと眠り、目を覚まし状況を早く確認し合いたいという真っ当なお願いを蹴り飛ばしたザムザは有無を言わさず食事を摂らせた。

 

「ティファさんが戻られた時、何故貴方がたが痩せたのか等と聞かれるのは屈辱です。」

 

にっこりと笑ってるのに反面怖い顔で言われたダイ達は、コクコクと首を縦に振って大人しく食事をする。

あのマトリフでさえも拒否できない程の般若な顔は、ダイ達にしか見えなかったので、言葉一つで勇者達を抑え込めるザムザの株が一気に上がった。

 

「薬だけでは無く栄養面でもサポートしますので。」

「・・・・なんだかティファみたい・・・」

「おやダイ君、それは嬉しい事を。」

 

ダイの言ったのは、怖い感じが似ていると言ったのに、薬と料理がティファと似ていると言われたのだと思い喜んでいる。

水を差すのでダイは余計な事を言うのは止めたが・・・・

 

「ティファ・・・・」

 

ひとたび言葉に出せば・・・

 

「ウっク・・・・・ヒゥ・・・」

 

胸が痛み、呼吸するのすらが苦しくなる!

自分の左手に紋章を移すという奇跡を起こした妹なんていらない!!ただ・・・平凡でも今この時に自分の隣で笑ってさえいてくれればそれで良かったのに!!

 

「ダイ・・・・」

「ダイ・・」

「ディーノ・・」

 

様々な事で気を張り詰めていたが、緩んでしまえば一気に傷が開くのは自明の理であった。

 

「大丈夫ですよ兄君様。」

 

傷が開き、手にしていたスプーンを取り落とし苦しそうにしたダイをいち早く包み、柔らかい声を掛けながら抱き上げた人物は

 

「フ・・・フラメル・・・」

 

柔らかい茶色の髪を長く伸ばし、後ろで結い、これといった特徴のない青年の姿をとっている式神・フラメルだった。

 

ダイ達の周りは誰もがティファを案じ、ダイの様に苦しくなり父のバランとても身動きが取れなかった。

だがその代わりの様に、フラメルがダイを柔らかく抱きしめ背中を優しく叩いて宥めながら子守唄替わりに一つ秘密を教える。

 

「兄君様と皆様、実は私達式は、主様の命と直接の繋がりがございます。すなわち私が消えた時が主様の死、裏を返せば私がこうしてお側に居る事こそが主様の無事な証なのです。」

 

柔らかくゆすぶられて落ち着いてきたダイは、物凄い重要情報に驚きがっしりと近くにあった顔を掴んでしまった。

 

「本当なのフラメル!!」

「はい、なので皆様ご安心ください。状況までは分かりませんが、主様が生きている事に相違はございません。」

「そっか・・・そっかよ!ダイ!!食ったら特訓だ!うんと喰って、どんどん強くなって再戦挑むぞ!!ノヴァももっと食えよ!!」

「ポップ、分かるけど詰め込むのは行儀悪いよ。ほらメルルさんが呆れて・・」

「そこでメルル出すな!おまえだってティファとの仲どうなんだよ⁉」

「えぇ・・・ティファしだい?」

「男なら玉砕覚悟で口説けよ!!」

「そこ僕振られる前提なの⁉酷くないですかヒュンケルさん!貴方の弟弟子後で凍らせてもいいですか?」

「いや・・・・流石にそれは困るが、謝っとけポップ・・・・・後ろから冷気が・・」

「げ!!嘘!ノヴァ悪かったから冷気引っ込めさせてくれ!!!」

「・・・・・半日は命に別状ないから。」

「悪かったてば!!!!!」

「ノヴァさん・・・ポップさんをどうか・・」

「後で私からも言っておくから・・」

「メルルさん・・・マァムさんも・・・女性の頼み事とあれば致し方ないですね。」

「口は禍の元だねポップ。」

「・・・・ふん・・さっさとダイも食えよ。」

 

フラメルの言葉に、一向に再び活気が戻る。

少し無理をしているが、それでも歩きだし、もう少しすれば走り出すだろうとザムザ達大人は見ている。

 

「フラメルさん。」

「フラメルで結構ですよ、精霊の愛子様。」

「僕もノヴァで・・・」

「ではノヴァ様で。いかがしましたか?」

 

普段知らない者とは仕事上でない限り自ら口を開く事の無いノヴァが、フラメルに話しかけた。

 

「僕はその・・・ティファと心が繋がっているのは知っているかな?」

「はい、よく存じ上げています。主様が親友と心まで通わせられて素敵だと言っておられましたので。」

「そう・・・」

 

思いがけなくティファの心の一端を知ってしまったノヴァは我知らず赤くなる。

ティファが、自分と心が繋がっている事をそこまで喜んでくれるのはとても嬉しい・・・。

だが今は・・

 

「目が覚めてから幽かにあったティファとのつながりを感じられない。それでもティファは・・・」

「ノヴァ様・・・」

 

陣が現れてからティファとのつながりが弱まっていた。その不安が、最後まで陣の側を離れなかった理由。離れたら、ティファとの繋がりが掻き消されそうで。

そして一晩に眠って・・・

 

