破邪の洞窟でレオナがミナカトールを習得している時、地上に残っている者達はそれぞれの武を練り技を磨き、最終決戦では大魔王達を討ち果たすべく猛特訓をしている。
ポップは最早マトリフから学ぶことが無くなり、攻撃魔法よりも習得だけした回復魔法を使えるようになれと言われ瞑想をしている。
どうしてもベホイミ、ベホマが使えず、回復のイメージが足りていないのが原因ではないかとのお達しで、飲食の休憩時間以外は瞑想に没頭しているが一向に使える気配がない。
使用できれば自分を攻撃されてもちょこちょこと回復しながら持久戦に持ち込めるので是が非でも習得したいポップは音を上げずにいそしんでいる。
クロコダインは対ミスト用にと、ヒュンケルから光の闘気を教わりあと一歩まで差し掛かっていた。
暗黒闘気の集合体であるミストバーンには、光の闘気が有効であり闘気系を主体にしている全員が覚えれば誰であってもミストを迎え撃つことが可能になり、戦略・戦術双方においても幅が広がり取れる手段が増える。
マァムが戻ってきた時に、光の闘気が扱えるか確認するが、おそらく使えるだろうとヒュンケルは踏んでいる。
マァム自身が光と慈愛に満ちた女性なのだから。
それぞれが活路を見出し特訓に邁進する中、ダイだけが浮かない顔をしている。
「ダイ君、そう根を詰めないで。」
「でも!・・・・俺だけ皆と違って全然ダメなんだもん・・・」
「ディーノ・・早急に力を使いこなせる者などいない。焦る事は無い。」
「けど・・・・」
兄と慕うノヴァの言葉にも、大好きで尊敬している父の言葉にもダイは頷けなかった。
折れた剣はロン・ベルクが精魂を傾け新たな剣に生まれ変わろうとしている。
打倒大魔王の為にも、ダイの全力に耐えられる様に剣に活を入れると凄絶な笑みを浮かべて言っていたのが気になる所だが・・・
新技の方も構想は出来ている。
ヒントはティファの抜刀術・双竜閃・雷。
鞘を一撃目とし、二撃目を鞘から抜いた剣で攻撃を自分でも出来そうであった。
だが二撃だけでは心もとない。三撃目が欲しいところだ。
ティファにもそれがあればあの時ハドラーに勝てたかもしれないとダイは考え、三連撃の攻撃を構想している。
其れも闘気と剣の達人のノヴァと父とハドラーに相談しながら進めていくが、憂いは一つ。
ティファから譲られた左手の竜の紋章を発動させることが出来ないでいる。
これを使いこなして力の底上げをせねばあの圧倒的強さを誇る大魔王には届かない。つまり新技が出来たとしても意味合いが無く、左手の紋章を使えるようになるかどうかが鍵になっている。
其れは分かっているのだが、ダイは今一歩紋章を使いたいと心の底から思えない。
これを使えば、ティファの命が無くなるのではないか
紋章はまだ妹と繋がっており、自分が使えば使う程ティファの闘気を使用し、遂にはティファの闘気が使い果たされたのも気が付かず使用した結果、ティファの命を闘気に変換させてしまうのではないかという恐れがダイを縛っている。
数千年に及ぶ竜の騎士にもこのような事例はなく、ダイの怖れを一笑に付す証が無い為、誰もダイに無理強いは出来ない。
もしもダイの考えが当たってしまったらと思うとゾッとする。
敵を倒したその先に、ティファの死をも見る事等御免だからだ。
ダイが左手の紋章を使うには、ティファが目の前にいなければ怖ろしくて使えない。
今朝の明け方に見た最悪の夢を現実化させたくない
夢を見た
何処までも続く白い花畑で、ティファを大人の女性にしたような優しい人と二人で花の冠を作っていた。
其れが母だと、夢の中であってもダイには分かった。
それはバランが常日頃からティファは母親のソアラに生き写しだと言っていたから。
花場だけには自分と母が笑いながら冠を作りあい、互いの頭に乗せている時に父と妹が昼食の支度を終えて、自分達を呼びに来てくれた直後、辺りに黒雲が立ち込め雷鳴が轟き、嵐が巻き起こる。
急な暴風雨から母を守り、妹は父に保護されているかとそちらを見て目に映ったのは・・・
光魔の杖に刺し貫かれ倒れ伏す父と、ミストバーンとキルバーンを左右に従え、杖から手を放し妹を抱き抱えるバーンの姿があった!!
「大魔王!!!!!」
様々な事に怒りに駆られ、討ちかかるが素手の自分は大魔王どころか側近の攻撃に翻弄され・・・・・母もキルバーンに首を落とされたところで悲鳴を上げながら目を覚ました。
悲鳴を聞いた仲間全員が駆け付け、直ぐに側に来た父にしがみついて声の限り泣き叫んだ。
きっと、この悪夢はティファを取り戻し、大魔王達を討たない限り続くのだろう。
ティファ・・・・・・無事でいて・・・・・
自分の中で眠っている竜の紋章に口付けをしながら、ダイは妹の無事を祈る。
「・・・・・んみゅ?」
だれ・・・・・だれかが・・・・わたしの名を・・・深くて悲しい声で呼んでる・・だれ?
「ティファ。」
・・・・・あ・・この声は・・・
「まだミストが夕餉の用意を整えておらぬ。」
「・・・ま・・・だ・・」
「もう少し寝ておればいい。」
「う・・・・ん・・・・・」
目を開けるのも辛い、声を出すのは更に辛い。
ご飯食べれば一時間かそこらは動けるようにはなったけど、それ以外はてんで駄目だ・・・
目を開けるのは辛いから見えないけれど、深みを感じる声や全身を撫でている手の感触で、誰の膝の上で寝ていたのかは分かる・・・この人私の事抱っこしていて重くないのかな・・・・・時折魔族や魔獣の気配や・・・・・動けるようになったら殺してやりたいダニ野郎の気配と声が聞こえる。
つまり魔王軍の人達と謁見している時も私の事を膝に乗せている様だ
・・・・・本当に酔狂な人だな・・・大魔王は・・・・・・
今宵ここまで