「・・・私、付いてきた意味あるかしら?」
「マァムさん・・・・その、レオナ姫様を見守って応援しましょう!きっとそれも大切な事です!!」
「そうね。-彼-のおかげで私の輝聖石が光れたのよね。感謝しないと罰が・・・」
「二人共、いくら-敵-がこなくとも暢気にお喋りしていたらいけませんよ。もうそろそろレオナが契約の為の試しの儀が起こる筈です。」
マァムの輝聖石が淡い桃色に光ってミナカトールがこれで出来ると冷静なフローラをして大興奮させた。
一時はどうなる事かと本当にひやひやしていただけにその分の喜びが倍増した結果なので、いつもの冷静沈着な女王様と違うとは突っ込みは入れなかった。
マァムのお悩み相談の間、フラメルは残った女性三人に温かいお茶を淹れ携帯食も美味しく調理し、お悩み相談の後はラーハルトが来るモンスター達を全て薙ぎ払い、女性四人にきちんと食事を摂らせてからの出立となった。
今まで以上に頑張ろうとマァムは張り切ったのだが・・・・
さまようよろい?闘気を込めた刺突の嵐で終わりだ。
ゴーレム?纏めて横薙ぎの一閃で終わりだ。
トロールの中に一際大きな一つ目がいるな、羽があるのはシルバーデビルか?どのみち何が来ようとも同じだ。
幸いこの契約の広間は奥行きも高さもあって俺の必殺技を繰り出しても問題はないな。
途中の階層はいざ知らず、二十五階はモンスタールームで数多のモンスターと、その中には地上で会う事はまずない者達が混じっていたのを、青褪め戦いの構えをとるマァムの両拳をそっと下ろさせたラーハルトは、マァム達にはレオナ姫がいく祭壇近くで見ているように優しく笑い、迫るモンスター達には凄絶な笑みで迎えた。
槍の魔装を鎧化させる事無く、持ち前のトップスピードで敵のど真ん中に進みながら刺突し薙ぎ払い次々と屍の山を築き上げていく。
神速
そう言っても過言ではないその速さに、シルバーデビルは甘い息で眠らせる事も出来ず、密集形態の中を突っ込まれてはベギラマも放てず気が付けば視界がずり落ちて漸く首を落とされた事を理解する有様で。
他のモンスター達も同様で、マァムが危険視して警告を発する前にギガンテスはこん棒諸共細切れとなり、モンスター達を蹂躙している。
高速で槍を回し、最後に弧を描いて繰り出されるラーハルトの必殺技ハーケンディストールが、出てくる敵を全て逃がさず薙ぎ払い、原形をとどめる事無く斬り裂いている。
仕掛けはラーハルトからすれば簡単で、ハーケンディストールを一度撃った後にすぐさま反対方向に飛んでまた放ち、ハーケンディストール同士を敵の真ん中で交差させわざとぶつけている。謂わば敵をハーケンディストールの挟み撃ち。
挟み撃ちの状態にする為には二発技を繰り出さなけらばならないが、二度目を放つ時、本来の技よりも回転数を半分以下にし弧を描く大きさも半減させているが、挟撃の状態になるので多少威力が弱まろうとも問題はなく、技がぶつかった衝撃で生じる衝撃波がそれを補っている。
だがそれでは後から湧いて出た敵には対処できないように見えるが、二方向から放てばその場の敵は逃げ場がなく、範囲漏れも威力を弱めても同じ理由でハーケンディストール同士のぶつかり合いの余波で生まれる衝撃波で体のどこかしらは吹き飛び、動けない所をラーハルトは容赦なく槍を突き刺し止めを刺す。
余りの鬼神の如き様相で戦うラーハルトに、戦い慣れをしていないメルルが青褪め、フローラから預かった破邪の洞窟の古文書を胸に抱きしめ幽かに震えている。
「メルル・・・ラーハルトが怖い?」
「え!あ・・・彼は私達の為に・・・」
「そうね。私達を守ってくれている。」
その優しさに、震えていたメルルも次第に落ち着き、フローラやマァムと共に戦局を静かに見守る。
自分達にかすり傷一つ負わせる気はないとばかりに神速の槍をふるうラーハルトの傍らにはフラメルがいる。
ラーハルトの闘気が切れかかれば瓶の蓋を開けた万能薬を渡し素早く飲ませ、時に煙幕を張り、毒の目つぶしを生物系のモンスター達にぶつけてラーハルトが戦いやすいように援護している。