ポン

 

その頭を優しく撫でたのはフラメルではなく、意外にもロン・ベルクであった。

 

「落ち着けよ坊や。フラメルが言った事が本当なら、あいつは今頃厳重に閉じ込められているんだろうよ。」

 

魔界育ちのロン・ベルクは、魔界の国を守る為の結界レベルは、はっきりと言えば地上の結界などあって無いも同然に感じさせるほど威力が違う。

勇者と魔王を逃がした者など厳重監視どころか生かされる方が不思議な程だ。

 

「そう・・・・ですね。きっと僕等の助けを・・・」

「あぁ、全員で迎えに行ってやろうぜ。説教付きで。」

「はい!!」

 

ノヴァの素直な返事に、ロン・ベルクは嗤いながらノヴァの頭を抱え込み優しく撫でまわす。

 

本当にこいつ等は良い子だ。さっさと結婚して俺にも可愛い赤ん坊抱かせてくれよ。

ここにいないティファにも無茶を願う。有象無象や自分が相手でなく、ノヴァとティファの赤ん坊一択にされたときいたらてぃふぁはどんな顔するのだろうか?

 

様々に落ち着いて食事を終え、いざ情報交換となった時、果たしてどちらがより驚いたか。

 

 

ダイ達の方は無論大魔王の真の実力

 

勇者達と竜の騎士を相手にしながらも、伝説の騎士の右腕を消滅させ、ダイの剣も叩き折った、まさに魔界の神と呼ばれるに値する強敵過ぎる。

しかも

 

「大魔王は・・・・あの時点で力の一・二割を最初から削られた状態であった。」

 

認めたくない口振りで、バランはあの時のバーンの戦力分析を正確に伝える。

 

ハドラーの体内に埋め込まれていた黒の核晶は、ティファが持っていた時僅かに光った。

恐らく遠隔操作の魔力を送ってきたのだろうが、ティファの竜闘気がそれを阻んだようで不発に終わったが、送られた魔力がそれで還元されることは無い。

黒の核晶を発動させるのにはそもそも膨大な魔力を食うのだ。

 

「・・・・・其れなのにあんなにじゃかすかイオラの嵐しやがったのかよ・・・」

 

同じ魔法を使う身として、バーンの底なしのような魔力に寒気が奔る。

だが同時に頭は冷静に考えている。如何にこちらにダメージが少なく戦いを進めながらバーンの魔力を吐き出させるかが戦いの鍵になる。長期戦を視野に入れてみるかと、次々と思考を回している。

 

黙って考え込むときのポップは、一行の魔法使いとして頼もしい顔をするのでマァム達は安心するが、周りは別の意味で沈黙をする。

 

ステータスが下がっていた時ですらその強さなれば、万全の時はどうなるのか・・・・

 

 

パンパン!!!

 

「その為に我等はここに居るのですよ!!」

 

勇者達だけでは敵の強さに届かない時、共に戦い少しでも近づけるように自分達は雌伏の時を過ごし、牙をとぎ策を練ってきた自負を忘れるなと、フローラが力強く兵達に檄を飛ばす。

 

 

「そうだね、俺達だけじゃあ無理だ。みんな!!俺達に力を貸してほしい!!!!」

 

フローラの言葉にダイが応え、そして結束する事を願う。

 

共にこの地上を守ろうと。

 

 

勇者の願いを、砦全員が歓声をもって応える。

もう魔王だなんだと言っていられる時ではない!

総力戦でも勝てるかどうかの瀬戸際なのだと、本当に肌で感じたカール騎士団は、一時は恨みかけたティファに敬意を表する。

地上勢だけでは勝てないこの状況に、憎らしくも頼もしい者を命を賭けて送ってくれたのだから。

 

それは、この砦の者達の心が本当の意味で結束した瞬間であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を、フラメルは嬉しそうに笑って隅で見ている。

 

主様、貴方の望み通りの事に運べそうですよ。

 

逃げた先の新たな仲間達と共に歩く事を、主は願っていた。

この事を念話で伝えられないのが残念です。

 

自分もノヴァ同様で繋がれないが、自分とティファの間の事で、ダイ達に隠している事が一つある。

 

それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である事を示している。

 

例えばティファが体調を崩せばフラメルも具合が悪くなり、精神苦痛を味わえば体が歪む。

その繋がりはどのような結界があろうと関係なく、つまり自分が今健康体であるという事は、少なくとも大ダメージを受けた筈の主が、敵の手によって完全回復された事に他ならない。

 

この事を人間達に知られるわけにはいかないな。

 

折角こうして結束が固まっているのだから、主が敵の中で、自分からしても好待遇と思われる扱いを受けている事を知ればどうなるか・・・

 

裏切り者か、はたまた・・・・人間は弱い。分からない事に牙を剥く。

 

不要な牙が主とその周辺に向かわぬよう、フラメルは笑って沈黙を守る




今宵ここまで・・・・

漸く砦仲間の結束は固まりました。
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