マァムとしては迷惑や心配をかけた分も含めて自分もあそこで戦うべきだと幾度か出ようとしたのだが、その度にラーハルトに出てくるなと強く言われて守られている。
お前達は大魔王と戦った。その時自分達はサババ砦で、偽者のティファを見ていただけの不甲斐無い者。その分今は休んでおけと言われては出るに出られない。
サババ砦のティファの偽者
式神と呼ばれ、ラーハルト共に戦っているフラメルと同じ疑似生命を、本物のティファと疑う事無く守っていたのだという事実がラーハルトの中では忸怩たる思いとして燻ぶっている。
自分はバラン様とディーノ様、そしてティファ様を敬愛し終生を掛けてお守りするのだと誓っていただけに、知らずとは言えティファ様を本物かどうかすら見抜けなかった自分が許せない。
それは砦全員にも言えるだろうと言われたが、ラーハルトは万が一ティファが起きてもストッパーになるべく眠っているティファのベッドに付いていた。
その時一度だけ髪を撫でているその時、何故それが偽者だと分からなかったのだと責めている。
ティファが聞いたらそれは式神を知らず、そもそも本物か偽物か疑う事態になる方が異常で気か付かない方が普通だと言っているだろうが、生憎そのティファはおらず、ラーハルトを納得させる言葉を持つ者もおらず鬱屈していたところにティファと同じくように清らかな乙女を見つけたのだ。
それが今背中越しに守っているマァム。
自分からすれば復讐戦をしたいと望むのは自然だと考えているが、マァムはそれを良しとせず、戦うのは大切な者を守り、泣かなくていい世界にしたいと言う-あの言葉-と同じく何とも現実を知らない甘い戯言で、あの言葉同様に自分も見てみたくなる夢だった。
五年前にティファが言った、種族ではなくその人を見ると言うあの甘くて素敵な言葉と同じ願いを持つ少女。
是が非でも守ってやりたい。
その不器用ともいうべき優しさが、ラーハルトの強さを底上げしていると言っても過言ではない。
その戦いにもフィナーレが訪れた。
ラーハルトとフラメルの活躍で、際限なくモンスター達が湧いてくると思われていた破邪の二十五階層は、神の試練すらも細切れにしてやると言わんばかりの輩を粉砕するべきだと言うようにギガンテスの群れが地面を踏み鳴らしラーハルト達に迫った。
流石にラーハルトだけでは危ういとマァムが飛び出ようとしたが、その前にラーハルトの技が、迫りくるギガンテスの群れを打ち砕く。
ギガンテスの群れの真上に飛び、繰り出された技はハーケンディストールでは無かった。
ラウシースピア!!!
それは直情的で、真っ直ぐなラーハルトの気性を表したハーケンディストールとは違っていた。
一つの波が、寄せては返し遂には百にも千にも万にも遂には大津波となるが如く、幾度も槍を突き出す波状攻撃に、ギガンテスの群れは為す術もなく飲み込まれ静寂が契約の広間を支配した。
いずれぶつかる魔王軍は、今まで以上の強敵で数もその比ではなかろうと考えたラーハルトが考えぶっつけ本番で繰り出された技は、ハーケンディストールの威力と範囲を遥かに超え、名の通り荒海が一切を飲み込んだ。
新たなモンスターは現れず、レオナは何の憂いも無くミナカトールの契約の儀に集中し、為しのぎの試練の炎に飲み込まれても落ち着いて己の戦う理由を問うてきた者に告げる。
先達達が命を懸けて守り、連綿と続いている自分達の世界を今度は自分達が守り抜く為の力が欲しいと迷いなく答えた時、レオナはミナカトールの契約に成功したのであった。
今宵ここまで
・・・・・原作では物凄い重要位置になるミナカトールが完全添え物となり、マァムとラーハルトの成長の糧と消え果ました。
ラーハルトの新技ですが、ハーケンディストールドイツ語なので-荒海-もドイツ語で調べたところ、Raue See と出ました。
そのままローマ字読みのラウエと読むと語呂がよくないのでラウシーで、槍はそのままスピアとなりました。
本来のドイツ語発音とは違うのでしょうが、そこは目をつぶって頂けると筆者は助かります。
また荒海のドイツ語でもっと素敵な言葉があると見つけられた方は、教えて頂ければ技名を変えさせていただきますので、お知らせいただければ嬉しいです。